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第125話 三日目

9-125-143


三日目の早朝。


まだ夜も暗いのに相変わらず魔族達がうるさくて目が覚める。


どーせ昨日のように攻めてすぐに引いて……。いや、なんか変だぞ。

魔族側の声から気迫がビリビリと伝わってくる。

今までとは違うな。

何があった?


アタシは敵の見える高台に移動する。

そこにはイケメンがいた。

……目の下にクマができてるな。


「イケメン、一体何が起きたんだ?」

「やあマリー。どうやら敵が一斉に仕掛けてきたみたいだね。みんな死にものぐるいだよ」


確かにみんな狂ったように攻め立てているな。

イケメンも矢を撃つ回数が増えている。


イケメンをいじってやろうと思ったがどうやらそれどころじゃないらしい。


「悪いがここは任せたぜ。アタシ達もすぐに出る」

「ああ、頼んだよマリー」


今までは敵も損失を抑えるような戦い方をしてたからなんとかなったが、今はまさに必死の覚悟で来てるからな。

数の差でゴリゴリ押されている。


戦場に近づくと、魔族達の怒声が聞こえるな。


「早くしろ! せめてこの街くらいは落とさねば! 我々が魔王様に処罰されてしまう!」

「多少の犠牲は気にするな!なんとしても落とせ!」


……来るんだな、魔王。

それで一気に攻撃に転じたって訳か。


「行くぜエリー、リッちゃん。そして……」

「ご主人様は私が守りますのでご安心を」


今回はメイが戦闘に参加する。

あの数だとご主人様に何かあっては……と言い譲らなかった。


獣人の里に行く前に、メイの実力を確認したが戦闘には全く向いていない。

近接戦のセンスも遠距離魔法の練度も皆無だ。


だが一応、ある作戦を思いついている。

上手くハマれば凄まじい戦力強化になるはずだ。


「とは言っても私にできる事は防御しかありませんが……」

「メイは身の回りの世話をしてもらうために創ったんだよ。むしろこんな立派なスキルが発動しただけでも立派だよ。ファーちゃんはスキルが発動しなかったからね」


リッちゃんがメイの頭を撫でてよしよしとやっているが今はそれどころじゃないから話を元に戻そう。


「スキルがあるからな。もしスキルが使えない場合はアタシが守る。確か……再使用に十秒だったか?」

「はい。一度解除するとそのくらいの時間をいただきますので、タイミングにはくれぐれもご注意を」


本人はリッちゃんがやられない限りは死ぬ事も無く時間経過で復活できるので本人の防御面はそれほど気にしていないらしい。


攻撃面では元々期待していない。

だが守備なら色々と戦術の幅が広がるのは間違いない。


「とりあえず、アタシが合図したら防御を確実に消すんだぞ」

「それは構いませんが……」


アタシに任せろ。中々に厄介な攻撃をしてやるよ


さあ、突撃だ。

戦場はたくさんの兵士達でごった返している。


冒険者たちは……マズイな。

数の少なさが災いして完全に包囲されている。

まあそれでも持っているのは流石に上位の冒険者か。


「よし、まずはそれぞれの冒険者たちを救って陣形を立て直すぜ」

「任せてよ!」


リッちゃん達が頷くのを見ると、アタシ達は近くで戦う奴らの所に駆け出す。

とりあえずは近くに居る奴からだ。


「ほら、どかないと痺れるぞ!」


雷や炎を出しながら、アタシは道を切り開く。


「お前ら大丈夫か?……なんだ、ポリーナじゃないか」

「あ、エリーちゃんにマリーちゃん!助けに来てくれたんだ!ありがとう」

「助け……。来た……」

「おいおい、お前らならそのまま抜けられるだろう?」

「……それがちょっと厳しいかな~って。私たち変な魔法?を受けたみたいで、今魔法が使えないんだ」

「何? どんな魔法だ?」


魔法が使えなくなるスキル持ちの奴は前に倒したが……。

そういう魔法を使える奴がいたか。


「もういないわ。召喚された悪魔だったのだけど、その悪魔を止めようと皆で一斉に攻撃しようとしたとたん……」

「悪魔……。魔法を封じる魔法、使った……」

「その後悪魔は消えたんだけど、おかげで味方に魔法が使えなくなった人が結構でているわね」


おいおい。

悪魔を召喚したのかよ。

これかなり厄介じゃないか?


