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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第50話 学園編⑪ 茜、権力の怖さを知る

「ええ!相手は多湖先生!」

珊瑚が驚きのあまり奇妙なポーズをしている。


蒼「ちょっと!担任とHってそれ不味くない!」

茜「だから!絶対他の人に話すなよ!空爺ちゃんが知ったら物理的に抹殺するぞ!マジだかんな!」

夜花子「そもそもどういう経緯でそうなった?」

茜は矢吹の浮気と顛末について話を始めた。


萌葱「そっかー。体の相性は大事だよね。でもさ、それなら別れてからしろって話だよね。」

珊瑚「そう!まさにそれよ!何が「心はあなたにある」よ!潔くない!結局遊ばれてポイされるのが分かっていたから、多湖先生をキープしてただけじゃん!」

桔梗「ふたりにいっぱい愛されて、いいなー。あたちもいっぱいの人に愛されたいなー。」

茜「それは違うぞ桔梗!あれは愛された行為じゃなかったぞ!オモチャにされてただけだ!ただの都合のいい女だ!」

蒼「矢吹先生のことはもういいよ。茜の事聞きたい。」

夜花子「どちらから誘ったんだ?」

茜「オレがチューして、チンポの大きさ確認するって言った。」

萌葱「ああ、矢吹先生にちっさい言われたから。」

蒼「で、どうだった?Mサイズ使ってたから普通だと思うけど。」

茜が思い出しながら手で大きさを表現する。

そして、あっと閃いた顔をした。


茜「トイレットペーパーの芯位だな!」

蒼「日本人の標準サイズか。」

茜「オレには丁度いいくらいだったぞ。密着感が心地良かった。狼牙のは入りきらないから、あの感覚は新鮮だった!」

萌葱「密着感?」

茜「マンコにチンポがすっぽり収まって、ギューをされると隙間なく肌が密着するんだ!ふたつの体がひとつになった感覚になるぞ!」

珊瑚「ああ、それ分るわ。不思議と相手の体重とか汗とか気にならなくなるよね。なんか全部が自分と同化した多幸感に包まれるのよ。」

夜花子「それで何回したの?」

茜「4回だ!」

萌葱「あれ?1回で満足しちゃうんじゃなかった?」

茜「多湖先生もかなり反省してたぞ!元々体力はあるからな、色々試して興奮させてみた!」

桔梗「なになに?なにちたの?」

茜「乳首、アナル、前立腺、尿道を責めてみた!あとは尻を叩いた!」

蒼「なにSM入ってるじゃん。そんなものいつ覚えたの?」

茜「その日にネットで調べた!多湖先生は痛みに耐性があるみたいだ!すっげえ喜んでた!」

夜花子「あー、性癖が歪んだかもしれないね。」

蒼「NTR、慰めックス、ロリ・M属性覚醒かぁ。人生ハードモード突入だな。」

茜「ロリってなんだ!薄いけどちゃんと生えてるぞ!訂正を要求する!」


その晩、皆が就寝したのは午前3時を過ぎていた。

翌朝、3回目のモーニングコールが優しいイケボから怒りイケボに変わり、慌てて跳び起きた六花だった。




学園専用エレベーターホールでは、エレベーター待ちをする生徒達で溢れかえっている。

エレベーターラッシュは毎朝見る光景であるが、その日は幾分様子が違っていた。


「お願い!私を捨てないで!もうあなたしかいないのよおぉー!」

女の絶叫がホール全体に響き渡る。

茜は女の声が矢吹である事を知り、人混みを掻き分け声の元を辿る。

多湖の足元に縋る矢吹を見て、「早いな」と呟いた。


