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L
本当に好きだった。
世界に溶けてしまいそうな境界線が曖昧な線の細い体躯に、首筋のあたりの肌の粒子の細かさや、夜空を掬い取ったような艶やかな髪や伸びやかに良く動く指先が好きだった。
そして、その夜空の向こうにある、黄色を帯びた薄い虹彩に囲まれた瞳を愛していた。
それは時として他人を射すくめるように鋭く、それでいて何時だって吸い込まれてしまいそうになる程、深い憂いを湛えて、しっとりと濡れていた。その瞳が閉じ、じっと何かを思索に耽っているような時、その陶器のような白い頬や、その瞼に、そおっと唇を当てたくなる。
そうして、所有権を表したくなる。子供の頃に身の回りの品の数々に名前をかき込んだように。
夜空に浮かぶその月を、自分のものにしてしまいたくなった。




