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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第29話

レイはただひたすらに走っていた。頭の中ではこの行為に意味が無い事がわかっていても、走らずにはいられなかった。なぜシリルを一人で帰したのか、その事を責める事は無いだろう、それはいつも行われている事で、誰にも悪意をもたれていないであろう純真無垢な子供を攫う輩など居ない、悪意を持たれていたとしたらそれは自分だろう。俺が親しくしていた所為で、無関係のシリルに危害が及んでしまった。

そんな事を考えていると、走らずにはいられなかった。

道場に辿り着き門を開けるとまだ守備隊は数人が残っていた、一度は帰って行ったレイが戻ってきた事で不思議に思ったのか理由を尋ねられたため、詰め所へ行きたいと伝えると残っていた人たちの中から一人が手を上げ、レイと同行する事になった。


「大変な事になっちまったな」

店内で話す事では無いと、自室の食卓に通されたアル船長は席に着くなりぼやいた。

同席しているのはエアハート夫妻と姉のエイミー、それとジェイジェイだ。

シンディとシェリーには店の切り盛りを頼むと快く受けてくれて、いつもと変わらず慌ただしく店内を動き回り接客をしてくれている。シリルを心配する気持ちが無いわけでは無いが、エアハート夫妻の気持ちを考えると、自分たちが頑張らねばという気持ちになっているようだ。

「これからどうすれば良いでしょうか」

悲痛な面持ちのナオミがアルに尋ねる、今にも泣きだしそうなナオミの肩をエイベルが抱き寄せた。

「俺たちに出来る事なら何でもするがよ、シリルを攫った相手から何かしらの要求なりが来ねぇと動きようが無ぇからなぁ。町の中を隈なく探すったってこの町は広いし、表立って動くと犯人の感情を逆撫でしちまうかもしれ無ぇしな」

「じゃあどうすれば・・・」

ナオミの肩を抱き寄せながらエイベルが詰め寄る、アルはそんなエイベルを宥めると隣に座っているジェイジェイに、

「とにかく、こう言う事は俺たちよりも向いてる奴らに応援を頼むしかあるめぇよ」

アルはそう言うと首をくいっと動かしてジェイジェイを促した、アルの言っている事がわかったのかジェイジェイは小さく頷くと席を立ち部屋から出て行った。

「エアハートさん、金だろうがこっちだろうが俺たちは出来る限り力になるから」

アルはそう言いながら拳を握り高々と突き上げた、大抵は金銭の要求がほとんどで、無事に解放される事も多い。もちろん一番は攫われたシリルの身の安全確保なのだから、それで事件としては一応は解決なのだけれど、人攫いなどという極悪非道な事をする輩はきちんと懲らしめておかないと、味を占めて第二、第三の事件を起こすかもしれない。その時は、シンディもシェリーも本気を出してしまうかもしれない。

アルが懸念するとすればその事なのだが、そんなアルも静かに心を燃やしていた。

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