「もう捨てられちゃったかぁ。」

追いついてきた蒼が「あらま」といった表情になる。


「やめてください、生徒達が見ています。話は上でしましょう。」

多湖が矢吹の腕を掴み立ち上げようとするが、腕を振り払って生徒達に訴えかけるように話を始める。


「皆さん聞いてください!私は多湖先生と婚約しています!ですが昨日、ひとりの生徒の策略で一方的に破棄をされてしまいました!」

鬼気迫った訴えに生徒達の足が止まる。


「その生徒は、あたかも私が浮気をしているような写真を捏造して、多湖に見せて別れるように仕向けたのです!」

舞台女優ばりの演技で自らの不幸を語る姿に、一部の生徒達から「酷い」と声が上がる。


珊瑚「悪知恵の働く奴だけど、後先考えられないのかね。」

蒼「こんな醜態晒して、この学園にいられると思っているのか?」

夜花子「いや、それが目的かもな。全て失ったから、ひとりでも多く巻き込みたいんだろう。」

萌葱「茜、気を落ち着けて私の後にいて。殺気が漏れてるわよ。」

桔梗「茜ちゃん、あたちとギューちよ。」

目が座った茜を抱きしめ萌葱の背後に隠れる桔梗。

自然と茜の周りを取り囲むように六花が動いた。

六花は茜を守るために動いたのではなく、キレた茜の動きを止めるために周囲を囲った。

当の茜は今にもブチ切れそうな顔で、LINEでメッセージのやり取りをしていた。


「なんて卑劣な手段で、私の多湖を奪おうとするのでしょうか?いるのは分かっています!1-Fの朱殷 茜、出てきなさい!すぐに謝罪をしなさい!そうすれば今回の事は子供の悪戯として許してあげます。」

「やめなさい!矢吹先生!これは私とあなたの個人的な問題だ!朱殷は関係ない!みんなもすぐに教室に行きなさい!」

「何てことなの!あなたは私との関係を破滅に導く生徒を庇いだてするの?!もしかしてあなたと朱殷 茜が共謀しているの?!あなたと朱殷 茜はできているの?!」

騒ぎを聞きつけてきた職員がエレベーターから降りてきて、2人を確保しようと取り囲み、その中に、南雲と蓮田の姿が見える。


「ポコ!」

着信したメッセージを読み、ニチャァと音がするような笑顔を浮かべ、MP3データの再生ボタンを押した。


天井スピーカーから女の嬌声が大音量で流れる。

それは、茜が録音しておいた、矢吹と南雲・蓮田の3P行為の一部始終であった。

行為の最中に3人の名前が頻繁に出ては、卑猥な言葉が羅列され、淫音が生々しさを伝える。

矢吹は呆然としてその場に座り込んだ。

南雲と蓮田は「嘘だ」「でたらめ」だと叫びまわる。


「いい加減にせんか!見苦しいわ!多湖、矢吹、南雲、蓮田!貴様らは儂が直々に事情聴取を行う!着いてこい!」

突然現れた理事長は、混乱の場に一喝して騒ぎを収めると、4人を連れて理事長室に戻っていった。




生徒達の前で醜態を晒し、行為現場の音声を聞かれた罪は大きかった。

一部保護者に知られることになり、批難の声が殺到する中、関係者への厳重な罰則が与えられる事は否めない。

結果、理事長、校長の監督者の義務不履行で、報酬の一部返還。

矢吹、南雲、蓮田の懲戒免職、多湖に退職勧奨が即日下された。


「空爺ちゃん!多湖先生は被害者だぞ!なんで辞めさせようとするんだ!」

「茜ちゃん、仕方ないんじゃ。多湖の立場はよく理解している。儂も辞めさせたくはない。しかしな、この学園の特殊性は分かるじゃろ。あの3人が辞めることで不利益を被る者がいる。どちらか片方をマイナスという訳にはいかんのじゃ。」

