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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第28話 襲撃~五虎将との手合わせ~

六花の魔法修行を兼ねたこともあり、狼牙の特訓は更に過酷を極める。

頭以外のどこかしらの四肢が10分毎に宙を飛び、その度に六花が拾い繋げ念を込める。

時間が経つにつれ、四肢が飛ぶ間隔の時間が10分から20分、20分から30分と伸びていき、反比例して回復するまでの時間が急速に縮まっていった。


開始して3日も経つと、獣人形態での長時間戦闘にも慣れ、金剛力を使うことで四肢が飛ぶことも無くなる。

戦闘不能に陥った時の六花の対応も一人で治癒、回復をこなすようになる。

そこで、バステトは新たな魔法を教えることにした。


「身体強化付与魔法と障壁魔法を教えるし!

一時的に筋力と反応速度を強化するし!障壁はこちらの世界ではバリヤー言うし!

効果と持続時間は両方とも術者の練度によって変わるし!」

新たな魔法の訓練に六花は気合を入れて掛け声を上げると、気を取られた狼牙がポーンと宙を舞う。

「わあっ!」と声を上げ、六花は狼牙を追いかけた。


「今のは危なかった、三途の川の渡し舟に片足が乗った。」

「丁度いいし、身体強化を掛けるし!」

バステトが魔法のイメージを六花に教えながら念じると、付与された狼牙の体が金色に発光した。


「スーパーサ〇ヤ人みたい。」

夜花子と蒼がハモって呟いた。


「凄いな、体が軽い。力が湧き上がってくるようだ!」

立ち上がりシャドウをすると、風切り音が普段よりを大きく聞こえる。

更にパワーアップした事に喜ぶと白虎の元に駆けていった。


向上した身体能力に多少振り回される場面もあったが、ほぼ互角に立ち回ること10分。

金色の発光が消え、急激に動きが鈍くなり、強烈なボディブローを決められ宙を飛ぶ。

順番の珊瑚がすぐに駆け付け、治癒と回復を施した。


「身体強化は強力な術ではあるが、効果が切れた後負担が一気に掛かり碌に動けなくなる。

効果が切れる予兆を感じたはずだ。

その時はすぐさま撤退をして回復術をかけて貰う事。

聞こえていないか。」

思ったよりダメージが大きく、珊瑚一人では手に負えずに皆で治癒を施している。

その日の修行は大事を取って昼前に終了した。


「今日は私達がご飯を作るから、旦那様は休んでいてください。」

「すまない、よろしく頼むよ。」

夜花子にそう言うと狼牙は直ぐに眠りについた。


「何作ろうか?というか何が作れたっけか?」

「茜、こういう時はねチャーハン一択よ!」

エプロンの紐をキュッと締めた萌葱の目が燃えていた。


萌葱は密かに美味しいチャーハン作りを追求していた。

昔、中華料理店で食べたチャーハンの味が忘れられずに、ここに来て幾度か作ってみたもののどうにもアノ味にならない。


そこでネットで検索していくつかのポイントを知る。

先ずは中華鍋。

これはキッチンで発見した。かなりでかい。


次に味の素とラード、塩は伯方の塩と黒胡椒もある。

チャーシューは作り置きがある。

白ネギと玉子は貯蔵庫から持ち出した


そしてご飯。

ここでは業務用のガス炊飯器を使用していて、3.3升の米を炊ける。

分量がよくわからないので、取りあえず3.3升、水を少なめで炊く。

およそ30分、やや固めに炊きあがった。


大火力コンロに着火して、中華鍋を火にかける。

ラードを投入し良く熱すると、見ている仲間に声をかけた。


「あたしに身体強化を掛けて!」

そう、大きな中華鍋を自在に動かすには、筋力が足りていなかった。

萌葱は身体強化魔法を知り、ついにこの時が来たと悟ったのだ。


体が金色に発光すると、中華鍋を持ち上げる。

「か、軽い!」感動で思わず声が出る。

溶いた玉子を投入して半熟状態にすると、刻んだチャーシューとネギと共に炒める。

そして、大量のご飯を投入して、調味料を店の味の味比率で振りかける。

