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第126話 必殺技

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「リュクシーちゃん! 大丈夫だった?」

「私は大丈夫なのですよ! 『ラストダンサー』の皆も無事で何よりなのです」

「そう、良かった……。えっとそっちは冒険者さんかしら?」

「ああ、私達はB級冒険者のフーディさ。スキルは――」


『パンナコッタ』と『ラストダンサー』が顔合わせをしているな。

ほっとこう。


「それじゃあ勇者ちゃん。早速ながら『ラストダンサー』にかけられた魔法を解いてくれ」

「あ、それなんだけどちょっと待ってもらっていい? 私ね、一つ思いついちゃった」


ん? なんだ?

魔法を封印されてるポリーナがそう言うならアタシは別に構わないが……


「と言うわけで、ちょっと魔族と戦ってくるわ。フーディちゃんもいいかしら? 念のためにマリーちゃんも来てくれると助かるわね」

「私は別に構わないよ」


ん? なんだ? 何をする気だ?

二人が敵に向かっていく。

魔族たちをフーディが睨みつけると、敵の体が燃え始めた。……魔眼の力だな。


次に、その炎がポリーナの所に集まっていく。


ああ、そういう事か。

ポリーナのスキルで炎を集めて再利用するって訳だな。


ポリーナは炎を剣に集めて敵を斬りつけていく。

斬られた敵は再び燃え上がり、その炎はある程度焦がすとまたポリーナの元へ集まっていた。


炎を回収する度にポリーナの纏う炎は派手に、鮮やかになっていく。


「これで永久機関の完成かしら? 私のジーニィちゃんも消耗してるみたいだし、しばらくは休ませてあげるわ」

「アタシのトコもちょっと疲れ気味だからね。即席コンビでよろしく頼むよ」


フーディが燃やし、ポリーナが炎を集めて武器として使う。

なるほど、二人のスキルを噛み合わせた攻撃か。

即席とは思えないコンビネーションだな。


「そろそろねえ。マリーちゃんみたいにできると良いけど……」


何度も炎を集め、炎の色が白へと変わり始めた頃、ポリーナは敵に向かって剣を振り抜く。


剣からは一瞬の間を置いて炎が放出されると、炎の波は周囲の敵を一瞬で飲み込んだ。

敵は跡形も残っていない。


やべえ威力だな。

魔族側も驚きで騒がしい。


「この威力……。さっきの敵か!?」

「違う! 別の奴だ!」

「なっ!? こんな攻撃をできる奴が人間種にも複数いるだと……?」


動揺が広がっているな。

おっ、二人が戻ってきた。


「まあこんなもんかね。しかし……流石はA級だね」

「ふふ。ありがとう。でも課題はたくさんあるわ。熱の回収効率を上げるためにもタイミングを考えないとね」

「アタシの炎も少し時間を置いてから消したほうが良さそうだね。あれじゃあ敵をしっかり焼けないから」

「それじゃあ――」


二人は次のコンビネーションの方法を考えているようだ。


凄えな。

意外な組み合わせで火力が上がった。

これなら……。


ん? さっきから『パンナコッタ』のメンバー、コナツと『ラストダンサー』のジーニィがブツブツと呟いてるな。なんだ?


「わたしのフーが……あんな若作り年増女なんかに……わたしのわたしのわたしの……」

「ポリーナ捨てないで……ポリーナポリーナポリーナぁ……」


うん。

怖いから聞かなかったことにしよう。


「凄いのです! 私も負けていられないのですよ」


おっ、勇者ちゃんもやる気を出したか。

勇者ちゃんがスキルを発動させると、冒険者にかけられた魔法を次々に解いていく。

これで、改めて反撃ができるな。



その後も何度かアタシ達は敵を片付け、孤立した冒険者を救い出す。

ちょくちょく悪魔の魔法をかけられた奴がいたが、勇者ちゃんに触れる事で魔法が解除できた。


……やっぱりみんな囲まれて苦労しているようだ。しっかり助けねーとな。

他には――。


「さあ、最強はどちらか今日こそ決めてやる!」

「ふはは! 貴様とまた相まみえようとはな!」

「姉ちゃん! 今は戦争中なんよ! そんな首なし魔族は放っておくんよ!」

「おおっ! ルビー殿の勇姿を目の前で……私感動しております!」


……よしっ、ここに困ってる奴はいないな。

さあ別の場所に行くか。


「あ、マリー、良いところに――」

「おっ、悪いが忙しいんだ。そっちはそっちでなんとかしてくれ」

「えっ、ちょっと待つんよ――」


サファイが話しかけて来たが受け流して誤魔化す。

悲しいがここは戦場だからな。

非情にならなければ助けられる命も助けられないんだ。許せ。


まあアイツ等はそこまで魔法に依存してないし大丈夫だろ。

とりあえずサービスでウインクしとこう。




あれから動いてまわり、いくつかの冒険者は救い終えた。

味方も陣形を整え終わりそうだ。


一部助けが不要な奴らはいたが、それ以外は奇襲と突撃で助け出している。


空の敵は細目のおっさんが食い止めているな。

大局ではジワジワ押されているが、致命傷にはなってないってトコか。

このまま持ってくれれば……。


そこで再び魔族が騒がしくなる。


「司令部より支持が出た! 退け! 『魔重鏖殺』作戦を発動するとの事だ!」

「そ、それは王都攻略用の――」

「構わん! どうせ魔王様に失態を見られれば終わるのだ! 少しでも生き延びる手を打て!」


なんだ?