「じゃあ、多湖先生は生贄ってわけか?!」

「そうとも取れる。それに多湖は茜ちゃんを守りたかったんじゃ。」

理事長は多湖におぶさる茜の写真を見せた。

茜はヒュッと息を吸い込んだ。


「儂にこれ以上言わせんでくれ。頼む、茜ちゃん。」

がっくりと肩を落とし、フラフラと歩く茜を六花が取り囲む。

「わあぁぁぁ」力無い泣き声が聞こえてくる。

いたたまれなくなった四具祖が、ナイラーの胸に頭を預ける。

ナイラーは面倒くさそうに頭を撫ではじめた。




茜が体調不良を理由に学園を休んで3日目の朝、山城が100ℓ超えのスーツケースを持ってやって来た。


「狼牙くん!茜はどこ!」

「3号室だけど、えらく急に来たね。」

「当たり前でしょ!今までに無いくらい傷心の娘を放っておく母親がいますか!茜ぇぇぇぇ!」

叫びながら2階に駆けあがっていった。


部屋の前に立ち、一応ノックするだけの理性を残していた山城だが、一向に返事が無いことで、最悪の可能性を想像してしまう。


「茜!入るわよ!」

引手に手を掛けようとした時、襖が開かれ茜が立っていた。


「茜ぇぇぇぇ!」

ガシッとしがみ付くと頬ずりをして、顔中にキスをしまくる。


「話は聞いたわ!大丈夫よ!ママが来たからね!」

「・・・ママ。」

無表情だった茜の顔がクシャクシャになり、大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。山城は茜を胸に抱き、気の済むまで泣かせた。


居間で茜に乳房を吸わせる山城、狼牙、薄葉、お糸が顔合わせを済ませ、お土産の鹿肉と熊の燻製を肴に酒を飲み交わしていた。


「本当にこうして見ていると乳飲み児のように穏やかでありんすね。

普段の茜とは大分違いんす。本物の親子のようでありんすね。

ちょっと羨ましゅうござりんすね。」

「薄葉さん、子供たちがお世話になっております。

狼牙くん1人に任すのは不安があったんですけど、あなたが一緒なら安心できますわ。」

山城は薄葉に対して正直不安があったが、酒を飲み交わしていくうちに母性溢れる人格者だと知り安堵した。


「今回の件は子供には少し荷が重すぎんした。

男女の一番ドロドロとした感情と良かれと信じた行動が裏目に出ちまい、大切な人を失う辛さは大人の身でも耐えがたいものがありんす。

わっちも軽率であったと反省しておりんす。茜、許しておくんなんし。」

「薄葉かーちゃん、もういいよ。オレも考えなしだった。

でもさ学園の特殊性を知れたのは収穫だった。

あそこは怖いとこだと知ったから。」

茜は乳首から口を離し、乳房に頭を預けて前を向くと、山城がすかさず茜の頭を撫ではじめた。


「そうよ、権力の中枢にいる人達を見くびってはダメよ。

いくら茜が強くても必ず弱点を見つけ出し、腕力で敵わない方法で脅しをかけてくるの。私も苦労したわ。」

「ママ、オレ学園に親友を作った。西園寺と財前。

伊賀爺ちゃんに卒業までって約束した。不味いかな?」

伊賀の名を聞いた狼牙の表情が一瞬険しくなる。


「共に大財閥よね。あまり深く係り合いを持たれたくなかったけど、仕方ないわね。伊賀さんと知り合いになったの?」

「うん!爺ちゃんに奥義「影分身」を教えてもらった!爺ちゃん継承できたって言って喜んでた!」

ガタンとテーブルが揺れ、足をぶつけながら狼牙が身を乗り出した。


「茜、じじいが「継承」と言ったのか?確かだな?」

「うん、その後西園寺家を頼むとか言ってたな。そういえばやたらと狼牙のこと気にしてたぞ、知り合いか?」

「し、知らん!俺は夕飯の支度をする。何が食べたい?」

「カツ丼!」

「分かった!カツはカツでも三色カツ丼だ!」

茜は飛び上がって喜んだ。


「狼牙くん、そのままでいいから話をきいてね。」

調理場で、土産の鹿肉と熊肉の下ごしらえをしている狼牙に山城が話かける。


「伊賀は茜を継承者として認めたということで正解かしら?」

「多分な。長いこと「影分身」を継承した話を聞いてない。」

「厄介ごとになりそうかしら?」

「そうかもな。あそこも一枚岩じゃない。」

「でも首領の権限は絶対よね。」

「だから面倒くさい。最悪茜の争奪が始まる。下手すりゃ殺される。」

「そんな事は私がさせないけどね。」

「茜が西園寺の親友でいる限りは大事は発生しないと思う。」

「また厄介ごとかぁ。狼牙くんの時もたいへんだったなあ。」

「感謝してるよ。」

「そう思うなら今夜は久しぶりに楽しませてね。」

「はい、はい。」

山城は言質を取ると、居間に戻り再び酒杯を空けた。

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