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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第81話 学園編㉝ 学園祭狂騒曲 2日目 その4

慌てて理事長室に飛び込んできた六花を見て、四具祖は大いに狼狽しナイラーに助けを求める。

気を失いピクリともしない4人を見て、ナイラーは階下の病院に連絡を取り至急入院の手配を済ませ、四具祖は気絶している4人を一度に抱え上げエレベーターに乗り込んだ。


あらゆる精密検査の結果、身体に異常は無くただ眠っているだけと診断され、一同はホッと息を漏らした。


試作品ちさくひんはちょっと失敗ちっぱいでちた。」

1時間程して覚醒した4人はチャクラを回して気力を回復し、今は普段通りに会話をすることが可能となった。


私達わたちたち気力まりょくを貯めるやり方をらないです。

試作品ちさくひんの魔法具はたくさん気力まりょくを使うでち。

だから1回の使用ちようで全部の気力まりょくを吸い取られるでち。

それで精神虚脱になって気絶ちたでち。」

お昼を食べ損ねた六花は病室でうな重をたべながら、魔法具について桔梗から説明をされていた。


「茜ちゃんが装備ちたのは「紅雷花くれないらいか」でち。

1千度くらいの熱を帯びた1千万ボルトの電気エネルギーのダメージを対象たいちょうに与えるでち。」

「すげぇ!これ人間に使ったら蒸発するな!」

茜がシューズを手に取り頬ずりしている。

かなり気に入った様子である。


「夜花子ちゃんの杖は「黒雷花」でち。

1千万ボルトの電気ダメージにバッドステータスを付与するでち。

えーと、即死、身体麻痺、思考混乱、筋力低下、毒でち。

あと広範囲の複数対象も標的にするでち。」

「雑魚なら一掃できるレベルね、気に入ったわ!」

夜花子がうっとりと杖を撫でまわしている。


「蒼ちゃんの杖は「天炎花あまえんか」でち。

1万度の青炎でなんでも燃やすでち。

収束が可能で熱線にちたり拡散ちたりできるでち。

熱線にすると50万度になって「薙ぎ払え!」ができるでち!」

「それって巨〇兵とかシン・ゴ〇ラみたいなアレ?」

桔梗がブンブンと頷くのを見て、蒼は妄想を始め目付きが少々悪くなっていた。


「わたちのは「白菫花しろすみれか」でち。

対象たいちょう周囲ちゅうい障壁ちょうへきを展開ちて、守ったり閉じ込めたりちます。

守りの場合、外からのあらゆる攻撃を遮断ちて、中からやりたい放題でち。

閉じ込めた場合、中からのあらゆる攻撃を遮断ちて外からはやりたい放題でち!」

珊瑚「えげつないね!」

蒼「桔梗こわー!」

茜「怒らせたらいけない女NO1だな!」

夜花子「JSで大人の男タコ殴りだもんね!」

萌葱「でもこれで異世界リベンジ問題無し!」

全員「桔梗!あんたは偉い!最高の姉妹よ!」

皆は桔梗に抱き着いて思い思いの愛情表現を贈った。


「ところでいつの間にそれだけの魔法具を作ったの?」

昨日今日で作れるとは思えない性能に萌葱は疑問を持った。


「お昼ご飯を届けに行った時作ったでち。」

「えっ!?」

素っ頓狂な声を上げて皆が固まった。


「あたちの数式魔法は書き込むだけで発動するでち。

杖の元はお風呂のデッキブラシを使ったでち。

シューズは茜ちゃんの長靴を使ったでち。」

「でも、形がなんか魔法具って感じでそんな風に見えないけど。」

夜花子が杖を撫でまわしながら確認している。


「それも数式魔法でち、それっぽい形にモーフィングするように書き込んだでち。

追加で色々と書き込めば更にパワーアップすると思うでち。」

「ほえー!」

皆は桔梗の天才ぶりを改めて認識した。


その頃、四具祖とナイラーは座敷の様子を写した防犯カメラを確認するが、邪神と化した飯郡の姿を見ることがなかった。


