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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第21話

「と言う感じで丸く治めてきたから、あ、シリルこれはお前にやるよ」

レイが武勇伝を話し終えた後で、僕に例の折れた柄をくれた。正直貰って嬉しい物では無いけれど、手に持ったそれはとても硬く、素振りで折れたと言うのは流石に信じられず、折れた剣先が叩きつけられた石畳が割れたのでは無くて、叩きつけて剣先が折れたのだろうと勝手に解釈した。

「あまり上手く治まったと思えないんだけど」

僕は思わず本音を漏らしてしまった、レイに任せておけば大丈夫とシェリーが言っていたのだが、確かに今以上の解決方法を僕には導き出す事は出来ないのだが。にこやかに話していたレイの顔が一瞬だけ真剣さを取り戻し、店内をくまなく確認して、

「ここだけの話し、俺だからこの程度で済んでいるんだぞ、あの場に居たシェリーやシンディに任せてみろ、今日からお前は野宿だぞ」

レイが僕にすり寄って耳打ちした、僕はそんな事は無いだろうと否定しようと思ったけれど、二人のあの時の堂々とした振る舞いと、シェリーが醸し出した背筋も凍る雰囲気に、誇張されているとは思うけれど妙に納得してしまった。そんなこんなで夜も更け、次の日、学校に着くまで父に見学の返事を聞く時間はいくらでも有ったのだが、先生の顔を見るまでコロッと忘れていた事に気付いた。

正直に聞きそびれたと答えると、最初は物凄い顔で明日にはお願いだ、と言われたけれど、これこれこういうことが有ってうっかり忘れていましたと、折れた柄を見せて昨日の出来事を掻い摘んで話すと、先生は僕の話しを真剣な面持ちで聞き入り、折れた柄をしげしげと観察して、

「両手剣を片手で素振りして折ってしまうなんて、さすがレイナルド・エースだ、すごい物だなぁそもそも彼が最初に剣戟大会に・・・」

それから先生の話しは物凄く長く、レイの数々の剣戟大会やら何やらの話しを聞かされた、話の途中で折れた柄をあげるので帰らして欲しいと提案しようかと思ったが、なぜかその折れた柄が妙に惜しくなり、先生が話し疲れるまで、適当な相槌を打って話しを聞いている振りをした。

ようやく、具体的には先生が乾いた喉を潤すために3杯お茶を飲み、資料としてレイの事が記されている出版物が2冊先生の机から出てきて、先生の長い長いレイ話しが終わった。シェリーとシンディはまた今度と言う先生に、曖昧な返事で誤魔化すぐらいしか僕には気力が残っていなかった。


帰り道、手持無沙汰な為か折れた柄を手に持ち、周りを気にしながら振り廻して帰った。剣先が無いのでそれほど重い物では無いけれど、普段からあまり身体を動かさない僕にはちょうど良いくらいの重量で、なぜか妙に面白く、軽々しく先生にあげなくてよかったと安堵した。

実物を見た事が無いからわからないけれど、両手剣という事は相当に長い筈で、これを片手で振って折った、という話しがやっぱり誇張なのかなぁ等と考えながら家に着くと、見覚えの有る男たちが店の前に門番の様に立っており、物々しい雰囲気に包まれている。

やっぱり丸く治まってはいなかった。僕は遠巻きに帰れない家を眺めて、どうしようか考えていた。



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