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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第80話 学園編㉜ 学園祭狂騒曲 2日目 その3

裏口からテント内に入ると、ウナギを焼くなんとも食欲をそそる匂いが充満している。

萌葱はグーグーと鳴るお腹を押さえながら控え室に向かった。


「萌葱おかえりなさい!」

着物を脱ぎ肌襦袢姿の財前 康子が飛びついてくる。

六花に影響されたのか令嬢達は感情を隠すことなく表現するようになっていた。


「蒼と桔梗はもう出た?」

「うん、お弁当が出来たから5分くらい前に出たわ。」

以前のつっけんどんな態度から考えられないほど、康子がベタベタと張り付いてチュッチュッと頬に口付けをしてくる。

財前メイド達はそんな康子を複雑な表情で見ていた。


「私、座敷を見てくるからお利口さんにして待っててね。」

「うん!」

素直に返事をすると唇を突き出すおねだりに応え控室を後にした。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


うな重を持った2人はすぐさま、おウチに向かって全速力で移動し10分も掛からず到着した。


「入りますよ。」

声を掛けるが応答が無い。

そっと狼牙の部屋に入ると案の定2人は重なりあって眠っていた。


「わお、入れたまま寝てるよ。今度私もして貰おう。」

「これはお母ちゃんの技でちね、凄いでち。」

薄葉の女陰がフニャフニャになった男根を、ガッカリと咥えこんで離そうとない。

2人は薄葉にこの技を教えて貰おうと心に誓った。


うな重をテーブルに置いた後、2人は自室に向かう。

蒼は遮蔽ベストを桔梗は魔法記録帳を取りに。


「えーと、どこにあるでちか?」

桔梗の部屋はいわゆる汚部屋である。

狼牙や姉妹から、生ごみやお菓子の空き袋などを放置することを固く禁じられ、以前に体罰(主にイキ狂い)を科せられたため、その類のごみは直ぐに1階の大ゴミバケツに捨てるようにした。


部屋を汚部屋化しているものは大量の衣類とノートや紙切れである。

洗濯した後の下着や衣類を畳まず部屋の隅に放置する。

数式魔法を開発してから時間さえあればノートやコピー紙、時にはチラシの裏にも書き留めている。

その中で成功した数式魔法を記録帳に書き写し管理していた。


「ここでもないでち。」

うず高く積まれたノートや紙の塔を崩して、更に部屋の中がカオス状態になり、とうとう蒼に泣きついた。


「たちけて!蒼ちゃん!」

蒼は桔梗の部屋の状態を見て頭を抱えた。


何とか記録帳を発掘し玄関を出る寸前に桔梗は何を思ったのか、下駄箱から茜の長靴を持ち出す。

絨毯の上で長靴に魔法印を書き込む桔梗を蒼は気付いていなかった。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「様子はどう?」

「おかえり、動きはないよ。」

「昼食の用意してるよ、お腹が空いたー」

夜花子と珊瑚も萌葱同様お腹のムシを盛大に鳴らしてた。


「あれ、うな重だよね。」

今にもヨダレが零れ落ちそうな珊瑚。


「この匂いでうな重でなければ詐欺よ。」

早く控室に戻りたい夜花子。

そして萌葱は胃酸過多で痛くなった胃を押さえていた。


(なんてことでしょう!ウナギですと!

長い生き物は同族食いになります!禁忌です!禁忌!

どうして人間はカエルや、それこそ食人を行わないのですかね!

あれほど美味いものはないというのに。

さて、そろそろ毒の効果も薄まっている頃でしょう。

私は美奈さんを戴くとしましょうかね。)

