第99話 異世界編~Rokka of Revenge~緊急再生タスク
「茜ー!!!」
2人は茜に抱き着き引き抜くと空を飛び砦の貯水槽に飛び込んだ。
ジュワーと音を立て水が沸騰し湯気がもうもうと湧き上がる。
2人はありたけの気で治癒を唱え続けるが損傷が激しく効果が見られない。
アルジーは出来る限り継続して治癒を施すように訴えかけた。
「茜!死ぬな!死んだら許さないぞ!」
「大丈夫だ、まだ死んでない!意識が語りかけてくる!」
珊瑚と蒼は気力が尽きるまで治癒を施し続けた。
「もう治癒が・・・気力が尽きた。」
(間に合いました。珊瑚、蒼すぐに全裸になってください。
そして茜を抱きしめてください。
一刻の猶予もありません、急いで!)
初めて聞くアルジーの声に急かされ全裸になると茜を抱きしめる。
茜の体は炭のように硬かったが僅かに温もりを感じた。
(これより緊急再生タスクを実行します。
しばらく意識を失いますが私達がお守りします。
安心してお休みください。)
すると急激に眠気に見舞われ意識を失った。
劉備、孔明、五虎将軍は貯水槽に落ちた三花を追って衝撃的な光景を目にする。
体中に重度の火傷を負っている珊瑚と蒼が炭化した茜に必死に気を流し込んでいるように見える。
彼らには茜が死んでいるようにしか見えなかった。
「仲間の死で錯乱してしまったか・・・」
目頭を押さえながら黄忠は呟くと2人を止めようと踏み出す。
するといきなり着物を脱ぎ全裸になると茜に抱き着いた。
あっけにとられていると2人は意識を失ったのか水の中に崩れ落ちる。
一向が助け出そうと貯水槽を覗き込むと、赤く光り輝く糸状の物が2人を包み込みあっという間に繭を作りあげていた。
「ウワッちっ!」
馬超が水に手を入れると電気に似た刺激を感じ手を引っ込める。
「あの繭は自己防衛のためのものでしょう。
今は何もしないのが得策かと思います。」
孔明の説明に皆は頷き、時が来るまで置いておく事に決めた。
「さあ、砦の復旧を始めよう。負傷者を救出せねばならない。」
劉備は生き残りを集めて復旧の指揮を始めた。
珊瑚(茜!あんなになるまで無茶して!心臓が止まりかけたよ!)
蒼(でも茜のお陰であいつを殲滅できた。よくやったよ!)
茜(オレ1人じゃブッ飛ばすのは無理だ!珊瑚と蒼のナイスアシストのお陰だな!)
珊瑚(私達みんなで倒したのよ!誰ひとり欠けても無理だった!)
茜・蒼(そうだな!)
珊瑚(ところでここはどこかしらね?)
蒼(緊急再生タスクって言ってたな。)
茜(なんかよ、お前たちとひとつになっているみたいでさ。
すんげえ気持ちいいんだけど!)
珊瑚・蒼(分かる~!)
3人は繭の中で溶けあってひとつとなっている。
失った茜の肉体とアルジーを短時間で補填するための緊急策であった。
スープとなり急速に細胞を培養しても足りないことから、優先度の低い部位の再生を止め再度身体が形成された。
3日後繭が解けて三花の身体の中に戻っていく。
貯水槽の水は全て繭に吸収され干上がっている。
3人はほぼ同時に覚醒し茜が元通りになっていることを喜び合う。
砦に三花の喜びの声が響き渡り、直ぐに悲しみの悲鳴が響き渡った。
何事かと劉備と孔明が駆け付け、貯水槽をそっと覗き込むと全裸で膝を抱えて頭を突き合わせていた。
「どうしたんですか?なにか異常がありましたか?」
頭を引っ込めた劉備が問い掛けると少し間を置いてから、「なんでもありません」と力無い声が返ってきた。
「食事を用意しましょうか?」
「・・・お願いします。」
とりあえずは食欲はあるようで少し安心した劉備と孔明は食事の手配に砦に戻った。
「なんで?なんで胸が無くなってるの?!」
蒼は胸がDカップから以前の貧乳より更に下の絶乳になっていることに気付き悲鳴を上げた。
それは蒼のみならず、茜、珊瑚も同様であった。
「私は元々Dだったのよ!アルジー!どういうこと!」
珊瑚の魂の叫びにアルジーは冷静かつ合理的に話しはじめた。
(私と茜の欠損部の補填を優先して再生を行いました。
胸部、腹部、臀部の脂肪を分解、タンパク質に再合成し肉体を再生、各自重量が25%減少しましたが筋肉量維持に成功、重量減少により身体能力が10%上昇しています。
これはWin-Winと評価してよいと考えます。)
「ちょっと待って!この身体どう見ても女の子じゃないよね?!
