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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第27話 異世界からの客将

中華大帝国山東省梁山県南東に位置する梁山の麓、大沼沢の中央にそびえたつ奇怪な様相の城に、双子邪神の片柱が居を構えていた。


「呂威牙、聞こえるかい?」

ソファーに深く身を沈ませていた痩身長躯の男がダルそうに、自分に跨る全裸の女を払いのけ体を起こす。

女は床に落ちると大股を開いたまま硬直し、ピクリとも動かない。

白目を剥き、大きく開いた口からは舌が異常なほど飛び出し、粘膜がカラカラに干からびて絶命していた。


「津唖流、聞こえるよ。どうしたの?」

「アイツの眷属がアイツの片割れ共に与したよ。

ドラゴンをそっちに連れていき、対抗手段を作るらしいよ。

面倒になりそうだから、転移門を閉じられないかな?」

「閉じたいのはヤマヤマだけど、アイツの干渉で閉じれないよ。」

「ならICBMで物理的に大地ごと破壊しようよ。」

「それはダメだよ。西側と戦争になるよ。

そんな美しくない「滅び」は反対だよ。

とりあえず、同志を送って占拠させるよ。」

「分ったよ、成功を祈るよ。」

呂威牙は立ち上がりパンパンと手を叩くと、闇の中から5人の男が姿を現した。


「さあ、君達の出番だよ。

古の梁山泊五虎将の力とやらを見せてよ。

もちろん、銃器の類は使用禁止だよ。

いってらっしゃーい。」

呂威牙の見送りに黙って頷くと、5人の姿が再び闇に消えた。




「チーム雌ゴリラ+戍亥夫妻」が異世界に旅立つ日の早朝、6姉妹+信夫が一足先に東京へオスプレイで輸送されていく。

その後、正午に混成チームが門に入ると、入れ替わるように帰還した部隊に、白虎と呼ばれる獣人が同行していた。


白虎は重大な要件があると言い、六花に面会を求めてきた。

六花と付き添いの狼牙と面会したところ、白虎は狼牙が獣人の子孫である事を見抜き、狼牙を鍛えたいと申し出た。


「弱いな!キサマは獣人の真の力を開放できていない!

それで六花の槍を名乗ろうなど、恥ずかしくないのか!」

白虎に煽られた狼牙は、試合という名の決闘を行うがまるで相手にならなかった。


試合は原野で行われた。

双方、防具、武器の装備をせず肉体のみで戦う。

狼牙は人の姿のままで、白虎と対峙した。


狼牙の戦闘スタイルに型は無い。

現代武術のいいとこどりを抜群の身体能力で使いこなす。

まずはボクシングスタイル白虎に先制ジャブを仕掛ける。

白虎は腕を組み、全くのノーガードでジャブを受ける。

ワン・ツー・ストレートが白虎の鼻づらに綺麗に決まる。

しかし、白虎は微動だにしない。

狼牙はムエタイに切り替え、膝蹴り、回し蹴りを連打する。


「それで、全力か?」

フンッ!と鼻で笑った白虎の右腕が、目に見えない速さで動く。

空中に狼牙の左腕が切り飛ばされ、血が噴水のように噴き出す。

それを見た六花が一斉に白虎に仕掛けた。


「いいぞ!おまえらも稽古をつけてやろう!」

腕を広げて「さあこい!」と待ち受ける白虎。

次の瞬間、六花の寸勁攻撃が人体の弱点に寸分違わず打ち込まれた。


「み・ご・と・だ」

六花の実力を見誤った白虎は一言、言い残し卒倒する。

すぐさま、狼牙を見やるとそこには褐色の肌をした、スーパーナイスボディの猫耳女性が、腕を繋ぎ合わせ念を込めていた。


「腕は元通りにするし、安心するし。

あーしはバステト!よろしくっぴー!」

長い尻尾をハート型に丸めて振り返りニコッと笑った。




「いや驚いた!まさか無色の魔力を使えるとはな!」

「無色の魔力?気のことかしら?」

「おお、そうだ気だ!主がそう呼んでいた!」

縛り上げ、エビぞりに吊られた白虎が嬉しそうに吠える。

夜花子はイラッとして、馬鞭で尻を叩いた。


「ウオッ!鞭から気の流れを感じる!

