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第71話 古き友

5-71-85


「なんで、森の奥まで……オークが、オークの群れが……森の害獣が……」

「私は誰……? どうして街にいるんですの……?」

「オークは殺すオークは殺すオークは殺す。守るんだ守るんだ守るんだ」

「アハハ、殺すにゃ! 豚は屠殺するにゃ!」

「オークなんかに渡さない……、初めては絶対にウルルに渡すんだから……」


初心者向け講座改め強化合宿を終えた。


……弱体化の魔法をかけてオーク百体のど真ん中に放置したのはちょっとやりすぎたかな?

目の輝きが消えて濁ってる。


まあ性犯罪者は容赦なく殺せるようになっただろうし別にいいや。


アタシたちは今、街に戻ってきている。

ギルドに状況を報告して、しばらくアタシの館に滞在させるためだ。


さすがに勝手に5人もひよっ子を連れ出す訳にはいかねえからな。

魔族云々の説明は……まあ後で良いだろ。

そう、百年後くらい後でな。


「というわけで、アタシの館に五人を数日泊めるぞ。ついでにアタシ達の山で狩りやらも仕込むからよろしくな!」

「おう、そいつは構わねえが……そろそろ王都からエリート共がやってくるぞ」


もうそんな時期か。

前に倒した魔族の詳細について、事情聴取をするんだったな。

てことは男爵領での検分は済んだのか。


「分かったよ。そいつらが着いたら連絡してくれ」

「おう。もう少しで着くはずだぜ」

「ところでポン子を見ないがどうしたんだ?」

「色街にカジノを作る案件があったからな、そこでタダ働きだ。すぐに賭けの胴元をやりたがるあいつにはちょうどいいだろうよ」


大丈夫かよ。

うっかり全財産をカジノで飛ばすんじゃないのか?

アイツ抜け目なく抜けてるからな……。

人生を賭けるアホもいるらしいからそういうアホな事しなけりゃいいが。


ギルドを出ると、向こうから冒険者の集団がやって来る。

『オーガキラー』のメンツとひよっ子共だ。


後ろには『幌馬車』のイケメンもいるな。

アイツらもひよっ子の訓練に行ってたのか。


「皆! よくぞ訓練を耐え抜いた! いかなる戦略や戦術も、圧倒的なパワーの前には無力! 力こそ絶対のパワー! 己の筋肉を信じるのだ!」

「姉ちゃん、素人にいきなりダンジョンでゴーレム退治は辛いんよ……」

「大丈夫ですとも。どんなにボロボロになろうとも、私が魔法を使い直しましょう!」


『オーガキラー』のメンバー達からゴーレムの単語が出た途端、ひよっ子共が顔を真っ青にする。


「ひいいいっ!」

「いやだ……ゴーレムと肉弾戦なんて嫌だ……」

「私魔法使いなのに……」

「みんな、落ち着くんだ。アレは戦いの気概を示しただけで実際には皆バランスよく戦ってるじゃないか」


イケメンがなだめようとするが聞く耳を持っていない。


まったく、しごきがキツ過ぎるだろ。

ひよっ子達があんなに呻いてやがる。

トラウマでも植え付ける気か?


「バランスなどは後でかまわん! 基礎こそすべて! 基礎を究め続ければやがて奥義に至る! さあ鍛えるぞ!」

「うぎゃああああ!!!」

「せ、せめてその前に座学をしましょう! 死んでしまいますよ!」

「そうかジクアよ! うむわかった! ならば街を百週走ったあとにな!」


新人の悲鳴とともに去っていってしまった。

なにが“うむわかった!”だ。

アイツなんにも分かってないだろ。

まあコリンの姿は無いから別口でなにか教えてるんだろうな。


……ドンマイ。

コリンがひどい目にあってたら口をだす所だったけどイケメンは別にいいや。


アイツラに関わってもトラブルに首突っ込むようなもんだしな。

ウチの愛弟子達に悪影響が出ないようにさっさと館に移動するか。



途中、門番の兄ちゃんが新しいメンバーか?と聞いてきたが適当にやり過ごした。


「ここが家ですか! 広いですねー」

「ハチミツとバターの匂いがしますよ!」


ウルルが鼻をクンクンとさせている。

そうか、犬……。狼だから鼻が効くのか。

メイがこっそりおやつを作ってるな。

後で食べさせて貰おう。


「すごい立派な屋敷だな。まるで貴族が住んでるような館だぜ」

「まぁ実際貴族のモノだったしな」

「凄いですわね。私が遊びにいっていた別荘の半分くらいの広さがありますわ」

「フィーちゃんのお家も広いもんねー」


それは皮肉で言っているのか、本気で感心しているのかどっちなんだ。


「さて、前に話したとおりここにいるメイドが――」


そこでメイが姿を表す。

おい、口元にお菓子のカケラがついてるぞ。


「おかえりなさいませ。皆様。ちょうどお菓子を焼いていたところでして……。マリー様? この子たちは?」


「ああ、前に話してただろ? 冒険者のひよっ子達だ」

「ふむ、この顔ぶれは……まさか!?」


おっ、まさか魔族だと気がついたのか?

