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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第37話 六花、コンドームの誓い

AM6:30、スピーカーから《ペール・ギュント》第1組曲 「朝」が静かに流れ、狼牙のモーニングコールが始まる。


「起きる時間だ、今から30分後にジャージに着替えて、居間に集合すること。遅れた者は白飯と梅干のみとする。」

コールの後に電子音でカウントダウンが始まった。


「モガ?」

狼牙の声に反応して桔梗がむくりと起き上がる。

初日の朝、天井に頭をぶつけたこともあり、ロフトベッドから布団を降ろし、畳に敷いていた。


「狼牙さんおはよう。」

スピーカーに向かって挨拶をすると、布団を畳んで部屋の隅に寄せる。

窓を開けると、3m先に隣のアパートの窓が見える。

身を乗り出し空を見上げると、どんよりと曇っていた。


「今日は雨かちら?」

そんな事を呟いていると、向かいの窓が開き、中年の女が顔を出し桔梗と目が合った。


「おはようございます!」

思わず笑顔で挨拶をすると、中年女は目を細めて桔梗を眺め何も言わずに窓を閉めてしまった。


「?」

特に何も思わず窓を閉めると、尿意を覚えトイレに向かう。

2階のトイレの前に珊瑚と蒼が並んでいる。

1階のトイレの前に萌葱が並んでいた。


「夜花子!お願い!急いで!」

「萌葱!急かさないで!もう少しだから!」

そういえば「便秘」って言ってたなぁと思い出す。

2階へ戻ると、蒼だけになっていたので後ろに並んだ。


「夜花子長いよね。萌葱もつかなぁ。」

「いざとなったらお風呂があるから大丈夫!」

「もうダメー!」

1階から萌葱の悲鳴が聞こえると、脱衣所の戸を引く音が聞こえた。


「間に合わなかったかー!」

「何かあったの?」

トイレから出てきた珊瑚が2人に尋ねた。


トイレを済ませジャージに着替えて居間に向かう。

29分58秒で夜花子が滑り込んできた。


「みんな、おはよう。」

「狼牙さん、おはよう!」

朝から狼牙はしかめっ面で、腕を組んで仁王立ちをしていた。


「先ずは今日の予定から話す。

君達がしこたま買い込んだ物の仕分けを行う。その後は掃除だ。以前のように当番制でいいだろう。

共用部分の掃除は ①玄関外回り、1階居間 ②脱衣所・風呂場 ③1、2階の廊下とトイレ、ベランダだ。

各自の部屋は自主性に任せる。

くれぐれも汚部屋にしないように!」

一度切り、大きく深呼吸をすると目をカッと見開いた。


「何故湯舟があんなに汚れているんだ?

何をしたらあんなに汚れる?」

あっ!と思い返し首を竦める六花を見て、狼牙はニィと口角を上げた。


「狼牙さんごめんなさい!あたちが悪いんです!あたちが薄葉さんの髪を洗いたいって言ったから!」

桔梗が前に出て狼牙に頭を下げた。


「旦那様、あちきが髪を洗って貰ったのが原因でありんす。桔梗を責めねえでおくんなんし。お願いしんす。」

狼牙の背後から薄葉が現れ、抱き着きながら詫びを告げる。

今日の薄葉は長い髪をひとつにまとめ、モダンな黒のワンピースを身に着けていた。


「あれ?着物じゃないんですね?」

「ふふ、珊瑚、これはあちきの先の旦那様から頂いた洋服でありんす。昨日、髪を解くことができたので、やっと着ることができんした。主さんたちのおかげよ。本当にありがとうござりんす。」

