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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第45話 学園編⑥ 契約と大人たちの思惑

その後、紆余曲折があり、それぞれの放課後活動が決まる。

萌葱と桔梗は月曜日から金曜日の放課後に茶道部の部活動を行う。

スカウトされた件について、まずは土曜日にAKBF劇場に行き、指差と面談と形ばかりのオーディションをおこない、翌日の日曜日に木荒の事務所を訪問することに決まった。


夜花子と蒼は演劇部入部を決め、木荒との契約が決まれば付き添いとして蒼が同行すると決める。

夜花子の土日祝については特に決めていない。


珊瑚はAKBF参入を固く信じていて、部活動を行わずに毎日AKBFで活動すると豪語している。


そして、茜は剣道部入部を決めた。

「決闘」の一件以来、西園寺の纏わり付きが激しくなり、学園内にいる間は常に茜を視界に入れておかねば、情緒不安体となる。

そこで、筆頭執事の伊賀に懇願され、就学中「親友」となる事を決めた。

部活動も多湖に説得されたのもあるが、「地球一」というパワーワードに魅力を感じたことも告げる。


「帰る時はどうするのさ?」

「気絶させてメイド達に預ける。」

珊瑚の疑問にあっけらかんと答える茜。


「それは、精神がいずれ壊れないか。」

「しらん。気絶させていいって言ったのは伊賀だぞ。」

「たいへんだね。」

珊瑚と話をしながら素振り用の木刀(40cm、3kg)を、ブンブンと振り降ろす茜の姿が少し大きく見えた。




「さあ、振り付けと歌を覚えるのよ!3日間しかないからね!ビシバシいくよ!付いて来れなくても連れていくからね!」

土曜日まで珊瑚の萌葱・桔梗の猛特訓が始まった。


「いい!人に見られることでやる気が出て上手くなるの!21時から23時まで路上ライブやるよ!」

そう言うと2人の手を引き外出するのを見て、茜、夜花子、蒼も着いて行く。人通りの多い道に面した公園に到着すると、ラジカセを置いてAKBF33のヒット曲を流し、自ら踊り始めた。


「萌葱、桔梗!見てないで一緒に踊って!拳法の舞踏だと思えば楽勝でしょう!はい!右足、左足、ステップはこうよ!」

珊瑚の熱心な指導で、ぎこちなかった2人の動きが徐々に様になってくると、見学していた茜、夜花子、蒼もステップを踏み始めた。


「珊瑚は前からAKBF33が好きだったけど、ガチもんだったんだな!」

「茜もよく珊瑚と踊ってたじゃない?ファンじゃなかったの?」

「ちげーよ!珊瑚の踊りが好きで付き合ってただけだ!」

茜のダンスがほぼ珊瑚の踊りとシンクロし始めるのを見て、夜花子も「負けられぬ!」と妙な対抗心を燃やし始めた。


結局のところ、6人が横一列になりダンスを始める。

足を止め6人のダンスを見入る通行人が増えてくる。

塾帰りの小学生、中学生から手拍子と歓声が聞こえ始める。

23時には公園が見物人で埋め尽くされ、拍手と歓声で終わりを迎える。

この様子を映した写メや動画がSNSにUPされると、翌日から更に大勢の見物人が公園に訪れた。


そして、珊瑚が待ちに待った土曜日。

3人は珊瑚の策略で、あえて制服でAKBF劇場に赴く。

劇場受付で名刺を提示すると、すぐに指差が現れた。


「ありがとう!よく来てくれたわね!萌葱ちゃん、桔梗ちゃん、そして珊瑚ちゃん!あなた達の動画を見たわ!とても素晴らしいパフォーマンスだったわよ!あなた達にAKBFの魂が受け継がれているわ!「ファンに身近なアイドル」をこんなにも表現してくれる存在は他にはいない!私、感動したわ!茜ちゃん、夜花子ちゃん、蒼ちゃんにも是非AKBFに参入するように伝えて欲しい!あなた達なら覇権を獲れる!私はあなた達と世界を獲りたい!」

開口一番、一気に自分の思いのたけを喋り切ると、ゼイゼイと息切れした指差が3人に抱き着いて、ワーワーと泣き始めた。


土・日曜日はAKBF33特別研修生として、指差指導で活動を行う事が決まり、研修生との目通りが行われる。

練習場に入ると30人ばかりの少女が、踊りの練習を行っていた。


「今日から特別研修生として参加する、萌葱さん、桔梗さん、そして珊瑚さんです。仲良くしろとは言いません。お互い自分の持てる力の全てをぶつけあって切磋琢磨して、AKBFの為に成長してください。」

