僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第23話
「おいおいどこまで腑抜けなんだよ、これだけの大人数で来て置いて、頼るのが守備隊なのかよ」
怒りで真っ赤な顔になった師範が荒々しく席を立ち、アル船長に人差し指を突き立てて、
「いいですか、腑抜けだとかそう言うのではなくて、ただ守備隊に一任してあるだけです」
そう言うと踵を返して退店しようと歩き出すと、すぐに開け放たれていた扉から守備隊の制服を着た男たちが入ってくるのが見えた。すると師範は再び踵を返してアル船長の元へ戻って来た。
「思っていたよりも守備隊が早く来たみたいですね、あなたは随分威勢が良い事を言っていましたが覚悟してください」
師範はアル船長に顔を近付けて、アル船長の胸を人差し指で突きながら言い放った、黙って聞いていたアル船長だったが、師範の肩越しに何かを見つけると師範を押しのけて、
「おおレイ、こっちだこっち」
なんと、アル船長が手招きした先には捕縛されている筈のレイが立って居た、レイは店内の様子がおかしい事には気付いていたみたいで、すぐにアル船長の元へ駆けつけて来た。
「すいません船長、ご迷惑をおかけしました」
「馬鹿野郎迷惑なんて事が有るかよ、俺のかわいい船員じゃねぇか」
捕縛されている筈のレイの登場に驚いたのは僕だけでなくて、師範も驚いたようで口をパクパクとさせて言葉が出て来ないようだった、当然と言うか両手を折られた男は悲鳴を上げると走って店を出て行ってしまった。
「あれ、あいつの顔はどこかで見た気が・・・、気のせいかな、昨日はあんなに顔は腫れていなかったし」
冷静さを取り戻したのか師範が再び踵を返すと、守備隊の男たちに向き合い、
「なんでこの男が拘束も無しに外に出ている、いったい誰の指示で解放したんだ」
「誰の指示って、そりゃあ俺だろ」
「あなたには聞いていない、誰だ誰なん・・・」
守備隊の男たちの視線がアル船長へ向けられている事に気付いた師範が、アル船長の方を向くと、そこには満面の笑みを浮かべたアル船長が居た。
「だ・か・ら、俺が指示したって言っているだろ」
「な、なんでそんな事が出来る、私は守備隊の剣術指導もしているし、町長や王都からのお墨付きも貰っているし、それに・・・」
一気に捲くし立てる師範の言葉を、アル船長は右手で制して、
「そんな金で買ったような、お墨付きだのなんだのってのはどうでも良いんだよ」
アル船長が金で買ったと言ったところで、明らかに師範の態度が急変した、それまでも挙動不審なところは有ったけれど、それまでとは明らかに違って妙におどおどとしている。
「その、お前が賄賂を渡した何とかって大臣な、今頃は監獄の中だ」
師範はアル船長の言葉に顔面蒼白になり、今にも崩れ落ちそうに見える、
「他にも罪状が有ったようでな、それと、そのコネで手に入れたこの町の守備隊の剣術指導の指定だけどよ、どうやら取り消しになるみたいだぜ」
とうとう師範は膝を着いて崩れ落ちた、半開きの口からは一言の反論も出て来ず、アル船長の言っている事はすべて本当だと言う裏付けにもなってしまっている。




