僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第33話
レイとシリルは、固く手を握りながら夜道を歩いていた。子供の世話をした事が無いレイはシリルの歩幅に合わせて歩く事の難しさを知り、シリルは大人の歩幅の大きさを知った。
人影もまばらな通りに出た頃、レイは不意に口を開いた。
「あんまり思い出したくは無いかも知れないけど、あの家にいる間に何か変わった事は無かったか」
「変わった事?目隠しをされて椅子に縛られた事かな」
「ははは、そりゃあ確かに初めての経験かも知れないな、ちなみに俺は思い出せないくらい有るぞ」
「それは船長に怒られて?それともお父さんやお母さんにかな」
シリルは少しだけレイをからかう様な事を言った、それは泣いていた事をからかわれた事への軽い復讐のつもりだった、
「ああ、まあそんなところだ」
レイが言葉少なに寂しそうな顔で答えるのを見て、しまったと言う様な顔をしていると、
「俺の事は良いんだよ、変な事じゃあ聞き方が悪かったな、縛られている間にお前を攫った奴らは何か話しをして無かったか」
「そう言えば、なんで子供なんか攫ったんだとか言ってたっけ、その後で血の匂いがしてきて、僕も一緒に殺されるんじゃないかって泣けてきちゃって」
「そうか・・・、結局泣いてたんじゃないか」
「泣いてない」
「まあそれは良いや、それ以外には何か気になる事は無かったか」
「あ、目隠しをされていたけど、少しだけ隙間から犯人の手が見えた」
「でも、手だけじゃなぁ」
「それだけじゃないんだ、手の甲に刺青が有って、なんだろう変な形だったんだ」
「シリル、悪い事は言わない、その事は誰にも言うな、そして今日寝たら忘れるんだ。良いな俺との約束だ、絶対だぞ」
握っているレイの手に力が籠る、思わず痛いと言いそうになったが、レイの僕を見る眼差しの鋭さに声が出せず、僕は小さく頷く事しか出来なかった。
家に帰ると僕の元気な姿を見たお父さんとお母さんが駆け寄って来て抱きしめてくれた、なぜかはわからないけれど自然と涙が流れて来た。シンディとシェリーも涙ながらに僕を迎えてくれて、泣いていないのに涙は止まらなかった。食卓に着くとすぐに暖かい料理が並べられ、そこで自分の腹が減っている事に気が付いた。僕が暖かいスープを一口飲むのを見届けると、すぐにレイが守備隊に連絡をするために出て行った。父と母は今回の事について何も聞いて来ず、ただただ僕を囲んで微笑んでくれていた。
お腹がいっぱいになるとすぐに眠たくなり、気が付いたら朝になっていた。




