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ニワトリが先かタマゴが先か

作者: リッチー

 人類は科学技術の粋を極め、一昔前では魔法と呼ばれているようなことさえも可能になった。ただ、タイムトラベルと空間転移についてだけは古典SFに登場しているにもかかわらず未だに成功には至っていない。

 そして深刻なのは食糧危機であった。

 たしかに生きるためだけであれば、人工タンパク質や人工ミネラルなど、どんな物にも頭に人工がつく食品があふれかえっていたが、その分天然の魚や食用動物が著しく減ってしまい軒並み絶滅危惧種と認定されたため、庶民の手に入る食べ物と言えば人工〇〇しかない状況となっていた。

 確かに生きるだけならばそれでも十分と言えるのだが、人間は食事に娯楽を求める生き物である。毎日同じペーストばかり食べていてストレスにより精神を病む人が多くなってきていた。

 そんな中、ある画期的な研究が実を結んだ。

 無精卵のニワトリのタマゴを孵化させることが成功したのだ。

 今までは養鶏場で生まれたタマゴは全てヒヨコになることがなかった。

 精子と受精していないのでタマゴから成長しないのだ。

 だが、ある研究者の実験から無性生殖でヒヨコを誕生させることができるようになったのだ。

 ニワトリの餌は自動生産プラントで無尽蔵に作り出され同じDNAを持つニワトリは順調に増えていった。

 「ニワトリが先かタマゴが先かって話が昔からあるが知っているか?」

 「原因が先か結果の帰結が原因になっているかという話なんだが」

 「ニワトリの話は聞きたくない。」

 「そうだろうとも。」

 彼らは恒星間航行のを行う探査船の乗組員だ、高速航行により新天地となる外恒星系に居住可能な惑星を求めていたが、どうしても自動航行と人工冬眠に頼らないと次の恒星系までたどり着けなかった。

 「俺たちが寝ていたのはどのくらいだ?」

 「記録によると3年ほどだな。」

 「三年も前の話になって恐縮なんだが。ニワトリ小屋に人工冬眠プログラムを施すのを忘れたのはお前だよな?」

 「そうだっけ?」

 「そうだよ。でどうするんだこれ!」

 巨大な恒星間宇宙船の内部はニワトリに埋め尽くされていた。

 3年で数百万匹に増えたニワトリ

「とにかく地球の基地と連絡を取って指示を貰おう」

 二人はニワトリをかき分け、ブリッジへ向かった。

 「こちら恒星間探査船フライングバード号。本部応答を願います。」

 恒星間通信にはタイムラグかある。二人はじっと返信を待った。

 「ダメだ。返信がない。」

 二人はとりあえずニワトリを緊急脱出艇に分乗させて眼下に広がる地球型の惑星に下ろすことにした。

 そもそも、人工冬眠が自動で終了したのもこの惑星軌道上に船が到着したためであった。

 「どのみちプラントを下ろして基地を造る予定だったんだ。食料であるニワトリを先に下ろした方が作業の邪魔にならない。」

 そういう判断だった。

 館内全てのニワトリを惑星に向かって放出した後、二人は基地のユニットを組み立て、惑星の環境を綿密調べ移住可能であると判断するまでに約一年の月日が掛かった。

 「やっと地上に降りられるな。」

 基地建築に必要なユニットを降下させながら自分たちも降下の準備を整えたときに地球から通信が入った。

 「今頃通信が来たぞ?」

 通信は音声ではなく短文の文書で届いていた。

 『ニワトリ×』

 「どういう意味だ?」

 「さあ?」

 二人は忙しさのあまり、1年前にニワトリを先に降下させたことを忘れていた。

 そして惑星に降下する。

 船外へ出た二人が見たものは

「なんだこれは?!」

 地上の全てを喰らい尽くしながらひたすら増え続け、地平線まで埋め尽くすニワトリの姿であった。


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