第24話 変えられた未来・変える未来
帰還2日目 AM5:00
目覚めた少女達の第一声は「お腹が空いた」であった。
「狼牙くん!すぐにご飯の用意して!」
階下に向けて長門が大声で叫ぶと、直ぐに「もう出来てる」と返答があった。
山城、長門、陸奥は簡易テーブルを用意すると、女医長からの「なるべく歩かせるように」との指示に従い、少女達を手助けして席に着かせる。
日向、伊勢、扶桑が吹き抜けを飛び降りキッチンへ向かうと、両手と口を使って、料理を運んでくる。
卵と味噌のお粥、豆腐の卵とじ、にんにく入りしめじオニオンスープ、ミネステローネと消化しやすい病人食が並べられると、早速スプーンを持ったママ達のアーンが始まる。
「ステーキが食いたい。」
粥を一口食べた茜がぼそりと呟く。
「あたちも血がびゅって出るお肉が食べたい。
食べたい、たべたい、食べたーい!」
桔梗の駄々っ子が周りに感染して、お肉食べたい!と騒ぎ始めた。
「病人では無いので、食べたい物を食べさせてよいです。」
女医長の許可を取ると、山城は再び階下に注文を叫んだ。
「狼牙くん!肉ある?!肉!食べれる肉、ありったけ用意して!
あと、焼いて!レアよ!超特急でお願い!」
山城の注文に「おう!取りに来てくれ!」と返答があると、再び扶桑、日向、伊勢が吹き抜けを飛び降りていく。
そして、鍋やタッパを幾つも抱えて戻ってきた。
鍋から大きなチャーシューを取り出し、金属製の大皿に置いて包丁で厚めにスライスする。
赤みの残る肉と肉汁が溢れ出るのを見て、ゴクリと唾を飲み込む音が、はっきりと聞こえる。
肉の赤を見た少女達の目の色が変わり、切り終えた肉に飛び付き、手づかみで貪り食い始める姿は肉食獣を連想させた。
タッパからローストビーフの塊を取り出すと、桔梗が奪い取るように手にして噛み千切り、隣の茜に手渡す。
茜も同様に噛み千切り、蒼に手渡す、皆にいき渡った最後を萌葱が頬張り、グチャグチャと咀嚼した。
切り分ける時間さえ我慢できないのか、塊を奪い取ると皆で回し食いを始める姿に、異世界で何があったのか垣間見えた。
あっという間に、食べ尽くすが「足りない!」と連呼し始める。
粥やスープを勧めるが「イヤイヤ」と首を振り、食べようとしない。
「どうやら、一時的に幼児退行を起こしているようですね。
今のうち食べられるだけ食べさせましょう。
正気に戻ったら、食べられなくなる日が続くかもしれません。」
女医長の言葉に、今は食べさせることが使命と互いに頷きあった。
三度、扶桑達は階下に降りると、焼き上がった肉を切り分け、膨大な肺活量を生かしてフーフーと手づかみできるまで冷ます。
冷蔵庫の肉のストックが尽き、燻製肉をほぼ食べ尽くすと、少女達は再び眠りに落ち、夢を見た。
あれ?樹里さん。久しぶり!なんか凄く変わったね!
うん、凄く可愛い!
え?和也さん?誰だっけ?
あれ?えーと、アナタ誰?
入学式間に合わないよ!急がないと!
急ぐ?どこに行くんだっけ?
あれ?ここどこ?
帰還3日目 AM7:00
「私が、私がみんなを引っ張っていなければ!」
目覚めた蒼が錯乱して絶叫する。
「赤ちゃん!あたちの赤ちゃんどこ!」
桔梗が腹を押さえて、ベッドから飛び降りた。
「痛いよ!痛いよ!」
股間を押さえながら、ベッドの上でのたうつ茜。
「いやあああああ!」
部屋の隅でガタガタと震えながら小さく丸まる珊瑚。
「汚れちゃった、汚いなあぁ。」
宙を見つめブツブツと呟く夜花子。
「うわあああ!」
叫びながら外へ飛び出そうとする萌葱。
ママ達は瞬時に動き、少女達を抱きしめる。
女医達は鎮静剤注射をして回った。
「これから、更に悪化することが予想されます。
一度、専用病棟へ入院することをお勧めします。」
女医長の診断にママ達は苦渋の決断を下す。
少女達は道内の精神科病棟に移送され、治療を受ける事が決定し、ヘリで搬送されていった。
少女達が入院して1週間後、ママ達は彼女らの壮絶な体験を語った録音データを入手した。
ここはどこ?
凄く蒸し暑い。
こんなの着てられないよ脱ご。
喉が渇いた!
え、飲んじゃダメ?
寄生虫?アメーバ?お腹壊すの?
死んじゃう?!
ジャングルをさ迷って3日たった。
飲み水が無い。
水溜まりや小川があるが、細かい微生物の巣窟で飲める気がしない。
手ぶらだったので食料も無い。
毒を持っていそうな虫や生物だらけで、おちおち体も休めない。
明日、ジャングルを抜ける事が出来なければ、小便を飲むことになりそうだ。
今日から順番でおちっこを飲みます。
あたちは珊瑚ちゃんのおちっこを飲みまちた。
一滴も漏らさないよーにおくちをくっつけてチューチュー吸いまちた。
すごくまずかったけど、おなかぺこぺこだったから、もっと欲しくてペロペロちたら、美味ちいお汁がでてきて、いっぱいペロペロちてたら、萌葱ちゃんに怒られまちた。
あたちのおちっこは茜ちゃんが飲みまちた。
そちたら、いっぱいペロペロされて、すごく気持ちよかったけど、すごく疲れまちた。
珊瑚ちゃん、ごめんなさい。
あと、茜ちゃんも萌葱ちゃんに怒られまちた。
何あいつら?
