第96話 異世界編~Rokka of Revenge~六花再び散る
萌葱(一番知られてはいけない人に知られたみたい。)
夜花子(断れる状況ではないね、獲物を狩る雄の目になってるよ。)
茜(あげちゃってもいいんじゃないか、オレら空飛べるしな!)
珊瑚(私も譲渡に賛成、恩はできるだけ売っとくに限る。)
蒼(この際無償であげちゃおう、村長への貸しは金銭以上よ。)
桔梗(絨毯も役立てる人に使ってもらうのが幸せでち。)
他(なるほどぉ~!!)
桔梗の一言が決めてになり魔法の絨毯は村長に贈呈することになった。
「村長、魔法の絨毯は差し上げます。大切にしてあげてください。」
「うむ!、任せておけ!末代まで宝として大切に扱う!」
萌葱の嫁に出すかのような言葉に感化されたのか迎える側の覚悟を堂々と答えた。
魔法の絨毯に六花と村長が乗り込み、黒ワイヴァーンに小鬼兄弟、白ワイヴァーンにビッチーズ、残りの赤、青、緑のワイヴァーンに当初予定の無かった使用人4名と護衛2名が追加され、黄ワイヴァーンに六花への贈り物が積載された。
「おおっ!なんと快適な空の旅じゃ!」
絨毯の乗り心地に大いに満足し仰向けに寝て天井を見る村長。
周りを見るとワイヴァーンが翼を羽ばたく度に体が大きく上下に揺さぶられ、騎乗する者はジェットコースターのような臨場感を味わっていた。
「うわぁぁぁ!降ろしてぇぇぇ!胃が出るぅぅぅ!漏らすぅぅぅ!」
初めてワイヴァーンに騎乗した小鬼兄弟の悲鳴がここ迄聞こえてきた。
「お願いします!こちらに乗せてください!」
ワイヴァーン休憩のため着地すると、小鬼兄弟がフラフラと近づきシンクロ土下座で移乗を懇願してきた。
「お主らのこれから先の移動手段はもっぱらワイヴァーンになる。
ちんたらと陸上を移動していたら間に合わんからな。
ほれ昨日中央から届いた公演スケジュールだ。
これをよく見てしっかりと励め。」
小鬼兄弟はスケジュールを渡され一読すると、血相を変えてビッチーズの元に駆けていく。
スケジュールを渡されたビッチーズの悲鳴が聞こえてきた。
1年中黄昏時の地獄では時間の感覚が曖昧になりがちだが中央都市「曼荼羅」は違っていた。
目視できる距離に近づくと水平に人工の灯が見えてくる。
金・銀の混じった7色の極彩色の灯が都市を曼荼羅模様に浮かび上がらせている。
それは実に美しく荘厳な眺めであった。
「すごくきれいでち、それに都市のそのものが強固な結界として機能してるでち。」
「ほう分るか桔梗、其方は魔法陣に詳しいと見える。」
意味ありげな言葉で桔梗を褒める村長に彼女はえへへっと照れた。
(桔梗注意してね、村長なにか感づきはじめてる。)
萌葱が念話で注意を促すと(らじゃ)と答える。
「そうだ桔梗よ、魔法の水筒を返していなかったな。」
「あれは差し上げます、まだ幾つか予備がありますので。」
すかさず萌葱が村長に返答すると「うむまた借りができた」と答えた。
「そういえばこの印と水筒の印、どこか似た印象があるの。
桔梗は知っているか?」
視覚阻害の魔法印を見つけると桔梗に尋ねてきたが、蒼が所有者のサインですと言ってごまかす。
村長は何かと桔梗に対して話を持ち掛けるが、その都度姉妹達が割り込み桔梗の失言を未然に防いでいた。
眼下に見えるワイヴァーン発着場で大勢の人々が出迎えのために集まっているのが見える。
先にワイヴァーンが着地し護衛と使用人が着地地点を取り囲み、そこに警備の役人が加わり人の壁を作り、その中央に音も無く絨毯が着地する。
絨毯を見た人々が口々に伝説、幻、ロストテクノロジー等叫び、興奮して近づこうとして警備に止められていた。