儂の魂が悲鳴を上げておる!

こんな素晴らしい鞭は久方振りだ!

我が妻と並ぶ鞭使いだ!

いいぞ!もっとだ!もっとくれえぃ!」

ハアハアしながら涎を垂らし、鞭を催促する白虎に馬鹿らしくなり、鞭を投げ捨てると、目の前で行われている歓迎会の席に加わった。


「あの変態は放置プレイが一番効くし!」

ナポリタンで口の周りを赤くしたバステトがニシシと笑いかける。

彼女は猫の獣人で、この世界に来た時は猫になり、荷物の中に身を隠していた。


「大きさも変化するのですか、スパイには好都合ですね。」

萌葱が疑いの目で見ている。


「待つし!あーしは倶利伽羅の妻でそこの変態の従妹だし!

あの変態は目を離すと何かと事件を起こすし!

お目付け役が必要だったし!」

「嘘を言え。

この世界の美味いもん食べたくて着いてきたのだろう。

六花よ、そいつは間違いなく儂の従妹だ。」

白虎がいつの間にか縛めを解いて席に座っていた。


「儂は雌ゴリラの依頼で六花の護衛を任せられた。

近いうち、こちら側で動きがあるらしい。

ついでに、狼牙を鍛えて欲しいとな。」

ビフテキを手掴みで豪快に頬張り、肉の柔らかさに驚嘆する。


「狼牙よ!儂が獣人の戦い方をみっちりと仕込んでやる!

やる気はあるか!」

肉のおかわりを運んできた狼牙に声を掛ける。

狼牙は皿をテーブルに置くと、一度目を閉じ、大きく深呼吸をした。


「よろしくお願いします!」

「よし!早速明日から始めるとするか!

今日は美味いもんをたらふく食わせてくれ!」

ガハハと笑い、お替りの肉を手掴みで豪快に平らげる。

翌日から、狼牙の特訓が始まった。


「狼牙くん、手足が千切れてもあーしがくっつけるし!

安心して稽古するし!」

バステトの応援とも脅しともつかない歓声が聞こえる。

六花はバステトの側である事を考えていた。


「治癒術、覚えられないかな?」

「あれ便利だよね。」

茜の呟きに蒼が応える。


「無色の魔力が使えるなら、ワンチャンありそうよね。」

「珊瑚の言う通り、試してみる価値はあるね。」

「夜花子ちゃん!あたち、がんばって覚えるよ!」

「よし!交渉してみる!」

フンス!と鼻息荒く、萌葱がバステトに近づいた。


「あの!バステトさん!お願いがあります!」

「いいよ!教えてあげるし!」

「治癒のじゅ、え?」

「あーし耳がいいの!全部聞こえてたし!

但し条件があるし!毎日違うメニューのご飯食べたいし!」

「はい!喜んで!」

かくして、六花の治癒の術の特訓も始まる。

15分程して、狼牙が血反吐を吐きながら宙を飛び、女性陣の元に落ちてきた。


「さあ!やってみるし!」

バステトの掛け声で六花は狼牙を取り囲み手を置く。

狼牙は内臓をやられ、瀕死の重傷のようだ。

六花はバステトの教えをイメージして気を流し込む。

(治れ、がんばれ!治れ、がんばれ!治れ、がんばれ!)