総重量5kg以上はあろうかと思われる中華鍋を、片手でブンブンと振り炎で炙り油や水分を飛ばす様は、炎の調理人といっても過言ではなかった。


中華お玉(大)でチャーハンをすくい皿に盛り付ける。

あっという間に人数分の大盛チャーハンができあがった。


反対側のコンロでは、珊瑚と茜と桔梗でキノコとワカメの中華スープを、蒼と夜花子はキュウリとキクラゲで中華サラダを完成させていた。


「美味しいし!」「美味いぞー!」

バステトと白虎が同時に称賛の声を上げる。

二人は三品に順番に手をつけ都度、味を称賛した。

六花は初めて、狼牙の手助け無しで料理が出来たことを互いに称え合った。




修行を開始して1週間後、狼牙と六花は連携して白虎との模擬戦を行う。

金剛力を使用した白虎はとにかく強い。

以前不覚を取り、六花に敗北をしたことが噓のように、六花の攻撃が当たらない。

狼牙は金剛力と身体強化、更には障壁を張り白虎に挑むが、本気の攻撃にいとも簡単に障壁が打ち破られ致命傷の打撃を受ける。

すぐさま障壁を張った萌葱、茜、珊瑚、桔梗が壁になり、夜花子と蒼が狼牙を治癒、回復させる。

白虎は六花にも手加減することなく、攻撃を与えてくるが4人の攪乱戦法に翻弄され、狼牙の回復時間を稼がれてしまう。

更にこの模擬戦で六花が覚えた「気弾」の攻撃に手を焼いていた。


日が傾き、今日最後の模擬戦が行われる。

何枚もの障壁を重ね掛けした狼牙が、白虎の正面から突撃する。

白虎はあっという間に障壁を打ち破り狼牙に迫る。

萌葱、桔梗が障壁を張り、白虎の前に飛び出す。

白虎の拳が障壁を打ち破ると、顔と腹に鉄の塊を叩きつけられたような衝撃を受ける。

直ぐに後方に飛び退き、腕を交差させてガードをすると、続けざまに激しい衝撃が腕に叩きつけられる。

前方にニヤッと笑う茜と珊瑚が、気弾を放った後のポーズを解いて、後方に大きく飛び退く。

白虎は全速力で、二人との距離を詰めるが、途端、背後から気弾を受け前につんのめる。

背後に萌葱と桔梗がポーズを解いて、左右に分かれ走るのが見えた。

その隙に見えない気弾が眼前に迫っていることを感じ、ジャンプするが、空中で夜花子と蒼の気弾で撃墜された。


落下地点に狼牙が走り込み、サマーソルトキックが白虎の顎を捉える。

気を練り込んだ蹴りは、白虎の金剛力で強化された筋肉の鎧を貫通して、脳に揺さぶりを与える。

白虎は脳震盪を起こして、仰向けにひっくり返った。


「そこまでだし!」

バステトが狼牙・六花の勝ちを宣言すると、遂に勝利をもぎ取った喜びで歓声を上げた。


「素晴らしい!なんと見事な立ち合い!

是非、拙者達とお手合わせ願えないだろうか?!」

突然の大声に振り向くと、5人の偉丈夫がそれぞれ武器を持ち、夕日をバックに堂々と立ち構えていた。


「あなた達は?」

この場所は戒厳令下で、一般人の立ち入りは禁止されている。

狼牙は警戒して、六花達を後ろに下がらせた。


「これは失礼仕った!俺達はこの地を制圧しに参った五虎将!

我が名は関勝!何卒お手合わせを願いたい!」

長く見事な髭を生やした関勝が声を張り上げると、深くお辞儀をした。


六花とバステトは、卒倒している白虎を囲んで治癒、回復を行う傍らで、井戸端会議を始めた。


「あれって、大陸からの工作員ってやつだよね。

妙に礼儀正しくて、逆に胡散臭いんだけど。」

「言えてるわー。そもそも普通、闇に紛れて奇襲かけるよね。」

夜花子の考えに、珊瑚が同意する。


「銃を持たずに、鈍器に刃物とか凄い自信がありそうだね。」

蒼が彼らの得物を見て指を差す。


「工作員というより武人かしら。

手合わせって、武術を競いたいんでしょ。

あたしらを見て、刺激されちゃったかな?」

「そうだよ!あたちたち強いもん!強いブジンは腕試ししたくなるでしょ?ねえ、白虎じーちゃん!」

「そうだな!萌葱と桔梗の言う通りだ!

武人は自分より強い武人を認めたくないからな!」

回復した白虎が上体を起こし、ウンウンと頷いた。


「白虎、あんたまさか受ける気じゃないでしょね?

