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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第88話 異世界編~Rokka of Revenge~魔法具作成

桔梗の指導で魔法具の作成をするにあたり、機密保持のため鍵の掛かるママ部屋で作業を行うことにした。


ママ部屋は六花部屋より広く、キングサイズのダブルベッドが6つと6人用の大テーブルが置かれていてもまだ余裕がある。

壁には巨大なスクリーンが掛けられていて、これで私達と話しをしてたんだなと思い返し懐かしさがこみ上げてきた。


「ママの匂いがする。」

しばしの間、六花は枕に顔を埋め感慨に耽った。


「では改めて数式魔法の説明をするでち・・・茜ちゃん寝ないでち。」

ベッドで心地よい気持ちになった茜が、カクと船を漕ぐの見て気桔梗が脇をくすぐった。


「本来なら火自体の魔法印を書くと書いたものが燃えるでち。

あたちの魔法印は気力を注入しないと燃えない印にしたでち。

この魔法印を書く時は気力を使うでち。

ここに共通装備の魔法印を一覧表にしたでち。

これを真似して書くでち。

あたちはみんなの個別魔法具の見直しをするでち。」


スクリーンに魔法印が映し出される。

一度書いたら消えないマジックペンで、用意した装備に気力を込めながら魔法印を書き込んでいくだけだが、跳ねや払いの角度を間違えると不発や別の効果を発動する。

間違えてはバツ印で無効化し書き直す。

傍から見ると装備に落書きをしているようにしか見えず、どんどんと落書き増えていく。

思ったより忍耐力と集中力・気力が必要な作業に遅々として作業が進まない。

開発者とはいえ、これらを一発で書き込める才能を改めて再評価する姉妹達であった。


「あ!そうでち!」

何か思いついた桔梗が簡単な魔法印を、時の止まった紙の上に書き込んでいく。

そうして火、水、風、土、熱、冷、光、闇、生、死、時、重力、聖、邪、混沌、数字、矢印、&といった記号魔法印の一覧表を書き上げた。


「これを&で繋ぎ合わせれば簡単でち。」

「すげえ簡単になったな!これならサクサク書けそうだぞ!」

数字印や記号印の使い方や限界値を超えないように注意を促し書き込みが再開し、8時から始まった作業は途中12時から13時の昼休憩を挟み20時に終了した。


出来上がった装備をママ部屋に並べ、部屋を出て鍵を閉める。

気力、体力、集中力を使い切りヘトヘトの状態で食堂を訪れディナーを注文し、何を食べたか分からないまま夕食を済ますと、気力を振り絞り風呂に入り、皆が湯船の中に沈んで大騒ぎとなる。

すっかり体力が回復した六花が覚醒したのは翌日11時を回っていた。


「お目覚めかしら?」

目を開けた萌葱は女医を見ると「おはようございます」と挨拶をする。

室内を見渡すと看護師3名が体温や脈拍の計測を行っていた。


「酷い虚脱状態だったのよ、まるで24時間マラソンをしていたみたいにね。昨晩点滴をしたから疲労感は残っていないと思うけどどうかしら?」

萌葱は起き上がると床に立って体の状態を確かめる。

昨晩のようにふらつきや痺れは感じなかった。


「大丈夫です先生、お世話になりました。」

「若いっていいわね。」

女医はピョンピョン跳ねる萌葱にクスクスと笑いをこぼした。


念のため今日1日は安静にするように診断され、昼食を部屋で済ますことになる。

女医も監視を兼ねて共に昼食を摂ることになり、おしゃべりをしながら異世界の情報を聞くことができた。


「あなた達の時はこちらでわずか数分の間に、あちらで半年以上の時間経過がありましたが、あれは非常に稀なケースでした。

幾度となくあちらと行き来していますが、最長でこちら1日に対してあちら1ヶ月の時間経過でほとんどの場合差異が生じていません。

まるで法則性が無い事から、何者かの意図的な介入が予想されていますが確証はありません。

それと、あなた達があちらに行くことで喜んでいる連中がいるのが癪に障るけど、気が変わることはないのよね?」

六花が力強く頷く姿を見て、せめてまた傷付く事がないように祈った。


昼食後女医と看護師が職場に戻ると、昨日作成した魔法具の確認と桔梗から能力の説明が行われた。


・温度調節可能な無限湧水水筒。

・軽く切れないザイルロープ。

・風が吹いても火が消えないロウソク。

・照射射程が500mに及ぶ電池の切れないLED電灯。

・鉄を切り裂き、刃こぼれしないナイフ。

・軽く頑丈で疲労を軽減する手袋とブーツ。

・エアコン機能・防刀と耐衝撃・対熱、耐寒を備えた元戦闘服。

・遮蔽と障壁機能を備えた元タクティカルベスト。

・通信機能と対ガス・対精神系魔法を装備する元ヘルメット。

・火・風・水魔法噴射装置を装備し、重力操作魔法を付与することで重量軽減効果を持たせた背嚢。


そして特筆すべきは体液(血液、汗、小水)を媒体にした気力電池!

