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Vな姉弟

我が姉は暴君である

作者: 慣慣

vが好きだが、そこまで詳しいわけではない作者が書きます。何卒、ご容赦を




我が姉は暴君である



正直に言って、あんな奴のことを姉などと呼びたくないのだが、世間的に見て俺は「弟」、あいつは「姉」なので、あいつを語る上では、まず初めにこう言わざるを得ないのだ


 

もう一度言う


我が姉、夕坂冬火(ゆさかとうか)は暴君である




『口調が真剣で草』

『こいつの周りだけ空気重くね?www』

『なんでこんな雰囲気になってんだよ‥‥』

『ど う し て こ う な っ た』




やれやれ


リスナーどもめ戯言をほざきおって



まぁ、いい

説明しよう




始まりはつい一時間前の事‥‥









「おらァッ!行け行け~!!」



『お~、行け行け!』

『なんかすごくうまくなってね?こいつ』

『飲み込みだけはいいからな』



「おいお前ら!遠回しに飲み込みだけしか良くないってディスってね!?」



俺の名は夕坂(ゆさか)秋海(しゅうかい)


花の高校生


見ればわかる通り(?)学業の傍らvチューバ―をやっている


vチューバ―をやっている理由は、口にするのもおぞましい出来事だが、冬火に勧められたからだ

あいつは書類上、血縁的に見ても俺の立派な姉なのだが、俺はどうしてもあれを姉と呼ぶ気にならない


何故かって?


だって、嫌だから




「うおっ!来たぁ~!!

 行け行け行け行け~!!!

 

 ‥‥‥‥‥よッッしゃああぁ~!!!!」



『‥‥‥(耳が逝った)』

『よッッしゃああぁ~!!!!(爆音)』

『キーン‥‥ここは空の上‥‥‥?www』

『萎えたわ。見るのやめます』



あ、やべ



「‥‥‥ヒュ、ヒュー‥‥。知りませーん‥‥‥」



『お前のせいだろ』

『しっかりしろよ。二年目ェ~www』

『未だ、叫ぶことをやめないよな。こいつww』

『こいつの場合は、叫んで喋り倒して、が仕事だからなwww』

『それある意味、vチューバ―の鏡‥‥』

『あ、やべ』

『うっかりほめちゃった‥‥』



おい



まぁ、あれに勧められたのには、俺なりに訳がある

それがこれだ


俺は昔から、話すことが大好きで母が帰ってきたらまず、俺の話、聞いて聞いて!で

大好きなゲームをしている最中でさえも母に話しかけたり(あれは除く)、意味の分からない事を口にしながら敵を撃ったりと、朝から晩まで、年がら年中、しゃべることをやめない落ち着きのない奴だった


そんな俺にキレた(※数えるのもバカらしい何万回目)愚姉が言った

あれはキレやすいのだ。うるさいだのなんだの、それこそ年中、文句を言ってくる



『もう、お前。実況者か何かになれよ!(姉、魂の叫び)』



それに俺はピンときた

なら、なろう!と


当初は実況系?のユーチューバーになろうと思っていたのだがあれが、「この叫んでばっかりのやつが私の弟だと知られたら死にたくなるからやめろ」的なことを高圧的に言ってきたのでやめた。おい


ということで、vチューバ―になった次第である



お判りいただけただろうか



俺の人生は不肖ながら、我が姉(あれ)によってメイクされていると言っても過言ではないのだ


お陰でvチューバ―デビューして二年目、消してバカには出来ないぐらいの人気を誇っている。ついでにある程度、金も稼いでいる


勘違いするな。感謝しているわけではない


だが、俺は盛大にこの仕事を楽しんでいるわけなので、一ミリくらいは(心の中で)感謝してやろうと思ったけだ(そしてついでに、ダラダラしてばっかのあれの目の前でドヤ顔をして、金を見せつける)


なのに


なのに!



