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第37話 『力』のアンデッド

「リッちゃん、攻撃用の魔法陣を用意しておいてくれ!」

「うん、分かったよ!」


扉が開くと、スケルトンがなだれ込んできた。

その数は十、二十と増えていく。


「ちっ、スケルトンナイトにスケルトンドッグ、アーチャー、メイジまでいやがる」

「〈炎蛇陣〉!」


リッちゃんが魔法を使うと、大蛇のような炎がうねりながらスケルトン達に向かって突撃していく。

……しかし、同様に飛び出してきた氷の槍が魔法を相殺した。

敵の魔法か?


「えっ! 相打ち!?」

「カッカッカッ! 肝が冷えたわ。この道に挑むとはおもしろい奴がおるの」


敵が軍隊のように隊列を組む。

前衛はスケルトン部隊だ。


スケルトンの後ろにはゾンビ達が隊列を組んでいる。

そして最後尾はゾンビメイジとスケルトンメイジ、そしてスケルトンウィザードの混成部隊だ。


話をしてきたのは最奥にいる骸骨のアンデッドだ。

暗い色のフードを被っているその姿は、隠居した魔法使いを思い浮かべた。


……意思疎通ができるタイプのモンスターか。

魔法も使えて部隊の指揮もできることを考えると、最低でもB級以上の魔物だな。

C級ダンジョンってどこの事だよ。


「ここは『力』の道。力無き者は通さんよ」

「力と言いつつ魔法ではないか! 筋肉で勝負しろ!」

「カカカ…… 魔法も力の一つであろ?」


まぁ間違ってはいねえな。

アタシも魔法と刃のコンボが主体だ。

だが思ってたのと少し違う。

もっとストレートに力で攻めてこいよ。


「そして数も力である。我が名はワスケト。この迷宮にて生み出されし者。我と我が配下のアンデッド部隊ニ百名がお主らを……」

「うおおおぉ! 突撃だああぁっ!!!」

「な、なんだ貴様ら! 我が話している最中だろうが! 常識をわきまえよ!」

「うるさい! 骨が常識を語るなっ!!」


『オーガキラー』は話も聞かずに突撃していく。

準備ができていなかったのかそのままスケルトン達が吹っ飛ばされていった。

うん、アレも一種の不意打ち、力だな。純粋な暴力だけど。


遅れながらアタシも突撃する。


「〈ホーリーカーテン〉!」


エリーが光のカーテンを展開する。

突撃してきたアンデッド達を包み込んだ。

魔法に抵抗力のない、弱いスケルトン達はあっという間に消滅していく。

これなら切り込みが楽でいい。


「ほう……、やるのお……〈ダークネスゾーン〉」

「っ! 押し返されます!」


あの黒いオーラはアンデッドを守る効果があるらしいな。


エリーの魔法でこのまま押し切れるかと思ったが、そううまくはいかないようだ。

アタシは更に前に出て、筋肉達に並ぶ。


「『オーガキラー』は右側を頼む! アタシは左側をやる!」

「任せておけ! 私達は右も左も全てぶっ飛ばしてからアイツの首を獲る!」

「いや話聞けよ」


ルビーは一切話しを聞かず、アンデッドの群れに突っ込み敵を吹き飛ばしていく。

アンデッド部隊が筋肉達の勢いを止めようと矢を放ち、魔法を唱えて火球をぶつけてくるが意に介した様子もない。


……アイツと歩調を合わせるのはやめよう。

こっちが合わせるほうが賢明だ。


「おのれ小童どもが…… 〈氷結波〉」

「ふんっ! マッソーパウアッ!」


骨野郎の放った魔法は地面を凍らせながら筋肉姉へと突き進む。

だがその魔法は筋肉姉のスキルによってかき消された。


戦闘に限ればなんだかんだ言って頼もしい奴らなんだが……


「ふはははっ! 我らが包囲殲滅の前になすすべなく崩れ去るが良い!」

「姉ちゃん! 誰も包囲しとらんから!」


