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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第9話 子供たちの入院とママの暴走

入院した夜に、母親達が着替えを持ってやってくる。

それぞれが顔を合わせると微妙な表情になり、軽く挨拶をする。

一応心配する素振りを見せるが、厄介事を起こした娘達に「迷惑を掛けるな」といった雰囲気がありありと出ていた。


女刑事「扶桑」は母親達、特に萌葱の母親の態度にイライラしている。

何故、抱きしめてやらない!

無事な姿を見て「よかったね」の一言も言わない!

心配していないのか!

私なら抱きしめてキスしまくるのに!


扶桑の様子がおかしい事は誰の目にも明らかで、堪らず班長が「感情的になりすぎだ」と注意をした。


子供たちは、捻挫、打撲、擦過傷、切り傷、精神的な影響等、諸々込で1週間の入院措置が取られる。

警護の都合上、大人用の大部屋に6人全員のベッドが用意されると、子供たちは大喜びをする。


「なんか、移動教室みたいだな!」

「このベッド、電動だよ!面白い!」

その日の内にリモコンが外された。


「入院の間、私達が警護をします。

部屋を出る際には、必ず場所と目的を教えてください。

私達の付き添い無しで、部屋を出る事はぜぇったい禁止です!」

子供たちを立て続けに、逃がしてしまった所轄の婦警達の目が怖いほど真剣で、子供たち大人しく従うことにした。


「ごっはん!ごっはーん!」

日に3度の食事に上機嫌な子供たちを見て、婦警達はやり切れない思いにかられる。

そして、子供たちを見ているうちに、何かしてあげたい気持ちになり、勉強を教えることにした。


嫌がられると思いきや、子供たちは真面目に授業を受けた。


「爺さん、いや、師匠に学びの大切さを教わったからな!」

茜は疑問点があれば、積極的に質問をして、知識を学びとるようになっていった。


4日目、朝食後に「体育」をしたいと提案があった。


「3日も体を動かさないと、体重が気になります。」

蒼の切実な訴えに、二人の婦警の心が激しく揺れた。

そう、この子達は「女の子」なのだ。

自分達が3日間、食っちゃ寝をした時を想像すると鳥肌が立つ。


婦警は若い男の担当医に交渉して、中庭での軽い運動の許可をもぎ取るが、その際の担当医の一言にブチ切れた。


「2,3kg増えたところで、運動すればすぐに痩せますよ。

大げさじゃないですか?」

500g減って、歓喜する女の現実を知らない担当医に、婦警達は殺意を込めた視線を送った。


子供たちは普段着に着替え、中庭の芝生の上で入念にストレッチを行い、桔梗に演武を見せ、教わることができなかった部分を教える。

婦警は子供たちが披露する演武の美しさに見惚れる。

そのせいで、子供たちの敵の接近に気付かなかった。


30代の女性が、声も無く子供たちに近づくと殴ろうとしてかわされる。

更に女が増え、15人が子供たちを取り囲んだ。


「ちょっと貴女達!何をしているんですか!」

婦警の制止を聞かずに、子供たちに暴力を振るおうとするが、ことごとくかわされ、更にヒートアップしていく。

婦警が輪の中に入り、身を挺してボコボコにされていく。

子供たちは婦警を助けるため、女達の腹や胸に掌底で当身を入れると、大げさに叫びながら地面を転げまわった。


「暴行よ!傷害よ!訴えてやる!あんた達、そのガキ共逮捕しなさいよ!」

女達の大声で集まってきた人々に訴えかけるが、婦警の酷い姿を見て呆れかえっていた。


「ねえちゃん、大丈夫か?」

茜がボコられた婦警に声を掛ける。

髪が乱れ、顔のあちこちに引っ掻き傷と、指輪で引っ掻けられたであろう切り傷が見える。


「酷いねぇ、公務執行妨害・暴行罪、児童への暴行罪・傷害罪、虚偽告訴等罪かぁ。20年位行っとくかぁ?」

「あら、私がもう10年加算してあげるわよ!」

背が高く、体格の良い黒スーツの女が二人割って入ってきた。

ほえ?と眺めている子供たちの元へ行くと、夜花子と珊瑚を抱き上げる。

あまりに自然な動きに抵抗が出来なかった二人の顔が強張った。


(ええ?全く動きが読めなかった!この人強い!)

