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第70話 魔王(自称)と魔物っ娘

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回復してからもどってくると、少し騒がしい。


……あれ? なんか泣いてるな。

カリンは顔を真っ赤にしているが、残り二人、フィールとアルマは半泣き状態だ。


一方でウルルとルルリラの二人はリッちゃんに抱きしめられながら頭を撫でられている。

獣っ娘たち、見た目は可愛いからな。ツボに入ったか。


半泣きの地獄のような空間とリッちゃんの天国のような至福の笑顔空間で対比が凄い。


まあいい、とりあえず泣いてる奴らだ。


「どうしたんだ二人共?」

「ひっく。あの、マリー先生の腕についてエリー先生に話をしたんです――」


なんでも、アタシが腕を焼いた経緯を聞いてエリーが怒ったらしく、二人にお仕置きをしたらしい。

尻叩きの刑だとか。


「それで、パンツを脱がせて、カリンちゃんに見せながらバシッと」

「そりゃキツイな。もうそういう年齢じゃないだろ」


そこでリッちゃんとエリーも話に入ってくる。


「痛みはそれほどでもなかったみたいだけどあの年齢でアレはねぇ……」

「大丈夫ですよ。ちゃんと誘惑の魔法を用いて痛みは軽減しました」


いやだめだろ。

新しい扉開いたらどうするんだ。

……まあアタシのためにそれだけ怒ってくれたのか、強くは言えないな。


「そういえばさっきまで撫でてた獣人の二人はどうした?」

「あの二人ならあそこにいるよ。獣人は毛並みが気持ちいいね!」


リッちゃんの撫でテクニックに感激してしまったのか、二人共グッタリとしている。

アレだな。可愛がられすぎてウザいパターンだ。


そこで尻たたき組の二人がおずおずと立ち上がってきた。


「獣人のお二人がどうしてこんなところにいるんですの? 確か狼族と猫族の皆様は隠れ里に暮らしていると伺っておりますが」

「そうそう、私達も珍しいけど獣人もかなり珍しいよね」

「混ざり者の吸血鬼たちならアチコチいるのですが…」


フィールとアルマが獣人二人に声をかけてくる。

尻たたきのショックから立ち直ったらしいな。よかった良かった。


どうやら魔族と一区切りに言っても、習性は様々らしく、種族が違うと交流も少なくなるらしい。

ちょっと困った様にウルルが答えてくる。


「えっと、私達は人間の国を観光して見たくなっちゃいました!」

「そうそう、生まれてから死ぬまでずっと里で暮らすのでつまんねえにゃん。一生に一度くらいは外に出てみたいにゃ……じゃん?」


ルルリラの突拍子もない発言にウルルが同意する。

そんなどうでもいい理由でこっちに来たのか?


「あ、ウルル。子供の頃の癖がまた出てたね。変身した影響かな?」

「も、もう戻ったにゃんよ!」


直ってねえよ。

つか、それ幼児的な言葉なのかよ。


「話を戻すね。最初は村を出て近くの街を巡るだけの予定だったんだけど、意外と楽しくて、私の魔法も好評だったから思い切ってウルルとここで住んじゃおうかなって。吸血鬼さんとエルフさんはどうしてここに?」

