僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第14話
一気呵成に捲くし立てる先生の話しが一段落したところで、ようやく口を開く事が出来た、
「先生、今日の用件は終わりでしょうか」
半ば呆れ気味にはっきりと帰りたい意思を伝えたのだが、先生はそんな僕の態度を咎める事無く再び話し出した、アル船長たちが数々の竜を仕留めたとか、レイが18歳の時に剣戟世界大会で優勝をしたとか、シンディも弓技大会で準優勝だとか、凄い人たちの集まりなのが良く分かった。
「先生、それならうちのお店に来れば良いじゃないですか、みんな夜は遅くまでお酒を飲んでいるので、学校が終わってからでも十分間に合うと思います」
僕の言葉に喜んでもらえるかと思ったが、実際は先生の顔から一気に血の気が引き、興奮して立ち上がっていたのが力無く椅子へ崩れ落ち、俯きながら大きなため息を吐いた後でぽつりぽつりと言葉を吐き出した、
「先生は・・・、受け持ちの生徒が・・・商売をやっている場合・・・、個人的に物品の購入、その他類する事が、禁止されています。それに違反した場合、停職、もしくは自主退職の可能性が有ります」
再び大きくため息を吐いた後で僕の方へ顔を上げた、
「ですので、先生はシリル君のお店に行く事が出来ません」
そう言い終えた先生の目には潤んでいた、ここまでの醜態を晒してしまうほど好きなのかと少し同情してしまった。それはそれとして、こちらとしてはこんな用事で、毎回毎回呼び出されていてはたまったもんじゃないので、
「それなら今、父が狩竜人船の修理をしていますので、少しの時間でしたら見学出来るかもしれません。それで、もう僕を呼び出すのは止めていただけますか」
次の呼び出しは無しにして欲しくて、つい余計な事を言ってしまった。すぐにその判断は間違えたと思ったが、すでに後の祭りだった、僕の提案に大興奮した先生に、見学に行く日にちと時間をその場で決めさせられそうになった、父やアル船長たちには後承諾になってしまうのでそれは無理だと断った。レイたちが船に居るかどうかはわからないけれど、そんなことまでは約束出来ないので、そこも譲歩して貰った。いや、譲歩するのは先生では無くて僕の筈なのだが。
「では、父に確認してみますので・・・、そろそろ帰っても良いですか」
「さようならシリル、くれぐれもよろしく」
僕の帰りの足取りは少し重かった、レイは僕が船に行けば何でも見せてくれると言っていたけれど、それに甘えて先生まで連れて言って良い物だろうか、父は恐らく悪い様にはしないとは思うけれど、父はあくまでもアル船長に雇われている身分だし、アル船長は気っ風の良い人だけれど、それはあくまでも僕が子供だから優しくしてくれているのだと思う。色々考えながら、もし、全部断られて、それを先生に伝えたら・・・、どんな涙目になるかと思うと少し可笑しくなってきて、僕の足取りも軽くなった。