飯郡はお手洗いと告げ、席から離れた。


飯郡がお手洗いの方向に歩いていくのを3人が気配を消して尾行する。

お手洗いを通り過ぎ空いている個室にひとり入っていった。


「なんでひとりで入っていくん?」

「中で女が待っているとか?」

珊瑚と夜花子推理している最中、萌葱は剥き出しの梁を見ていた。


「あそこから天井裏に忍び込もう。」

そう言うと一跳びで梁に飛び上がると珊瑚と夜花子も後に続いた。


飯郡は部屋に入ると空間収納から美奈の髪を掴み、叩きつけるように引きずり出す。

ギャッと声を上げる美奈を足で踏みつけ顔を近づけた。


「失礼いたしました。

すこーし嫌な思いをして八つ当たりをしてしまいました。

時に美奈さんはウナギはお好きですか?」

思考停止している美奈は言われるがまま「はい」と答えた。


「はあ、美奈さんもですか。

どうしてウナギを蒲焼などと残酷な食べ方ができるのでしょうね。

生きたまま首を釘付けにして体を開き火で炙る。

あなたはその苦痛を想像したことがありますか?」

涙を流しながら語る飯郡の姿に、美奈のSAN値がごりごりと削り取られていく。

やがて美奈の目から輝きが消え口元から涎が流れ落ち、フヒヒと力無い笑い声が漏れ始めた。


「おや、いけない、いけない、どうやら壊れてしまいましたね。

これでは恐怖に怯える声が聴けないではありませんか。

失敗ですね、そうそうに食べてしまうとしましょう。」

服を脱ぎシワにならないように丁寧に畳むと、美奈の両二の腕を掴んで持ち上げる。

二対の膨張した性器を美奈に差し込むと上下に激しく振り始めた。


「反応が無いのが興ざめですが、美味しく頂くためです。」

意志を失った美奈の体は反応だけで穴から体液を漏らし続ける。


「上がってきました!いきます!いきます!」

正に絶頂に達しようとしたその時、天井を突き破った3つの気弾が飯郡の頭部を捕らえ美奈を手放す。

股間から性器が抜けた瞬間、射精された液が仰向けに倒れた飯郡の顔に降り注ぎ、顔を融解させていった。


「セルフ顔射一丁上がり!」

天井から飛び降りた珊瑚が捨てセリフを吐くと、萌葱と一緒に追撃の気弾連射を打ち込む。

夜花子は美奈を担ぎ上げると襖をぶち抜いて廊下に踊り出た。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


やり手メイド達が淡々と客に重箱を配膳して回る。

男達は期待を込めて蓋を開いて愕然とした。


「おいババア!これはウナギじゃねえ!サンマじゃねーか!」

中年のやり手メイドが「それが何か?」と言わんばかりの表情で首を傾げると、更に男が激高する。

やり手メイドが何もなかったように作業に戻ろうとすると、男が立ち上がり腕を掴もうとした時、見えない何かに腕を掴まれねじ伏せられる。

やり手はやれやれといった顔でパンフレットを開き、食事メニューを男が見えるようにした。


「こちらをご覧ください」

昼食は「うなぎ蒲焼風重さんま」とさんまの文字が小さく書かれていたが、「詐欺だ!」と男の怒りは収まらない。

その時、個室部屋の方から爆発音が聞こえてきた。


この時の男達の動きはとても素早いもので、履物を取らずにあっという間に外へ逃げ出していく。

戒めを解かれた男も躊躇なく外へ逃げていった。


常日頃危ない橋を渡り続ける彼らにとって保身は第一優先事項であり、危険を察知する能力はネズミに匹敵している。

それほどの危険が身に迫っていると感じていた。


「おねえさん方、至急避難してください!ここは戦場になります!」

透明ベストを脱いだ蒼が避難を指示すると、メイド達は脇目も振らず主人達の元へ駆けていった。


「やっべ、やっべ、やっべ!すげえ怒ってる!」

「フィニッシュ邪魔されてセルフ顔射なんて誰でも怒るわ!」

珊瑚と夜花子は軽口を叩いているが邪神に気圧されていた。


「このまま座敷で状況開始するよ!

夜花子はそのお姉さんを理事長に預けてきて!

多分桔梗が魔法の用意をしていると思う!

魔法がなきゃ全滅だよ!責任重大よろしく!

珊瑚!キツイけどなんとか生き残る!チャクラ全開で補佐して!」

「ラジャー!!」

座敷に飛び込むと夜花子はそのまま玄関を走り抜けていく。

萌葱は中央に陣取り、珊瑚が壁際まで下がると呼吸を整え、チャクラを全開で回し始めた。


本性を現した邪神イグの姿はそのアンバランスで醜悪な形態から人心を不安に貶める。

体色は死人のように白く、赤みやくすみが全く無い。

体は人間サイズでありそこから5m伸びた首が、畳み2枚分はありそうな菱形の鎌頭を支えている。

更に背中から直径1.5mはありそうな尻尾が10m以上は伸びている。

首の形状は威嚇するキングコブラを連想させ、大きな2本の牙がはみ出していた。


「コムスメども、ショクジのジャマ、ユルさん!

オマエラはイきたままショウカしてやる!

