僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第34話
アルとハロルドの間に長い沈黙が流れた。ハロルドはまだ聞きたいことが山ほどあったが、真一文字に結ばれたアルの口がそれを許さなかった。どれくらいの時間が経ったのだろうか、息苦しくなるほどの圧を出しながら押し黙るアルと、3人の物言わぬ死体。ハロルドの救いは、部下を呼びに行ったレイと言う青年が戻ってくれば、この沈黙から解放されることが確定している事だった。
こんな事なら一人で待っていた方がいくらか楽だったな、と並べられた死体を前に考えていた。
そうこうしていると、何やら表が少し騒がしくなって来たと思ったら、勢いよく扉を開けて待望の愛する部下たちが雪崩れ込んできた。物々しいその集団は野次馬も一緒に連れて来たのが少々難点だったが、ハロルドにとってはようやく訪れた救いの手だったので、勢いよく現場に踏み入る事に対する苦言も言わず、満面の笑みで部下を迎え入れた。最初に踏み込んだ部下が見たのは並べられた死体に笑顔で迎え入れる隊長、その異様な姿が脳裏に焼き付いてしまい、この事件が切っ掛けで部下たちの間では、裏で血塗りのハロルドの二つ名で呼ばれることになった。
「おうレイ、シリルは無事に送り届けたな」
「はい、飯食ってました、多分もう寝てるんじゃないですかね、強がっていましたけどまだまだ子供です。こんな事があったんじゃあ、心も身体も疲弊しきっているでしょうから」
「その事については重ね重ね申し訳ない、我々の不徳の致すところ、これからはこのような事が・・・」
ハロルドがレイとアルに頭を下げようとしたところで、アルが止めに入った、
「まあまあ、このレイも全くの無関係ってわけじゃねぇんだし、犯人はこうして全員死んでるんだしよ、俺達も腹が減って来たから早く終わらせようぜ」
アルは周りの部下にも聞こえる様に大きな声で犯人が全員死んでいると告げた、部下たちはその言葉に聞き耳を立てて犯人は全員死んでいると納得し、ハロルドは更に疑惑を深めた。
次の日、シリルは学校を休んだ。
それは自分から言い出したのではなく、あんな事が有った次の日に、無理に学校へ行かせなくても良いのではと、エイベルがアルとレイに言われたからであった。
確かにそうだとエイベルは納得してシリルに伝えたはずだったが、満面の笑顔で二つ返事をしたシリルを見て、無理にでも学校へ行かせた方が良かったかなと思い直した。
突然沸いた休日に、シリルは少し興奮気味だった、その元気な姿を見てハロルドは仕事へ向かった。
しかしナオミはシリルの笑顔の些細な変化に気付いたのか、椅子に座り優しく抱きしめると、シリルは母の胸の中で赤子の様に小一時間泣き続けた。




