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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第76話 学園編㉙ 学園祭狂騒曲 1日目 その9

意外にもどの客も素直に帰路につき、10分もすると特設テント内は関係者とその家族のみになっていた。


「ええっ!康稔お兄様と会った!彼女が出来た!」

萌葱から康稔の話を聞いた康子の声が裏返った。


「何?康稔がどうかしたのか?」

財前頭領をはじめ各頭領が、康子の声を聞いて興味津々で近づいてくる。


「なんと、そのような変装をして潜り込んでおったのか!

どうりで見つからんわけだ。」

財前頭領は康稔に大見世に顔を出すように要請していたが、拒否されたため部下に見つけ次第、引っ張ってくるように命じていた。


「普段の真面目なお兄様からは想像もできません、見てみたかったわ。」

康子は本当に悔しそうに呟いた。


「それで萌葱ちゃん、その女の子はどういう子なんだい?」

財前頭領が珍しく不安げな顔で問いかけてきた。


「心配ありません。今時処女という倫理観、生涯ひとりの男と決める貞操観、そして私の親友です。

正美の危機には必ず私が駆けつけます。」

財前頭領は破顔一笑して「よくやった康稔!」と叫んだ。


その後、残った者の報告会と反省会が始まる。

メンバーは六花、大夫令嬢、忘八頭領、弾左衛門、やり手、ナイラー、薄葉、お糸。

座卓には作り立ての料理が並び、まずは腹ごしらえをすることとなった。


「ずっと気になってたんだけどこの厚焼き玉子、狼牙の味付けだよな!」

「ご名答でありんす。旦那様は厨房で料理をしてやすよ。」

「やっぱりそうか!ぜってー狼牙だと思った!」

茜はご機嫌で厚焼き玉子を次々と胃袋に納めていく。


「あの、時折お話に出てくる狼牙さんですけど、まだ一度もお目に掛かったことがありません。

よろしかったら紹介していただけませんか?」

寿子の発言で六花の箸がピタリと止まる。

六花は互いに顔を見合わせると、「作戦会議」と部屋の隅っこに身を寄せ、ヒソヒソと話し始めた。


「狼牙に会わせて騒動が起きないと思う人挙手。」

珊瑚の問いかけに誰も手を上げない。


「だよね、一時期貴公子で大騒ぎしたじゃない。」

萌葱は教室での大騒ぎを思い出しイヤそうな顔をした。


「写メだけであの騒ぎでち。本物見たらどうなるか怖いでち。」

「でもさ、侑加は桔梗にぞっこんよね。

寿子は茜LOVEだし、理恵子と恵三子はカップルでしょう。

警戒するのは康子くらいだと思う、会わせてもいいんじゃないかしら。」

「甘いわよ萌葱。本能を甘く見ちゃだめ。」

蒼はちっちっちっと指を振り、認識の甘さを指摘した。


「狼牙には普通の男にないパッシブスキルが幾つかあるの。

一つ目は容姿、完全ではない不完全さが人目を惹きつけるわ。

二つ目は声、あの声には女性を惹きつける周波数があるわ。

三つ目は匂い、あの体臭は女性特攻の媚薬作用があるわ。

最期は雰囲気、女性に安心感と幸福感を与えるわ。」

蒼のこれ以上はない観察眼と分析力に皆が驚き同時に呆れかえった。


「もしかして狼牙って女に対して無敵?なのか?」

「かもね、でもさ長く一緒にいると慣れるよね。」

「初見殺しだな!」

「でも女って初見殺しされるとしばらくラリから覚めないからね。」

茜と夜花子の意見に皆がウンウンと頷いた。


「お前さん達も大概女でありんすね。

そんなに自分に自信がありんせんのでありんすか。

我が娘でありながらなんと情けないことでありんしょう。」

「お母さん!!!!!!」

六花全員が驚きはもった。


「お前さん達はわちき含めて旦那様の正妻でありんすよ。

旦那様なら上手いことあしらってみせてくれんす。

それに旦那様が女にモテてなんの不都合がありんすか?

少しゅうらいの女遊びは大目にみてあげるのが女の甲斐性でありんす。

どんと構えていればいいのでありんすよ。」

薄葉の意見に反論はできない。

全員一致で狼牙を披露することに決めた。


「ではみなさんに紹介します、私達の将来の夫の狼牙です。」

「みなさん初めまして、紹介にあずかりました狼牙です。」

厨房着姿の狼牙が皆の前に現れると様々な反応があった。


令嬢達は狼牙の容姿と声に魂を抜かれ、一瞬にして惚けた顔になる。

侑加も例外ではなく、狼牙が桔梗を抱いたという事実を知り、激しい嫉妬と羨望の感情が渦巻いていた。


(桔梗を貫いたアレで私も貫いて欲しい!)