服の裾を掴んで嬉しそうに微笑んだ。


「この子たちの善意と、あちきの顔に免じて、どうか許してあげておくんなんし。」

薄葉は畳に膝を着き、三つ指を揃えて頭を下げた。


「わかりました、薄葉さん!顔を上げてください!」

狼牙は慌てて薄葉の手を取り立ちあげた。


「本当に旦那様はお優しいお方でありんすね。ますます惚れちまいましんす。」

ポっと頬を赤らめ、狼牙の首に手を回すと唇を重ねる。

狼牙は桔梗の肩を掴み引き剥がした。


「子供達が見てます!冗談はほどほどにしてください。」

「冗談ではありんせん。なんなら旦那様の子供を産んでみたいと思いんす。」

これには六花も驚き、狼牙と薄葉の間に壁を作った。


「ダメです!いくら薄葉さんでもそれはダメー!」

夜花子が冷静さを欠いて子供のように叫んだ。


「別に旦那様と夫婦の契りを結ぼうとか考えてやせん。あちきが勝手に孕んで、勝手に産むだけのことでありんす。だめでありんすか?」

「そんな、シングルマザーでいいんですか?というか赤ちゃんを産めるんですか?その幽霊なのに?」

萌葱の心配そうな顔を見て、薄葉は萌葱を抱きしめ呟いた。


「心配してくれるなんて、優しい子でありんすね。

女は心から愛した男の子供なら何をしても、されても産みとうなりんす。子供が男との愛の結晶でありんすからね。

例えひとりになっても子供がいれば生きていけんす。

幽霊でも赤ちゃんは産めんす。赤ちゃんを産んだ幽霊の話は実は昔からたくさんあるのでありんすよ。

それほど女の情念は強いものなのでありんす。

主さんたちもいずれ理解できる時がきんす。」

相変わらずの説得力に圧倒され、六花は今の時代にいない女の強さを改めて知ることになった。


とはいえ、子作りに睦み合いは必要不可欠なわけで、朝食をとりながら六花と薄葉の間で協定が結ばれた。

ちなみに朝の献立は、白飯、鮭の塩焼き、厚焼き玉子、キュウリの浅漬け、キャベツと玉ねぎの味噌汁だった。


「狼牙さんはSEXしないと言いましたが私達はしたいです。

女の本能が求めています。無理です。止められません。

なので、私達は非妊娠期間に1日だけ相手をしてください。

ひとり月1回です。

私たちは結構ばらけているので被らないように調整します。

薄葉さんは妊娠可能期間に1日だけ相手をお願いします。

後で予定表を提出します。」

狼牙は真剣な眼差しを向ける六花にNOと言えず承諾した。


廊下に積まれた荷物を居間に運び入れ開封を始める。

生活必需品、消耗品を所定の場所に設置、収納をする。

窓にはカーテンが掛けられ、玄関に足ふきマットが敷かれ、傘立てと色違いの傘が7本立てられる。

脱衣所に何枚ものマットが敷かれ、風呂場に大きなシャンプーボトル収納籠が置かれる。

トイレには清掃用具、トイレットペーパー、生理用品、そして念願のパンティーライナー!

ナプキンを探していて偶然見つけたが、今まで存在すら知らなかった六花は大いに喜んだ。


「これで生理前のクロッチ手洗いから解放される!」

段ボール数箱単位で発注をして、収納しきれない分は2階の物置部屋に運び込んだ。

勿論、試してみたくなり、一度部屋に戻りショーツを着替え、説明書通りに使用する。

廊下に集まると使用感を共有して居間に戻った。


共用品を片付け、段ボール箱を畳み幾つかの束にまとめる。

かなりの量なので古紙回収業者を狼牙が手配した。


居間の片隅には、個人で注文した物がうず高く積まれていて、なぜこんな物までと思われる物も多数見られた。


萌葱は数十種類に及ぶメイク用品を、茜は色違い6種類のセクシーランジェリーとナイトウェアを数十組、夜花子は香水とアロマ用品を、珊瑚はネイルアートの道具を、蒼は電動ミシンと裁縫道具と数本の布生地を、桔梗は数十種類の髪留めとヘアカットの道具を山から選別する。


そして残ったのが、S・M・L・XLのコンドーム、電動マッサージ機、ローション、膣トレボール、Lサイズの電動バイブ、クリ吸引ローター、そして人がはいりそうな大きな段ボール箱。


「これ注文したのは、蒼ね!」

萌葱はビッと蒼に指を差した。


「ばれたかw。でもさみんなも興味あるでしょ?

それに月1回なんて我慢できるわけないじゃん!

これさえあれば、浮気せずにやり過ごせそうじゃない?

これなんて、膣の締まりをトレーニングする道具だよ!

キツキツのマン〇で狼牙さんを虜にするのよ!」

フフンと鼻高々に説明する蒼に一理あるなと皆が思い始める。


「このコンドームは必要?狼牙さんに必要なくない?」

「かー!分かってないね珊瑚!

