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車麩頼通
ちくわぶ、ちくわぶ、と何度も呼び掛けられて、不思議な違和感に気付く。いや、違和感が無いってことへの違和感だからこれがなかなかややこしいんだけど。どうしてだろう、こんなにしっくりくるのは。思い悩んでいると、また呼び掛けられた。
なあ、ちくわぶ。
なんだい。
ちょっと小腹がすいたんだが、あっちに出汁巻きの群生地がある。ちょいと寄り道してもいいかね。
僕としては早いところ渦に着いてアイデンティティを詳らかにしたいんだけど。
いいじゃねえか、ちょっとだけだからよ。覚えてるだろ、ちくわを喰うのにどれだけ時間がかからなかったかさ。
……そういうことを平気で口にできるんだね。
あ、なんか気に障ったか?
いいや……それはそうと、少し我慢できないのかい。
なんだよ、こっちが下でにでりゃあよ、言っとくが、お前さんは俺に着いてくるしかねえんだぜ。
そういうのを振りかざすのは嫌いだな。
嫌いだろうがお前さんに選択肢はねえのさ。
……
結局向きを変えた車麩に、僕は追随するしかなかった。