第87話 異世界編~Rokka of Revenge~思い出の土地巡り
早朝、バルコニーから飛び立った六花は野天温泉を目指す。
最初のうちは10分程度の飛行時間が2日で1時間に伸びた。
5分程の飛行時間で目的地に到着すると早速温泉に浸かる。
早朝故に動物の姿は見えず貸し切り状態であった。
湯に浸かり外気で体を冷やしを繰り返すこと2時間もすると、猿や鹿の姿がちらほらと見え始める。
空腹を覚え、昨晩作ったお弁当を広げた時にE.T.が現れた。
「E.T.元気だったか!」
茜は全裸のままE.T.に抱き着き、鼻面に頬を擦り付けるとE.T.も茜の顔を舐め回した。
「久しぶりのドライブだ!行くぞE.T.!」
野菜を与えられすっかりやる気モードになったE.T.は、茜が背に乗り角を掴んだことを感じると、一鳴きして林の中に駆けこんだ。
「茜ってどこでも生きていけそうだよね。」
珊瑚はそう言ってからタコさんウィンナーを頬張った。
「動物と意思疎通できるとか特殊能力だよね。」
玉子焼きを飲み込み夜花子が呟いた。
「野生動物はノミとかダニがたくさん寄生してるのに大丈夫なのか。」
3個目のおにぎりの具がシーチキンマヨで喜ぶ蒼。
「無敵のドラゴン体質だから感染症は心配ないと思うけど。
血液を直接摂取したらこの世界の生物は即死するしね。」
水筒から温かいお茶を注ぎずずっと啜る萌葱。
「でもきっとかいくなるでち。蚊に刺されてかいくなったでち。」
外れオニギリを頬張った桔梗は口から火を吹きそうなほど咳き込むと、萌葱からお茶を受け取りグビグビと飲み干した。
六花を遠巻きに見ていた鹿の群れから5頭が近づいてくる。
以前六花を乗せてくれた鹿達であろう。
彼女らが背嚢から大量の生野菜を取り出し雪上にばら撒くと、その他の鹿も近づいてきて生野菜を食べ始める。
それから30分ほどしてE.T.に跨った茜が帰ってくると、E.T.諸共そのまま温泉に飛び込み、茜だけがスィーと泳ぎながら近づいてきた。
「お帰り茜、どこか痒いところはない?」
「ないぞ!それより面白いもの見せてやる!」
萌葱の前に近づくと後ろを向きお尻突き出して見せる。
「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁー!」
萌葱の天に届きそうな絶叫で周辺木々に積もった雪が崩れ落ちた。
「どうした!萌葱!」
珊瑚が慌てて側に寄り、茜を見た途端に全身に鳥肌を立てて硬直する。
茜の股間に小指大のダニがびっしりと群がっていた。
2人の異変に夜花子、蒼、桔梗が集まり、茜の股間を見て絶叫した。
「心配いらねえよ!膜を張ってるから噛まれてねーよ!」
「それにしたって悪趣味すぎるわよ!」
サブイボを立てた夜花子が気絶した桔梗を抱きかかえ批難し、蒼は咄嗟に後方へ5m飛び退いた。
「仕方ないじゃん!E.T.が痒いっていうから助けてやったんだよ!」
「ダメダメダメ!それは犯罪行為!すぐにどっかにやってぇぇー!」
蒼が腕を突き出し気を貯め始めた。
「ちぇっ!何だよ折角こいつらと話しができて集めたのに!」
そう言うと温泉の湧きだしに向かい腰を落とすと60℃以上の湯温に当てられ、あっという間に死滅した。
「あんたとうとう虫とも意思疎通できるようになったわけ?」
「んー、ちょっと違うな、オレの方が美味いぞって念じたら寄ってきたんだ!食い意地の張った奴らだな!」
「さいですか、もうあんな事しないでよ。寿命が縮むわ。」
「分ったよ。」
蒼は腕を擦りながら茜の特殊能力の活用方法を考えはじめた。
そろそろ店の開店時間になる頃、六花は温泉から上がり動物達に別れを告げ空を飛び街へ向かう。
登山用品店で必要な装備を一式購入して、六花のクレジットカードで支払いを済ませようとした時、珊瑚から待ったが掛かった。
「今回は私用だから公費で清算するわけにいかないでしょう?」
ピッと黒いカードを取り出すと店員に差し出し、「これでお願いします」と告げる。
ギョッとした表情でカードを見る店員が恐る恐るカードリーダーを差し出した。
「珊瑚あれってブラックカードとかいうやつでしょう。
セレブじゃなきゃ持てないカードを何であんたが持ってるのよ?」
店を出ると早速蒼の追求が始まった。
「詳しい話はさスィーツバイキングでしない?