「私は……」


一瞬エルフのアルマと目があう。

次の返答はアルマからだった。


「ひとを……探してたの」

「人探し? お前達が人間の領土にいる魔族を探しているのか?」

「いえ、これはエルフの一族に伝わる伝承ですの。長き時を封じられたエルフの始祖たる存在。その封印が解けた時一族は彼女を迎え入れて欲しい、と」

「初代魔王ファウストがなにかを封印した時に一緒に封印せざるをえなかった人がいて、その人を探すのが一族の使命なんだって」

「その旅に私もついていくことにしましたの。家には書き置きを残して置きましたわ」


心当たりがある。

と言うか心当たりしかない。

リッちゃんと顔を見合わせる。


「ね、ねえ……。僕にその人の特徴教えてくれないかな?」

「構いませんわ。その人の姿形はエルフと同じように耳が尖っているそうです。かつて仕えていた主人を偲んでいるかもしれないとも」


あと眉唾ですが顔が無くなっているかも、と続けてくる。

うん、リッちゃんの魔力ないと顔が消えてのっぺらぼうになるんだったか。

そう言うのも含めてプロトタイプなんだろうが……。


「お前たち、さっきリッちゃんが言ってた話を聞いてなかったのか?」

「え? ちゃんと聞いてたよ。リッちゃん先生は私達魔族と関係が深いヒトなんだよね? 魔王ってのは嘘だってわかるけど……嘘でも嬉しかったな」


いや真実なんだが。

またなんか噛み合ってない気がする。


「私たちを作ったのは魔王ファウストですわ。もちろんおとぎ話の上では友人がいたとも聞きます」

「いや、そいつだよ」

「ありえませんわ。その友人は魔王が自らの手で殺したと聞いておりますの」


リッちゃんの話は真実だが、魔族の方に伝わってるおとぎ話も間違っていないから困る。

魔族に関係ある話と聞いて獣人ズも興味津々のようだ。


「えっとだな……。あー、リッちゃん頼む」

「任せて! 昔々の事でした。僕は天才魔術師と呼ばれてなんやかんやでアンデッドに――」


長い長いリッちゃんの昔話が始まった。

……ちょっと昔すぎやしねえか?

封印されるトコからでいいと思うぞ?


「――というわけで、長い事封印されてたけど、アンデッドだったからギリギリ生きてたんだよね。それで、なんやかんやでメイドのメイと一緒にマリーのお家にお邪魔してるってわけさ」


途中、なんやかんやというセリフが十回くらいあったが長い説明を終えてくれた。


「と言う訳で、お前らの探している人物はアタシ達の家に居るやつだろ、多分な」

「でも、本当に魔王の生みの親なの? リッちゃん先生……正直あんまり凄そうじゃないけど」

「失礼だなー。見せてあげよう! 古き大魔術師、リッチ・ホワイトの魔法を!」


そう言うと空に魔法陣が浮かび上がる。

魔法陣から火の玉が空中に打ち出され、つぎつぎと大きな花火が空に浮かび上がっていく。


「どう! これがファーちゃんの大好きだった花火の魔法だよ!」

「凄い魔法……。初代魔王は確かに花火が好きだったと言われていますが……」

「あのお話って燃え上がった街の事じゃなくて本当にただの花火の事……?」


なんだそりゃ。

色々間違って伝わってないか?


「やだなあ。ファーちゃんはうっかり街とか城とか燃やしたり吹き飛ばす事があっても好きで燃やしたりはしないよ」

「しかし……。いえ、わかりましたわ。少なくともリッちゃん先生は魔族に伝わるおとぎ話を知っているということですもの。なにか関わりはあるということですわね」

「だったら、本当に……」


「うん、じゃあウチに来なよ! メイも喜ぶよ!」

「だが、その前に研修の続きはやるぞ」

「えーっ!? 今更そんなことしなくても……」


そんな事とはなんだ。

まったく、魔族やってるくらいで自惚れやがって。


「お前らが自立できるようにするのがアタシの役目だ。ちょっと戦えるくらいでケツに殻ついたようなひよっ子がイキがるんじゃねえ」


まあ、メイの作ってくれたメシくらいは食べさせてやるさ。


たださっきの実力を見る限り、これからの指導に手加減はいらねえな?

本気で指導してやるから覚悟しろ。


「ま、マリーせんせ? その笑顔怖いじゃんよ?」

「アッチの三人だけで私達は許してくれます……よね?」

「なーに、安心しろ。アタシは魔族とか人間とか関係ない。平等に扱ってやる。死ななければ良いんだろ?」


……さあ、地獄の訓練の再開だ。



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