あーしは反対だし!あいつらかなり強いし!」

バステトは両手でバッテンをする。


「どの道一戦交えることに変わりはない。

ここの軍人に任せるより、儂らで片を付けたほうが被害が小さい、せいぜい狼牙が、3日ほど動けなくなるくらいであろう。

君らはどうしたい?」

問いかけられた六花は迷うことなく「やります!」と答える。

それを聞いた白虎は、獰猛な笑みを浮かべ立ち上がり吠えた。


「手合わせ承った!」

白虎の返答に振り返った狼牙は、反対を告げようとしたが、彼らから立ち上る闘気を見て諦めた。


「我らの願い、聞き入れて貰い感謝する!」

男達は得物を構えると名乗りを上げる。


「我が名は関勝!」

「我が名は林冲!」

「我が名は秦明!」

「我が名は呼延灼!」

「我が名は董平!」

関勝は青龍偃月刀を、林冲は蛇矛を、秦明は狼牙棒を、呼延灼は双鞭を、董平は二本の槍をブンブンと振り回してかまえた。


「いざ参る!」

「障壁!身体強化!」

五虎将の口上と同時に、六花が魔法を白虎と狼牙に展開する。

五虎将は障壁をものともせずに叩き割ると、一気に狼牙との距離を詰める。

金剛力と身体強化された狼牙と白虎は、躊躇うことなく五虎将の懐に歩を進める。

萌葱と茜が右翼に、珊瑚と蒼が左翼に展開し、夜花子と桔梗、バステトが狼牙、白虎の後方に詰め寄る。

右翼と左翼の気弾による攻撃が、秦明、董平に撃ち落されると、秦明が右翼に董平が左翼に進路を変えた。


関勝が白虎に、林冲が狼牙に得物を振り下ろす。

手甲で得物を受け止めるが、青龍偃月刀と蛇矛は手甲をやすやすと切り裂き、白虎、狼牙の腕の半分まで刃をめり込ませた。


「二人とも下がるし!」

バステトの声に反応して、前蹴りを繰り出すと得物の柄で受けられるが、そのまま柄を蹴るように後方に飛び退く。

すかさず二人目掛けて得物を振り下ろすが、三節棍を構えた夜花子に阻止された。


「驚いた!たかが木の棒で受け止めるか!」

気を流した三節棍は殊のほか固く、高い金属音を鳴らし刃を受け止める。

双鞭が三節棍に絡み付くのを見た関勝と林冲が、得物を引くと強い力で引かれ三節棍が奪われ空手になる。

青龍偃月刀が上段から振り下ろされ、蛇矛から中段から薙ぎ払われるが、狼牙と白虎が、夜花子の背後からスルッと抜け出て、逆輪を蹴り上げ、鳩尾に拳で打突した。

前のめりになる関勝と林冲を見越したように、夜花子を踏み台にして宙に飛んでいた桔梗の気弾が、二人の後頭部を直撃すると声も上げずに気絶した。


呼延灼の双鞭が狼牙、白虎の足首を捕らえ転倒させるも、夜花子の放った溜めの大きい気弾を、正面から受け弾き飛ばされる。

桔梗は仰向けに倒れた呼延灼の上に着地すると、マウントを取り拳で乱打を始める。

ケラケラ笑いながらの乱打は、呼延灼が気絶して、狼牙が引き剥がすまで続いた。




董平と対峙する蒼、その周りを珊瑚が気弾を放ちながら動き回っている。

リーチの長い二本槍の攻撃範囲ギリギリで対峙して、圧を掛ける蒼から目を離せずに、気弾を躱す董平の精神力が確実に削られていた。


しかし、董平が蒼から目が離せない理由が別にもある。

蒼の衣装は他の少女と違い、ロングのチャイナドレスで、スリットが深く切れ込み、白く魅惑的な足が大胆に見え隠れしていて、おおよそ戦闘に適した衣装ではない。

そして、時折足の付け根にチラッと黒い茂みが見える。


(この少女はノーパンなのか?

もしかしたら、黒のパンツを履いているだけかも知れない。)

董平は武術の鍛錬に明け暮れ、女性とは縁遠い生活を送ってきたため、生身の女性の裸を見たことがない童貞であった。


蒼は董平の視線から童貞であることを見抜き、盛んに挑発をしている。

董平は挑発にまんまと乗り、蒼の術中に嵌まっていた。


「蒼!中央は片がついたよ!」

珊瑚が戦況を報告してくれる。


「うちらも片づけようか!全開攻撃いくよ!」

突然金色に光り輝く蒼が、足を大きく開き腰を深く沈める。

すると、スリットに指を入れ、スカートを徐々に捲り上げ始めた。


(もう少し!もう少し!)

董平の目が大きく見開かれ、その瞬間を見逃すまいと視線に全力集中した時、前後から気弾の直撃を受ける。

薄れて行く意識の中で確かに見えた、陰毛と陰唇に満足して気を失った。




秦明の振り回す狼牙棒を、金色に輝く萌葱が紙一重で躱す。

萌葱に気を取られる隙に、茜が一撃離脱を繰り返しダメージを蓄積させていた。


「ちょこまかとよく動く!」

茜の攻撃に業を煮やし冷静さを欠く秦明に、萌葱が流れ水で畳みかける。

流れるような美しい動きに秦明の目が一瞬奪われた。


人中、牙顎、壇中、水月、電光、月影を続けざまに寸勁打撃で打ち抜かれ、体の機能が麻痺し、棒立ちになった秦明の金的を、茜が寸勁蹴りで蹴り上げ、戦いが終了した。




気絶している五虎将を縛り上げ治癒を施す。

しばらくすると、目を覚まし自分達が生きていることに驚く。


「何故殺さないのか?」

関勝が不思議そうに問いかけてきた。


「あんたら梁山泊の英傑でしょ。

さっきネットで調べたから知ってる。

なんで、ここに来たの?

ここの制圧が目的らしいけど、誰に命令されて来たの?

それが知りたいから殺さないよ。

それと悪人に見えないし、できれば仲間になって欲しいかな。」

萌葱に言われ、ポカンとした五虎将は豪快に笑い始める。


「これは愉快だ!現代に転生して初めてだぞ!

こんなに愉快な気持ちになったのはな!

それに、頭のモヤモヤがすっかり晴れて気分爽快だ!」

五虎将は大笑いしながら涙を流し、六花を戸惑わせた。


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