表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六花と槍の物語  作者: hiddenkai
123/128

第122話 母親の失踪

「母さん、どうしてるだろう。」


摩天楼を見下ろしながら用を足している最中にふと頭をよぎる。

ドリームランドから帰る寸前に星母テラから、女手ひとつで子を育てることが如何に大変であるかを聞いた。


「確かに中学生までは育ててくれた。

嫌な思い出が多いけど楽しい思い出もあるにはある。

かと言って「産んでくれて」「育ててくれて」「ありがとう」という気持ちにはなれないなぁ。」


声に出して自分の気持ちを確かめてから決意をした。


「よし!母さんに会ってみよう!」


萌葱は過去の嫌な思い出を排泄物と共に水に流して立ち上がる。

そして実家へ転移した。


「あっ!スリッパのままだ!・・・まあいいか。」


既に懐かしさを感じる団地の部屋の呼び鈴を押す。

時刻は21時を回っていた。


「この時間なら帰ってるはずだけど。あれっ?」


表札の苗字が消えていることに気付き、電気メーターを見ると回転が完全に止まっていた。


「引っ越ししたのかな。」


ドアに耳を付けて集中するが物音は聞こえない。

ドアノブを捻ると施錠されていた。


「・・・こうなれば。」


転移した部屋の内部はガランとしていて生活の痕跡は見当たらない。

照明は外されカーテンの代わりに白いビニールの幕が掛かり、新品の畳の匂いが充満していた。


「実の娘に一言もなく姿を消したのか。まあこんなもんよね。」


別に野垂れ死にしようが構わないとさえ思っていたが、釈然としないじくじくとした気持ちが湧いてきた。


「絶対に会って文句を言ってやる!」


新たな決意を胸に温かい我が家に帰宅した。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「長いトイレだったな!全部出たか!」


居間に戻ると山城に抱っこされた茜に突っ込まれる。

親指を立てて合図を送ると同じく親指を立てて返された。


「さあ萌葱!待っていたわよ!」


扶桑が両手を広げて迎え入れる仕草を見せる。

萌葱は扶桑の手前で膝をつき真剣な眼差しを向けた。


「蒔子ママ、私の遺伝子上の母親の行方を知ってる?」


扶桑の笑顔がピキッと固まる。

そればかりでなくママ達全員の顔が凍り付いた。


「ど、どうしたの?急にそんなことを。」


明らかに扶桑の声が動揺していた。


「心境の変化かな。

星母テラさんと話をして会ってみたくなったの。

同じ女同士で本音をぶつけたいかなって。

さっき実家に行ってみたら引っ越ししていなかった。

どこにいるか蒔子ママなら知ってるよね?」


「それ本当なの?引っ越ししてたの?」


身を乗り出した蒼がメガネをクイッと上げた。


「うん、転移で部屋の中に入ってこの目で確認した。」


「ちょっと行ってくる。」


そう言うと蒼の姿が消え伊勢が慌てる。

それが皮切りになり茜、珊瑚、夜花子、桔梗が転移して消える。

30秒もしないうちに茜以外が戻る。

5分ほどして茜が戻ってきた。


「どうしたん?!」


ママ達が正座をして横一列に並び、その前に姉妹達が同じく正座をして対面している。

傍らでは狼牙、薄葉、お糸も正座をして神妙な顔をしていた。


「本当に引っ越しして空っぽだった!

向かいのおばちゃんに話しを聞いたら、いつの間にか居なくなったって驚いてたぜ!」


そう喋りながら茜は山城の対面に膝を着いた。


「ママ達の仕業ですよね。

周りに気取られずに引っ越しを完了させるなんて普通はできないもの。」


蒼の問い掛けにママ達は素直に頷いた。


「別に隠していた訳ではないんだ。

ただ・・・聞かれなかったから黙っていただけで。」


言い訳がましく伊勢が答えるとママ達は揃って同意の頷きをした。


「責めてるとかじゃないです。

別にあんな母親がどうなろうと知ったことじゃないです。

ただ、あずかり知らないところで何時の間にか「消されている」とか何かな~と思っただけで。」


「ちょっと待って珊瑚!殺したりしていないわ!本当よ!」


ひどく慌てて陸奥が否定するとママ達は揃って激しく同意の頷きをした。


「まあ別に消してくれても良かったんですが。

その方がせいせいするかもしれないし。

でもその前の文句のひとつでも言いたいかなと思ったんです。」


「萌葱!誤解してるわ!私達は彼女達を保護したの!

放っておくとあのビッチ達は何をしでかすか分からないじゃない!

それに敵対勢力に利用される可能性もあったのよぉ!

