第65話 事前準備
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ひよっ子達も一通り訓練が終わったようだ。
アタシ達はさっき選定した五人と向き合っている。
「お前ら、明日からは森の方で戦いを学ぶ。最初はゴブリンだけだから気負わないようにな」
「ま、負けるもんか!」
「ゴブリンごとき敵ではありませんわ」
「あたし達のチカラを見せてあげる!」
ふむ、ガロのチームは気合十分だが空回りしそうだな。
「へへっ、俺は地元じゃゴブリンくらいなら潰してたからな、余裕だぜ」
「あのチーム、ハーレムで怪しい……。ウルルは渡さないんだから! がるるっ!」
こっちは……なんか勘違いしてるが大丈夫そうだな。
「それじゃあ、街での準備から説明するから明日朝ギルド前に集合な。泊りがけで色々教えてやる」
それぞれのメンバーがはいっ!と元気よく返事する。
よしよし、明日からしっかり指導してやるからな、
翌朝。
「うーん、あと5年……」
「リッちゃん、ちゃんと先生としてそれっぽい事するんだろ? 遅刻したら笑われるぞ?」
「ん……。そうだった……。頑張る……」
「あら、着ている服の裏表が逆ですよ」
目がほとんど閉じているがちゃんと着替えているようだ。
エリーも着替えを手伝っている。
リッちゃんも昨夜何を教えようかワクワクしてたから夜ふかししたんだったな。
本来ならメイが起こしてやるが食事作りで忙しいからな。
「皆様おはようございます。準備はできております」
「おう、あんがとよ」
メイがこれから面倒見る奴らの食事を特別に作ってくれた。
リッちゃん倉庫に保存しておく。
ひよっ子達は戦う事にばかり気を取られてその辺忘れるかもしれないからな、念の為に準備してもらった。
あくまでも最初だけの特別だ。
「お前ら待たせたな。予定通り町に行くぞ」
「えっと、何を買うんですか?」
「アレだろ? 傷薬とかそんなんだろ?」
ルルリラが話しかけてきて、ウルルが代わりに回答する。
「まあ間違っちゃいねえな。あとは冒険者とやっていくなら知っておいた方がいい店もついでに紹介してやる」
アタシはいつものよろず屋へと足を運ぶ。
「いらっしゃい……。やけに大所帯だね」
「おう、今はひよっ子共の面倒を見てるんだ」
「へえ……」
アタシがギルドの依頼で面倒を見ていることを簡単に説明してやる。
「――というわけだから、贔屓にしてやってくれ」
「ああ、良いよ。なんでも見てきなよ。ん……? この子は……?」
そう言って連れてきたひよっこ共の顔をマジマジと見ている。
ウルルとルルリラは興味津々、アルマとフィールはどこか気まずそうだ。
「なんだ知ってるのか?」
「んー……。いや知らないね」
「ええ、そうですわね……。私も存じませんわ」
生き別れの姉妹とかじゃねえのか。
つまんねーな。
まあ冒険行く前に感動の出会いとかされても困るけど。
「話を戻すぞ。ここはいろんなものを扱っている。イロモノが多いが品質は確かだ。傷薬や回復薬はここで揃えていけ。金があるなら武具をオーダーしてもいい」
まあ駆け出しのひよっ子のじゃそんな金なんてねえだろうから、金を貯めてだが。
「まあ、そうなんですの? でしたらコレでガロ君と私達三人分の防具をお願いしますわ」
そう言うと、ドンッと机の上に大きめの袋が置かれる。
袋から見えてる金、全部金貨だ。
「……」
周りが沈黙している。
新米のくせにお金持ちすぎだろ。
元はいいとこのお嬢ちゃんだったりするのか?
「あ、あら? また私……なにか失敗しまして?」
「そうだよフィールちゃん! ちゃんと全員分を買わないと!」
「違う、そうじゃない」
誰かコイツらに常識を……。
アタシが教えねえといけねえのかぁ……。
「前途多難ですね」
「だねぇ……」
エリーもリッちゃんも分かってくれるか。
よし、ちょっと指導してくれ。
「フィールさん、お金はそう軽々しく見せるものではありませんよ」
「そうだよ! 王様にあえばくれるからって、見せびらかすような真似をすると盗賊やドラゴンが襲いかかってくるからね」
普通は王様でも金をポンポンくれないと思うぞ。
それはリっちゃんが魔王として恐れられていたからじゃねえのか?
……そう言えば普段あんまりお金を使わないからか、リッちゃんも金銭感覚が微妙にズレてる気がする。
「リッちゃんの言うとおり、お金を持っている事で変な人から目を付けられるかもしれませんよ?」
「ドラゴンは光り物に目がなかったからね。うっかり道端で見せたりなんかしたら襲われてたよ」
現代ではドラゴンに会うことすら稀だ。
なんかもう色々間違ってる。
「二人の話はさておき、そう簡単に金を見せびらかすんじゃねえ。こっちが善意でも人によっては嫌味にとらえる奴もいるからな」
「失礼しました。このわずかなお金でも時には争いを生むなんて……。私が軽率でしたわ」
「ナチュラルに見下してくるとかお前凄いな」
こいつ嫌味じゃなく本当にわかってない感じだ。
金銭感覚が壊れてやがる。
呆れたのか店主のルクスが口をだしてきた。
「まあウチの店は良いけどさ。実際にそこのお嬢さんが言うとおりだよ。お金ってのは金額が決まったあとに必要な金額だけ出すもんだよ」
「え? はい、気をつけますわ」
とりあえず数枚だけを小分けして持っておくように伝えておく。
貴重品は開かないよう封をしてギルドに預けるのがセオリーだとも伝えておいた。
さて、お次は買い物の仕方だな。
「店長。ちょっと店を借りるぜ。後で金は出す」
「いきなりだねえ……。まあ、昼までは暇してるし、別に構わないよ」
よし、店長の許可も貰ったしはじめるか。
「さあお前ら、この店でどんなものがどれだけ必要か、自分たちで考えな。仲間内で相談して決めるんだ。時間は……三十分だな」
荷物のバランスは回復役がいるかどうか、金を持ってるかでも答えは違ってくる。
今から向かう場所は伝えてるからな。
実際に失敗込みで相談しながら勉強してもらうのが手っ取り早い。
「えっと、これなんか要るかしら?」
「何これ? 万能止め金? 何に使うの?」
「傷薬ってどれぐらい買えばいいんだ? 十本あれば足りるのか?」
「多すぎだよ。フィールちゃんが回復魔法使えるからもう少し少なくても――」
「そっか。そっちの二人はどうなんだ?」
おや、あの金髪ショタいきなりウルル達に話しかけた。
フレンドリーなタイプだな。
「え? わ、私達はどっちもケガが治りやすいから大丈夫!」
「そうだぜ! そっちも気をつけんじゃんよ!」
「そ、そうか? だったらいいんだけどよ……」
「ガロくん、いきなり声かけするとこっちもビックリしちゃうよ……」
「そうか? わりいな」
お互いが相談し合いながら決めている。
ウルルのチームとガロのチームはまだ仲が良くないようだな。
まあ知り合って日も浅いし当たり前か。
だが、ぎこちないがコミュニケーションも取れているようだ。
ほっときゃ仲良くなるだろう。
「――俺は武器の予備を……」
「――ついでにこれも……」
しばらく待っていると、一通り選び終えたのか、それぞれ道具を見繕ってきた。
最初に道具を持ってきたのはガロのチームだ。