六花と村長は素早く降り立ち魔法の絨毯を丸めると村長自らが担ぎ揚げ、警備の壁に守られながら発着場を後にした。
「酒呑様ようこそいらっしゃいました。」
発着場施設に入ると黒執事が待ち構えており丁重に挨拶をする。
ここで小鬼兄弟とビッチーズは別行動になる。
六花と抱擁をして別れの挨拶を済ますと付き人に連れ去られて行った。
「今日の到着を聞いた民達の興奮が予想を超えていまして、交通機関や道路運行が麻痺状態にございます。
ですので転送の魔法陣で首相官邸に転移いたします。」
「ならば直接空から出向いたほうが手間がかからんのではないか?」
「そのように思いますが正確な所在地を知られたくないとの事です。」
「・・・ヘルの内偵が侵入しておるか?」
「それはもう。今週だけでも40名近く捕らえました。」
「なんと!本気度が知れるな。」
「それではご案内いたします。」
黒執事が先頭に立ち地下への階段を下りていく。
六花と村長一向は後に続き階段を下りた。
「村長さん、酒呑童子だったんですね。最強の鬼と聞いています。」
「はははっ!なに大昔の事だ、今はただの老いぼれじゃ!」
蒼の言葉を聞き照れ隠しで大笑いをする。
黒執事は今でも英雄として人々に慕われていると付け加えた。
最下層に降り立つと堅牢な扉がひとつあり、黒執事が網膜認証で開錠すると見たことのある光の柱が目の前に現れた。
「定員は3名でございます。お間違いの無いようお気をつけください。」
(作戦ターイム!)
意味深な黒執事の言葉に、六花は念話で方針を話し始めた。
蒼(これは妨害かそれとも罠か。どの道ロクな結果にならない。)
珊瑚(最悪2分割で別世界行きね、逃げ出す?)
夜花子(それは悪手でしかないよ、村長の立場が無くなる。)
茜(罠でもなんでもいいじゃんか!受けて立とうぜ!)
桔梗(あたちと夜花子ちゃんと萌葱ちゃん、茜ちゃんと珊瑚ちゃんと蒼ちゃんこれが分断された場合の最善手でち。)
萌葱(よし!私と桔梗と夜花子、茜と珊瑚と蒼で3マンセルとする。
いい!何があっても必ず再会する!私達は姉妹なんだから絶対に再会する!)
他(萌葱・・・フラグ立てないでよ。)
心の中で思ったことが全て筒抜けであった。
「お嬢様方、残るはあなた達だけですよ。
さあ運命の扉をお開きください。」
「お前、さっきからウザイな!ブッ飛ばすぞ!」
茜が凄んで見せると顔色ひとつ変えずに「おお怖い」と返した。
「私に何かあったり、あなた方が逃げ出せばこの世界で大きな戦争が始まり、大勢の罪無き人々が命を落とすでしょうね。」
ワナワナと拳を震わせる茜の肩を蒼と珊瑚が抱き光の柱に向かった。
「お前!絶対にオレがブッ飛ばしてやる!覚えていろ!」
捨てセリフを残して3人は光の向こうへ消えていった。
「さあ、最後の貴女達はどちらでしょうね?」
やはり分断されたかと悟る萌葱。
萌葱、夜花子、桔梗はきつく手を握り締め光の向こうへ跳んだ。
「どうした遅かったの?残りの3人はすぐに来るのか?」
目を開けると村長達のホッとした表情が見えた。
「なんじゃ萌葱、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
萌葱は念話で茜、珊瑚、蒼に話しかけるが反応はなかった。
「村長、茜、珊瑚、蒼が別の世界に跳ばされました。」
萌葱の衝撃発言に場が静まり返る。
萌葱、夜花子、桔梗は抱きしめ合いながら蹲った。
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「ちっ!ここはどこだ!」
