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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第36話 狼牙の思い、六花の想い、薄葉の節介

夕食時、幽霊から狼牙を守る名目で、交代で添い寝をするのはどうかと夜花子から提案されるが、これには狼牙が猛反対をした。


「頼む!俺にもプライベートな時間が欲しいんだ!」

「む!旦那様、もしかして幽霊とSEXしたいのですか?」

「違う!君らと添い寝したら結局SEXする事になるだろう。

本音を言えば、君らが大学を卒業して社会人になる迄SEXをしたくない。

君らにはもっと外に目を向けて、色んな事を学んで欲しいんだ。

勉強、サークル活動、遊び、なんなら恋人を作るのもありだ。

君らが酷い経験をして、俺が側にいたせいで口約束にしても婚姻関係を結んだ。

でもな、本来なら君らはもっと自由に、自分自身の為に人生を楽しんでいいんだよ。

それができない口実になるのだけは避けたい。

このままでは俺は、君らの弱みに付け込んだ最低な男でしかない!

そして、最後の選択肢として俺を選ぶのならば俺は必ず受け入れる。

君らを嫌いになった訳ではない事を信じて欲しい。

すぐに答えは出ないだろうけど、よく考えてほしい。」

狼牙は言えずにいた思いを吐き出し、六花に向けて土下座をして頼み込んだ。


「狼牙さん、あたちたちと離婚ちたいの?」

大粒の涙をボロボロ零しながら桔梗が問う。

次の瞬間、六花が号泣をし始めた。


「違うんだ!誤解しないでくれ!」

「ほんに主さんは不器用でありんすなぁ。」

突然部屋の照明が消え、ロウソクの灯だけが辺りを煌々と照らす。

仏壇の前に白いモヤが現れ、花魁の姿になるとしゃなりと歩き、六花の頭を撫でて回った。


「こんに可愛らしい花を無下にするなど、男の風上にもおけんせん。」

花魁は狼牙に冷たい視線を向ける。


「ちょっと待ってくれ。無下になんかしてない!それよりあんた何者なんだ?!」

「あちきは元花魁薄葉。この館の主で幽霊でありんす。

あちきはこの館の主さまに身請けされ、本妻になりんした。

でありんすのでこの館の持ち主でもありんす。」

薄葉はポカンと口を開けて呆然としている桔梗の脇に座ると、頭を抱き寄せて撫で始めた。


「こんな無垢な心の女はそう他にはいんせんよ。大切にしてあげねえといけんせん。」

おーよちよちと頭を撫でられ桔梗は泣きやみ、笑顔を取り戻した。


「おねえちゃん、ありがとう。おねえちゃんいい匂いがする。」

桔梗が薄葉の胸に顔を擦り付け甘え始めた。


「女が自分自身の考えで好きに生きていいこの時代で、この娘たちは健気でもあり愚かでもあり、本当に可愛うござりんす。

でありんすが主さまが思っているほどこの娘たちは子供ではありんせん。

いずれ女の楽しみを知り、主さまは放って置かれるでありんしょうね。

あんさんたちも離縁と思わず都合の良い男をキープしてやす。

そのくらいの気持ちでようござりんす。

まあ、主さま程の男はそうござりんせんから、今の内によその男で女を磨いて、いずれは主さまにとことん尽くすのもいいと思いんす。

でありんせんと飽きられて心が離れちまいますよ。」

薄葉の説得力のある言葉に六花はただただ頷いていた。


「主さまは恋人ではのう親になっちまったんでありんすね。

これから苦労すると思いんすがあちきがいるから大丈夫でありんす。

ああ、これからは夕餉は一緒にいただくので、わちきの分ともう1人この子の分を用意しておくんなんし。」

薄葉は立ち上がり皆に背を向け手を広げて誰かを抱きいれる。

振り向くと小さなおかっぱ頭の少女を抱きかかえていた。


「初めまして。座敷童のお糸と言います。今後ともよろしくです。」




山城「へえ、花魁の幽霊と座敷童ねぇ。」