「うるせ~~~えッッ!!!!」


「?‥‥‥げェッ」



『え、なに』

『事故った?』

『女の声か?』

『声、デケェ‥‥』



どたどたと部屋の外が何やら、騒がしいと思ったら‥‥



「何騒いでんだ!愚弟があぁッ!!」



『キーン、再び』

『これもしかして、こいつの姉じゃね?』

『いつぞやに語ってた?』



「‥ッ‥‥、‥‥愚姉‥‥‥」



あ、あっぶねぇ~‥‥


アレの乱入に驚きすぎて、姉の名前、言っちゃうところだった‥‥やべえ


てか、コレは結構愚姉、激おこだな。しおらしくしとこ



「あ?」



ガラ悪ッ!



『はい!確定!』

『秋海の姉が乱入してきたぞ~!!』

『てか、ガラ悪』

『ぐし‥‥?‥‥ってなに?』

『知らん。愚かな姉ってことじゃね?』



「ぐ、愚姉‥‥配信中‥‥‥」

「あ!? 

 知るか。お前の都合なんて知ったこっちゃねぇわ」



『ほとばしる、お姉さま感』

『なんだろう、バイキングの女船長みたい』

『声、カッコよ』



横暴‥‥



「いや、でも生配信‥‥

 愚姉、流れちゃってる‥‥‥」

「だから、知るかっつってんだろ!言ったことは一回で理解しろや!」



そういって愚姉は酷く苛立ったように、眉を吊り上げ、視線を鋭くオレに視線を向ける



「あのな~、私は文句を言いに来たんだよ。‥‥分かるか?」



『バカにされている件』

『草』

『なんだろう、すごく可哀そうなものを見る目で言われたような気がする』

『お姉さま‥‥!』

『早くも信者が‥‥ww』



心底バカに、かつ可哀そうな物を見る目で問いかけられた俺

ふふふ、ここではいと言うような俺ではない


この暴君の弟を何年、やって来てると思ッとんのじゃぁ!

ここで俺が言うことはただひとーつ



「‥‥‥‥わかんなーいw」


「‥‥‥」 ピク



『あ』

『あ』

『今からものすごく低レベルの争いを見るような気がする』

『煽ったな。そして煽られたな』



煽ることだけだ!!


ふははは、見える。見えるぞおぉ~!!

あいつのこめかみがピクリと動いたのが。キレの数値が再度上がったのがぁ~ww



「テメエ‥‥今すぐ、配信をやめろ‥‥‥」

「あ?」



『ヤメナイデ』

『最後までこの喧嘩を見たい』

『わくわくっ』

『俺たちの野次馬精神がほとばしる!』

『一緒にするな‥』



やめるわけねえだろ‥‥ここまで来て‥‥‥



「‥‥‥そうか、まぁ、いい

 それより!!! 私は叫ぶのをやめろと、今まで何回も!何万回も!!言ってきた

 

 お前は“私のおかげ”でvチューバ―になり!金を稼いだ!!

 

 それまで私はおざなりな防音の中散々、我慢してきた!!そして、お前は簡易防音室を手に入れたな!!??」


「‥‥あ、はい」



『え、こわ』

『執念と?と恨みがすごい』

『そうだな、散々叫んできたな。こいつ』

『なんか可哀そう‥‥』



「それなのに!!どういうことだ、愚弟があぁッ~!!

 性懲りもなく、お前は叫んで叫んで喋って話して!防音室の体を成してない声の響きようだわ!しかも!配信でベラベラ喋ってるくせに、なんで普通の時にも喋ってんだよ!!毎日毎日毎日、気がふれそうになるのをどれだけ!何回!、我慢してきたことか!!!