時にどうしても人肌が恋しくなる時があるじゃない?

グッズ使ってもどうにも物足りない時とか。

でも狼牙さんとはまだ数日先、おまけに排卵日で性欲マシマシ。

さあ、どうする?夜花子!」

「ええ!が、我慢するわよ。」

「一瞬言い淀んだね。なんでかな?」

「何でって、急にそんな質問するから驚いて。」

「果たしてそうかしら?狼牙さん以外の男を思い浮かべなかった?」

「思い浮かべないわよ!」

「あらそう?私なら適当な男で欲求不満を解消するな~。」

「蒼ちゃん!浮気するの?!あたちそんなの無理!」

「何言ってるの桔梗。狼牙さんが許可してるんだよ。」

「それでも無理!」

桔梗の癇癪を手で制して、メガネをクイと上げると真剣な目つきで、皆に向けて思いのたけを喋りはじめた。


「私たちは狼牙さんとの恋愛に関しては、土俵にも上がってないよ?狼牙さんは私達を女として見てないのよ。女としての魅力が足りてないのよ。薄葉さんも女を磨けって言ってたじゃない。

ママ達がいいお手本にならない?

ママ達に特定の相手はいないけど、恋はするって言ってた。

狼牙さんは特別枠で、比較できる相手がいないって。

私達もママを目標にして女を磨くべきだと思うの。」

いつになく饒舌で皆を説得するように喋り続ける。


「それにさ、狼牙さんは誰かひとりのものにならないよ。」

途端、声のトーンが落ち悲しそうな顔になる。


「でもさ、狼牙さんがこの先誰かひとりを愛して、ひとりだけの男になるかも知れない。みんなその時が来たら耐えることができるの?」

「無理!その女をブッ殺す!」

桔梗が物騒なことを叫ぶが、皆の内心はそう大差がなかった。


「そうよね、私も殺すまでしなくても、それに近いことをしてしまうと思う。

だからさ!狼牙さんがいつまでも私達を見続けてくれるように努力しないと!

今なら例え口約束でも、婚姻関係を大切にして見ていてくれる。

でもそれに胡坐をかいているようじゃダメよ。

あのママ達だって努力して今の関係を築いているのよ。

ただの小娘が若いってだけで努力を怠るのは違うと思う。

これからは色んな事を経験して、ママ達みたいな大人の女を目指しましょう。

私達ならできるよ!それで狼牙さんに認めさせるの!

あなたに見合う大人の女になりましたってね!」

「狼牙さんに惚れるってそういう事なのね。

ひとりだけの男と結婚して、家庭を持って子供を産んで、おばあちゃんになっても、手を繋いで散歩するのが夢だったけどかなわないのか。」

萌葱が宙を見上げてしみじみと呟いた。


「何を言ってるの!狼牙さんの子供を産んで、家庭を作ればいいのよ!そのためにママ達は私達に、たくさんの機会を与えてくれてるじゃない!私達は母子家庭に育ったから、シングルマザーにいい印象がないけど、初めから覚悟してシングルマザーを選択すれば全く別の結果になるわ。

負の連鎖をここで断ち切るの!私はやるわよ!」

蒼はコンドームの封を破ると、各サイズを6等分して、一組を自分のポケットにしまい込んだ。


「いつまでも狼牙さんと共に生きる覚悟がある人はこれを取って。」

皆の前でコンドームを差し出す。


「どこの馬の骨とも分からない女に、大切な狼牙さんを取られないようにしないとね!

あとさグッズもう1セット注文しといてくれる?

茜がポルチオ覚えたって言ってたでしょう。

あたしもがんばって覚えないとね!」

「萌葱も大概むっりよね!Hの時一番イヤらしい顔するくせに!

