僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第32話
「それじゃあ俺と、ハロルドさんはここに残ってるからよ、レイ、お前はシリルを送ってやんな。その後で守備隊にここに来るように伝えてくれ」
「わかりました、行こうかシリル」
シリルはレイから差し出された手を握りしめた、レイの手はとても力強くて硬かった。シリルは思わず強く握りしめた。
「なんだシリル、泣いてただけじゃなくて震えてるのか」
少し恥ずかしそうにシリルは泣いてないと否定したが、それが嘘なのは目隠しを取ったレイには明白である。そんな強がりを言う元気が有る事を確認して、レイはシリルの頭を撫で、
「そうだ、男はそう簡単に泣くもんじゃないぞ。それじゃあ急いで帰って、お父さんとお母さんに元気な顔を見せてあげような」
まるで兄弟の様な二人が部屋を出て行った。それを見届けるとアルがハロルドの方を向く、アルが口を開く前にハロルドが口火を切った、
「アルさん、聞きたいことが・・・」
「ああ、聞かない方が良い事もあるが、出来る限りの事は話すよ」
アルは部屋の隅に置かれていた椅子を持ってきて、シリルが縛られていた椅子の前に置いた。ハロルドは倒れていた椅子を起こすとその椅子に座り、続いてアルも椅子に座った。
「何から聞いて良いのかわかりませんが、途中から明らかに態度が変わりましたよね」
「ああ、そうだったか。俺はいつもこんな感じなんだが」
「具体的には犯人からの手紙が来た時からですね、あなた差出人がわかってたんじゃありませんか」
アルは少し考えた後で答えた、
「差出人は誰だかはわからねぇけどよ、その奥に何が有るのかがわかった、かな」
「その奥と言うと、今回の事件の黒幕が誰かという事ですか」
「まあそうなんだが、あんた物覚えは良い方かい?」
「こういう仕事をしていますからね、自慢できるほどではありませんが」
「そうなのか、まあ今から聞いた話はすぐに忘れた方が良い、本当は聞かない方が良いんだが」
ハロルドはアルの肩をしかと掴むと、真剣な面持ちで是非、と伝えた。ハロルドの熱量に根負けしたのかハロルドの手を掴むと、懐から犯人からの手紙を出した。
「この手紙を見て何も気が付かなかったんならその方が良いんだが、ここのとこに変な印が有るのが見えるか」
「はい、なんですかこの変な印は、逆さの盾に剣が刺さったような」
「こんな田舎町じゃあそうそうお目にかかる事もねぇだろうけど、これは存在しない国の家紋だ」
「存在しない国・・・ですか、なら特に意味が無いんじゃないですか」
「その通り、こんな国は無いから、どこの国の関与も無いって、事になっている」
「事になっている、って事は」
「それ以上はいけねぇ、俺もこれ以上は言わねぇよ、つまり今回の事はどの国の関与も無いって事だ」
「国・・・ですか、一般の子供の誘拐に国が関わる事が有るんですかね」
「だから、関与はねぇって言ってるだろ、あいつらは仲間割れで殺し合った、それで終わりだ」
「そうですか・・・」
ハロルドは不服そうな顔をしていたが、アルの頑なな態度に納得をせざるを得なかった。