「確かにかなり大きな何者かと戦っているようですね。」

「それにしても凄いな、動きが倍速で再生されているようじゃ。

光がビカビカしているがあれが魔法なんじゃな。」

ナイラーと四具祖は画面を凝視しながら感嘆の息を漏らす。

映像は終始、六花の姿しか映されておらず事情知らない者が見れば、何らかのパフォーマンスに見えることだろう。

それだけ六花の動きは洗練され美しくもあった。


2日目の午後、大見世でのイベントは中止され切見世のみが続けられる。

大見世での爆発音は原因不明で片づけられ、中止にされた経緯の説明を求める男達が警備員に激しく詰め寄る場面もあったが、頭領達と四具祖の介入で表面上沈静化した。


男達は鬱憤を晴らすかのように切見世を訪れ、金に飽かせて遊女を弄ぶ。

切見世の監視カメラがその一部始終を監視している事も知らずに。

令嬢達と体調の回復した六花はすぐに帰宅するように、四具祖から指示が出て彼女らは大人しく従った。


閉会後、大人だけの反省会が静かに行われる。

中央に6つの大画面モニターを配置した周りに、各財閥頭領、執事長、メイド長各5名、四具祖、ナイラー、茜音が円陣を組み着座している。

四具祖は情報を秘匿することなく、監視カメラの映像を全て公開した。


「まずは今回の騒動の発端は、飯郡いぐ みずちが九条 美奈を拉致監禁した事から始まる。

六花の証言では、飯郡 蛟が邪神と呼ばれる者であり、九条 美奈を「食そう」としていたところを助け出し、それに激怒した飯郡が本性を現し館内で大きな蛇に変化して戦闘になったそうだ。

結果として六花が勝利し、九条 美奈は儂が保護をしておる。

あと、九条 美奈は白痴化しており、直ぐに事情聴取はできない事を付け加える。

では、映像を頼む。」

六花と見えない敵との戦闘に各々が違った反応を見せ、特に盛り上がったのが執事長達であった。


「状況からして萌葱殿は囮か、しかし茜殿の体が幾つにも見えるのは画質のせいか?それとも老眼のせいか?」

甲賀がピントを合わせようと目を細めた。


「茜殿に奥義を伝授した。」

伊賀がボソッと呟くと4人の執事長が一斉に伊賀を見て、直ぐに画面に目を戻す。


「今は目を離せぬ、後ほどゆっくりと事情を聞かせて貰おうか。」

柳生の発言に甲賀、風魔、真田が頷いた。


光の障壁が立ち上り、黒い稲妻が走り、青い炎が何者かを焼く様子が流れると、皆が絶句する。

口々に「魔法」と呟き5分ほど沈黙が続いた。


「四具祖よ、これは何かの特撮映像もしくは合成映像なのか?」

西園寺が「そうだと言ってくれ」と言わんばかりに額に眉を寄せていた。


「期待に応えられそうにないな、全て本物の映像だ。」

この場でウソの映像を流す意味は全く無いことは全員承知している。


「この映像を見た正直な感想を述べてくれ。」

四具祖はそう言った後、威嚇にも似た気合を放出する。


「待たれよ!」

執事長が即座に対応しようと立ち上がりかけた時、伊集院頭領から声が上がった。


「四具祖殿、これが全て真実であると証明していただきたい。

確かに映像では確認した、しかし私は実物をこの目で見ない限り納得できないのだ。

想像でしかない魔法が本当に存在するならば、この国への国益は計り知れないものになろう。

だから私を納得させて欲しい、よろしく頼む!」

他の頭領達も同意見であろうことは、表情を見れば一目瞭然であった。


「承知した、善処しよう。」

四具祖の言葉に一応の安堵を得た頭領達はまた別の事を考えはじめた。


「さて、次の映像を頼む。」

映像は切見世での出来事をそれぞれ六分割したものであった。


「ふむ、顔がよく視認できるな交渉材料にうってつけだ。」

京極頭領がにんまりと笑みをこぼした。


「ああ、早送りにして構わんぞ、こ奴らの行為を見る気はない。」

女性と行為する映像が流されると財前頭領がうんざりした顔になった。


「この女性達は学園の生徒なのか?