そう思ったのは侑加だけでなく、令嬢全員が自分の想い人を愛した男に、自分も愛されたいと切に思った。


「うわぁ、みんなピンク色になってるでち。」

「初見殺しが決まったね。」

桔梗と夜花子は口を半開きにし、瞳をハート型に変え、盛りのついた雌犬のようなオーラを発する令嬢達を見て呟いた。


そして狼牙を見て激しく感情を揺さぶられた集団が他にもいた。

弾左衛門に扮した執事長の面々であった。


伊賀は狼牙の顔を見て涙を流している。

甲賀、柳生、風魔、真田は蘇った死人でも見たような顔であった。


甲賀「伊賀よ、彼奴が生きていたことを隠しておったか?」

伊賀「甲賀よ、儂も知らなんだ。本当に知らなんだ。」

柳生「いや、確かに死んだであろう。儂は死体を確認した。」

風魔「そうであろう柳生よ、確かに彼奴は死んだ。」

真田「ではあそこに立っているのは何だ?風魔よ!」

伊賀「真田よ落ち着け、彼が死んだのは20年前。

どう見ても20代前半にしか見えんであろう?」

甲賀「なれば彼奴の息子か!なんと生き写しにもほどがある!」

風魔「もう一度ヤるか。」

真田「バカを申せ、彼に罪は無い!」

柳生「それにお嬢様のご友人の夫であるぞ。」

伊賀「皆よ、儂らの妻を寝取った極悪人はもう殺したんだ。

ここは怒りをグッと飲み込み耐えてくれ。

彼に罪は無い、彼は別人なのだ。

愛するお嬢様のためにもよろしく頼む!」

執事長は顔色を変えずに読唇術で会話を続けている。

そして、伊賀の説得で一応の落ち着きを取り戻した。


「なんか様子が変だぞ!爺ちゃん達凄い殺気を放ってたな!」

「なんであんなに激おこなの?わけわかめ。」

茜と珊瑚は狼牙に放たれた殺気に、思わず臨戦態勢を取っていた。


そして、女といえばやり手も狼牙に心動かされていた。


「あらあらあらあら、いい男!」

「久しく乾いていた膣が潤いを取り戻したわ。」

「あっ、閉経してるはずなのに排卵したわ!」

「どうしよう胸の鼓動が、不整脈じゃないわよね。」

「血圧が上がるー!低血圧症なのにー!」

「四具祖様と違って華奢だけど、しなやかな若木のようだわ。

私は彼の養分になれるかしら。」

当の四具祖に聞こえていないことが幸いであった。


「やっぱり狼牙は全ての女にとって劇物なんだよ。」

「うむ、完全に同意だね。」

萌葱と蒼は枯れ木が一瞬で花を咲かせた光景を見て、女の業をまざまざと見せつけられていた。


「取り敢えずお披露目できたから、狼牙はお仕事頑張ってね!」

「えっ?俺はもう」

「いいから早くお仕事に戻って!」

萌葱は狼牙の言葉を遮り厨房に押し戻した。


「かわいらしいこと、本物の女になるのはまだまだ先でありんすね。」

薄葉はふうと息を吐き娘達の背中を見送った。


「さて、報告を聞くかね。」

全員が席に戻り四具祖の合図で報告会が始まった。


「警備担当のナイラーです、以後よろしくお願いします。

初日の違反行為等による検挙はありませんでした。

数名ゲートを強行突破しようとした者がいましたが、問題なく排除しております。」

「まあ、お前に任せておけばそうそう間違いは起こるまいて。

ご苦労であった、明日もよろしく頼む。」

四具祖がナイラーを労うと、ほんの少しナイラーの表情が緩んだ。


「実は初日の客はこちらであらかじめ厳選した者ばかりでな。

将来の日本を背負って立つと判断した者達じゃ。

なので品行方正な者ばかりでな、だが明日は違うぞ。

逆にこの国に害なすと判断した者が集まる。

心して当たってくれ。」

四具祖の発言に皆の顔が引き締まる。


「それとな六花や、明日のサービスは不必要じゃ。

適当にあしらってやってくれ。

くれぐれも男喰い競争はやらんでくれ。

儂の寿命が縮んでしまうわい。」

「はーい。」

六花の合唱で四具祖はホッとした表情に戻った。


「茜音や本日のカップル成立は何組あるかの?」

「はい、それでは報告させていただきます。」

茜音の報告で意外にも成立数が少ないことが判明した。


「明確なカップル成立は財前 康稔様と波多野 正美様、九条 隆司様と宝来 朋果様の二組ですね、西園寺 宗近様と蒼さんはカウントしますか?」

「ノーカンでお願いします。」

即座に返答する蒼に西園寺頭首がガッカリとした表情に変わった。


「そこをなんとか希望を持たせてやってくれんかの?」

「ダメです、私は狼牙の妻になります。重婚は法律違反です。」

ダメだしされて西園寺頭首はすっかりしょげてしまう。


「法律の改正を試みませんか?一夫多妻とか一妻多夫制を可能にするような法律を作るんですよ。」

寿子の提案に一同がハッとした。


「そうすれば私も茜と同じ旦那様の妻になれますわ!

お兄様も蒼の夫になることができますし兄妹ともにWIN WINです!」

頭首達はそれも「アリ」だなと互いに意見を統一した。


「結婚しない、できない男女が多い現状を打破する起爆材になるやもしれん。ひとつ総理に掛け合ってみるとするか。」

頭首達はやる気満々で活気づいたところで、四具祖から本日の報告会終了が宣言された。


帰り際、頭首達が薄葉の連絡先を求めるが「わちきは幽霊でありんす、申し訳ありんせん。」と答え、姿を消したことで一騒動が起きた。


「また機会があれば連れてきます。」

萌葱の回答に何とか収まりはしたものの、薄葉邸に行けばいつでも会えるということが露呈してしまった。


「狼牙様と同居されているのですよね?!」

令嬢達の喰いつきが生半可なものでない事も不安の種として残った。


「あれ、ウチに押しかけてくるぞ!カツ丼かけてもいいぞ!」

「そんな分かり切ったことで賭けになると思ってんの?」

茜の発言を蒼がばっさりと切り捨てた。


財閥ファミリーをエレベーターで見送り、残った六花と四具祖、ナイラー、そしてデイバッグを担いだ狼牙が合流する。

魔法の絨毯を広げ六花と狼牙が乗り込むとフワリと浮かび上がる。


「みんな気を付けて帰るんじゃぞ!落ちるなよ!」

ニシシと笑う茜の笑顔が空間に溶けて見えなくなる。


「爺ちゃん、姉ちゃん、また明日な!お休み!」

声がどんどんと遠ざかっていくことで、ここから去っていった事を理解する四具祖であった。

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