研修生の厳しい目が3人に向けられるのを見て、指差は震えあがり興奮した表情になった。


「いいわぁ!嫉妬、羨望、憎しみ、対抗心を感じる!ああ、もうイキそう!ああん!」

三人は顔を紅潮させ身悶える指差を見て、若干引いた。


「さあ、レッスン開始!三人ともフォーメーションに入って!あなた達の実力を見せつけてあげて!」

三人が最後尾に立つと曲が流れ始める。

この日、研修生全員に敗北を認めさせたダンスが始まった。




翌日、木荒の写真モデル契約に蒼が付き添う。

蒼はこの日の為にと2人に手作りの衣装を用意した。


「今日は都会に咲いた無垢な白花と情熱の赤花をイメージしたの!」

無垢な白花ドレスはフリルをふんだんに使用したロリィタファッション。

情熱の赤花ドレスはリボンで体に纏う炎をイメージしたボディコンワンピース。

ネイルは珊瑚が衣装に負けないように頑張り、メイクは萌葱が自身と桔梗、蒼に施すことにした。


「蒼はスーツなのね。」

「蒼ちゃん、カッコイイ!」

「なんかさ最近急に背丈が伸びてきてさ、持ってた服のサイズが合わないのよ。成長期といっても異常よね。どうしたんだろ。」

蒼は演劇部から借りて来た地味目なスーツ(サテンの黒地でラベル・カラー、袖口に金の刺繍)に袖を通して姿を確認する。

身長170cm超えの綾小路のスーツを少しばかり手直した(主に胸囲部分)がよく似合っていた。


「蒼、私がメイクしてあげる。」

萌葱が男装の麗人をイメージしてメイクを施すと、蒼が殊のほか気に入ってしまい、このまま外出することにした。


「2人の美姫と貴人といった絵面だな。」

出掛けに玄関で狼牙に写真を撮ってもらい、3人は木荒の事務所に向う。

秋葉原の事務所に向かう電車内で写メられるが、SNSにUPされることはなかった。


事務所を訪れた3人は木荒を見て間違えたかと思い、名刺の住所を見返したが、「あれは変装」と笑いながら室内に案内をしてくれた。


「あの格好は僕のカメラマンとしての原点だからね。時々ああして街を歩いて君達のような原石を探しているんだよ。」

今、目の前の木荒は、黒の丸メガネ、ジャケットとチノパンを着こなし、都会の洒落たオヤジを演出していた。


「早速だけど契約の話に移ろうか、さっさと済まして君達を撮りたくて我慢できないんだよ。」

急かされた萌葱達は昨晩、ママ達から入れ知恵され書き記した契約条件を木荒に手渡した。


・肖像使用料=税抜定価 × 印税率(3%) × 発行部数

・撮影日は日・祝日のみ。最大月2回。1日の拘束時間は最大8時間。

・交通費、食費、地方滞在費、スタジオ使用料、機材使用料、スタッフ人件費、衣装・メイクは木荒で負担。


契約内容を見て多少ひきつり笑いをしたが、条件を盛り込んだ契約書を2部作り、双方サインを記入して契約締結を結び、早速、今日撮影をしたいと申し出た。


時刻は午前11時。「午後6時までなら」と答えると、木荒はすぐに馴染みのスタジオに連絡を入れ、無理やりスケジュールを変更させると、3人を連れてスタジオに向かう。

歩いて10分足らずで、大きな雑居ビル6階のスタジオに到着した。


「小春ちゃんこんにちは!無理言って悪いね!この子達大至急仕上げて!矢崎!時間がないぞ!準備急げ!社長今日もよろしく!」

「詫びなら俺に言ってほしいな。ううん?!こりゃたまげた!いい子見つけてきたな!久しぶりに現場はいるか!」

木荒はスタジオに入ると、待機していた3人に声をかけ、萌葱達を披露すると、小春と呼ばれた女性に預け男3人で撮影所に入っていった。


「はじめまして、ヘアメイク兼スタイリストの石橋小春です。

今日はよろしくね。」

笑って挨拶を交わした後、メイク室に3人を連れていく。

室内には大きな鏡と椅子が4脚、鏡の前のテーブルにはたくさんのメイク道具が整頓され並べられている。

萌葱達を椅子に座らせると、鏡越しに顔をまじまじと観察し始めた。


「いいメイクね。自分達でしたのかしら?」

「いいえ、萌葱がしてくれました。」

蒼が萌葱を見ると、小春が頷いて萌葱の後に立った。


「それぞれの特性をよく生かしているわ。凄いわよ。

このままでもいけるけど、撮影用に手を加えていいかしら?」

「はい!是非プロのメイクを見させてください!」

萌葱は褒められた嬉しさとプロの技を見れる期待で顔を紅潮させた。


「普段のメイクはこのままで十分よ。ただ撮影時は強い光を照らされるから、濃いめのメイクの方が写真映えするのよ。」

蒼のメイクを全体的に濃く手直しをしていく手際を、萌葱はひとつたりとも見落とさない気構えで真剣に見つめる。


「さあてと、こんな感じかしらね。」

仕上がったメイクはネットや雑誌で見るような、けばけばしいものであったが、「なるほど、これがああなるのか」と萌葱は心で得心した。


