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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第92話 異世界編~Rokka of Revenge~邪龍ファフニールとの戦い②

ファフニールは焦っていた。

目の前を動くちっぽけな人間にブレスが当たらない。

決して速くないその動きに経験上必中間違いなしと確信していた。

なのに、なぜか当たらない。

いや当たっているがそれは幻像だった。


萌葱は真・流水拳で優雅に舞いながらブレスを避け続ける。

ファフニールに見える萌葱はすべて実像であり幻像である。

見えた瞬間に実像は幻像に変わりブレスが無効化する。

ファフニールの焦りが伝わってくる。

それでも心を動かされることなく、水鏡のような心で間合いを詰めた。


ファフニールは焦る気持ちを押さえ、自分の優位性を思い描く。

例えブレスが当たらなくとも爪が届く距離まで近づけば、ズタズタに切り裂いてくれると。

あのちっぽけで何も武器を持たない人間が我の鱗にかすり傷一つ付けるこができないと。

鋭い毒の爪による斬撃が萌葱を捕らえるが、爪は幻像を素通りした。


萌葱の幻像を爪がかき消したと同時に流水拳の死の舞いがファフニールの右足に炸裂する。

翠青花すいしょうかは当たった瞬間に絶対零度で対象を完全凍結させ、あらゆるスキル・特殊能力封じこめる。

そこへダイアモンド以上の硬度を持った超振動打撃を当てられると文字通りに粉砕される。

ファフニールの右足は血の粉雪となり消失した。


ファフニールは自分の右足が一瞬で消失した事に数千年ぶりの恐怖を思い出し、がむしゃらに爪を叩きつける。

しかし、萌葱の死の舞いは止まる事なく右腕を左腕を左足を失う。

そして何を思ったのか優しく体に触れるだけとなり、体全体が急激に凍結を始める。

ファフニールは自分を殺そうとする人間の何の感情も無い顔を見て「アレが死神というものなのか」と得心した。


「真・イナズマキィークッ!!」

声のする頭上に顔を動かすと、炎と稲妻の大槍が降ってくるのが見えた瞬間に全身が完全に凍結し意識が途切れる。

大槍はファフニールを貫くと、全身を粉砕し辺りに赤い粉雪を降らせた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「・・・反省会です。」

正座をする萌葱の前にやはり正座をする姉妹達、皆気まずい表情で下を向いて目を合わせようとしない。

小鬼兄弟とビッチーズが少し離れて位置で正座をして眺めていた。


「今回の素材入手は0です。何もありません。

血も肉もスムージーになって地面に吸収されました。

原因は私の指揮能力不足です。みんなごめんなさい!」

萌葱が見事な土下座を見せると姉妹達から擁護する声が上がる。

小鬼兄弟は萌葱の見事な土下座に感動し身震いをした。


「私がそもそも「薙ぎ払え」をしなければ良かったのよ!」

「バッドステータスで「死」ばかり思い描いたばっかりに!」

「まさか「聖」で消滅するとは思わなかった!」

「オレが調子に乗って過剰攻撃しちまったばっかりに!」

「あたちが能力調整をうまくできなかったせいでち!」

しばらく自分を責めそれを姉妹が慰めるという展開が続き、最終的に手加減しようという結論に至った。


「あんた達、今以上に強くなってどうすんだよ?

邪龍ファフニールは単体ならこの世界の最強格だぜ?!

眷属含めて集団で襲われたら中央都市だって大打撃だぞ!」

赤宗丸は更に強さを求める六花に対して如何に六花が強いかを力説する。


「この世界は邪、熱、暗黒魔法が主流であいつらレジストするから、歯が立たないんだよ。

もはやあんたらこの世界では英雄だよ。

とんでもない額の報奨金と爵位が貰えるぞ。」

青隆丸は正座をする六花の前で何を成しえたかを熱く語る。

あまりピンと来ない様子の六花に偉大な功績を実感させるため、地獄の中央都市「曼荼羅」へ連れて行くことを小鬼兄弟は決心した。


その日は近隣の村まで飛び1泊することに決めるが、当然のことながら宿屋などない。

村人に宿泊できる場所を尋ねると、村長の家なら広いので宿泊も可能だと教えられる。

村長の家は立派な門構えのある大きな和風の屋敷であった。


「ごめんくださーい!」

小鬼兄弟が声の限りに門に向かって叫ぶこと5分、村長自らが門まで赴き何用かと尋ねてきた。


「どうか今晩泊めて貰えませんか。」

「泊めるのは構わんが金を貰うぞ。地獄の沙汰も金次第、これは儂の好きな言葉じゃ。」

もちろん六花がこの世界の通貨を所持しているわけもなく、小鬼兄弟、ビッチーズも一文無しであった。


「生憎今は金を持ち合わせておりません。

かわりに女を2人、一晩お貸しします。」

赤宗丸の言葉にビッチーズがギョッとした表情になり顔を見合わせる。


「ちと待っておれ。」

扉がギギギと音立て開かれると、そこには紛れもない鬼が立っている。

村人の多くは身長170cm程度で少しガタイが良い程度の見た目であったが、目の前の鬼は身長が2mを超え筋骨隆々で物語に登場する赤鬼を具現した姿をしている。

真っ赤な肌、厳めしい顔、角が2本、口元から牙が見え、毛と髭は縮れ白くなっていることから高齢であると伺える。

小鬼兄弟が嫌がる全裸のビッチーズを村長に差し出すと、一瞥しただけで「いらん」と答えた。


「それよりもそっちの女共はどうだ?