 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥死ね」




爆発したかの如くつらつらと愚姉の口から出てくる恨み言と罵倒

その最後にふっと静かになって、姉は短く「死ね」と言ったww



『ええぇ~‥‥』

『怖い。単純にコワイ』

『最後、ふっと冷静に「死ね」って言うの冷や汗出すぎてやばい』

『これ、ガチなやつだぁ~。ガチな叫びだぁ~』

『秋海、もうお前、やめてやれよ‥‥』

『姉孝行してやれ。お前も大人になる時だww』



「だが、ことわーる!!」

「あ!?」

「俺が明日死ぬようなら考えてやるよ。姉上様ぁ!?」

「なら、今すぐここで私が殺してやるよ!!表出ろッ、秋海!!!」

「それ、趣旨が変わって来てませんか~?www」

「死ね!殺す!

 今すぐ、そのぺらぺらと良く回る口を私の刺繡用針で縫い付けて、お母さんの銘付き包丁で細切れにして、おじいの丹精込めて作られた畑に肥料として蒔いてやるッ!!!!」



『わ~‥‥(語彙力崩壊)』

『至極どうでもいい、喧嘩になってきた』

『アホらし、バカらし』

『さっきまでのシリアスな雰囲気どした』

『姐さんの殺し方が具体的ィ!』

『確かに』



「いや?お前はバカだから肥料にしたら、野菜たちが可哀そうだな‥‥やっぱり、やめた」

「おい」



俺を無視して「なら、どこに処分したらいいかな~」なんて本気で考え始めたあれに、そろそろ殺意と疲れが出てきた



『姐さん、本気で悩んでらあ』

『ウケるww』

『やめる理由が秋海がバカだからって‥‥www』

『確かに野菜が可哀そう』

『草wwwww』

『草に草を生やすな!』

『本気で悩む姐さん。かわええぇ~』



「終わったか?なら、とっとと出てけ、愚姉が」

「テメエ、立場が分かってねえみたいだな‥‥

 vチューバ―という職を紹介してやったのを忘れたか?」

「いや、紹介してねえだろ‥‥

 言っただけ、行っただけ」



しっしとあれを追い払うそぶりをすると、あれが意地悪そうににやりと笑ってくる


お前じゃねえだろ‥‥



『姐さんがきっかけだった件』

『まぁ、言えなくもないだろ』

『苦労してんだな。どっちも』

『仲いいな~』

『そうか?』



「チッ

 まぁ、今日はこれぐらいにしといてやる」

「え~‥‥」



あれに「お前じゃねえ(妄想)」とツッコミを入れたらお手本のようによく響く舌打ちをして、悪党がよく言う、捨て台詞を最後に――それにちょっと引いてしまったのは言うまでもない――やっと、やっと!!出て行った!



やっと配信を再開できる!!


リスナー共は俺の代わりにあれをボロクソ言ってくれていることだろう


そう自信満々にしばらく放っておいた画面を見ると‥‥



「何故ェ~‥‥‥?」



『お~、お帰り~』

『ちょっと違くね?』

『ずっといたな』

『ま、そうだけどさ』

『姐さん、よかった! もっと出せ!!』

『壮絶な姉弟喧嘩だったな』

『てか、あの人はお前の姉でおけ?』



何故か、同説数とチャンネル登録者数が爆発的に増えていた

コメ欄も壮絶な速さで流れている


そこで目についたコメを何個か拾う。てか、それしか見えんかった



「え、うん。姉だけど‥‥

 何故ェ?」



『おもろかった』

『草』

『ポンポンと続く喧嘩がおもろい。癖になる』

『キャッチボールどころか、銃弾の撃ちあいみたいだったけどな』

『低レベルな争いが良い!!』

『姐さん、良かった! もっと出せ!!』



何故か姉に好印象って言うか、喧嘩に好印象? なんですけどおぉ



思わず、遠い目になる


うん。なんで?



あぁ、わかった。こいつらはあれの理不尽さを知らないからこんなことを呑気で言ってられんだぁ~


うん。そうだ


そうに違いない



ひらめきに俺はぽんと手を叩く

そして、くっくっくと怪しげに笑いながら、リスナー共に分からせ(教え)てあげようと配信画面を見ながら、ゆっくりと手を組む



すう~




「我が姉は“暴君”である」



そうして冒頭に戻る





「妹が欲しかった」とは冬火の言

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