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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
35/128

第35話 買い物と怖いSNS

「ドンキにしよう!」

珊瑚の提案によりドンキで買い物をする事になるのだが、狼牙は今が夏休みであることを失念していた。


店の近くの駐車場にクルマを止め、2人1組の班分けを行い買い物リストといつぞやのガマ口ポーチを渡す。

リストに無い必要なものは自由に購入してよいと伝え店に向かった


「俺は地下、萌葱と茜は1階、珊瑚と夜花子は2階、蒼と桔梗は3階だな。今日は必要なものだけだぞ!無駄遣いはするな!買い物が済んだら駐車場で待機!わかったな!」

「はーい!」

かくして買い物作戦が開始された。


「ねえ、彼女!キミらデリヘル嬢?!オレらと遊ばない!」

狼牙の姿が見えなくなると早速、蒼と桔梗がエスカレータで3人の大学生らしきチャラ男に声を掛けられた。


「オレらキミらがハイエースから降りてきたの見てたんだよ!」

金髪あごひげアロハが2人の肩を抱き、顔を割り込ませてくる。

蒼と桔梗は何事もないかのように平然としていた。


「オレ金持ちだからさ、今日2人を1日買うからさ、朝まで目一杯楽しもうぜ。

気持ちよくなるクスリもある、アフターピルもやるよ!なっ!なっ!」

男の手が2人の乳房を揉み始める。

蒼と桔梗は3階に到着すると、男の手を取り背負い投げで床に叩きつけると、ビッターン!とフロア中に音が鳴り響く。

するとフロアにいる客が何事かとワラワラと集まってきた。


叩きつけられた男が衝撃で、目を白黒させ口をパクパクさせている。

仲間の男達は気勢を削がれ、ビビりながら2人の横を抜けると、地面で呆然とした男に肩を貸し、急いでその場を去った。


「殺戮の天使」

誰かが呟く。

皆がスマホを見て、2人を凝視する。

すると一斉にスマホを向けて写真を撮りだした。


2階化粧品売り場で珊瑚・夜花子はスキンケア用品で悩んでいた。

ママ達からお肌の手入れを厳命されていたが、何を買えばよいのか正直分からなかった。


「こういう時は店員さんに相談しよう。」

珊瑚が近くにいた女性店員に声を掛けると愛想よく応えてくれる。

アルバイトにも係わらず商品についての知識が豊富で、たちまち必要分のスキンケア用品のピックアップが終了した。


「あなた達、今SNSでバズってる殺戮の天使でしょ?記念撮影してもいいかしら?」

商品の使い方の説明が終わると、女性店員が耳元で囁いた。


「殺戮の天使?なんですか?」

夜花子が首を捻った。


「ほら、これよ。」

隠しながら見せられたスマホの画面に自分達の格闘画面が表示されていて、間違いなく珊瑚と夜花子だった。

ハッシュタグには #殺戮の天使 と記載されている。

そして、最新の投稿画像に蒼と桔梗が映し出される。

#殺戮の天使4号

#殺戮の天使6号

#チャラ男を瞬殺 

そして、まさに今の自分達の画像が投稿されていた。

#殺戮の天使1号

#殺戮の天使3号

#浅草ドンキなう

#天使コスメ

2人が顔を上げるとスマホで取り囲まれている事に気づいた。


「萌葱、これ以上乗らないぞ。1回清算済まして、上行ったやつらに応援頼もうぜ。」

1階日用消耗品売り場で萌葱と茜は買い物満載の2台カートを押していた。


「7人分となると凄い量よね。まだ買い足りない物があるのに、これでいくらになるのかしら。お金足りるかな。」

萌葱がガマ口を開けると、10万円とクレジットカードが入っていた。


「これだけあれば余裕ね。茜どうしたの?」

「オレ達着けられてる。」

茜が天井鏡を見て囁く。

見ると棚の影に隠れて2人の男が不審な動きをしていた。


「ちょっくら行ってくる。」

そう言い残すと身体強化を発動して、棚を飛び越えると男達の背後に立った。


「なんか用っすか?」

突然背後から声を掛けられた男達は慌てふためき、互いに躓き尻もちをついた。


「て、天使5号様!ぼ、ぼくらは決して怪しい者でありません!」

「天使5号?なにそれ?」

「その、お名前が分からないので番号で呼ばせてもらってます!」

「だから何で天使?」

「これです!」

男のスマホを見ると、茜のパンモロ画像に#殺戮の天使5号のハッシュタグが記載されていた。


「それ消せよ。パンツ見えてて恥ずかしいだろ。」

「天使5号様!それは不可能です!この画像は世界に配信されていて消去は不可能です!」

「ちょっと待て!世界中の人がオレのパンツ見てるのか?!」

「はい!天使5号様のうっすら透けて見えるヘアと神々しい割れ目、全て世界中で見られています!」

「ぐぎゃあああ!」

茜の絶叫が店内に響き渡った。


「茜!どうした!お前ら何をした!」

萌葱が男達の前に立つと、男達は弁明を始めた。


「本当に消せないのか?怖いなSNS。」

茜を見ると頭を抱えて無防備にしゃがみこんで唸っている。

股を開いているため、黒のシースルーショーツが丸見えになっていた。

その姿を男達は躊躇うことなく撮影し始めた。


「お前ら、写真を撮るな!すぐ消せ!」

萌葱が怒鳴るが撮影をやめる様子が全く無い。

力づくで止めようとしたが、刑事の説教を思い出した。