色が白くて小柄で華奢な体に無性に興味が沸く。

儂の特大金棒で胎を存分にこねくり回してしやるぞ?」

村長が腰蓑からイチモツを取り出しブルンブルンと振り回す。

ビッチーズは目の前で振り回される、小鬼兄弟より遥に大きいイチモツに目を奪われ頭をグルグルと回した。


「爺さん悪いな!それは規格外だ!オレ達には無理だ!」

茜がきっぱりと答えると意外にも素直に諦めた。


「儂は無理強いをせん。紳士だからな。

そうするとお前らを泊めることができん、すぐに立ち去ってくれ。」

村長が踵を返すと青隆丸が思いつきを話しかけた。


「村長!濁りの無い澄んだ水を飲んでみないか?!

鉄さびの匂いや味がしない冷たくてとても美味しい水だ!

こいつらは魔法で幾らでもその水を汲みだすことができる!

騙されたと思って試してみてくれ!」

青隆丸の話を聞いた萌葱は水筒を取り出すと、蓋を外し一口ゴクリと飲み差し出した。


「なんじゃこれっぽっちか?」

村長がボトルを手に取るとミニサイズのジュース缶のように見える。

牙の生えた口を大きく開けボトルの中身を流し込みはじめると、一口で飲み干すと思った中身がいつまでたっても無くならない事に驚き、やがてその水がとてつもなく美味しいことを実感する。

無味無臭、喉を潤す冷たい感触、村長は腹がタプタプになる迄飲み続けた。


「プハァー!こりゃ美味い!都でもこんな美味い水を飲んだ事がないわい!気に入ったぞ今晩泊まっていけ!」

村長はボトルを持って家の中に駆け込んで行き、「瓶はないか?!一番大きい瓶を持ってこい!」と叫んだ。


玄関に入ると若い鬼娘が三つ指を着いて出迎える。

優に2畳ある土間と綺麗に磨き上げられた木床の上がりが通路へと繋がっていた。


「履物はお脱ぎになられ、こちらで足を清めてからお上がりください。」

小鬼兄弟は石の高下駄を脱ぐと桶に足を突っ込み泥を落とすと、続いてビッチーズも鉄のサンダルを脱ぎ足を清めた。


「郷に入っては郷に従えというけど、ブーツを脱ぎっぱなしにするのは気が引けるね。」

夜花子が心配そうな顔で皆に語り掛ける。


「この世界ならブーツだけでも特級魔法具だからなぁ、持ち込んでいいか交渉するか。」

そう言って蒼が鬼娘にブーツの持ち込みを交渉をはじめた。


「まあ、そういうことでしたらどうぞ持ち込んでください。

大切な物は自分で管理するのがよろしいかと存じます。

油断をして盗まれた物は所有権を放棄したと看做みなされます。

当屋敷で《《物盗り》》をする者などおりませんが、念には念をいれるのが良いかと思います。」

鬼娘の物言いは至極丁寧で穏やかであったがトゲもある。

六花はペコペコと頭を下げてブーツを持ち屋敷に上がった。


一向の通された部屋は畳敷きの大部屋で優に20畳はある。

小鬼兄弟とビッチーズはすぐに畳の上に横になり寛いだ。


「お食事を用意いたしますが、その前にご入浴されては如何でしょうか。当家の風呂は主がそれは趣向を凝らし作られた見事な風呂でございます。」

鬼娘に入浴を勧められ小鬼兄弟とビッチーズはすぐに飛びつく。

六花は装備を脱ぐか迷っていた。


茜「風呂か・・・入りたいぜ!」

夜花子「とは言っても装備を放置するのは気が引ける。」

蒼「家人を信用していないわけではないけれど、自己責任うんぬん言われたしねぇ。」

珊瑚「ポッポちゃんが盗まれたら立ち直れないかも。」

萌葱「ポッポちゃん?何それ?」

珊瑚「チェーンガンのポッポちゃんよ。」

夜花子「・・・名前つけたんだ。紅緋花べにひかって立派な名前があったじゃない。」

珊瑚「それはそれ、これはこれ。自分で名付けすると可愛さが倍増するし。」

茜「いいなそれ!オレを名前をつけるぞ!」

桔梗「名前をつけると愛着が湧いて大切にするでち。賛成でち。」

萌葱「名前の事は置いといて。装備を脱ぐか、脱いだとしたらどうするかを考えよう?」

蒼「誰かを犠牲にしてお留守番か?」

桔梗「いやでち!あたちジャンケン弱いでち!お留守番したら泣くでち!」

萌葱「なら半々に分けて制限時間15分ていうのはどう?」

珊瑚「それが妥当なところね、それで先発隊は・・・」

蒼「いくよ!ジャンケンポン!」


最初に桔梗が負け、次に夜花子と蒼が勝ち抜け、萌葱、茜、珊瑚で連続30回のアイコの末、珊瑚が勝ち抜けた。


「行ってきまーす!」

黒のスポーツブラとスポーツショーツ、首にタオルを掛けた色気の無い格好で風呂に向かう夜花子、珊瑚、蒼を見送る。


「制限時間15分厳守よ!ストップウォッチで計ってるからね!」

「はーい!」

萌葱の注意を上の空で3人は速足で風呂場に向かう。

留守番の萌葱、珊瑚、桔梗は装備を脱ぐことなく、ストップウォッチの数字を凝視していた。


風呂に思いを馳せ浮かれた気分でスキップする3人は、所々で通路に立つ女性の指示に従い風呂を目指す。

如何にも風呂への引き戸の手前に立つ鬼女に声を掛けられ、言葉が通じない事に気付いた。


「やばっ!通訳機がないよ!」

「気にしない気にしない!ひとっ風呂浴びて出るだけだよ!」

夜花子の心配をよそに珊瑚が引き戸を開けて入りこんだ。


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