流石は同族だな。


「こういう事を言うと失礼なのですが、一度にこれだけの年端も行かない娘たちを手篭めにされるのはいかがなものかと思いますよ?」

「本当に失礼だな」


どうしてそういう発想になるんだ。

アタシはエリーに一筋だろうが。


「ふふ、ご冗談です。こちらはギルドの新人冒険者たちですね?」

「その通りだ。そしてメイに用事がある奴らでもある」

「私に……でしょうか? 構いませんがどういったご用件で?」


横から口を出したのはリッちゃんだ。


「それがさ! 聞いてよ! この五人全員さ魔族なんだよ!」

「魔族……ですか。……と言うことは捕らえ、奴隷として使い潰したいという事ですね。私にお任せ下さい。立派なメイドとして朝から夜まで努められるよう仕込んでみせます!」

「うん、お前コイツのご先祖だわ」


昨日までそのあたりの勘違いが原因でゴタゴタしてたんだ。

皆の顔が青くなってエリーが後ろでフォローしてるじゃねーか。


つかお前も最初いろいろ駄目だったからエリーがメイドとしての基礎を仕込み直してただろう。

自分の事はすっかり棚に上げやがって。


そこで、おずおずとアルマが前に出てきた。


「あの初めまして、いきなりで申し訳ありませんが友達になってください!」

「別に構いませんがお断りしておきます。何故私を?」


そこでバッサリ断るなよ。

フィールとアルマの二人が絶句してんじゃねえか。


「えっと、私たちの一族に代々伝わる話があるの。封印されている古いエルフが復活した時は友達になってあげて、と言う魔王様からの伝言なんだって」


その話を聞いてメイは大きく目を見開く。


「そうでしたか……。それを伝えたのはお姉様……、いえ、魔王ファウストですね」

「その通りですわ。実際の伝承はもっと迂遠な言い回しでしたが……」


横からリッちゃんが口を挟んできた


「すごいね、ファーちゃんも。長い時間をかけて友達になってくれる人を用意していたなんて」

「ええ……。本当に、本当に不器用なのにおせっかいな方でした」


メイは一瞬、どこか遠くを見たあとにひよっ子の方に向く。


「分かりました。ささやかですが友人としてよろしくお願いします」

「やった! えっとよろしく! 私はアルマ、コッチはフィールにガロ……じゃなかった、カリンだよ! よろしく」


なんとかうまく纏まったようだ。


「よ、よろしくな」

「よろしくですわ」

「はい、よろしくお願いします」

「僕もよろしく〜。リッちゃんだよ!」


お互いどこかぎこちない挨拶をする。

お見合いじゃねーんだからもっとリラックスしろ。

なぜか友達になってるリッちゃんを見習え。


あとついでに、獣人二人組の紹介もしとくか。


「こっちにいるのがウルルとルルリラだ、どっちも獣人だからよろしくな」

「よろしくなのです!」

「しばらく厄介になるじゃん?」


よし、これで全員の紹介が終わったな。


「あ、コイツら含めた五人は従者として契約予定だから、住んでる間はメイドとして徹底的にこき使ってくれ」

「承知しました。それではビシバシとイロハを叩き込んで見せましょう」


アタシの一言にケモノ二人がえっ?という顔になる


「えぇ!? 酷い! 私達を騙したの!?」

「そ、そんにゃ……優しくしてくれるって言ったのに!」


ケモノ達が喧しい。

うるせえ奴らだ。

モフモフするぞ。


「騙してねえよ。魔族バレした時の保険だ。アタシの監視下に置いてることにしといてやるってんだ」


まったくしょうがない奴らだ。

お前たちは後輩冒険者兼アタシ達の従者だ。


魔族に人権とやらがあるか知らないがバレたら契約やらをタテにして即座にアタシ達の所有物として扱ってやるよ。


……ただ館に住み込みにするかどうかはメイに丸投げだな。


「そういえばお客様が来ておりましたが……」

「客? 知らねえな。一体誰のことだ?」

「なんでも王都から来た冒険者だという話です」


て事はエリートの奴らか。

早いな。おやっさんの話だともう少し後に来るはずだったんだが。


「後進の育成に当たっていることを伝えたところ、早すぎたから明日また来るとのことでした」


明日、か。

ひよっ子達全員魔族でそいつ等を泊める予定なんだけど、いらない誤解を招きそうだな。


しばらく隠れてもらうか?

いやそれはそれで面倒くさそうだ。直接用事があるのはアタシたちだし、会わせないようにして顔を見たら挨拶をさせるぐらいでちょうどいいだろう。


「分かった。明日会ってやる」


とりあえず面倒くさそうなことは明日のアタシに任せよう。

なーに、明日のアタシなら何とかしてくれるさ。


「さ、そんな事よりひよっ子共の歓迎会をやるぞ。ついでに料理の練習も兼ねるがな」

アタシ達は宴の準備をする。

今回はいつもと違ってメイやお化け達以外にもアタシ達が作る。


独り立ちするならこれくらいは料理の基礎くらいは覚えておかねえとな。



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