瞬時に二人の強さを悟った夜花子と珊瑚は、大人しくすることに決める。

(悪い人ではなさそうだし。それに妙に落ち着く。)


「誰よアンタたち!急に現れて勝手な事を言うんじゃないわよ!」

「このバッチ見えるかしら。知らないと思うけど「秋霜烈日」といってね。私は検事、今回の事案を担当します。」

「私は子供たちの担当弁護士です。言いたい事は法廷でしっかり聞いてあげるから、まあ覚悟しておいてね。」

女達は検事、弁護士と聞いて我先に逃げ出した。


「婦警さん、お役目ご苦労様です。現場は録画しておいたので後ほど所轄に提出します。

それと、子供たちとお話をしたいのでお時間の都合、よろしくお願いします。」

「承知しました。」

到着した看護師と共に一行は病院内へ向かった。

二人は子供たちと婦警の処置が済むと、売店で子供たちに好きなものを買わせた。

子供たちは揃って大きなソフトクリームを選ぶ。

その後、二人は談話室に赴くと室内のテーブルを軽々と撤去して、椅子を6脚、円形に並べる。

婦警はドアの外と中に分かれて警備を開始する。

子供たちへの事情徴収が始まった。


「なんで6個なの?お姉ちゃん達は座らないの?」

桔梗の疑問に、二人は逃げようとした夜花子と珊瑚を、あっけなく捕まえ、赤ん坊を抱くようすると椅子に腰かけた。


「ちょっとこれはおかしくないです?」

夜花子が長門に苦言を言う。


「あら、ごめんなさい。何故かこれが自然な感じがして。」

そう言うと前を向かせ、乳房に頭を押し当てる。


「降ろしてください。」

「椅子が足りないのよ、我慢してね。」

支える手を外そうとするがビクともしない。

(降ろす気は無いみたい)と思い諦めた。


珊瑚を見ると赤ちゃん抱っこのまま、顔を乳房に押しつけられている。

かなり抵抗したのだろうか、実力行使されたようだ。

陸奥が珊瑚に何か呟くと、頭がコクコクと動き大人しくなった。


「私は検事で「陸奥 啓子」と言います。」

「弁護士「長門 玲」です。」

二人は膝に乗せた夜花子と珊瑚の頭を撫でながら、平然と話し始めた。


今回の事案発生の経緯、爺さんとの関係性、写メ被写体の本人確認、中学生・高校生男子の暴行、傷害の立件、意思確認を淡々と進める。


あらかた、証言の聴取が済み解散の段階で桔梗一人を残し、健司との関係を3人のみで事情聴取を行った。

「ひみつ」の内容を聞きだした二人は、桔梗を抱きしめオイオイと泣き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その頃、別の病院に入院している健司の元へ、黒づくめの女が二人訪れる。

