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第51話 サリー

アタシ達は喚いている『ウザ絡み』を放置して男通りへと向かった。


言われた通りの場所へ行くと、アタシ達は『出会い茶屋 探索者』と書かれた店の前に着いた。

……いや、ここギルドに似せてる風俗店じゃねーか。


店の前の看板を見てみるが、『ポンコツ受付嬢パン子ちゃん指名できます』とか『オークキラー姉妹と遊べる唯一の店』とか書かれている。


最近できた店か?

よく今まで無事でいられたな。

表に知られたら女性冒険者が焼き討ちしに来るだろ。こんなもん。


「……入らず帰るか?」

「いえ、流石に入らない訳には……。ですが人にはあまり見られたくないですね」


……だよなあ。店に入りたくねえなよなあ。

アタシ達は我慢してエリーと腕組みをしながら一緒に入る。


中には眠そうな男が一人。


「いらっしゃいませー。あ、お二人さん女性ですよね? すいません、ウチ男性向けなんでそういうサービスやってないんですよ。姉妹店を紹介しますんでそっちで良いですか?」


しっかり店を紹介してんじゃねえ。

アタシは似顔絵を見せる。


「知っている。ここにはちょっと尋ね事があってきたんだ。茶髪茶眼の娘がここにいるだろう?」

「あ、『アリーサリー』のサリーちゃんですね。すいません、ウチは女性相手だと一切のプレイはNGなんですよ」


ちょっと待て、なんだそのどこかで聞いたことあるようなネーミングは。

アタシ達と女の子、共通点が一切ないじゃないか。


「プレイをする気はねえよ。ちょっと話をしたいだけだ。なーに、そんなに長い話をする気はねえんだ、ちょいと呼び出してくれねーか」


アタシは金貨を一枚、机の上に載せる。

どうやらそれで納得してくれたらしい。

女の子を呼びに行って、しばらく待つと似受付顔絵によく似た女の子が出てくる。


「えっと、マネージャーさん、なんの用?

「サリーちゃん。こっちの女子達が君に話があるらしいんだ」

「分かったよー。話だけならしてあげる」


よろしく頼むよ、といったあとに店長が大あくびをする。


「あと悪いけど俺さ、シフト詰め込まれたせいで三日間寝てないんだよね。一時間だけ受付お願いしてもいいかな?」

「別にいいけど店に人が来たらすぐに起こすよ?」

「それは困るなぁ」


なんか自由気ままな娘だな。

しかも手慣れてる感ある。

本当にこいつバレッタ家の付き人か?


「そう言うのは後でやってくれ。なあ、あんた本当にバレッタ領にいたのか」

「へぇ、詳しいじゃん。誰から聞いたの?」

「ちょっとツテがあってな。いくつか質問させてもらってもいいか」

「何々? 初体験の相手とか? それとも男の子を感じさせるテクニック?」


今はそういうのはいらねーよ。

エリーがなんだか聞きたそうにしている。あえて無視だ。


「アタシは冒険者をやってる『エリーマリー』のマリーだ。聞きたいのは、バレッタ伯……伯爵領地から来た女の子を探してる。名前は……」

「名前はクリームです。金色の髪がとても綺麗な女性です」


エリーが私の話を引き取ってくれる。

クリームっていう名前なのか。


「んー? キレイな金髪ねえ……。たしかに一緒の馬車に乗っていたけどね。アタシは知らないよ」


ん?

知らないってことは付き人じゃないのか。

てことはタダの出稼ぎか何かか?