お前包囲されてる側だろうが。

そういうとこだよ、心配なのは。


「おのれ…… そう続けてうまく行くと思うてか! 〈凍結槍〉」

「させないよ!〈閃光陣〉」


地面に魔方陣が描かれると、光が放出された。

眩しさと熱にやられた骨野郎は、顔をそらし魔法の発動に失敗する。


オーガキラーに注意が向かっていて、リッちゃんが敵の魔法を食い止めてくれる。

お陰でこっちも心置きなく戦えそうだ。


「ファイアローズ」


私はまず炎で目の前のスケルトンナイト数体を同時に葬り去る。


エリーの力で弱っていたのか、簡単に葬り去ることできた。

次に来たのはゾンビ共の中でも上位種のゾンビナイト数体だ。

普通のゾンビと違い、鎧と槍を持っていることが大きな特徴だ。


「どんなにイカした服着てたってな、ヌルヌル糸引いてる奴のナンパに乗る気はないんだよ! 〈サンダーローズ〉!」


雷でゾンビ共の体を中から焼いてやる。

電撃に耐えたゾンビも何体かいるが、体が麻痺して動けないようだ。


「ウォン!」


その時、ゾンビに隠れていた数匹のスケルトンドッグが飛び出してくる。

迎撃しようとするが、アタシの方には向かわない。

向かっていくのはエリーとリッちゃんの方だ。


「しまった!」

「大丈夫だよ!」


リッちゃんがそう言うと、杖の先を相手に向ける。

先端から火球が飛び出し敵を焼いた。

エリーもまた、護身術の構えを取ると、両手に炎を纏いながら投げ飛ばす。

……訓練した成果が出てくれたか。


「マリー、こっちは少しぐらい大丈夫だよ! 気にせず進んで! 僕たちも支援するよ」

「ええ! 『オーガキラー』に負けてはいられませんから! 魔法をかけます!〈肉体強化〉!」


エリーが支援魔法をかけてくれた。

二人ともそれなりに敵を捌けるのか。

護身術を仕込んだとはいえ、エリーの戦闘能力がそこそこあるのが意外だ。


アタシは心置きなく敵を散らすことにする。

眼の前にはまだ数十を超える敵がいた。


「アタシだってこういうときの技は考えてるんだ」


アタシは構えると、両手から炎魔法を吹き出す。コントロールは考えず、威力重視だ。

次に風魔法で刃の竜巻を周囲に生み出すと、竜巻に合わせて踊るように体を回転させる。

螺旋渦巻く炎に紫電も追加だ。


対多数用・新技――


「『鼠華火』!」


アタシは炎と雷の螺旋を生み出すと、そのまま真っ直ぐに敵の中へ突っ込んで雑魚共を薙ぎ払う。


「不感症のゾンビ共にはいい刺激だろ?」


大体は薙ぎ払った。

そのまま親玉の所へ突っ込ませて貰う。


「なかなかに強いのう。近衛よ、こちらへ」


骨の親玉が指を鳴らすと、リビングアーマーが四体現れる。

頑丈な鎧にがらんどうの中身、そして高い近接能力を持つ厄介な敵だ。


……流石に四体に魔法使いはキツイな。


「うぉお! 我が力をみよ! 私の前に敵などない!!」

「アタシも戦うんよ! 振動撃!」


『オーガキラー』のメンバーが飛び出してきた。あっちの方も片付いたらしい。


先行して筋肉姉妹が、遅れて変態がやってくる。

四体の鎧共のうち、三体を『オーガキラー』が受け持ってくれた。


……これなら殺れそうだ。


「カカカ、ちと分が悪いの」


そういうと骨野郎は入って来た扉の方へと後退していく。


「おのれ貴様! 私を前にして逃げるのか!?」

「撤退も良き将の努めよ」


筋肉女が騒ぎ立てるが骨野郎は意に介した様子もない。

全軍壊滅状態になってる奴のどこが良将だ。

大人しく自害しろ。


追いかけようとしたが、ガラクタ鎧共はアタシを進ませまいと道を塞ぐ。

ちっ、嫌な相手だ。

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