殉死
重そうな背負いかごで、ふらふらしながら若い娘は帰ろうとしている。
買い出しで疲れているようだ。
肩を痛そうにさすりながら、なだらかな山道を歩いていると
見慣れた石組みの墓が見えてきた
むかしからある石墓は、やや長方形で中は空洞だ。
半分だけ土に埋もれている。
子供の頃から中で遊んでいたが、何もありはしない。
目的も判らないが、墓らしいのはなんとなく判る
なにしろ頑丈で巨大な石が天井を覆っている。
お金持ちでなくては、作れないだろう。
しかし今日は、人影がある。
「だれかしら」
不思議に思いながらも、近づくと
見知らぬ男性だ。
少し緊張するが、見た目は整っている。
見知らぬ男性に、恥ずかしそうに会釈をして通りすぎる。
男はニコニコしながら手をふった。
朝に町に出て、夕方に戻る若い娘の日課に
ちょっとした変化が起きる
帰りに男が立っているのだ
村の者でもないし、誰に聞いても知らないと言う。
どこで出会っているかは、秘密にしているので詮索もされない。
その夕方に娘は、声をかけようと思い立つ。
「こんにちわ」
男性は静かに、挨拶を返した。
「なにをされてるのです」
娘はずけずけと聴いた事に、少し恥ずかしかったが
「待っているのです」と答えが返る
きっと愛した女性を、ここで待っているのだろう
ひとけも少ないし、誰にも知られない。
悲しそうに、会釈をして通り過ぎようとすると
「愛する人が来るのを待っているのです」
と言葉が続く
「誰かと待ち合わせですか」
かすれた声で、聞いてみるとくびをふりながら
「もう昔に死んだ恋人を」
少女は、その男の悲しみに心が動いた
「お忘れになることは、できませんか」
さみしそうに笑うだけだ
一度でも、心が通えば若い娘は男と言葉を交わす事が
楽しみになる、逢瀬のように話をする
少したつと、夜中にも出会う。
「私の家にいきませんか、一緒に暮らしましょう」
若い娘は喜んで、家を捨て彼の言う通りに、旅立つ事にする
男は、あの墓の中に導くと、不思議な事に奥の部屋には扉がある
その扉を通るとまるで、昼のように明るい外に出た。
春のような暖かさの中で、立派な御殿に住み、そこで一生暮らした。
「今まで見つからないのが不思議だ」
役人が、規模が大きい墳墓を見ている、若い娘を探していた
村の者は「掘り返して驚きました」
石墓の奥を掘り進むと、男性らしき遺体と
何千もの人骨
女性ばかり