なんかヤバそうな発言をしてるぞ?


「お前ら! 街の壁まで後退しろ!」


おやっさんの怒号が飛ぶ。

見ると街の壁の方にズラリと兵士と冒険者が並んでいた。

……魔法部隊と弓隊か。

引きつけて攻撃を浴びせるつもりだな。


「おう、あのおっさんの言うとおりだ。冒険者達はさっさと後ろに下がりな」

「そうそう、何をしてくるか知らねえが、アンタらが潰れちゃ俺達も困るからよ、兵士達に任せな」


近くにいた兵士が後退するように促してくる。


前線で戦う兵士達が壁になるように前へでる。

何が来るのか知らねえが、最残線にいるのはヤバイって事だな。

……アタシ達冒険者が後退しなくちゃ兵士も後退できないか。


「すまねえな。お言葉に甘えさせてもらうぜ」


アタシ達は礼を言い、リッちゃん達に合図を送って後退する。

他の冒険者たちもゆっくりと後退しているな。

流石におやっさんの指示には従う――。


「引っ張るな! 私はまだまだやれるぞ!」

「姉ちゃん、敵がなにか仕掛けてくるんよ。一回戻るんよ」

「おのれ……。これで勝ったと思うなよ!」


……うん、見なかったことにしよう。


冒険者は大半が壁の上に集合し、上から様子を見ていた。


……陣地を半ば放棄する形になったな。

陣地で残っているのは兵士たちだけだ。


「おやっさん、本当にアタシたちは下がってよかったのか? 兵士達とだいぶ距離が開いちまったが……」

「構わん。敵が何か仕掛けてくる時は兵士が盾となって守るということで話がついている」


それは構わないが……。

本当に大丈夫なのか?


「アタシ達がフォローしないとジワジワ削られるだけだろう? その辺りはどうすんだ?」


「安心しろ。もうすぐ王都の兵士が到着するという連絡があった。その作戦に巻き込まれないようにするための工夫も兼ねているらしい」

「作戦? 今から離れなくちゃいけねえほどの攻撃が来るのか?」


おやっさんは静かに頷くと、多分な、と付け足した。

おやっさんも詳細を知らないらしいな。


「それに兵士達は守りのスキルで全体の守りが底上げされている。魔族もそう簡単に兵士を抜けなかっただろう?」


ああ、なるほど。

魔族が数でゴリ押ししてきても兵士達が崩れなかったのはスキルの力か。

全然敵を倒さねえと思っていたがそっち方面を強化していたんだな。


「今回の戦いの役割は冒険者が剣、兵士が盾だ。数の差もあるから攻めには欠けるが敵の勢いを削ぐには十分だろうよ」


敢えて剣としての役割を下げて盾だけにしたのは、敵からの攻撃に対する防御と味方の攻撃の巻き添えを食らうないようにするためらしい。


……そこまで言うならアタシも黙ってるが、本当に来るのか?

王国軍の影も形もないぞ。


その時、魔王軍から大きなざわめきが聞こえる。

……遠くて聞こえねえな。


「なんて言ってるんだ?」

「ちょっと待て……。これでどうだ」


おやっさんが合図を送るとギルド員が道具を設置して魔族の方へ向ける。

すると魔族たちのざわめきがはっきりと聞こえるようになった。

……集音の魔導具か。


機械をギルドの人間がいじり始めると、波長があうように特定の魔族の声だけがしっかりと聞き取れるようになる。


「人間め、引いたか。お蔭で範囲から外れてしまった。」

「総司令。中断する事は……」

「駄目だ。魔力が無駄になる。……少なくとも我々を邪魔する壁は一通り破壊出来るのだ。十分だろう」

「しかし戦力そのものの削減としては……」

「少々腕の立つ奴らが残ったところで一般兵は戦う必要はない。そいつらは第二波に任せ、一般兵は街を攻める。それが『魔重鏖殺』だ」


よく聞こえるな。

……なるほど、これで敵を盗聴していたのか。

だから敵の動きが読めた、と。


「ここまで聞こえてるなら魔族たちの言う『魔重鏖殺』って奴の情報も得てるんだろ?」

「残念だがその情報は敵も漏らしていない。口ぶりから察するに極秘事項なんだろう。下っ端たちも名前しか知らないような戦術のはずだ」


手の内が分かれば対策のしようもあるってのに厄介だな。


魔族たちの動きがおかしい。

魔族側も一部を除いて後退している。

来るのか……?


「『魔重鏖殺』一の波、発動!! これで……」


途中で急に音が途切れやがった。


なんだ? 何が来る?

集団魔法か?

それとも変身での突撃か?



その時、空の……いや空間の色が変わる。

これは……見たことあるぞ。

まさか悪魔召喚か!?

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