僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第12話
家に帰ってから、一応店の手伝いをするふりをした、正直船員たちが手伝いをしてくれている為、何もする事はないのだけれど、これでマリー達には言い訳が出来る。
レイは相変わらず姉の前では固まっている、あのままだと何の進展も無さそうだけど、はたから見ているだけなら面白いので、何もしない事にした。
夕食時に母に狩竜人について聞いてみた、父と一緒に狩竜人船に乗って旅をしていたのだから詳しく知っているだろうと思っての事だった、母の答えは、
「そうね、お母さんが乗ってた船の狩竜人たちも、レイさんやジェイジェイさんみたいに陽気で楽しい人たちだったわ。お父さんが武器から何からの整備をしていたから、その事で何か気に入らない事が有るとよく喧嘩していたけど、すぐに仲直りしていたの、私たちが船を降りる決断をした時も、船長さんはとても怒っていて、そんなの許さないなんて怒鳴っていたんだけど、あの人たちが私たちの味方をしてくれて、私たちを船から降ろさないのなら、自分たちもこの船を降りる、なんて言ってくれて、それで私たちは船を降りる事が出来たの」
「簡単に船を降りる事は出来ないの」
僕の素朴な疑問だった、母はにっこりと微笑むと話しを続けてくれて、
「お父さんが武器や船を全部整備していたし、お母さんだって調理場を仕切っていたんだから、そんな二人が自分勝手に船を降りる事なんて普通なら出来ないのよ、でもね、お母さんがお姉ちゃんを授かってから、お父さんも相当長い時間悩んで、そして、私と生まれてくる子供のために船を降りる決心をしてくれたのよ」
「そうだったんだ、船長さん以外はみんな良い人たちだったんだね」
「そんな事は無いわ、船長さんもとても良い人よ、お母さんたちが急に言い出した事だったんだから、どちらかと言えば悪いのはお母さんたちなの、それにね、船を降りる時に退職金代わりに、このお店を買えるくらいのお金を渡してくれたのよ」
「へえ、じゃあみんな良い人たちだったんだ」
「そうね、今はみんなどうしているのかわからないけど、もしもこの街に来ることが有ったら目一杯おもてなししたいと思っているわ」
「その時は僕も手伝うよ」
「あらー、お手伝いしてくれるのはその時だけなの」
母の意地悪に僕が困り顔をしていると、座っている僕の頭を抱き寄せて、
「だからね、シリルが狩竜人になりたいって言いだしたら困っちゃうの、とても危険な仕事だけど、その分良い事もたくさん有ったし、とてもとても良い思い出ばっかりだから」
「僕が狩竜人になるのは嫌?」
「そうね、お母さんも、お父さんも、おじいちゃんやおばあちゃんの反対を押し切って狩竜人船に乗ったんだし、なかなかダメとは言い辛いわね、でもね、それでもお母さんは反対すると思うわ」
抱きしめる母の手の力が少し強くなった、その時、僕は確かに母の愛を感じていた。