もちろん私持ちでさ。」
「賛成!」
全員が即賛成を唱えた。
「私がパパ活してた頃、投資に詳しいパパがいてね。
色々と儲け方を教えて貰ってお小遣いを投資してたのよ。
でも色々あって投資活動が厳しくなってきてさ。
そのパパに手数料を支払う条件で運用を依頼したのね。
その時にこのカードを渡されたの。
さて問題です!
私の口座に現在いくら残高があるでしょう?!」
珊瑚がフォークに突き刺したイチゴを皆に突き出しウィンクした。
萌葱「170万円!」
茜「175万円!」
夜花子「185万円!」
蒼「150万円!」
桔梗「42円!」
六花は一応国家公務員として月給を支給されていて、手取り50万円が個人の口座に振り込まれている。
9月から支給開始が始まり現在3回目の給与が振り込まれ、最大で150万円の残高だが、桔梗を除き自分の口座残高に30万円程度を上乗せした額で珊瑚の残高を予想した。
ゆえに自分の残高をそのまま答えたであろう桔梗に全員の視線が集まる。
そして5人は互いに目を合わせると頷いた。
「では、仕切り直します。桔梗、後でよく話し合いをしましょう。」
珊瑚はコホンと咳払いをするとチッチッチッと指を振り手招きをする。
寄せあった頭の耳元で「9650万円」と囁いた。
「ぶほぉ!」
一斉に吹き出し、スマホに表示された残高を見せられゴツンと頭をぶつけあった。
「真面目なパパで良かったわ。
まあそれなりの手数料を取られてるけどね。
私の残高の話はこれで終了ね。
さてと桔梗、あんたの残高42円って何?」
突然話しを振られた桔梗はピエッと驚き身を竦めた。
「アタチこの世界にある魔法の勉強をちたくて、魔導書をいっぱい集めようと思ったでち。
それで色んな国のネットオークションで入札ちたでち。
そちたらお金いっぱい使ったでち。」
意外な返答に皆が驚きの表情になった。
「それで本物はあったの?」
萌葱が少し興奮して成果を聞いてきた。
「えーっとね、エイボンの書、黄衣の王、ネクロノミコン、セラエノ断章、ナコト写本、無名祭祀書、ルルイエ異本でち。
どれも魔力を通さないと読めないから本物だと思うでち。」
「それであれだけの魔法を生み出したのね凄いわ桔梗!」
萌葱が感激して抱き着き頭を撫でまわす傍らで、蒼は怪訝な表情を浮かべ魔導書に関する記憶を探った。
「えへへ、うれちいでち。
アタチ異世界でもいっぱい魔導書を集めてこの世界、いや宇宙の真理を探究し究極の知識と叡智を手に入れるのだ。
そう、いずれ全次元が我の前に平伏すのだ。
とても楽しみだわい。」
話しを続ける桔梗の瞳が金色に輝き爺のしわがれた声に変わる。
異変を察した皆が本能的に桔梗に抱き着いた。
「桔梗!聞こえる!帰ってきなさい!桔梗!」
全員の呼びかけに、金色に輝く桔梗の瞳が元の深い菫色に変わる。
「はれ?みんなどうちたでち?」
元に戻った桔梗に全員が安堵の息を漏らす。
「多分だけど魔導書は意図的に桔梗の元に集まっているわ。
この世界で魔導書を完全に読み解けるのは桔梗だけ。
あれらは元々読むと気が狂う禁書だったはず。
魔導書は衰弱した桔梗の精神を乗っ取ろうとしている。
異世界から戻ったら処分しましょう。
桔梗が桔梗で無くなってしまうわ。」
蒼の説得の意味がよく理解できないながらも桔梗は黙って頷いた。
その後、街をブラブラと探索し記憶にある空手道場やショッピングモールを訪れる。
ゲームセンターのUFOキャッチャーで荒稼ぎをして、後をつけ回す5人のJCに全て譲渡すると大喜びされた挙句に姐さん呼ばわりされる。
すっかり気を良くした珊瑚はJCを連れて、呪文ラーメン屋に向かった。
「いいか、遠慮するな!好きなものを好きなだけ食え!私の驕りだ!」
狂喜乱舞するJCはオールマシマシを注文し六花もそれに倣った。
「グェプッ!姐さんありあとしゃー!」
腹をパンパンに膨らませたJCが礼を述べ、互いを支えながら去っていくのを見送る六花。
到底食べきれないであろうと思われたが、「3日分喰うぞ!」「今日だけでも満腹感を味わうんだ!」「一度食べたかったんだ!」「次はいつ食べれるんだろう」と、それぞれが悲壮感一杯で山盛りのラーメンを食べ尽くした。
