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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第97話 異世界編~Rokka of Revenge~改造人間

地獄首脳部は大王「閻魔」を筆頭とした8人の大獄卒「無間」「大焦熱」「焦熱」「大叫喚」「叫喚」「衆合」「黒縄」「等活」で構成されている。

これらは役職名であり、平獄卒50年の実績と推薦で選ばれ投票により決定する。

任期は100年であり全ての鬼達の憧れであった。


いずれも2mを超える筋骨隆々で精悍な鬼であり有能さが滲み出ている。

村長は元「無間」であり、歴代大獄卒でも優秀であり部下からの信頼も厚く高く評価されていた。


「この度は大厄災たる邪龍ファフニールの討伐、誠におめでとうございます。そして我々の長年の悲願を果たしていただき心からお礼を申し上げたい。六花殿ありがとうございます。

我々は六花殿の偉業に対して最大の敬意と感謝そして報酬を用意いたしました。5日後に行われる式典にて贈らせていただきたい。

受け取っていただけますかな?」

紳士然とした閻魔が六花の前に跪き首を垂れる。

初めての体験にアタフタする六花が村長を見ると首を縦に何度も振っていた。


「はい、お受けいたします。」

「感謝いたします、六花よ。・・・ところで6人いると聞いていますが残りの方はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」

「それは儂が説明しよう。」

村長は六花の前に歩み出て事の詳細を説明し始めた。


「ううむ、にわかに信じられないが酒呑殿がウソを言うわけないしなぁ。」

少し砕けた口調で焦熱が頭を掻く。


「六花よその執事なんだが行方がわからん。何か心あたりはあるか?」

無間も困り果てているようで僅かな手掛かりを欲している。

三花になった3人は揃って首を横に振った。


「目撃者が当事者という点も厄介だ、ヘルの奴らに話したところで信じて貰えまい。困った、困った。」

等活は腕組みしながらヘルになんと報告するか悩んでいた。


「ここで悩んでいても仕方あるまい、外交部を交えて対策を練るぞ。

六花殿お疲れのところ付き合わせてしまい誠に申し訳ない。

式典までの5日間、窮屈であるが完全警備の部屋で滞在いただきたい。

欲しいモノがあれば気兼ねなく係の者に申しつけてほしい。

それでは式典前日にまたお会いしましょう。」

閻魔は丁寧に頭を下げると大獄卒と共に退出していった。


「さて六花よ部屋に案内するとしよう。」

村長はドアを開けて手招きする。

案内された部屋は窓の無い20畳の和室で、壁全体が四季を描いたそれは見事な襖が張り巡らされていた。


「綺麗な襖、いつまでも見ていられそう。」

一瞬で襖に魅了された萌葱が感嘆の声を漏らす。

桔梗は襖に近づくとフムフムと呟きながら観察をはじめ、夜花子は部屋の真ん中に仰向けになり驚きの声を上げた。


「凄いわ!天井が無い!梁が剥き出しよ!」

入口からは見えなかったが梁が剥き出しで屋根の内側傾斜が確認できた。


「直に夕食の時間だ、食事はこの部屋で摂ることになる。」

村長は懐かしそうに部屋の中を見渡すと、入口左側の襖を幾つか開け放ち内部照明を灯した。


「うわっ?!ガラス張りの風呂とトイレ!」

即座に跳び起きた夜花子は風呂の中に駆け込む。

村長が3人寝そべっても余りある広さの天然石材で作られた湯舟と洗い場に「まるでプール!」と興奮して湯に手を入れた。


正面の襖の奥にはバーカウンターとフィットネス設備が整い、右側にはウォーキングクローゼットと寝具の収納庫が見えた。


「VIP専用の極上客間だからな、ここなら5日間退屈せずに過ごせるであろう?」

村長がニヤニヤしながら語る姿がとても誇らしげに見えた。


「もしかしてここのデザインを村長がしました?」

「うん?分るか?」

「はい、顔に書いてありますよ「儂が作った!」って。」

「そうか!そうだったか!」

村長の大笑いに釣られて萌葱もクスクスと笑った。


「事実上の軟禁状態だね。」

夕食を済ませた三花は共に湯舟に浸かり今後の対策を話し合っていた。


「襖の絵に強力な魔法陣が書き込んであるでち。

内外からの魔法を全て打ち消す効果があるでち。」

「天井が無いのは暗殺防止よね、脱走防止とも見れるわ。」

桔梗、夜花子が気づいたことを報告する。


「3人を探しに行きたいけど手掛かりはないし。」

萌葱が顔を半分沈めてブクブクと泡立てる。


(皆さんに提案があります。)

しばらく沈黙していた藻が脳内に語りかけてきた。


「何?なんなの?言ってみて?」

(萌葱さんありがとうございます。

私達は3人が消えた時点で再会方法を考えていました。

そこで以前見た茜さんの記憶の中に様々なヒントを得ました。

「バイオコンピューター」「亜空間移動」「亜空間通信」「時間跳躍」「次元跳躍」「次元間通信」などです。)

萌葱と桔梗はなぜ茜がそんな難しい単語を!と驚いた。


「多分SF映画のネタね。」

茜から幼い頃に善一爺さんと見た映画ビデオの話を聞かされた夜花子はそのような単語をよく聞いていた。


(まず私達は「バイオコンピューター」に着眼しました。

思考を0と1に配列するために私達は体の構造を変化させ、あなた達の全身にイメージに近い神経ネットワークを構築しました。

この試みは成功し今までと比較にならない速度で解答を得ることに成功しました。)

「ちょっと待って!今、神経ネットワークを構築したって言った?

