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六花と槍の物語  作者: hiddenkai
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第102話 歌舞伎町一番街の奇跡①

「今回のキングブラックマンティコアはかなり手強かった!」

伊勢はグラスに並々と注がれた地獄銘酒鬼殺しを一気に飲み干すと興奮して語りはじめた。


「魔法の無効化と金剛石を上回る外骨格、ナパーム並のブレスと突撃耐性を無効化する毒針攻撃が強力だった。」

「そうそう、狼牙くん3回瀕死だったのよ!」

すっかり酔いの回った山城がケラケラと笑いながら狼牙の肩をバンバンと叩いた。


「まさか金剛力と身体強化の重ね掛けした防御を突破されるとは思わなかった。完全に見くびっていたよ反省だ。」

ばつが悪そうに頭をポリポリと掻きグラスをグッと煽る狼牙。

前回のキングブラックスパイダー、前々回のキングブラックスコーピオンの毒牙・毒針を防いでいたことから大した事は無いと油断した結果である。


「それでどうやって討伐したんですか?」

アルジーに聞けば詳細が判明するのだが家族の団欒は会話で作りたい六花はあえて言葉にして話しかけていた。


「最近秘孔に興味があってな。

色々と勉強するうちに死光が見えるようになってきた。

そこを突けば即死に至る秘孔は何よりも黒く輝く。

そこを突いたらあら不思議!一発でヤツの体が爆散した。」

酔いですっかり饒舌になった日向が乳を吸う桔梗の頭を撫でながら慈母の微笑みを浮かべた。


「そこに至るまでがたいへんだったけどね。

私と山城、陸奥、長門、伊勢で攪乱して日向の開眼まで時間稼ぎして、4回位火だるまになったっけ?」

「5回よ、あんた1回瀕死になったから記憶から抜けてるのよ。」

扶桑が焼死寸前であったことを長門が教えてくれた。


「ある意味狼牙くんは功労者だわ、3回も時間稼ぎをしてくれたわけだしご苦労様よ。」

陸奥は狼牙の頭を撫でて3回の瀕死を労った。


「付き添いはもしかして小鬼兄弟とビッチーズですか?」

「いや、毎回別人が付き添いに来るが今回はヘルからは若い悪魔の男女で地獄からは凸凹コンビの黒と緑の鬼男子だったな。

最初は仲が悪かったが旅を続けるうちに打ち解けていたな。

別れ際師匠を目標に共に研鑽をすると張り切っていたよ。」

狼牙がニコニコして話す様子から厳しい冒険のよい清涼剤になったのだなと六花は思った。


「今回は海に棲むキング・ブラック・クラーケンの討伐だ。

1ヶ月以上の航海が予定されている。

1週間以上家を空けるが寂しくて泣くなよ。」

そう言い残し地獄直通ゲートから狼牙とママが旅立っていく。

四次元回廊を経由せずに済むように桔梗がゲートを作りあげた。


「まだ四次元回廊を開くことは無理?」

(子供達には身体能力向上と通信の高速化にリソースを割くよう指示しています。次元に干渉するにはまだ十分な数を揃えることができていません。)

「ならお話しくらいできそうかしら?」

(時間を決めて翌日に負荷がかからないようにするならば。)

「それでいいわ、時間調整よろしくね。」

(了解です、六花。)

アルジーとの会話が統一された六花の思考であることに当の本人達も違和感を持たずにいた。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「さて久しぶりにチームRのゲリラライブしちゃおうか!」