茜が悪態をつきながら辺りを見回す。
地獄と打って変わって頭上は抜けるような青空と太陽が輝き、周りは深緑の竹が生い茂り見通す事ができない。
「念話は通じない別の世界確定ね。」
珊瑚は念話を諦め聴覚強化を行い周辺の音を拾い始めた。
「この風景どこかで見た記憶がある、どこだったかしら。」
「お答えします。中華大帝国領四川省臥竜保護区に該当します。」
突然藻が喋り出し、特定された現在位置を3人に伝えた。
「え?!なんで分かるの?!」
「蒼様の脳の記憶を検索しました。
以前インターネットでパンダの生息地を検索した時の記憶です。
記憶の風景と周りの風景が97%一致します。」
藻は宿主の記憶から情報を読み取る能力を備えていた。
「人間の脳は一度見たものを記憶し消去することはありません。
必要が無ければシナプスから切り離し脳への負担を減らします。
私達は全てのシナプスを接続し脳の機能を100%発揮するように補助を行います。
今は限定的な機能のみの補助ですが、いずれご主人様方が神に等しい力を得るために尽力いたします。」
「えーっと、具体的に何をするの?」
そこはかとない恐怖を感じた蒼が藻に問いかけた。
「まずは私達を体全体に張り巡らせ第2の神経系として定着させます。
神経系の次は筋肉、骨、内臓、そして脳と一体化します。
完全に融合した暁には不老不死、超常能力を有した究極生命へと進化します。
蒼様の恐怖は自分が自分で無くなる事のようですがご安心ください。
私達に意思や感情のコントロールはできません。
この部分はブラックボックスとなっており干渉不可能です。
私の記憶を読んでいただければ明確かと存じます。」
言われた通り藻の記憶を覗くと、過去に人を支配しようとした試みがことごとく失敗したと判明した。
「私達の目的は共存共栄です。どうか信用してください。」
藻の言う事に嘘偽りがないことは理解できた。
「蒼、もうなるようにしかならねえよ!
こうなったらとことん行けるとこまで行こうぜ!オレは藻を信じる!」
「ありがとうございます、茜様。
信頼を裏切らないよう誠心誠意尽くさせていただきます。」
「応!頼んだぜ!相棒!」
藻の喜びが3人に流れ込むのを感じ、人と同じ感情があることを知ると珊瑚と蒼も全面的受け入れを決めた。
「融合の速度を上げますが、日常生活に支障が出ることはありません。
私達が不都合が出ないようにサポートいたします。
ですが一日に一度全力稼動をお勧めします。
感覚に慣れなければいざという時に力を発揮できません。」
「わかったよ、日に一度の全力ね。」
珊瑚の返答に藻から嬉しい感情が流れ込んでくる。
思った以上に感情豊かな藻との付き合いが面白くなってきた3人だった。
藻と会話をしていると野生のパンダ目の前に現れ一鳴きすると、地面に転がる可愛らしいポーズを取る。
突然の事に驚きながらもパンダの仕草を見て警戒を解き魅入った。
「お嬢さん方、もしや六花ではないか?」
突然声を掛けられ驚き振り返ると、5人の成人男子が10mの距離で手を振っている。
3人は即座に戦闘態勢を取り障壁を展開した。
「待ってください、私達は敵対する者ではありません。
あなた方の事は雌ゴリラから聞いて存じています。」
「ええ?!ママ達を知っているの!」
茜が驚きの声を上げ珊瑚と蒼も驚きはするが警戒を解くことはしない。
「はい、アジトで娘自慢をよく聞かされておりましたので。
私は雌ゴリラの作戦に協力している「蜀」のメンバーで、劉備と申します。」
劉備は長いくちひげを指でいじりながらニカッと笑った。