どこの修験者?ダルシムも真っ青よ!」
珊瑚が激しく嚙みつくがアルジーは無視して別のタスクを始めていた。
(次元間通信傍受、回線固定・・・完了。これより萌葱との通信回線を開きます。)
「えっ?!」
驚いたのも束の間、茜の前に萌葱、夜花子、桔梗の姿が現れた。
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「大丈夫でち!脂肪なんてすぐに蓄積されるでち!」
既に以前のふっくらさんに戻りつつある桔梗が胸を張って宣言する。
「桔梗は食いしん坊だから参考になりません!」
「頭を使うとお腹が減るでち!脳が糖分を求めるでち!」
互いに譲らない珊瑚と桔梗を置いておいて、萌葱達は囚われている可能性が高いママ達の情報の共有を始める。
「とにかく明日の早朝殴り込みをかける!一刻の猶予もねえ!」
茜は今にも飛び出していきたい気持ちを押さえつけていた。
「その意見には賛成だけど、私達も参戦することはできないの?」
(座標の固定と能力の開眼に今少し時間が必要です。)
「どの位の時間が必要?」
(条件付きですがおおよそ24時間以内に完了する予定です。)
「条件とは?」
(演算と改造に大量のエネルギーと睡眠が必要です。
要は「喰っちゃ寝」をしてください。
最低でも30000kcalと18時間の睡眠が必要です。)
アルジーの要求に六花の背筋が凍りつく。
「・・・豚になる。」
夜花子がぼそりと呟く。
「私達には丁度いいかもしれない。」
蒼がシシシッと含み笑いをした。
「茜、ここは足並みを揃えましょう。
こっちでもあなた達がいないとややこしい事態になるわ。
そっちでも6人揃えば無敵よ!」
「・・・わかった、萌葱のいう通りにする。」
「ありがとう茜!それでは状況を開始します!
能力開眼時間から予測してこちらの式典を先に済ませます。
6人揃って挨拶した後にすぐそちらに跳躍してママ救出作戦を実行します。みんなたっぷり食べてしっかり睡眠を取ろう!」
「応!」
通信を終えた六花はそれぞれの世話役に食事と寝所の手配を依頼する。
劉備は大量の食材の手配を五虎将軍に任せ、関羽、馬超、趙雲は街に買い出しにでかけ、張飛と黄忠は狩りに出かけた。
村長は閻魔との昼食会メニューを特盛に変更させ、いつでも食事が取れるように高カロリー食材を用意させた。
こうして2人の協力の元「オペレーション喰っちゃ寝」が発動された。
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地獄側
昼食会会場に案内された三花は用意された料理を見て小さな悲鳴を上げる。
タワー盛りされされた料理がテーブルを埋め尽くし、頂上にそれぞれの名前が記入された旗が立っている。
この量に閻魔と招待客も驚き呆然としていた。
村長から「三花に食べる時間を与えるように」と念押しされた閻魔は挨拶もそこそこに開催を宣言、直後三花は競い合うように料理を食べはじめる。
大人でも持て余す量の一皿がみるみると減っていきやがて空になる。
その姿は食事というより補給と言ったほうが適切であった。
口いっぱいに頬張り水分で流し込む。
胃に落ちた食材は瞬く間に消化吸収され高カロリー粘液に変換され腹部に貯蔵される。
閻魔と招待された客は食べっぷりに驚き、一向に膨らまない腹を見て不思議に思うが誰も口に出さない。