特殊缶に気力を貯め、3回の気力全開出力が可能であり触れているだけで6時間後フル充電が完了する。

また背嚢に装着するだけで移動中も常に充電を行い、各種装備のエネルギーとしての役割を持つ。

特級魔道具が3回使用出来れば敵対するモノの死は確実であり、更に萌葱と珊瑚の個別魔道具や一齧りで1日腹持ちする甘味の携帯食を披露され、皆は興奮のあまり桔梗を胴上げして喜びあった。


個別装備一覧


萌葱 翠青花すいしょうか手足アタッチメント型 気力消費度小

触れた対象を絶対零度で凍結

打撃時に修正モース硬度20に硬質化 ダイヤモンドも砕く


茜 紅雷花くれないらいかアイゼン型 気力消費度中

1千度の熱・1千万ボルトの電気エネルギーのダメージ

シューズからアイゼン型に変更したことで、靴底に10本の爪を追加

目標内部に熱・電気エネルギーを直接放出


珊瑚 紅緋花べにひかチェーンガン型 気力消費度小

エネルギー弾(小)を毎分120発撃ち出す 面制圧支援特化

火、雷、氷、水、聖、邪 射程900m 

貯め撃ちした大出力弾の誘導可能、必中する


夜花子 黒雷花くろらいか三節棍型 気力消費度大

1千万ボルトの電気ダメージとバッドステータスの付与

即死、身体麻痺、思考混乱、筋力低下、毒付与

広範囲の複数対象を標的可能

打撃武器として使用可能 その際の気力消費度小


蒼 天炎花あまえんか放射器型 気力消費度大

1万度の青炎拡散放射 射程100m

収束熱線50万度 射程3000m


桔梗 白菫花しろすみれか杖型 気力消費度大

対象の周囲に障壁を展開 持続時間3分

味方 外部からのあらゆる干渉を遮断、内部からは無干渉

敵 内部からのあらゆる干渉を遮断、外部からは無干渉 


全ての装備の確認を終えると六花は揃って隊長の元を訪れ、明日の早朝出発を告げる。

隊長は六花の顔を一通り見渡すと「了解した」と言い渡し、関連部署へ通達の電話を掛け始めた。


「ご迷惑をおかけします。お忙しいところ失礼しました。」

六花が詫びを告げると隊長は片手を上げて応える。

揃って頭を下げた後、静かに隊長室を後にした。


駐屯地から出ると寒気で体が縮こまる。

気力電池注水の為に貯め込んでいる膀胱がキュッと締め上がった。


「うわっ、ちびりそう!」

珊瑚が別荘へ走り出すと追いかけるように皆が走り出す。

夜空は澄みきり満天の星々が笑うかのように煌めいていた。


特殊缶を持って浴室に駆け込む六花の膀胱は限界に達している。

先に入浴していた女性隊員達が、特殊缶を持って入ってきた六花に奇異の目を向けた。


「皆さん!失礼します!」

萌葱の突然の宣言に全員の目が集まる中で、我慢し続けた小水の特殊缶への注水作業を行なわれる。

特殊缶から伸びたホースの先のカップを股間に当て、勢いよく小水を放出する光景に隊員達は言葉を失った。


「限界迄貯めたんだけどな!こんなもんか?!」

缶側面のゲージが1/3辺り300mlで止まっている。

茜が唇を突き出し悔しそうにぼやいた。


「満タンにしたいけど今日は無理ね。」

蒼はカップ部分をシャワーで洗い流し始めた。


「そうだ!おねえさんたちに協力ちて貰うでち!」

桔梗は湯船に浸かり奇異な目で見ていた女性隊員に協力を願い出た。


「お願いでち!おちっこを分けてくだしゃい!」

桔梗が隊員達に向かって頭を下げ懇願する姿を見て、みんなが並んで同じように頭を下げ懇願する。

最初嫌そうに拒否していた女性隊員達であったが、何度も頭を下げ懇願する真剣な態度に心を動かされた。


「おしっこをあげるのはいいけど理由を教えてちょうだい。」

至極当たり前な質問に六花は頭を悩ませた。


「どうする?説明しても信じて貰えないよね。」

「この際だから気力を幾つか見せちゃおうよ。」

「その方が手っ取り早いか・・・どうする萌葱?」

夜花子の問い掛けに珊瑚が答え、蒼が判断を萌葱に託した。


「よし!飛ぼう!」

「そうこなくちゃな!」

萌葱の回答に茜が早速反応し宙に浮かび上がった。


「?!」

隊員の頭上に?!が浮かんでいるのが目に見えるような表情に変わる。

呆気に取られている隊員達に蒼の説明が始まる。

中々信じて貰えない事から気弾で水柱を上げると、一瞬パニック状態に陥り騒然とした空気に包まれた。


「私達が使っているのは気功なんです!

特訓をしてここまで扱えるようになりましたが、すぐにエネルギー切れを起こしてしまいます。

そこで気を貯める電池が必要となりました。

それがこれなんです。

そして充電材としておしっこが必要なんです。

明日、私達は異世界に行きます。

生きて帰るのにどうしても必要なんです。

協力してください!お願いします!」

再度皆で頭を下げて懇願した。


「隊長から話しを聞いていたけど本当なのね。」

隊員の1人が立ち上がり六花の元に歩み寄った。


「気功というものがよく分からないけど、無事生還する目的があるのなら協力させて貰うわ。

これにおしっこをすればいいのね。」

隊員はカップを股間に当てて放尿をはじめた。


「ありがとうございます!」

「お風呂場でおしっこするなんて小学生以来ね。

なんかクセになりそう。」

顔を赤らめた隊員が小悪魔のような笑みを浮かべた。


「私も協力するわ。」

1人の隊員が切っ掛けで次々と協力者が現れ、全ての気力電池が小水で満たされた。


「おしっこする時の音って色々なんだな!」

シャー、ジョロロ、ブシュー、チョー。

妙な事に関心を持つ茜に全員から笑いが起こる。

六花は隊員達に無事生還を約束し浴場を後にした。


「みんな電池を抱きちめてねんねするでち、おやすみでち。」

六花は我が子を抱きしめる母のごとく、電池を抱きしめて眠りに落ちた。

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