ひとりは刑事「扶桑」、もうひとりは扶桑よりも更に大柄で、発達した筋肉でスーツがパンパンに膨らんでいる。


「日向、殺しは無し、体に傷を付けるのも無しだ。」

「分かってるよ扶桑。」

そう答えると、病室に入っていく。

扶桑は病室の外で見張りを始めた。


「よう、取り調べに来たぜ。」

突然現れた、筋肉の小山のような女に健司の玉が縮み上がった。


「桔梗の母親が何らかの理由で、桔梗を虐待したことは判明している。その理由を教えろ。」

パイプ椅子をガンッと置くと、健司の頭を鷲掴みにして、椅子に座らせた。


「あ、あ、も、黙秘権だ!なにも喋らねぇ!」

「ああ、そうかい!」

日向が獰猛な笑みを浮かべて、手加減しながら額を打ち付けた。


「俺はなぁ、お前みたいな輩をなぁ、自供させるのが得意な仕事をしているんだよぉ。」

並びの良い真っ白な歯を剥き出し、熱い息を吐き掛ける。


「いつまで持つかなぁ?」

日向はネクタイを外すと、健司の体と椅子を縛り付けた。


「ショータイム!」

健司の口にハンカチを詰め込むと、椅子の背もたれを持ち、ガックンガックンと揺らし始める。

健司の首がもげてしまいそうな位、大きく前後に揺れる。


「もががっ!」

堪らず健司が叫び声をあげるが、詰め物で声にならない。

3分ほど思い切り揺さぶると、詰め物を取り聞き直した。


「お前、桔梗に何をした?」

「せ、SEX、しました。」

「もう、一度、言って、みろ。」

「SEXしましたぁぁ!」

「聞こえなかった、なあぁ!」

日向の体の圧が膨張して、シャツのボタンが弾け飛んだ。

ネクタイを引きちぎると、健司の体をベッドに叩きつけた。


「はあぁ!強情な奴にはこれを使わないとなぁ!」

日向はポケットからコーラの空き瓶を取り出した。

浴衣を捲り、パンツを引き下ろすと、肛門に瓶の先端を差し込んだ。


「待ってくれぇ!正直に話しただろう!SEXしたんだようぅ!」

健司は真っ青になって止めるよう懇願する。

しかし、日向に健司の声は届いていなかった。


「お前をよぉ、生きたままミンチにしてよぉ、魚の餌にしてえぇ。でもよぉ、この国は法治国家なんだよぉ。」

涙を流しながら、瓶を少し押し込む。


「今は生かしておいてやる。

お前のした事を全てを包み隠さず証言しろ。

ウソをついたら、これよりもキツイの喰らわしてやる。」

瓶を根本迄一気に押し込んだ。

枕に顔を埋められた健司の声は、おもてに届かない。

白目を剥き、悶絶して気絶した。


肛門から瓶を引き抜くと、タオルで包む。

皮手袋を外して、瓶と一緒にポリ袋に入れる。

室内を、痕跡が残らないように整えると、病室を出て行った。


「よく耐えたな日向。」

「あいつの証言で、桔梗の罪が軽くなるなら殺さない。

但し、判決が下る迄だ。それまでは我慢する。」

扶桑は日向の腰に手を回すと、寄り添い病院を後にした。


公安部特課室。

課長が日課の備品チェックをして、コーラの空き瓶が1本、足りない事に気付く。

持ち出しノートに記載が無い。


「おい、コーラの空き瓶が1本足りないぞ。

知っているやついるか?」

「日向先輩が持っていきました。」

新人の角刈りが答える。


「嫌な予感がするなぁ。」

課長は胃の辺りがキリキリ痛み出すのを感じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


入院から5日目、替えの下着が無くなった。

母親達は見舞いに来ない。

警察から連絡をしても留守電で出ない。


「なあ姉ちゃん、パンツ洗ってきてもいいか?」

聞けば洗面所で洗うという。

困った婦警が班長に電話をすると、買ってよこすと答えがあり、しばらくすると、扶桑と山城が両手にいっぱいの、紙袋を抱えてやって来た。


「あなた達に合わせてみたわ、着てみてちょうだい。」

6人は大喜びで紙袋を受け取った。

中身は下着ばかりでなく、可愛いパジャマとおしゃれな普段着、靴下や靴まで揃っていた。


山城は茜の受け取る手を握り締めて、じっと顔を見つめると涙を一粒流し、にこりと微笑んだ。


「さあ、ママが着せてあげる。」

(このねえちゃんもヤバい女だ!)

茜の警戒をよそに、あっと言う間に全裸に剥かれる。

山城の指が、傷のひとつひとつにそっと触れる度、悲痛な顔になるのを見て、止めさせる気にならなくなり、好きにさせた。


ピンク色のフリルの付いたパンティーとブラジャーを着せられる。

綿のパンツとスポーツブラ以外、初めて女らしい下着を着せられて、恥ずかしい気持ちになる。

お揃いの、フリルの付いたピンク色のパジャマと、靴下を着せてもらい、ブラシで寝ぐせのついたショートヘアを整えられる。


「なんてかわいいのかしら!」

軽々と茜を持ち上げると、赤ちゃんを抱くように抱きかかえた。


「おっぱい吸う?」

「もう赤んぼじゃねーよ!」

山城の豊満な乳房を押し付けられ抵抗するが、内心とてもいい気持ちになった。




いつもの、居酒屋の個室で「チーム雌ゴリラ」の面々が、ソフトドリンクを片手に真剣な顔つきで話あっていた。


「いいか、私達が彼女達と親密でいられるのは、裁判が終了する迄だ。

あまり介入しすぎると、後戻りできなくなる。

このままだと、彼女らの家庭を崩壊させてしまう自信がある。

彼女らが成人するまでは、一切の接触は禁止にしよう。

幸いにも彼女らと私達には格闘技という共通点がある。

必ず道が交わる時が来る、それまでは雌伏の時だ。」

扶桑が涙と鼻水で化粧をぐちゃぐちゃにしながら言い切る。


「仕方ない、よね、エグッ、私らは、法律上、赤の他人、ウワァァン!」

陸奥は最後まで言えずに、机に突っ伏した。


「何でこんなに悲しいの!切ないの!苦しいの!

まるで半身をもがれるような心の痛みは何なの!

元カレとの別れでも、こんな気持ちになった事ないのに!」

山城の心の叫びに皆が大きく頷く。


「たった数日、それも中学生の女の子よ!

こんなに好き、いえ愛してしまうなんて、事案ものじゃない。

成人女子による中学生女子へのストーカーなんて見出しがついたら、あの子らの未来が潰れてしまうわ!」

長門の叫びに皆が悲痛な面持ちになり、項垂れる。


「あんた達、ベイビーと触れ合えたんでしょ!

私と日向はまだ対面させしてないのよ!

このまま、お預けなんて無理!無理なのよー!

きっと、誘拐してしまう!

お願い!私を止めてー!」

普段感情を表に出さない伊勢が、むき出しの本音を叫んでいる。


「伊勢に同意だ。記憶が残らなければいいのだろう。

大丈夫だ。うちにはその手の薬はたくさんある。

なあ、伊勢、共に思いを果たそうか!」

日向は桔梗の件で少し壊れかけている。


「待てー!そんなお前らの為の提案がある。

退院は朝一だ。その日は日曜日だ。

彼女らの母親から、既に許可は取ってある。

一日中、目一杯彼女らを連れ回す。

全力でいちゃつく!

どうだ!いい案だろう!」

言っている扶桑の目から正気が半分失われている。


「でかしたリーダー!」

伊勢と日向が乾杯して一気に中身を飲み干した。


「これから、ベイビーとママのイチャコラ作戦を発動する!」

各自2台目のスマホを取り出し、デートスポットを検索し始める。

1台目のスマホにベイビーの笑顔を映しながら、とっておきの1日にするための会議が始まった。

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