ちっととうが立っているように見えるが?」

「全て父兄参加している女性ですね。

皆、優秀なATMを捕まえるのに必死なご様子でした。」

綾小路頭領の質問に茜音がサラッと答えると、他のメイド長から忍び笑いが聞こえた。


「たとえ素行不良であっても学生ならば改善する余地はある。

今後は良き女性になるための教育も徹底して行う。」

四具祖がそう宣言すると皆が拍手で称えた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


夕食は皆で食べようという事になり、先程まで仮眠していた狼牙と薄葉が居間に来ると、直ぐに珊瑚と茜が運んできた皿を2人の前に置いた。


「じゃーん!ガーリックソースとガーリックスライスマシマシの特製ビーフステーキです!」

「滋養強壮、スタミナモリモリだな!」

厚さ3cnはありそうな牛肉の上にガーリックスライスが万遍なく盛られ、卸したニンニクたっぷりの醤油ベースのソースが、熱せられた鉄皿でジュウジュウと音を立て、焦げた醤油とニンニクの香ばしい匂いを放つ。

狼牙は頬を引きつらせ、薄葉はニコニコの笑顔で皿を見つめた。


「いただきまーす!」

六花とお糸の皿は肉の厚さは同じだが、ニンニク控えめでごく普通のビーフステーキだった。


「え!?同じの食べたら明日、口を開けなくなっちゃうよ。」

ニンニクの量の違いを尋ねると萌葱から当たり前の答えが返ってくる。


「狼牙は明日も部屋ごもりなんだから気にしなくていいのに。」

「いやいや夜花子、明日は君らのコンサートだろ。」

「ただのプチライブだからいいよ、本番に見に来てくれれば。

それより妊娠期間は限定だからそっちが大事!」

そう言われてぐうの音も出ない狼牙。


「ちゃんとビデオ見せるから安心して子作りに励んでね。」

「あかちゃんだっこちたいでち、がんばれぇ!」

蒼と桔梗の応援に狼牙は小さく「はい」と答え、血の滴る肉に猛然と食らいついた。


深夜、珊瑚の携帯がブーブーと震え着信を告げる。

無視をするが一向に鳴りやまないバイブレーションに悪態をつきながら電話に出た。


「こんな時間になに?」

「ごめんなさい、どうしても珊瑚の声が聴きたくて。」

「あっそ、要件を手短に話して。知ってるはずだけど明日早いの。」

「ねえ珊瑚。あの子と、その、個人レッスンしてるの本当なの?」

「そうだよ、凄いやる気があるからね。」

「なんで?私とは絶対してくれないじゃない!」

「あんたはもう出来上がってるから必要ないよ。」

「そんな!まだまだダメだよ!私も珊瑚とレッスンしたい!」

「あんたは自信を持っていいよ、素質あるんだからさ。」

「やだ!私もレッスンする!」

「いい加減にして明日早いっていってるでしょう。」

「やだやだやだ!見捨てないで!」

「見捨てるって何?私はあんたのマネージャーじゃないよ。」

「珊瑚はあの子が好きなんでしょう?!だから乗り換える気ね!」

「えーっと、私、あんた以外の子とお付き合いないよ。」

「ウソよ!私に隠れてあの子と2人きりで会ってるじゃない!」

「だからレッスンでしょう、何もないよ。」

「もう寝たの?あの子の方が可愛い?正直に言って!」

「だから何にも無いってば。」

「騙されないわよ、私、聞いたのあの子から直接。

珊瑚がとても真剣で優しくしてくれるって!とても気持ちが良いって!

お願い!本当の事を言って!珊瑚が他の子を好きになってもいいの!

ただ私にウソをつかないで欲しいの!

お願いよ!珊瑚!」

いつ果てるとも知れない会話が延々と続く。

襖の外の廊下では萌葱、夜花子が聞き耳を立てていた。


萌葱「痴話げんかだね。」

夜花子「珊瑚の口調を聞くに相手は女の子みたいね。」

萌葱「レッスンとか言ってたからAKBFメンバーだね。」

夜花子「そしてメンヘラが入ってるぽい、経験者だから分かる。」

結局電話が終了したのは明け方4時を少し過ぎた頃だった。


眠れなくなった珊瑚がトイレに行こうと襖を引くと、聞き耳を立てていた2人が部屋の中に倒れ込んでくる。

共に体を寄せ合い暖をとりながら眠っていた。


珊瑚は2人を跨ぎトイレを済ますと布団を掛け、間に無理やり体を潜り込ませる。

すると、むにゃむにゃ言いながら2人が抱き着いてきた。


少々狭苦しいが姉妹の温もりの心地よさに珊瑚は直ぐに寝息をたてていた。

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