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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第22話

「おう、シリルじゃねぇか、お前自分家の前で何うろうろしてんだよ」

聞いた事のある声に振り返ると、そこにはアル船長とシェリーが立って居た。

「こんにちはアル船長、今家の前がその・・・」

そう言って僕は扉の前に立つ男たちを指差した、それを見たアル船長は眼つきが鋭くなる、シェリーはそんなアル船長を宥める様に両肩に手を添えている、

「あいつらか、おいシェリー、店の中に親玉・・・師範だっけが居るんだな」

「はい、シンディが相手をしている筈です」

「そうか、んじゃちょっくら相手してやるか」

アル船長はニコニコと作り笑顔を作っていたが、その眼はとても鋭く男たちを睨みつけていた。シェリーも僕の方へ顔を近付けて安心させようとしているのか笑顔を見せてくれたが、その冷たい眼は僕に向けられている訳では無いのにとても怖かった。

扉の前に仲間の男たちが門番の様に立ち塞がっている為、開店を心待ちにしていた常連客達は目を合わせない様にして立ち去って行ってしまった。

その姿を見て僕は少し胸が苦しくなった、シェリーはそんな僕の背中にそっと手を添えてくれた。

アル船長は扉の前に居た男たちを一瞥すると店内に入った、それに続いて僕も店内へ足を踏み入れた。

「事の経緯の細かいところまではわからないですけれども、あんた達のお仲間が私の弟子に暴力を振るった、それは間違いが無いですよね」

重苦しい雰囲気の中、席に座っている男がシンディに向けて口を開いた。どうやらこの男が師範のようだ。最初から客では無い事が解っているシンディは、一人で男たちと対峙していた。姉は店内に見当たらないところを見ると、仕入れに出ているか厨房へ避難しているのだろう。師範は大きな声を出す事も無く、静かに当事者のレイと、恐らく居るであろう責任者を呼んで欲しいと、臨戦態勢に入っているシンディに伝えていた。

僕たちが店内に入った事に気付いた何人かの男たちが僕たちの方を見た、外に立っていた男たちと打って変わって店内に居た男たちは、皆顔の形が判らないほどの怪我を負っていて、レイの話しだと特に暴力を振るっていないと言っていたので、話しが違うなと思っていたら、

「なんでぃなんでぃ、静まり返ってて辛気臭ぇなぁ、いつもの活気はどうしたよ」

アル船長が店の異様な雰囲気を搔き消そうと口を開いた。そして、アル船長はずかずかと歩いて行き、シンディが立って居る前の席に座ると、

「俺に用が有るってのはあんたか、それとも隣の男か」

「用が有るのは私です、あんたのとこの若いのが私の弟子に暴力を振るったようで、骨折をした者も居ますし、他にも怪我人が多数出ていまして。私どもとしては事を荒立てたくは無かったのですけれども、逃げられても困りますので一時収監させてもらいました。ですが、私どもは守備隊の剣術指導をさせていただかせていまして、なんと言いますか顔が聞く訳ですよ、そこであなたの気持ち次第ではすぐに釈放出来るのですが」

「ふうん、あんたの力で捕まえる事も逃がす事も出来るって事かい」

「そうですね」

「だけどよ、嘘の罪状じゃあ捕まえる事は出来ねぇだろうよ」

「嘘、嘘と言いますが、あなたには怪我をしている彼らが目に入らないとでも」

冷静に話していた師範だったが、アル船長の言葉に少し興奮してしまったようで語気が強くなった、それでもすぐに冷静さを取り戻したのか咳ばらいをした、

「ふうん、だけどよぉ聞いてた話しと違うんだよなぁ」

アル船長は右手に包帯を巻いたレイの被害者の左手を持つと、

「俺は左手を折ったって聞いてたんだがなぁ」

そう言うが早いか男は悲鳴を上げてのたうち回り始めた、師範も驚いて席を立ってアル船長を睨みつけた、

「あぁやっぱり、折れてるのは左手じゃねぇか」

アル船長はそう言って立ち上がると、のたうち回る男の首根っこを掴み片手で持ち上げて、

「あれ、俺の聞き間違いだったかな、折れてるのは手首じゃなくて首だったかも知れねぇな、おい、お前はどこの骨が折れてるんだ、俺に教えてくれよ」

悲鳴を上げていた男はアル船長に片手で吊るされ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも首をどうにかして左右に振り、

「折れてない、折れてないです、どこも折れていません」

悲鳴のような声を絞り出して男が答えると、満足したのかアル船長は手を放して、

「んで、どこも骨が折れてはいねぇようなんだが、いったい何の罪でお前は俺のとこのレイを捕まえたんだ」

あまりの出来事に何も言えなくなっていた師範だったが、大きく舌打ちをすると、

「いいでしょう、そっちがその気なら受けて立ちます、すぐに守備隊が駆け付けますから、いつまで虚勢を張っていられるか見物ですね」

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