でも一番綺麗なアへ顔だと思うよ。」

真っ赤な顔をしてコンドームを受け取るとポケットにしまった。


「使うか分かんないけど貰っとくよ。つかオレみたいな子供体形を相手にする男いるのか?」

「あら、まだ現れてないだけで、世の中にはたくさんいるわよ。」

「そういう奴、ロリコンって言うんだよな!」

「違うわよ、大輪の花を好む人もいれば、道端に咲く儚げで可愛らしい花を好む人もいる。そういう事よ。」

「蒼、性別間違えてないか?男なら惚れてるぞ!」

「茜なら女のままでも愛せるわ!」

茜にコンドームを手渡すとぎゅっと抱きしめた。


「さすが蒼よね。考え方がぶっ飛んでるわ。でもわたしも一緒か、パパ活してたしね。

コンドームなんて見るの久しぶりだわ。お口でハメるテクみんなに教えようか?」

「それグッドアイデア!バイブもあるし後で実演してみせて!」

コンドームを受け取るとピラと広げて見せた。


「あーあ、最初は私だけの狼牙さんだったのになぁ。

でも、いずれダメになるのは今なら分かる。

ひとりの力なんて結局無力と変わらないのよね。

力を合わせて、死ぬまで狼牙さんを惚れさせましょう。」

「勿論!狼牙さんの最後は私達家族で看取るのよ!」

コンドームを受け取った手で固く握手をした。


「あたち、みんなの力になれるかな?あたちだけ狼牙さんに捨てられないかな?あたちバカだからすぐに悪い男に騙されるよ?」

「何言ってるの!その為に私達がいるんじゃない!

日向ママと約束したでしょう。桔梗は家族で守るって!

何があっても必ず救い出すから、安心して女を磨きなさいね!」

コンドームを受け取ると無垢な笑顔で蒼に答えた。


そんな六花の決意を狼牙と薄葉が襖の隙間から伺っていた。


「旦那様はたいへんなオナゴ達に惚れられちまいましたね。

きっとたいへんな覚悟があったことでありんしょう。

ひとりの男と添い遂げるのは女の本性、それがママとあちきを含めると13人でありんす。

旦那様は本当に果報者でござりんすねぇ。」

薄葉は狼牙の頭の上でクヒヒと含み笑いをこぼした。


「いつのまに薄葉さんが加わってるんですか?」

狼牙は少し嫌味を込めてボヤいてみた。


「なんていじわるなんでありんしょう。女に恥をかかせるおつもりでありんすか。でもゆるしてさしあげんす。

あちきの具合の良さで、早打ちした旦那様がとてもかわいらしゅうござりんしたので、ゆるしちゃいんす。」

「次は負けませんよ!」

まんまと薄葉の策に乗せられた事に狼牙は気付いていなかった。


「ところでこのでかい段ボール箱は何が入ってるんだ?」

茜が興味津々で木箱をコンコンと叩いた。


「それはね人形よ。私、衣装デザイナーを目指すから、作品を着せてSNSに投稿するの。それで反響を確認すればいいモチベになると思うのよ!」

「ほへー、蒼は凄い事考えてるんだな。」

「みんなもやってみればいいのよ!」

「なあ、人形見せてくれよ!」

「いいわよ。」

皆が周りを取り囲んでいる中、蒼が段ボール箱を開封する。

緩衝材を取り除くと、本物の人間と見間違うほど精巧にできた、全裸の女性型人形が納められていた。


「凄いな!本物の人間みたいだ!ぷよぷよするぞ!」

茜がオッパイを指で押して驚いた。


「蒼、これラブドールだよね。」

珊瑚がうわぁとした表情で半歩後ずさった。


「マネキンより柔らかいからいいかなと思って。

見栄えもいいしね。」

よいしょと人形を持ち上げて立たせた。


「この人形オマン〇が付いてるぞ!」

下から覗き込んだ茜がまた驚きの声を上げた。


「そうよ!この人形はSEXもできちゃうのよ!」

蒼は身体強化を発動して軽々と持ち上げると、鼻歌を歌いながら自分の部屋へ運んでいった。


「やっぱり蒼はなんか凄いね・・・」

萌葱のつぶやきに皆が大きく頷いた。


その後、玄関外回り、1階居間の当番に珊瑚と夜花子、脱衣所・風呂場に桔梗と蒼、1、2階の廊下とトイレ、ベランダを萌葱と蒼で振り分け掃除を行う。

早々に掃除を切り上げた萌葱と蒼、珊瑚と夜花子は、浴槽掃除に手こずる桔梗、夜花子と薄葉の手伝いを行い、なんとか昼食までに掃除を終わらせた。

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