トカゲ男?鬼?豚が立って歩いてる?!
ここって異世界?
なら、チート能力持っててもおかしくないよね!
きっと魔法とか使えるはず!
「業火よ我の敵を滅せよ!インフェルノ・フレア!」
…ダメかー!
みんな急いで逃げるよ!
だめだ!あいつら強い!
なにあれ?魔法?!
火が飛んでくる!
みんな避けて!
畜生!捕まっちまった!
何だよ魔法ってよ!麻痺とか卑怯じゃねーか!
正々堂々と勝負しろよ!
な、なんだよ、おまえ!
チ〇コしまえよ!
ちょ、やめ、無理!無理!無理!
そんなの入らない!
裂ける、股が裂ける!
お願いします!やめてください!
イダ!イダいぃ!
助げで…、お願いします…
ギャアアアァ!
今日で何日目だろうか?
あたし達は砦に連れてこられた。
ここには色んな奴がいる。
亜人というらしい、蒼が教えてくれた。
あたしら、ここでは性処理の道具だ。
毎日壊されて、魔法をかけられる。
次の日には傷がふさがってる。
死にたいけど死ねねえ。
何回か殺されたけど、生き返った。
狂いたいけど狂えねえ。
精神をいじくられて狂えねえ。
魔法って何なんだよ?
お腹が空いています。
食事は1日1回、朝に水みたいなスープにクズ野菜と穀物が入った何かです。
タンパク質はあいつらの排泄物です。
生きるために何でも食べます。
魔法でも病気は治せない。
魔法使いが言っていた。
表面上は変化がないけど、体の内部で病気が広がっていると。
そして、体が耐えきれなくなった時、私達は死ねる。
砦にも優しい奴はいるよ。
そいつらはメシをくれる。
体を濡れタオルで拭いてくれるんだ。
ノミやシラミを潰してくれる。
決して、酷いことをしないよ。
恋人みたいにやさしく抱いてくれる。
頭や体を優しく愛撫してくれる。
でも、そういう奴らはすぐ死ぬんだ。
優しい奴はこの砦では生きていけないんだよ。
あたち妊娠ちた。
セーリが止まって、ずっとこない。
お腹が膨らんでるの。
あたちも赤ちゃんも何回もちんでるけど生き返る。
あかちゃん、お腹でおおきくなってる。
あたち、赤ちゃん産みたい。
そしたら、もうちょっとがんばって生きていられると思う。
伊勢ママとの約束守れると思うの。
早く助けにきてください。
本日二組目の男達が来た。
こいつらは乱暴なやつらで必ずボコられる。
案の定、あたしらを散々ボコって満足する。
三擦り半で中出しして終了。
こいつらの相手が終わった時だった。
砦がとんでもない怪物に襲われた。
男達は慌てて出て行った。
カギを締め忘れてね。
あたし達は部屋から逃げ出した。
砦の内部は炎に包まれていた。
あちこちに炭になった男が転がっていた。
「ざまあみろ!クソ野郎ども!みんな死ね!」
あたしは大声で叫んだ。
そしたら、怪物に気付かれた。
そいつは金ぴかのでっかい蛇みたいな怪物だった。
あたしら怪物と目が合った。
これで死ねるって思った。
でも、死ねなかった。
怪物がすごく悲しそうな目であたし達を見てさ。
何もしないで飛んでいった。
そしたら、棒が目の前に出てきた。
それがストックだと分かって握りしめた。
みんなが握りしめてた。
「助けて!」って叫んでた。
すごい勢いで引っ張られて目をつぶった。
目を開けたら狼牙さんがいた。
入院して2週間後、血液検査の結果が出た。
「結論から言います。
この病原菌に対する有効的な治療手段がありません。
この世界には存在しない未知の病原菌です。
このままでは余命半年と考えてください。」
医師の検査結果報告にママ達は絶望の淵に立たされた。
「何か方法は無いのですか!なんでもいい!
先生の個人的な考えでも何でもいい!」
伊勢が医師の肩を掴み、ガクガクと揺らす。
日向が伊勢を羽交い絞めして「落ち着け」と諭した。
「この世界にはありませんが、その異世界ですか?
そこにはあるかも知れませんね。
この病気は極めて致死率が高い。
しかし、その世界の住人は死滅していない。
ならば、なんらかの治療方法があるはずです。」
扶桑は立ち上がると医師に深々と一礼して、皆を連れて部屋を出た。
「みんな聞いたね、異世界に行くよ。
山城、総理に直談判よろしく。
私たちは自衛隊に掛け合って装備を調達する。
ベイビー達の報告で必要装備の目星は付いてる。
このミッション必ず成功させる!」
2週間後、チーム雌ゴリラと自衛隊特選隊、国防省諜報部と公安特課の選抜隊の計40人が、異世界に派遣された。
3ヶ月後、少女達は順調に回復し退院を迎える。
病院のロビーで狼牙が迎えに待っていた。
「退院おめでとう。
主人達は作戦中で来れないが、君達の退院を心から喜んでいるよ。
どうした?妙にしおらしいな。
お腹が空いてるのか?久しぶりにラーメンを食べるか?」
少女達は黙って狼牙を見つめている。
何かとてつもない決心を抱えた目に見えた。
「旦那様、お願いがあります。
私達全員を花嫁としてお迎えください。」
「よろしくお願いします!」
少女達の気迫の籠ったお辞儀に冗談が感じられない。
狼牙は言葉に詰まり、立ち尽くすばかりだった。