ナガいクツウをアジわうがよい。」

大口を開けて威嚇するイグに背筋の震えを感じた萌葱は、自分を鼓舞するために両頬をパンッ!と叩き、相手の観察を始めた。


自らの溶解液で鎌顔の右半面から湯気が立ち上っている。

萌葱は左に全力で移動し死角に入ると気弾を連射するが、見えているかのように回避されると鎌首が大口を開けて迫ってきた。


「?!」

萌葱はバックステップで辛うじて口に飲み込まれるのを避ける。

目の前でバクン!と閉じられた音に髪の毛が逆立った。


「甘いですね、蛇にはピット器官という物がありましてね。

体温でどこにいるかが分かるんですよ。」

「教えてくれてありがとう!」

突然なにもない空間から白い粉煙が噴き出し鎌首を覆った。


「萌葱!効果あるかわかんないけど時間稼ぎ!」

「蒼?!姿が見えないけど!」

「これは存在を消すベスト、見えないじゃなくて匂いも熱も音も遮蔽するの。」

紛煙を出し切った消火器が勢いよく投げつけられ、鎌首にヒットするとギャア!と声を上げて仰け反った。


無防備な喉元に萌葱の高圧縮された気弾が放たれると表皮と肉の一部が弾け飛び、漆黒の血が流れ落ちる。

続けざまに蒼が傷口に気弾を打ち込み傷口を拡げるものの、直ぐに再生が始まった。


傷付けられた怒りで萌葱にヘイトが向けられ、熾烈な鎌首の攻撃がはじまる。

蒼の気弾には目もくれずに、萌葱を飲み込もうと集中するイグに、珊瑚に焦りが生まれ思わず気弾を放とうとするが、萌葱から「まだ」と制止の声が上がる。

回避に全力を注ぐが次第に体のあちこちに打ち身と擦過傷が増えた。


「シン・稲妻キィーックッ!」

茜の声が聞こえると萌葱が一瞬立ち止まる。

イグは好機と見るや大口を開けて萌葱に襲い掛かる。

もはや回避が不可能と思われた時、深紅の雷光を放った9人の茜の蹴りが鎌首を捉えると、一瞬で爆散し血肉を周りに撒き散らす。

萌葱達は障壁を張り降りかかる血肉を防いだ。


「珊瑚今よ!切り開いて!」

「ガッテン!萌葱!」

極限まで圧縮した超高圧の気円が放たれ、イグの体を背骨に沿って切り開く。


「仕上げイクでち!」

桔梗が杖を掲げるとイグを覆うように障壁が展開される。


「夜花子ちゃん!やっちゃって!」

杖を掲げると漆黒の稲妻がイグの全身を覆い、再生しようとしていた肉の動きが止まり、もうもうと水蒸気が立ち上る。


「蒼ちゃん!トドメでち!」

いつの間にか桔梗と夜花子の脇に移動した蒼が杖を掲げると、青白い炎が放たれ肉を燃やし尽くし、消し炭だけが残った。


「やった?」

萌葱が近づき、ブスブスと煙が立ち上る消し炭が再生しないことを確認すると、皆に勝利のVサインを送った。


「勝ったぞー!」

宣言を聞いた途端、珊瑚、夜花子、蒼、桔梗がバタリと倒れた。


「ええー?!」

萌葱と珊瑚が慌てて駆け寄り、皆を担ぎ上げると理事長室に向かう。

すると、ひとけの無くなった座敷で消し炭の中から白いミミズが這い出してきた。


「酷い目に会いました、まさか蒲焼にされるとは。

神を蒲焼にするなど、なんて罰当たりな小娘達でしょう。

いずれ特大の神罰を与えてやりましょう。

さて、完全復活まで3年といったところでしょうか。

またカエルやネズミを食べなくてはならないとは。」

ミミズ大になったイグはブツブツと呟きながら排水口を目指した。


「見つけました!デース!

声の主はにょろにょろとゆっくりと畳みを這っているイグを見つけ、ひょいと摘まみ上げ口に頬張ると、そのまま飲み込んでしまった。


「蛇の踊り食いは癖になりまーす!お腹の中で必死に暴れてまーす!」

グネグネと動いていたが1分ほどで動きが止まった。


「ダーリン、出番ですよー!」

空間が割れ、光輝く大きな手が現れると何かを掴む仕草をする。

するとイグを飲み込んだ人物諸共、座敷部屋にある邪神の痕跡が血液一滴残さず消失した。

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