陸奥「その2人に守られて今もその家は健在なんだ。」

長門「それで狼牙くんの思いはベイビーに伝わったの?」

狼牙「多分伝わったと思う。」

伊勢「狼牙の考えに私は賛成だ。よく決心してくれた。」

日向「だが、いざという時はちゃんとフォローして欲しいな。」

狼牙「それは重々承知しているよ。」

扶桑「そちらに帰れないのがもどかしいな。一度幽霊とも話をつけなければならないしね。」

雌ゴリラはブンブンと頷いた。




翌日、六花は念願の花やしきに遊びに出かけた。

狼牙は思うところがあり、留守番をすることにした


「くれぐれも騒ぎを起こさないように。」

六花は素直に頷き家を出る。

見送りの狼牙を何度も振り返り寂しそうに歩いて行った。


桔梗「いつも狼牙さんと一緒だったからなんか寂ちいね。」

蒼「学校に通い始めたらもっと一緒にいる時間がなくなるよね。」

珊瑚「浮気したのばれたのかな。」

茜「なに?!浮気!聞いてないぞ!」

夜花子「ああ、茜が狼牙さんを独り占めした日あったでしょう。」

茜「ああ!あの日な!」

夜花子「実はね、五虎将とSEXしたの。」

茜「なにー!お前ら!仲間外れかよ!」

蒼「違うよ!五虎将が好きになった相手が私らだったの!」

茜「む!あいつらオレをいつも子供扱いしてたからな!」

萌葱「それでさ、狼牙さんの重荷にならないようにしようと思って、他の男とSEXしたら少しは気持ちが変わるかなぁって。」

珊瑚「でもさ、ダメだったよ。狼牙さんとするのと大違いだよ。ちっとも気持ちよくなかった。パパ活してた頃と同じ気持ちになった。」

夜花子「私達、最高の男と最高のSEXしちゃったから、他の男なんか視界に入らないよ。それであんな事言われたら泣いちゃうよ!」

桔梗「あたちもう絶対浮気しない!大人になるまで我慢する!狼牙さんのお嫁さんになれないならチぬ!」

茜「お前ら重すぎるだろ!帰ったら薄葉のカウンセリングな!」


ドヨドヨした雰囲気のまま花やしきに到着し、フリーパス券を購入する。

まずはローラーコースターの列に並び、次を決めるジャンケンをするがいつものような勢いがない。

順番になり、運良く先頭車両から搭乗できる段になり、茜は桔梗と萌葱の手を取り先頭車両に座らせると、次に夜花子と蒼、そして珊瑚の手を取り外側に座らせた。


それほど速くはないが、敷地の外側ギリギリを滑走するため、目の前に壁が現れすぐ脇を壁が流れていく、別の意味の恐怖感ですくみあがる。

先頭の車両から桔梗と萌葱の悲鳴が聞こえてくると、茜も思い切り声を張り上げる。

続くように蒼、夜花子、珊瑚が声を張り上げた。


六花はドヨドヨした気持ちを吹き飛ばすように、アトラクションに乗るたび大きく声を張り上げる。

そして、飲んで食べる。

限定クレープ「マリオン花やしき」、揚げたこ焼き、はみ出るホットドック、ロングポテト。

食べたい物を食べたいだけ食べ、アトラクションで声を張り上げる。

夕刻、全てのアトラクションとフードメニューを制覇した六花は、すっかり元通りになっていた。


キャアキャア騒ぎながら帰ると、家の前に宅配トラックが停車し荷物を次から次へと運び入れているのが見えた。


「おつかれさまでーす!」

配達員に声かけをして玄関に入ると大小様々な段ボール箱で、玄関が埋め尽くされようとしていた。


「お前ら!いったいどれだけ注文したんだ!」

段ボール箱をせっせと運び入れている狼牙からカミナリが落ちる。

六花は狼牙の指示で等間隔に並ぶと、バケツリレーで段ボール箱を廊下に運び入れた。


「仕分けは明日にしよう。先に晩御飯だ。」

今日の献立は狼牙の手打ち蕎麦とだし巻き卵、エビ、シロギス、ナス、シシトウの天ぷら。

手分けして9人分テーブルに運ぶと、いつの間にか薄葉とお糸が並んで座っている。

皆が座布団に座ると、いただきますで食事が始まった。


「うん、いい顔になりんした。楽しゅうござりんしたか?」

