四人未満での密を伴わない会食
唐草模様の絨毯と、鏡張りの天井。
数え切れない年輪が刻まれた切り株が、我々の間に10メートルの隔たりを生み出している。
「このテーブル、素晴らしいだろう、樹齢千年をゆうに超える古代樹から造らせたんだ」
捻じれた側面に席として凹みがあり、削りだされた部分を材料にした椅子が並んでいる。直径20メートルの円卓。
我々の遥か背後には扉とその横に続く壁があるが、右にも左にも壁は見えない。
「で、なんでちくわぶだけなの」
テーブルの上には鉄板、その上には焚火が乗っていて、トライポットに吊るされた鍋ではちくわぶが煮えていた。
「そもそもちくわは魚肉の練り物だが、ちくわぶは小麦粉によってできている。似ているのは見た目だけ、戦後の混乱の中で生まれた代替品に過ぎない」
「うん……で?」
頭上の鏡天井には立方体を各頂点を通る直線で切り分けたような形から正十二面体、菱形の底面を持った柱から正四面体二つを融合させたような形へと有機的に変形する光源が取り付けてあり、乱反射する光が静かに煮える鍋のつゆに白い長方形を無数に創り出している。
「問題解決を定式化された理論にアウトソーシングするのと、AIにアウトソーシングするのと、つまり他人の脳みそにアウトソーシングするのと、機械にアウトソーシングするのと、何が違うんだろうね、どうして後者を生理的に受け付けないって人が、こんなに多いんだと思う……」
フォークで鍋から引き摺り出されたちくわぶが北宋のものと思しき白磁に載せられ、手斧で一口大に切り分けられていく。
「ちくわぶには味が染み込んでなくてもよい。」