何やら悪そうな顔をした珊瑚の提案に全員が賛成した。


今日は性夜の日の前日で、何故かこの2日間に限り恋人達はSEXをしたがり宿泊施設が満室となる。

本命達が地獄に旅立った今手持ち無沙汰な六花は新宿シネシティー広場に薄葉とお糸をつれて瞬間移動をした。


「寒いし腹へったし仏待ち疲れたし。」

家出少女マリリン(仮)は同じく家出をして辿り着いた少女カレン(仮)と拾ってきた毛布1枚に身を寄せ合って暖を取っていた。


共に中学2年生で複雑な家庭環境で育った身の上に親近感を持ち、出会ってから片時も離れずここでたむろっている。

家から持ち出した僅かな金はとうに底を尽き、ボランティアからの配給や2人一緒でパパ活まがいのデートをしては日銭を稼いでいたが売りだけはしなかった。


「なんか面白いことないかなぁ。巨神兵が降ってこねえかなぁ。」

ガタガタと震えながら呟くカレンの息が白く凍り付く。

外気温は零下に近づいている。

2人は共に手を握り合い息を吐きかけて耐えていた。


「はい、これあげるから私達のライブ見てください。」

2人の目の前に木製のコップに注がれた味噌汁とラップに包まれたオニギリが4個差し出される。

驚いた2人が顔を上げるとそこには憧れのアイドルAKBFのもっとも見慣れたコスチュームを着た美少女がニコニコと立っていた。


マリリンとカレンは味噌汁とオニギリを受け取ると、なんの疑いも持たずに直ぐに味噌汁に口を付け冷え切った体を温めた。


「あんたボランティアさん?」

オニギリを食べようとしたマリリンがふと思いつき尋ねると少女は首を振りハッキリと答えた。


「私はチームRリーダー珠樹 珊瑚!アイドルの頂点に立つ女王!

よーく覚えておいてね!」

マリリンとカレンはオニギリを頬張りながら、左手を腰に当て右手で中天を差し仁王立ちする珊瑚の姿を見上げた。


周りを見ると同じコスチュームのJK5人とド派手な着物を着た中年女性、地味な着物の女の子が老若男女問わず食料を配っている。

皆が一様に暖かい食事の配給に感謝をしていた。


「珊瑚ちゃん!ご飯ありがとう!友達になって!」

マリリンとカレンは思い出したように礼を告げ、スマホを取り出しQRコードの交換を要求する。

珊瑚は快く応じ更に3人で写メを撮ると早速LINEで送受信を行った。


いつのまにか食料の配給を聞いたキッズやホームレスが続々と集まりはじめ広場は人で溢れ返っていた。


チームRと和装女子は手提げ袋から次々と食料を取り出し手渡すが一向に袋が空になる様子がない。

全てのキッズやホームレスに食料が行き渡ると一向は東宝シネマズ前に集まり一列に並ぶと広場に向き直った。


「みんなー!今からチームR性夜特別ライブやるよー!

色々不思議な事が起きちゃうけど気にせず楽しんでねー!

私はチームRのリーダー珠樹たまき 珊瑚です!

みんなに夢と希望をデリバリーするよっ!よろしくねー!

ええとっ!今日は寒いね!まずはあったかくしちゃおうかな!

チーム1の天才児この子が居れば魔法なんてお茶の子さいさい!

杜若かきつばた 桔梗!みんなを寒さから守ってあげて!」

「桔梗でち!いくでち!みんなを守れ!ママのラブバリア!」

桔梗が両手を上げると広場上空にオーロラの幕が展開し包み込む。

すると寒風がぴたりと止んだ。


「チーム1の物知りで口喧嘩なら誰にも負けないよ!

金青こんじょう蒼!みんなを温めてあげて!」

「蒼です!よろしくー!いずるは夏の陽光!サマーサンフラワー!」

差し出した蒼の両手から大きなヒマワリが出現すると辺りの気温が一気に20度まで上昇した。


「みんなー!元気ないねー!驚いちゃったかな?!

チーム1情が濃くてちょっと重いけど愛の塊のような女!

濡羽ぬれは 夜花子やかこみんなを幸せな気持ちにしてあげて!」

「 夜花子よ!私の愛は全てに平等に降り注ぐ!ハートフルレイン!」

空中にピンクの光の粒子が振りまかれると歌舞伎町全体がなんとも言えない安らぎと安心感に包まれた。


「ライブの前にオープニングショーをして盛り上げようか!

チーム1元気で勇気のある朱殷しゅあん 茜!