「はい!たくさん声を出して、たくさん食べたら元気になりました!」

萌葱の明るい笑顔に薄葉は目を細めて喜んだ。


食事が済み皆で食器を洗い片付けると風呂の時間になる。


「久しぶりに湯舟だぜ!」

「あー茜、風呂に入る前に新たに注意事項を伝える。

ここは山荘のように、温泉を引っ張っている訳ではないので、常に新しい湯は供給されていない。

なので湯舟を交換するのは3日に一度だ。

毎日交換していたら水道料金がとんでもない事になる。

銭湯並みの大きさだからな。

必ず湯舟に浸かる前に洗体して、泡を綺麗に洗い流すこと。

一応循環洗浄装置が付いているが限度がある。

分かったか?」

「分かった。」

「みんなも分かったな?」

「わかりましたー!」


脱衣所で服を脱ぎ、そのまま洗濯機に放り込む。

既にクロッチの手洗いは止めているので、そのままネットに詰め込み放り込んだ。


一列に並んで、お互いの背中を洗いっこするのも、日常風景となっている。

最近では桔梗が皆のシャンプーをしたがり、日替わりでシャンプー係をローテーションしていた。


「あたち、美容師になりたいの!だから練習する!」

実は通販でプロが使うヘアカット用品を購入しており、今後桔梗が皆のカットをすると決めていた。


「カララ」

戸が開く音がして振り向くと、長い黒髪を顔の前に垂らした女が全裸で入ってきた。


「きゃあああああ!」

その姿が、ホラー映画の女幽霊に見えた六花は悲鳴を上げ、泡だらけのまま湯舟に飛び込んだ。


「おじゃましんすえ。」

「う、薄葉さん?」

「はい、そうでありんすよ。」

ケタケタ笑うと、シャワーの前まで歩いてくる。

シミの無い白い肌、少し垂れているが豊満な胸に年季の入った乳首、腰回りの豊かな肉付き、綺麗に揃えた陰毛、まるで絵画の裸婦像がそのまま抜け出てきたような裸体だった。

薄葉は椅子に腰掛けると、シャワーを浴び始めた。


「幽霊でもお風呂入るんですね。」

夜花子が茜の後ろに隠れてフルフルと震えている。


「昔はみなさんが寝静まった後に、ようお風呂をいただきんした。ほれそこの鎮魂の地蔵は、夜中幽霊がでると言って置かれたものでありんす。」

「えー!それじゃ地蔵は役に立っていないってことですか?」

蒼は地蔵の頭をナデナデして質問した。


「違いんすえ。わちきは地蔵さんと仲良しになって、入る許可をもったのでありんす。それにしても久しぶりのお風呂でありんす。50年ぶりでありんすね。」

「あの、薄葉さん!頭を洗わせてくだい!」

桔梗は薄葉の黒く艶やかな髪を、触りたくて我慢できなかった。


「あらあ、じゃやお願いしんしょうかしら。鬢付け油がとうさん塗ってあるから、たいへんでありんすよ。」

フンスと鼻息荒く、シャンプーを手の平に取り、頭頂部から揉みほぐすように泡立てる。

しかし、鬢付け油のせいで泡立ちにくく、髪のヌメリが落ちない。


「薄葉さん、湯舟にドボンしてください。」

桔梗は薄葉の手を引っ張って湯舟に入らせると、頭を浸からせるように体を寝かせた。


「みんなも手伝って!」

桔梗に言われた通り、湯面に広がる薄葉の髪をシャンプーで揉み洗う。

湯面が油が溶け落ちたシャンプーの泡で覆われる。

30分後、ようやく桔梗の納得する洗い上がりになった。


「髪がキュッキュッとなりまちた、頭皮の汚れも綺麗に落ちまちた。大成功でち。」

「主さんたちの手は不思議な手でありんすね。この体にこんなに触れられるたのは、初めてでありんすよ。」

この時はまだ、気と身体強化で霊体に触れられると気付いてはいない六花だった。


六花が自室に戻り、定期連絡も済ませ、1日の終わりをゆっくり湯に浸かって過ごそうと風呂場に向かう。

体を洗い、鼻歌まじりで湯舟を見て、悲惨な有様に唖然とした。

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