僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第09話
知らない人と遊ぶと言われても困ってしまう、ましてや年齢もかなり上のようだし、明らかに姉に取り入ろうとしているのが見え見えで、僕と遊ぶことは二の次に決まっている。
「ようしシリル、何がしたい何でも良いから言ってみろ」
レイが鼻息荒く言ってきても、すべては姉のためだと思うと白けてしまう。
僕が何も言わずに黙っていると、レイが気を使ってくれたのか色々と遊びを提案してくれたが、何しろ二人だし体を動かす遊びばかり提案されても困ってしまう、
「レイさん、飛んだり走ったりは大人に敵わないし、そんなに運動は得意じゃないんです」
僕は運動系の遊びは嫌だときっぱりと断った、だからと言って頭を使う事が得意だとも言えないのだけど、
「そうかそれならしょうがないな、そうだ、昨日船を見に来てたんだって、せっかくだから船の中見せてやろうか」
「え、いいの、本当に?」
昨日見る事が出来なかった船内が見れるかもしれない、突然の提案に僕はうれしくなった、
「ああ、俺が案内してやるからどこでも見れるぞ。よし、港まで行くぞ付いて来い」
レイはそう言うと、今からじゃあ無理だと言う前に、目にも留まらぬ早さで港の方へ駆け出して行ってしまった。あっという間に見えなくなると、僕は踵を返して自分の部屋へ戻った。
程なくして夕食の時間になったので食堂へ行くと母と姉が食事の支度をしていた、店の方は船員が回してくれているようで、仕事量が減っちゃったなどと会話をしている。
「シリルは、レイさんと一緒に船を見に行かなかったの」
「行くわけないよ、とてもじゃないけど行って帰ってくる時間なんて無かったし」
「あら、でもレイさんはもう戻って来て、お店の方で飲んでるわよ」
そんな訳無いと言いかけたが、確かに店の方からレイの話し声が聞こえてくる、遊んで貰ったとは思っていないが、一応気を利かせて船内を案内してくれると言っていたし、途中で引き返して来たのだとしても、付いて来ていない僕を逸れたかと探してくれたかもしれない。一応顔を見せて置くかと店の方へ行くと、確かにそこにはレイが居た、それにオードリーとジェイジェイも一緒に居る。
「おうシリルじゃねぇか、どこ行ったのかと心配したぞ」
「ごめんなさい、引き留めようかと思ったらもう走って行ってしまってたので」
「ああそうか、そりゃあ俺が悪かったな、船はいつでも見せてやるからよ」
「あら、私だっていつでも見せてあげるわよ」
僕たちの会話にオードリーが割り込んでくる、オードリーはお酒が回って来て火照ったのか、上着を脱ぎ捨てた。
「ああそうそう思い出した、シリルのお父さんは、まだやりかけの仕事が有るって言ってたから、まだ帰って来れないってお母さんに伝えてくれるか」
レイがビールのジョッキを片手に父の言伝を教えてくれた。本当に船まで行って帰ってきたようだ、あれだけの短時間で船まで行って、父と会話をして、付いて来ていない僕を探して来たとは、いったいどんな体力をしているのだろうか。
「あの短時間で船まで走って行けるなんて、レイさんは凄いですね」
レイは少し考えた後で褒められている事に気付き、大笑いをしながらビールを煽ると、
「褒められるほどの事じゃないから驚いたぜ、あれぐらい出来なきゃあ狩竜人なんて出来やしないからな」
「え、レイさんは狩竜人なんですか」
僕は素直に驚いた、どちらかというとジェイジェイみたいな風貌を想像していたからだ、
「なんだ知らなかったのよ、俺はアルバート船のエースなんだぞ」
そう言ってレイは胸を張り拳で胸を叩いた、ついでにジェイジェイにも胸を叩かれ咽ていた、オードリーもつられて叩いたが、叩いたオードリーの方が痛そうにしていた。
「じゃあ、あの雷鳥を仕留めたのって」
「ああ俺だ」
「と俺だ」
手柄を独り占めされたくなかったのか、ジェイジェイも口を挟んできた、
「計画を立てたのは私です」
オードリーが眼鏡を直しながら間に入って来た。