僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第10話
レイとジェイジェイが狩竜人だと知って俄然興味が湧いて来た、ジェイジェイはその厳つい見た目から想像出来なくも無いが、レイはそうは見えない、とてもじゃないが僕が両手を広げても全然足りないサイズの雷鳥を狩って来たとは思えない見た目をしている、細身だし身長もそれほど高くはない。
「なんだシリル、疑ってるのか」
僕が疑いの目を向けている雰囲気をレイが察したようだ、短時間で港まで往復した体力は物凄い物が有るし、ジェイジェイも否定していないので嘘をついているわけではないと思う、そもそも僕にそんな嘘をつく必要は・・・姉に取り入られようとするぐらいか。
「疑うって事も無いけど、じゃあさ、雷鳥はどうやって倒したの」
「ああ、あんなものガンナーがパンパンってしたとこでズバッと斬って終わりだよ」
「お前、その説明で伝わると思ってるのか」
レイがジェイジェイに窘められるが、レイは首を傾げて不服そうな顔をしている、どうやら窘められた理由が解っていないようだ、
「まず、ワイヤーの付いた矢などを撃ち込んで雷鳥の動きを制限します、これを行うのがガンナーと呼ばれる人たちです」
見るに見かねてオードリーが助け舟を出した、なるほど作戦を立てたと言うだけあって、レイと違って何も知らない僕にもとてもわかりやすい説明をしてくれる、
「そのまま、雷鳥ぐらいのサイズですと甲板まで引き摺り落して、首を切るなどの致命傷を与えて狩猟成功です」
「へー、そうなんだ」
僕は大きく頷いたが腑に落ちてはいなかった、オードリーの話しを聞いているだけだと、とても簡単に出来そうだからだ、
「まあ、荒れ狂う暴風雨の中だったから、それほど簡単じゃないんだけどな」
「そりゃあオードリーは船の中から眺めてるだけなんだから、そう言うわな」
ジェイジェイとレイが補足説明をしてくれた、確かに船の内と外では大違いだろう、
「あらそうだったかしら、それほど大変には見えなかったけど」
オードリーの言葉にレイとジェイジェイは顔を見合わせて、
「そりゃあ俺たちにかかれば、雷鳥の1匹や2匹簡単に狩っちゃうがな」
「まったくだ、びしょ濡れになる以外は大した事は無かったな」
大変だったのか、そうでは無かったのか、二人の話しを聞いていても良くわからない、二人が凄いだけなのか本当に大した事無いのだろうか、そこでふと疑問に思ったことを聞いてみた、
「じゃあさ、そんなに大した事無かったのに船が壊れて大変だったの?」
僕の単純な疑問に三人は驚いたような顔をしてこそこそと話し始めた、聞いてはいけない事だったのだろうか。
「シリル、早く夕飯を食べなさい」
姉が戻って来ない僕を気にかけて迎えに来てくれたようだ、僕には姉と母の声の区別は付くが、レイはまたカチコチになってしまい、オードリーはすでに上着を着ていた。
姉の姿を確認して、オードリーの緊張はすぐに解けたみたいだったが、レイは更に硬くなったように見えた。
「シリル、お前も夕飯を食ってきな」
唯一声に反応しなかったジェイジェイに促され、三人のテーブルから離れた、僕の疑問の答えはうやむやのままになってしまった。