三花の迫力に圧倒された客は誰も近づかず、結局話すことなく全ての料理を平らげ昼食会は終了した。
「現在カロリー摂取量15000kcal目標値50%です。
エネルギーの腹部への圧縮貯蔵完了、これより3時間の睡眠モードに移行します。お休みなさい。」
VIPルームに戻り布団の上に横になるとアルジーから簡単な報告があり、即時強制睡眠が実行される。
以降3時間毎の補給と睡眠で三花の腹が妊婦のように膨れ上がった。
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中国側
慢性的な食糧不足が続く中国では街へ出ても大した量を揃えることができない。
米、小麦粉、砂糖、塩、油などは大袋で入手できたが、配給制の肉や魚、野菜類は僅かな量のみであった。
砦に戻ると総出で大釜で米を炊き、小麦粉を練り麺と皮を作る。
襲撃で食料庫を失ったものの残った食料をかき集め炒め、焼き、煮る。
やがて張飛と黄忠が戻り、鳥3羽と小鹿を担いで戻ってきた。
「この量で3人に3万kcalは無理だな、困ったな。」
劉備は頭をポリポリ掻きながら茜と戯れる野生のパンダを見た。
「あれを喰うか・・・。」
孔明ぼそりと呟くと茜がバッ!と振り向くとパンダを背にする。
「こいつはダメだ!さっきオレの子分になったんだ!」
劉備と孔明はガルルッ!唸り声を上げる茜の背後でコクコクと頷くパンダを見て、「意思疎通が可能なのか?」と驚きつつも呆れた。
劉備は3人を呼び出し食料が揃えられない事を伝える。
食糧難である事と野生動物も狩猟で数を減らしていて、中々見つからないと説明された。
「カネカネがブッ飛ばして欲しい奴がいるって言ってたから、そいつを狩ってくる!なんでもでかくて狂暴らしいぞ!」
「カネ・・・カネ?」
「子分パンダな!オレの名前から命名した!絶対食うなよ!」
茜の圧力に圧倒された劉備は首を縦に振る選択肢しかなかった。
3人はカネカネに跨り空中を移動し目的地へ向かう。
カネカネは何故自分が空を飛んでいるのか理解できず、ブルブルと震えながらも健気にナビゲートをしている。
目的地は巨大な密林の窪地で周囲と植生が違っていた。
でかくて狂暴な奴はここを住処としていて夜になると飛来し、パンダやクマ、シカなど体の大きい動物を獲物として狩りをしている。
カネカネの母はそいつに食われたと教えられた。
(観測結果が出ました。
窪地はほぼ円形で直径が10km、深さ推定50m。
周囲と比較して気温+13.6℃、二酸化炭素濃度2000ppm、植生及び大気成分から白亜紀時代の環境と推察します。)
「ということは・・・恐竜の生き残り?」
「空を飛ぶってことは翼竜かしらね?」
(珊瑚、蒼、恐竜が生息するには生息域が狭すぎます。
多数の生命反応がありますが昆虫、小型生物類と思われます。
大型肉食恐竜が白亜紀から代を重ねて生き永らえることは不可能と推察します。)
「でっけえ奴の生命反応はないのか?!」
(地下もしくは水中などに潜られると見つけることはできません。)
「誘き出すか!カネカネ!ジャングルスレスレを飛ぶぞ!」
言うが早いか急降下して樹木の先をかすめて飛行する。
3人はジェットコースターのノリでキャーキャー騒ぎ、カネカネは糞尿を撒き散らすと目を開けたまま気絶した。
撒き散らされた糞尿の匂いが濃密な密林の空気と混じり合い、洞窟に潜む窪地の主の元に届く。
窪地の主は巨体を起こし巣穴から抜け出すと翼を広げた。