信じてぇ!お願いよぉ!」


萌葱の冷めた目を見た扶桑は普段では想像できないほど取り乱し弁明をする。

見かねた狼牙が萌葱の前に座り視線を防いだ。


「なあ萌葱、お前は何をしたいんだ?扶桑を責めたいのか?」


狼牙の一言で我に返り思い出す、自分は何をしたいのかと。


「母さんに会わせてください。」


狼牙は振り向きママ達を見る。

ママ達はとても気まずそうな顔を伏せ口ごもってしまった。


「どうちたんでちか?シン・ママと会えないでちか?」


「桔梗、そ、それがな・・・行方不明なんだ。」


日向が苦しい胸の内を絞り出し答えた。


「つまり保護をして南海の孤島に収容したものの姿が消えたと。」


狼牙はママ達の途切れ途切れの情報をまとめ確認した。


「イケメンホストと酒、食料、ネット設備、ピル?ああ避妊か。

12LDKSの豪邸か大盤振る舞いだな。

各種リゾート設備にレジャー設備か、いたせり尽くせりだな。

それで母親達はその条件に大喜びしたんだな。

まあ当然か、この世の楽園だな。」


狼牙は差し出されたレポートに目を通し読み上げた。


「ビッ・・・彼女達はそれをとても喜んでいたのよ。

イケメンと毎日シャンパンで祝杯を挙げるんだってね。」


「あの女ちっとも変ってないのね。」


長門が当時の様子を話すと夜花子は眉間にシワを寄せ溜息を吐いた。


「移送したのは私達が中華任務に就く前だから9月末くらいね。

移送ルートを知られたくなかったから眠っている間に運びだしたの。

条件を提示したら文句も無く受け入れたわ。

日常生活も問題なかったようね。

報告書にはいつも問題無ししか書いて寄こさなかったしね。」


山城が茜をチラチラ見ながら脂汗を流している。

当の茜は鼻をほじくり欠伸を繰り返していた。


「山城、私が変わる。」


日向は今にも倒れそうな山城を下がらせ説明を続けた。


「変化があったのは1ヶ月ほどしてからだ。

報告書に意味不明の記述が増えてきた。

先物買いで1億儲けただの、FXで3億儲けただの、借金がチャラになったので帰らせて欲しいといった記述だ。」


「シン・ママが帰りたがったでちか?」


「それがな桔梗、ホスト達が帰りたいと申し出てきたのだ。

どうやら「遺伝子上の母上」達が短期間で大儲けをしてホスト達の借金を肩代わりした。


貸主の口座に借入金と利息が全額入金されていたのは事実だ。

その頃私達を作戦遂行中で管理は別部門で行っていたので、報告書を読んだだけだがな。」


ここで日向が茶をすすり一息つく。

そしてレポートを用意した長門に引き継いだ。


「ホストのレポートを抜粋すると「遺伝子上の母上」達はある日を境に人が変わったとあるわ。


雰囲気が全くの別人になり言葉遣いや物腰、動き方も激変したとあるの。

浴びるように飲んでいたお酒もぴたりと止め、ホストの誘惑にも全く動じないどころか彼らの生き方を窘めるようになったと。


そこで借金があることを知りネットで先物買いや為替相場を始め、たちまち数億を稼ぎだして借金の返済に充てた。


更には稼いだお金を全額慈善団体に寄付したの。」


「それは本当に母のことですか?全くもって信じられません。

お金があればホストに貢ぎシャンパンタワーで喜ぶ女ですよ。」


夜花子は首を振って全否定をした。


「でもね事実なのよ。

彼女達の名義で各種振込記録が残っているし感謝状に写真も残っているわ。


彼女達が消えたのは慈善団体と記念写真を撮影した翌日、朝食を終えてホストが食器を片付ける僅かな時間で部屋から忽然と姿を消したとあるわ。

勿論島中をくまなく探したけど手掛かりは無し。

神隠しにあったようだとレポートにあるわ。


それでなんだけど・・・ここに写真があるの?見る?」


長門が差し出した感謝状に張り付けられた写真を見る六花の表情が険しく変わる。

皆が眉間にシワを寄せ目を細め首を傾げた。


「顔は確かに母さんですが・・・全然違う!

こんな慈愛に満ちた優しい笑い方をしない!私は見たことがない!

これは誰なの!」


萌葱が激高の叫び声を上げ転移すると姉妹達はすぐに後を追った。


「ダメだ!しばらく放っておいてやってくれ!」


狼牙は後を追おうとするママ達を止める。

薄葉とお糸は消沈するママ達を慰めた。


「難しい年頃だもの仕方ありんせん。

今迄がイイ子過ぎたように思いんす。

これを機に本当の母親との関係が改善するといいのでありんすが。

早う帰っておいで娘たち。」


薄葉はお腹を擦りながら六花の帰りを祈った。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


萌葱は四次元に転移すると母親の時間の窓を探索するが見つけることができなかった。


「萌葱!落ち着きなさいよ!おかしいよ!」


珊瑚は今にも爆発しそうな萌葱に抱き着き宥める。

姉妹が次々と抱きつき声を掛けるとようやく落ち着きを取り戻した。


萌葱「・・・ごめん。なんか凄く気に入らくてムシャクシャした。」


夜花子「そうだよね!わかるよ!なにあの笑顔!」


蒼「私もあんな笑顔見たことない!」


桔梗「あたちいつも怒った顔しか記憶にないでち。」


茜「笑った顔なんて男に媚びた笑顔しか知らないし!」


珊瑚「私が知ってる笑顔は私が服従した時の歪んだ笑顔だったよ。」


六花は揃って母親の見たことのない笑顔に傷ついていた。


「くっそー!めっちゃ腹立ってきた!

絶対会って嫌味のひとつでも言ってやる!

そんでその場で絶縁宣言してやる!」


蒼の絶縁宣言に姉妹は同意し手を重ね合わせた。


「さて、どうやって見つけようか。」


夜花子が手を組みウ〜ムと考え込む。

時間の窓が見つからないということは、より高次元に転移した可能性があるがそれを実現させるには神の力が必要である。


「外なる神がまだいたね。やつらに当たろう。」


萌葱の提案で6体合体をして神化する。

ロッカAOと名付けた神格の両足に蒼・夜花子、両手に茜・珊瑚、下半身が桔梗で頭部上半身は萌葱で構成されロボより一回り小さい。

しかし神格は依然この宇宙で最強クラスであった。


ロッカAOの意識内で元外なる神2柱から事情聴取が始まる。

合体した六花の意識は融合し1柱のペルソナとして具現化する。

それは六花の特徴を併せ持つ若く美しい女神であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