チーム1責任感が強くて私達のおねえちゃんキャラ花園はなぞの 萌葱もえぎ

2人の迫力あるダンス!行ってみよう!」

「オレが茜だ!よろしくな!」

「萌葱です!今日は一生懸命頑張ります!」

2人は向かい合うとペコリと礼を交わし演舞をはじめる。

その美しく優雅な動きに人々は目のみならず心まで奪われた。


「さあっ!盛大な花火でライブ開幕だよ!」

珊瑚の指先から数百の光弾が打ち上げられ、夜空に虹色の光が一斉に花咲くと人々から大きな歓声があがった。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


この日、五番組 敏明はツイていたどころでない幸運に巡り合う。

配達が終わりビルから抜け出たところで、今まさに始められようとしていたオープニングに出くわしたのである。

すぐさまバックから日頃から持ち歩いている4Kデジタルビデオカメラを取り出しながら全体が見える位置を陣取る。

そして同志のLINEに写メを送ると直ぐに幾つもの返信があり着信音が鳴りやまない。

撮影の邪魔になると判断しスマホのボリュームを切るとカメラを接続しライブ配信を始めた。


そして強運に恵まれた男がまた1人。

この日、新宿歌舞伎町の様子を番組撮影していたロケ隊が、偶然チームRが食料を配給する場面と遭遇する。

ボランティアが無料で配給することはここではそう珍しいことではない。

ただコスプレ少女と花魁・禿の組み合わせがテレビ向けで絵になる。

ディレクターの嬉無うれない 英蔵えいぞうはすぐに、プロデューサーの小茂呂おもろ 奈記なきに連絡を取り撮影許可を求める。

小茂呂はチームRの写メを見て天啓を受けたように即OKを出した。


「奈記ちゃんからOK出たぞ!カメラ回しておけ!撮影許可貰ってくるわ!チャン茄子行くぞ!」

嬉無の後をリポーターの地見じみ 茄子なこが着いて行く。

カメラマン妻羅つまら 那衣絵ないえはコスプレ少女達の撮影を始めた。


嬉無は保護者であろうと思われる花魁を呼び止める。

振り向いた花魁の顔を見て嬉無の体が硬直した。


「み、瑞樹!」

「はて?わっちは薄葉と申しんす。誰かとお間違いではありんせんか?」

「いや、申し訳ありません。私は嬉無と申します。」

名刺を差し出し撮影の許可を求めた。


「ちょっと待っておくんなんし。」

名刺を受け取るとコスプレ少女の元に赴き話し合いをはじめる。


「まずったかな?薄葉さんは付き添いだったか?」

嬉無はコスプレ少女がへそを曲げないことを祈りつつ2人を見つめる。


「ようござんすよ。とびきり綺麗に撮影しておくんなんし。」

クフッと笑い掛けられ嬉無の心臓が大きく跳ね上がる。

薄葉は背を向けると振り返らずコスプレ少女達と合流した。


「驚いた、そっくりだ。」

「あら、嬉無さんってベタなナンパするんですね意外です。」

「違うわい!知り合いの女性にそっくりで驚いたんだ。

まるで生き写しだった、こんな奇跡があるんだな。」

「古典的ですね!で誰なんですか?」

「死んだ女房だ。」

2人は撮影クルーと合流するとチームRの取材撮影を本格的にはじめた。


「局長!至急中継クルーを現地に送ってください!」

東京ローカル放送局局長室に小茂呂は直談判に訪れた。


「おいおいどうした?冷静沈着な小茂呂らしくないな。」

「とんでもない事が東横広場で起きます!

嬉無が撮影してますがこれはライブで放送する価値があります!

かつてないほどの数字が取れます!

撮影許可は取れてます!どうかご英断をお願いします!」

そう宣言すると頭を叩きつける勢いで土下座をした。


「君がそれほど断言するなら確かなんだろうな。

よし、許可する。どうせ今夜は数字の取れない番組ばかりだ。

編成調整は私で手配するが指揮は誰にさせるんだ?」

「ありがとうございます!私自ら現場に行きます!」

小茂呂は脱兎のごとく部屋を出ていくと10分後には自ら機材を担ぎ、中継クルーと共に現場に向かった。


「間に合った!」

今まさにライブが始まろうとする時、放送局と中継車が繋がりテレビにチームRの姿が映し出された。

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