破損した部位の組織を結びつけるイメージを頭に描く。

細胞に気のエネルギーを与え、活性化させる。

六花の額に玉のような汗が湧きだし、狼牙に流れ落ちる。

20分ほどで息が落ち着き顔色が元に戻る。


「う、あ。」

狼牙が意識を取り戻した。


「よーし!治癒は成功だし!次、回復の術いってみるし!」

一度深呼吸をして、落ち着きを取り戻すと、体を愛撫するように手を動かし始める。

狼牙は六花の手から暖かい力の波動を感じ、あまりの心地よさに目を閉じ身を委ねた。


「そろそろ再開するぞ狼牙!」

白虎の声に目を覚まし、体がベストコンディションであることに驚いた。


「みんな、ありがとう。」

六花に礼を告げると、再び白虎の元へ駆けていく。

この日、狼牙は18回、三途の川のほとりに立った。




「バステトっち!このオッパイ何が詰まってんだ。」

「ここにはね~ダーサンと子供達への愛がてんこ盛りよ~」

「えっ!子持ちなん?!高校生位にしか見えないよ!」

バステトの乳を揉み揉みする茜が驚きの声を上げた。


「バステトさん、おいくつなんですか?」

「ん~500才超えてから数えてないし!」

聞いた蒼や他の面々の表情が固まった。


「獣人って長生きなんですね。」

「あーし、獣人というより神獣だし。

白虎も同じようなもんだし。

いちおー不老不死だし。

あ!でも魂を滅せられると消滅するし!」

とんでもない事実をさらっと聞かされ、萌葱が言葉を失う。


「もしかして、人の生き血を吸ったりします?」

「吸血鬼じゃないから血は吸わないし!

でも、生気はちょこっと頂くし!」

「性器?」

珊瑚が指で輪を作り、人差し指を抜き差しする。


「違うし!でも、性器を吸うのは好きだし、得意だし!

入れるのも大好きだし!

いやいや!あーしが頂くのは人の生命エネルギーだし。

今でもちょこっと頂いてるし。

わからないでしょ!」

「そうですね、特に影響がありませんし、色々教えて頂いているので、代価と思えば安いものですね。」

夜花子はハアッと相槌を打った。


「それにここのご飯、とても栄養価が高くて、美味しいから生体エネルギーあまり必要ないし!

狼牙くんスパダリだし!一家に一人欲しいし!」

「だめでちよ!ダーリンはあたち達のダーリンだから、あげません!ぜったいダメー!」

「桔梗っち!可愛いし!」

桔梗に飛びつくと乳房で顔を挟んで、頭を撫でまわした。




本日の晩ご飯はハンバーグと温野菜サラダ(春キャベツ、ニンジン、アスパラガス)、キノコとチーズのキッシュ、コーンポタージュ、デザートは野イチゴのムース。

キャベツは茹でればシュウ酸が溶け出すと知り、折角の旬の野菜を食べずにいるのは勿体ないということで、温野菜サラダとして提供したが殊の外好評であった。


食事が終了すると女性陣が早々に部屋に戻り、バステトと会話を楽しんでいるのか、時折キャーと騒ぎ声が聞こえる。


狼牙と白虎は食堂でスモークチーズを摘みながら、ウィスキーを楽しんでいた。


「美味い酒だな。」

「これ1本で安いウィスキーなら100本買えますからね。」

「そりゃ味わって飲まないとな!」

と言いながらグイッと飲み干すと、グラスに並々と注ぐ。


「獣人の真の力とは何なんですか?」

「ふむ、体で覚えるのが一番なんだが、まあ美味い酒の代として教えようか。

まずは、金剛力だ。

これは身体強化の術でな、今の狼牙なら10倍の能力向上が見込めるな。

攻撃力、防御力、素早さが単純に10倍になると思えばいい。

次に魔法抵抗だ。

儂らの体毛に魔力を流し込み、魔法に対する抵抗力を発生させる。

火、水、風、土、闇、光、死の攻撃魔法、精神異常魔法に抵抗できるが、全てを防げるわけではない。

過信は禁物だぞ。」

「俺に魔力はありませんが。」

「この世界に精霊はいないが、六花は気を使って魔力の代わりにしている。

お前も気を習えばよかろう。」

「白虎さん達はこの世界で魔力を使えるのですか?」

「儂らには精霊が憑いておる。

目に見えんが、多分儂の頭の上で胡坐をかいていると思うぞ。」

ハハッと笑うと、グラスを空にして再び並々と注いだ。

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