「おう、そうか。その金髪の女がどこにいったかわかるか?」

「んー、たしか王都の方に行くとか言ってたかな? ごめん、詳しくは覚えてないや」


……王都に、ね。


「……そうか。もし思い出したことがあったら教えてくれ。ギルドに連絡を入れて……。いや、今度改めて来る。よろしくな」

「うん、分かったよ。なんでその子を探してるの?」


「なんでも家出娘らしいぜ。とある筋から護衛を頼まれてな。帰ってこなくてもいいからとりあえず守ってあげるように、だとさ」


私はサリーにお礼を言って、娼館を後にした。


「マリー、あの子……」

「ああ、嘘をついてるな。下手な嘘だ」


あのオネエ組長が、領地に入ったことの確認は取れている、と言っていた。

つまりその後から行方が分からなくなったってことだ。

同じ馬車に乗っているなら、十中八九同じタイミングで降りているはずだ。


知らないはずがない。

だとするとどこかに匿っていると考えるのが自然だが……


「厄介だな。引き(こも)られたら探せねえ」


下手に追いかけてバレたら動きが掴めなくなる可能性が高い。

他の奴らが探せなかったってことは、それくらい対策をしてるはずだ。

それにそもそも……


「今回の件、どこまで信じる?」

「どこまでと言いますと……?」

「あの娘、店で働いていたな? だとするとあのオネエ組長も情報ぐらいは持っているはずだ」


裏社会のネットワークってのはシャレになんねえからな。

これくらいの情報はすぐに手に入るはずだ。

調べることがまずいと言うならともかくな。


「だけど、あのオネエは女の子から探すようにこっちに依頼をしてきた。と言うことは……」


「ヘイヘイヘーイ! そこのお姉さん達! お茶しない?」


声をかけてきたのはチャラチャラした男だ。


「誘い方が古いんだよ。もっとうまくエスコートできるようになってから出直しな」

「手厳しくて困るなあ。こっちとしてもあまり痛い目を見て欲しくないんだよ」


低い声でそういうと、男は刃物をチラつかせる。

さらに数人の男が路地から出てきてアタシたちを囲んだ。


「……ちょうど良かった。アタシも少しお茶したいと思ってたところだったんだ」


バカが釣れたようで何よりだ。

とりあえず死なない程度にボコボコにするか。


いま、アタシ達に絡んできた男達は全員正座させている。


とりあえず軽くボコったら大人しくなって話を聞いてくれるようになった。

拳で話しあえば誰とでも分かりあえるもんだ。

即席の友情って奴だな。


「で、なんでアタシらを狙ったんだ?」

「す、すいません。まさか冒険者の方々とは知らずに……」


言い訳はいいんだよ。

理由を言え理由を。


「へ、へぇ。どうもあの女の子を付け狙うストーカーがいるらしくて、とりあえず疑わしい行動してた奴は捕まえてたんです」


あの女の子ってのはサリーだな。


「そのストーカーとか言うやつ、どんな姿か分かるか?」

「はい、男性の姿だったと聞いておりやす」


なんだよ。男だったらアタシ達関係ないじゃないか。


「うっかりそいつの仲間かと思ってしまって、すいません」

「ああ、別にいいよ。つまりあんたたちはこの店に雇われたボディーガードっていうわけだな」

「似たようなもんです」


一般的な警備職じゃなくてマフィアに雇われた下っ端のゴロツキってことなんだろうな。


「アタシ達もちょいと訳ありさ。ついでだから教えてくれると助かる。あの子の周りに、同じ領地から来た女の子とか、知り合いはいないのか?」


男達は顔を見合わせて互いに確認を取るが、しっている様子はない


「俺達の知る限り、あの娘は一人でこの領地へ来ているはずですぜ。働き口を探して流れてきた」


ん? 一人だと? ……なんか訳が分からねえな。


「ちなみにアンタらのトコのボスは?」

「リクドウっていいやす」


オネエ組長とは別口か。

直接確認するよりオネエ組長を経由して話を聞いた方が良さそうだ。


「ちゃんと名乗ってなかったな。私たちは冒険者『エリーマリー』のマリーだ。少しリクドウとかいうおっさんと話をしたいんだが……」

「げぇっ! 笑顔で各地にいるファンから金を貪りとるという『デーモンキラー』のマリーだと!」

「お、俺は悪魔を血祭りにあげて高笑いをしていると聞いたぞ!」

「ひぃっ! そんな奴がウチのシマを狙ってくるなんて! 終わりだあ!!」


誰だそんな噂を流したのは。

大体アタシは一介の冒険者だ。

あとシマなんか狙わねえよ。

管理が面倒くせえだけじゃねーか。


「マリー、人の噂などいい加減なものですよ」

「あの金髪娘がエリーか! マリーの情婦とかいう……。だとするともう一人はペットのサッちゃん……はいないか」


エリーになんてこと言いやがる。

あとサッちゃんって誰だよ。名前くらい覚えてやれよ。

とりあえず数発殴って大人しくさせとくか。



「とりあえずお前らのボスに会いに行く。良いな?」


拳で相互理解を叩き込んだ結果、わかりあえたみたいで何よりだ。

やはり暴力はすべてに通じるな。


静かになった野郎どもに案内されて男通りを進むと、やがて立派な建物が見えてきた。

古いがしっかりした豪華な館だ。


「……何者だてめぇ」

「アタシは冒険者のマリーさ」

「兄貴! すいやせん。この『エリーマリー』のマリー姐さんが、どうしてもボスに会いたいって言うんで、仕方なく連れてきました」

「なにい! ヤス、テメェ!」


ふむ、やっぱりキレられるか。

最悪戦闘の準備を……。


「でかしたぞ! 親父は『エリーマリー』のファンなんだ!」

「え? そうだったんすか!?」


戦闘の……。


「ヤス! 色紙買って来い! 百枚組だ!」

「いやそんなに書かねえよ?」


つーか、もう帰っていいか?


「ファンサービスは大事ですよ、マリー」


エリーが優しくたしなめてくる。

確かにそうだけど、そうだけどさあ。

ウチのファンクラブ会員さあ、なんか濃くない?

もうちょい薄味でいいんだけど。

『オーガキラー』のラズリーみたいな壊れ方した奴はいないよね?

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