「ちょっと前の私達だよね、今の環境に感謝!」
蒼が手を合わせて何気に空を見上げると、皆が倣って空を見上げた。
「時刻は15時、そろそろ帰りましょう。」
萌葱の号令で一斉に空に飛び上がる。
振り向いたJC達は六花が空を飛んでいく光景を目撃し呆然と立ち尽くした。
別荘の少し手前で着地すると徒歩で駐屯地へ向かう。
異世界入国の際には例外無く自衛隊で正式採用された迷彩服を着用する決まりがあり、それを受け取るために寄り道をする。
駐屯地入口が女性隊員ばかりで理由を聞くと、男性隊員が全員下痢でトイレで立てこもりや、少し離れた場所で携帯トイレを持って苦しんでいるのだと聞いた。
装備課窓口で迷彩服とタクティカルベスト、ヘルメット、ブーツ、通信機を受け取るとサインを書き別荘に向かう。
往路は雪かきがしてあり快適な状態で歩行ができる。
玄関前の祠でしばし手を合わせると2階の部屋に直行した。
「あちた持ち物全部に魔法印を刻むでち。」
桔梗から予定を聞いた後、揃って疲れた体を横たえると心地よい眠気に見舞われ何時の間にか寝息を立てていた。
目を覚ますと19時を回っている。
のそのそと起き出し1階の食堂に顔を出すと、7名の女性隊員がコーヒーを飲みながら風呂の時間を待っていた。
「あなた達が六花ね、噂を聞いて話しをしたかったと思っていたの。」
夕食を食べ終えたタイミングで女性隊員に話しかけられ、一緒の入浴の提案を承諾をすると浴場へ向かった。
「お肌がピチピチね、羨ましいわ。」
浴槽で萌葱の二の腕をモミモミしながら20代後半の隊員が溜息をつく。
「お姉さんこそ体の線が綺麗で凄いと思います。」
萌葱のお世辞に気を良くした隊員の口が軽くなる。
萌葱はここぞとばかりに異世界について情報を聞き出した。
獣人メスに逆レイプされた男性隊員達が「もう人間の女に戻れない」と言い、現地から帰ってこようとしない。
繁殖期の終わったメスに捨てられたオスとデキてしまった女性隊員。
VIO脱毛が獣人に大人気。
五虎将が相当に強く派遣部隊の護衛の要になり、彼らの活躍で反乱軍が大人しくなった。
そして何と現地妻を娶った。
戍亥家族があちらに住居を構え、ほぼ帰ってこない。
などなどあまり役立つ情報は得られなかったが、懐かしい人々の話は六花の心をとても和ませ、女性隊員達との繋がりもできた。
「ねえ、男達からあなた達絡みで水鉄砲というワードを聞くけど何?」
その質問に六花の表情が渋くなる。
「やっぱり見られてたか〜」と蒼が漏らすと顔を半分湯に沈め、ブクブクと息を吐いた。
「実際に見せますね。」
珊瑚がお尻をプカリと浮かばせると膣鉄砲を披露した。
「ええっ?!」
女性隊員達が揃って驚愕の声を上げる。
珊瑚が膣鉄砲の経緯を話すと困惑した表情に変わった。
「つまりソレをあいつらは見てたわけね!許せん!」
「そんなに怒らないでください。
そもそも私達が時間オーバーしたのが原因です。
それに看板を立てていなかったし。
あれは事故なんです。」
夜花子の説明で少し怒りが収まると、次第に同情の声が上がり始めた。
「あなた達は傷ついてないの?
男達に裸を見られた挙句に膣鉄砲を見られたんでしょう?
私はカウンセラーだから話しを聞くわよ?」
「特になんにも!見られて減るもんじゃねーし!」
茜の発言に六花はウンウンと頷いた。
「強いのねあなた達、今時のJKはそんな感じなのかしら?」
「あたち達はかなーり特殊だと思うでち。
ふつうのJKと比べるのは無意味でち。」
桔梗の発言にまたしても六花がウンウンと頷いた。
「分かったわ、ところで膣鉄砲は妊活に有効なのよね!
私にやり方教えてくれないかな?そろそろ子供が欲しいけどなかなか出来ないの!お願い!」
30代前半の隊員が手を合わせて頼み込んでくると、珊瑚がニカッと笑い「喜んで!」と返答する。
その後時間ギリギリ迄膣鉄砲の講習が行われ、女性隊員達から感謝と大絶賛の評価を得た。