ならば体に触れずに分からせてやると怒りを溜めた。


「や・め・ろ」

萌葱が殺気を放つ。

男達の動きが止まり、ガタガタと震え出した。


「すぐに消せ。二度は言わん。」

更に強く殺気を放つと男達の股間の色が変わり、ガクガク震えバタンと倒れた。


「ヤリ過ぎだ萌葱。でもまあよくやった。」

狼牙が萌葱の頭をポンポンと叩くと、男達のスマホを拾い上げ、茜の写真データーを全て消去した。


「あー今撮影している君たちに告げる。SNSに上げるのは自由だが、後日必ず何らかのお咎めがあるので覚悟するように。これは脅しではなく、私の親切心からの忠告だ。」

大半のギャラリーは忠告を鼻で笑い相手にしなかった。


狼牙に抱き上げられた茜は幼児のように抱き着く。

背中を撫でられ、ようやく落ち着いた茜は、ギャラリーに向かって中指を突き立てる。

結局、リストにあった物の半分しか購入できずに、帰宅することになった




「真弓先輩!お疲れ様です!はい、ご要望通り#殺戮の天使の削除とフィルター作業、完了しました。

新しい画像と動画はネットにUPされた瞬間に削除されます。

今までUPされたものの完全削除は無理ですが、いずれ廃れると思いますよ。

いいえ、こんなことで少しでも恩返しができるならお安い御用ですよ!真弓先輩からそんな事言われるなんて本当に嬉しい!

はい!いつでも申し付けてください!おやすみなさーい!」

名残惜しい気持ちで通話を切ると、目の前の6面モニターに真剣な目で向き直り、六花に係わるデータの処理を始める。

彼女にとってSNSの情報管制は、取るに足らない作業でしかなかった。

彼女は自分の人生を救ってくれた、日向の役に立てることに至福の気持ちで満たされていた。


#殺戮の天使関連の画像と動画をUPすると、翌日告訴状が届くとネットで話題になっている。

すでに100名を超えるユーザーに、#殺戮の天使の弁護人から訴状が届いたと書き込みがあり、皆が震えあがった。

中にはデマと信じ込み、果敢にデーターをUPする者もいたが、「404 not found」が表示され、日の目を見ることは無かった。


五番組敏明は、本日30回目の殺戮の天使関連の画像、動画のデーターのUPを行うがいずれもスレ削除に終わった。


「これは、国家の陰謀だ!俺がこの国の闇を炙りだしてやる!」

敏明は今年で40歳になる実家住まいで、もちろん彼女がいない歴=自身の年齢の引き籠りニートである。

すでに前髪と天辺は剥げていて、体中が贅肉の塊で風呂もここ2週間入っていなかった。


「これは語らねばならない!彼女らの魅力を全ネットユーザーに知らしめる事が自分に与えられた使命!」

敏明は殺戮の天使を見て一目ぼれをした。


そして連日殺戮の天使スレ立てを行い、彼女らを褒め称え、ディスる者がいれば徹底的に粘着して叩きまくる。

殺戮の天使は彼の生き甲斐になっていた。


「今日も殺戮の天使、おもに6号ちゃんの素晴らしさについて徹底的に語らねばならぬ!愛しい6号ちゃん!」

プリントアウトされた6号の写真にキスをして、ブヒブヒと鼻息を荒くする。

そして、殺戮の天使スレを立ち上げるが、即削除され怒り狂い、何度もスレを立ち上げた。


「としちゃん!警察が来たわよ!あんた何をしたの!」

母親がドンドンとドアを叩く。

敏明は咄嗟にPCのフォーマットをしようとしたが、突然すべての電源がオフになり、ドアが勢いよく蹴り破られた。


「五番組敏明、児童ポルノ禁止法違反で逮捕令状が出ている。大人しく連行されるか、無理やり連れ出されるか好きな方を選べ。」

敏明はがっくりと肩を落とし6号の写真を見つめた。




「ネットで注文した方が早くて楽じゃない?」

今日買えなかった物、以前から欲しかった物を次々とカートに放り込んでいく珊瑚。


「これもポチして。」

蒼が指さした商品をなんの躊躇いもなくポチする。

狼牙がいない事をこれ幸いと六花の買い物が続いた。


狼牙は夕食の支度をしている。

リクエストのあった、ちゃんこ鍋である。

具材は鶏つくね、薄切り豚肉、鶏もも肉、キャベツ、ニラ、三つ葉、人参、椎茸、しめじ、えのき、舞茸、油揚げ、焼き豆腐。


幸いなことに、厨房には大きな土鍋が3つあり、その鍋全てに具材を入れて火にかける。

その間となりの和室にカセットコンロと取り皿、茶碗を用意しガス炊飯器で炊きあがったご飯をおひつに移し替えた。


仏壇を開き、茶湯器に水、膳にご飯を盛り付け、ろうそくと線香に火を灯し、手を合わせて拝んだ。


厨房でジュウと吹きこぼれる音を聞き慌てて火を消す。

三つのカセットコンロのそれぞれに土鍋を置き火をつける。


そして自分の部屋に行き、マイクの音量をいっぱいにすると、スウと息を吸い込み、大声で叫んだ。


「ご飯が出来たぞ!」

天井からドスンと音がすると、階段をバタバタ駆け下りてくる音が聞こえる。


「びっくりするじゃんかよ!」

いつかのように茜が抗議した。


そのころ、仏壇に供えられたご飯の一部が齧られたように宙に消えていく。

同時に鍋から肉団子、豚肉、鶏肉と鍋の具材が一品づつ宙に消えていった。

キャッキャッ、ウフフと幼子と女の楽しそうな笑い声が、室内に聞こえていたが、六花達の訪れで聞こえなくなった。

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