なにそれ?!」

「萌葱ちゃん!黙るでち!話を聞きたいでち!」

ぎらついた桔梗の目を見てマッドサイエンティストが覚醒したと悟り口をつぐんだ。


(高速演算機能を得た私達は現状実現可能な能力として「次元間通信」及び「瞬間移動」を候補としてあげます。

この二つの能力を取得した場合の再会確率は99.9%となります。

しかしこれらの能力の実現には皆さまの脳に干渉しなければなりません。

私達は一刻も早く皆さまが合流することが急務と考えます。

どうかご決断ください。)

萌葱と夜花子は自分の体が改造されることに恐怖を覚えたが、桔梗は積極的に改造を望んだ。


「わたちだけでも改造するでち!改造人間でち!へんちんでち!」

改造人間の変身フォームを真似る桔梗を見て、説得は不可能と判断した2人は改造の許可を出した。


(皆さまありがとうございます。ただ、時間が切迫しております。

これより休眠モードとなり必要最低限の生命力を残し改造に全力を尽くします。

その際に無防備となり生命の危険に晒されることになります。

どなたか信頼のおける方の護衛を提案します。)

一番難しい問題を突き付けられ3人は頭を抱えた。


「実は村長に話さなければならない事があります。」

真実を打ち明けることを決心した三花は村長1人を呼び出し、桔梗の特異性とこれから起こる三花の変化について包み隠さず話した。


「薄々感づいていたがそれほどのものだったのか・・・。」

話を聞いた村長は絶句し様々な場面のシミュレーションを行うが、結局は六花の行動次第で幾らでもひっくり返される結論に行き着いた。


(放置もできんし干渉もできん、いっその事休眠中に殺してしまうか。)

村長は自分の恐ろしい考えをすぐに否定し、そのような考えに至った自分を恥じた。


(一番の良案は6人全員が式典に参加しその場で姿をくらます事だが果たして可能なのか?)

村長は思い切ってこの案を三花に話してみると、思ったより快い返事が返ってきて拍子抜けする。


「私達は1日でも早くみんなと上の世界に戻りたいんです。

私達の住む世界と異世界では時間の進み方が違うんです。

こうしている間にも私達の世界では数年経過しているかもしれない。

村長の案にのります!協力お願いします!」

三花の言葉に偽りが無い事を大獄卒時代の経験で判明している。

村長は護衛を引き受けると約束した。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


三花が眠りについてから3日目の早朝、村長はすぐ脇で胡坐をかきながら寝ずの番をしている。

明日の昼に閻魔との昼食会の予定があり、それまでに目覚めるかどうか気が気でない。

今日中に目覚める予定ではあるが一向にその気配が無い。

三花に目をやると眠りについた姿勢のままでピクリとも動かない。

微かに脈が計れるので生きてはいるが、顔面蒼白でふくよかだった頬はこけ、目の周りが窪みげっそりとやつれていた。


「主、寝ずの番交代いたします。」

信頼のおける部下が村長の隣にドカッと座り胡坐をかく。


「うむ、頼んだぞ。」

村長は三花の隣に敷いてある布団に潜り込むとすぐにイビキをかき始めた。


「うるさいなぁ、もう。」

むくりと起き上がった萌葱は隣でいびきをかいている村長の鼻を摘み口を押さえる。

呼吸のできない村長は顔を真っ赤にして飛び起きた。


「静かにしてください。」

「おお、萌葱よ目覚めたか!よかった!」

「よくないですよ、最悪な目覚めです。いびきで起こされるなんて。」

「それは済まんかった!ところで体に異常はないか?」

「あー・・・お腹が空きました。」

「よし!分ったすぐに用意しよう!」

2人のやりとりを見ていた部下は吹き出すのを我慢しながら、食事の準備を告げるために立ち上がった。


「おかわりください!」

「私もお願いします!」

「あたち特盛でくださいでち!」

萌葱に続いて夜花子と桔梗が覚醒して空腹を訴える。

部下が去ってから5分もかからず食膳が運ばれてきた。


青い米の炊き立てご飯、ねずみ色の味噌汁?に具は漆黒の豆腐?と深紅のトロロ?、恒例の紫色の身の焼き魚?、赤と黒のマーブル模様が美しい玉子焼き?、沢庵漬けと青野菜の漬物?。


いただきますをすると物凄い勢いで食べ始め、料理を次々に口に入れ頬を膨らませほぼ噛まずに汁物で一気に流し込む。

アッという間に膳から料理が無くなり、お代わりの要求をすることを5回繰り返すとようやく落ち着きを取り戻した。


「なんともはや、良い食べっぷりじゃな。それに顔艶が元に戻っておる。」

料理を胃に流し込む度に膨らんでいく顔を早送りの映像で見せられた村長は、確かに三花の身に人知を超えた影響が発現したと理解した。


(アルジー、調子はどう?)

(絶好調です、いつでもタスク実行可能です。)

萌葱はバイオコンピュータに変貌した元藻であるアルジーと脳内交信を行い現状確認をおこなう。

アルジーは三花それぞれに分体を持つ1個体として機能している。

タイムラグの発生しないテレパシーで接続され常に宿主の状態を管理し、宿主の五感を通して最適な状況解答の提案も行う。

アルジーは即時「亜空間通信」「次元間通信」を提案した。


「OKよ、やっちゃって!」

(・・・亜空間通信反応なし。・・・次元間通信反応あり、回線固定中・・・回線開きました、通話可能です。)

脳内に様々な光の奔流が現れ一際眩しい光の爆発の果てに、茜、珊瑚、蒼の姿が見えた。


「みんな大丈夫!」

「うお!萌葱が見える!何だこれ!」

六花は次元の壁を越えて再会を果たした。


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