次に桔梗、萌葱のメイクの手直しが終わり、髪型を整え、衣装に少しばかり装飾を足される。


「よし!完璧!それじゃ行こうか!」

ヘアアクセサリー、コサジュー、リボンを追加された姿は、更に魅力的な仕上がりを見せつけられ、プロの技を改めて思い知らされる。

しかし、3人は気落ちすることなく、学びの機会に感謝した。


その後、撮影は順調に行われ、あっという間に約束の時間となる。

3人はタクシーに乗せられ、帰宅して行った。


「なんか凄い子達でしたね。でもなんでしょうね?底抜けに明るい笑顔の中に時折現れる、とてつもなく深い闇を抱えた目の色。」

「成長したな矢崎。お前にもそれが見えるようになったか。」

「え?あ、ありがとうございます!木荒さん!」

「僕はね彼女達はとんでもない経験をしてきたと思ってるんだよ。

あんな目の色をした奴は殺人者か、帰還兵ぐらいだと思ってたよ。

それが、JKだぞ。俺は彼女達の成長を撮り続けていきたいんだよ。

それこそ彼女達の一生を撮り続けたい。

くそ、なんでこの年になって巡り会っちまったんだ。

僕が先に死んじまうのによ。」

木荒は悔しさをにじませて、絞り出すように自分の思いを吐露した。


「木荒さん、俺がその思いを引き継ぎますよ。」

「馬鹿野郎、その前にさっさとプロとして認められ作品を作り出せ。」

「はい!がんばります!」

呆れかえる木荒の表情に少しばかりの笑みが浮かんだ。


事務所に戻り、撮影したデジタル媒体を数枚アップした1時間後に、知らない番号から着信が入る。

放置していたが、留守録に伝言を残さず、何回も掛け直してきたことに少々腹を立て電話に出た。


「この電話、木荒さんで間違えないでしょうか?」

少し焦った女の声が聞こえ木荒に緊張が走った。


(もしかして子供ができたとかじゃないだろうな。)

身に覚えがありすぎる木荒は心を落ち着けると冷静に応えた。


「はい、そうですが、どちら様でしょうか?」

「私、指差 莉乃とお申します。」

「すいません、私の知り合いにあなたの名前はおりませんが。」

「AKBF33の指差と言えばお分かりになりますか?」

「あなた、私をからかってますか?」

「いいえ、大真面目です。花園萌葱、杜若桔梗と言えば信用してもらえますか?」

「あんた、何故彼女達を知っている?」

「先ほどブログで拝見しました萌葱と桔梗は、昨日、特別研修生と契約を交わしました。」

「偶然だな、実は今日僕も専属モデルと契約をしたばかりだよ。」

「木荒さん、私はあなたと所属どうこうで争う気はありません。実は彼女達の今後の芸能活動について、是非ともご協力いただきたいのです。」

「具体的には?」

「彼女達はいずれAKBF33の中心メンバーになります。今は無名ですが必ず、私が、彼女らに上位を独占させます。木荒さんはプロカメラマンとして第一人者です。今から彼女らを徐々に露出させ、知名度が上がったところで、大々的にメンバー入りを発表します。」

「しかし、確かAKBF劇場で研修生のお披露目があったよな。」

「彼女らは劇場に出演しません。すでにそのレベルを超えています。デビューさせるのは半年後の横浜アリーナ公演です。そのために現メインメンバーと調整を行います。」

「えらく急な話だ。それで僕は何をすればいい?」

「3か月以内に写真集を出してください。その後、1か月毎に1冊、2冊目からはAKBF色を少しづつ取り入れていき、4冊目はAKBFとしての彼女らの写真集を横浜アリーナで先行販売します。」

「面白そうな企画だが本を出す金がないよ。」

「そこは相談させていただきます。つきましては近々直接、2人だけで話合いの場を持ちたいと思います。如何ですか?」

「いいだろう、僕はいつでもいいよ。」

「では、今から事務所に伺わせていただきます。」

「え?!」

インターホンが鳴る音が聞こえ、モニターを見ると帽子、サングラス、マスクとトレンチコートを着た女が立っている。

ドアを開けると、女は躊躇することなく中に入り、事務所内を一望して木荒に向かい合いコートを脱いだ。


「あなたが部類の女好きだという事は知っています。そして私も男が大好きなんです。これからは長いお付き合いになると思いますので、お互いを良く知り、本音を言い合える仲になりたいと思います。

如何ですか私の裸?今でも欠かさずトレーニングしているの、自信があるのですけど。」

「ああ、最高だ!君の体を是非撮らせて欲しい!その前に君の全てを知らなければな!」

木荒は指差を抱き上げるとプライベートルームに消えていった。

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