「それは多分爵位持ちの悪魔だと思う。すぐに消えたのはコストを下げるために魔法一回分だけの契約だったのかも」


リッちゃんが説明してくれる。

封印の魔法がどれぐらい持続するのか見込みもつかないそうだ。

さすがに一生って事はないだろうが……


「つまりのつまり、拙者が立て直せるよう味方をかばっているあいだに、このように囲まれてしまった次第である」


細目が周りの魔族にナイフを投げつけながら答えてくる。

ポリーナはある程度戦えているが、ジーニィは無理だ。

完全にお荷物になっている。

一旦メンバーを引かせねえとな。


「よしっ。それじゃあ道を切り開くからちょっと待ってろ。……メイ! 頼む」

「お任せを。<サ・守護主>」


アタシはメイに声をかける。

メイはアタシの声に応じてスキルを発動させると、リっちゃんを中心としてシールドが展開された。

シールドはアタシ達と『ラストダンサー』のチームを覆う。


「うおおっ!」

「なにっ!? 弾かれるだと!?」


魔族たちが攻撃を仕掛けてくるが、メイのスキルが破られる様子はない。

やっぱり頑丈だな。


「え?これなに? そっちの新人さんの能力でいいのかな?」

「ああ、そんなところだ。少し後ろで隠れていてくれ」


『ラストダンサー』のメンバーを後ろに待機させると、エリーとリっちゃんに合図を送る。

二人はうなずくとそれぞれ準備を始めた。


「<守護壁>。……これで準備はできました」

「ちょっと熱いけど我慢しててね。<炎蛇陣>」


よし、炎をアタシの手の中でアタシが凝縮できる極限まで凝縮してやる。

「……すごい。これだけの炎を一点に集めるなんて」


ポリーナが驚いている。

なあに、本番はこれからさ。


「さて、魔族たちもアタシ達に触れなくていろいろ溜まってるだろうし、ここで一発解消させてやるよ。……メイ、防御を解除だ」

「かしこまりました。……解除!」


スキルが解除されると同時に、アタシは魔法を放つ。

狙うのは逃げる方向じゃない、正面だ。

この威力で逃げる方向に撃つと味方まで傷つけかねないし、何よりしっかりアタシの魔法を意識して、警戒して貰わないとな。


喰らえ。


「アザリア!」


恐縮されていた熱は一度に解放され、周囲の敵を焦がし尽くし波となって広がり、飲み込んでいく。


「何っ……」

「なんだあの威力は!」


魔族たちの動揺が聞こえるな。

今がチャンスか。


「う、うろたえるな! どれほどの威力があろうと魔王様の刑に比べたら軽いわ!」

「確かに……。しかし……」


無理矢理ごり押しで攻めていた奴らも少し動きが鈍ったか。予想通りだ。


溜めが必要だからこういう場では使いにくかったが、メイのスキルで欠点を補う。


これなら超火力で一度に大量の敵に攻撃ができるからな。


さて、メイがスキルを使用できるようになるまで守りつつ、逃げるための道を切り開きますか。


「ありがとう! 助かったわ!」

「良いってことよ。魔法が使えるようになるまでゆっくり休んでてくれ」

「拙者は再びの再び、空より攻めていこう」


アタシ達は『ラストダンサー』を味方陣地へと送り届けた。

細目のおっさんは戦いに行ったが、他の奴らは少しお休みかな。


「そうだ、リュクシーちゃんを探して! あの子ならスキルで私達の魔法を消せると思うから!」


戦場に戻ろうとするアタシに、ポリーナから声がかかる。

そういえば見かけないな。はぐれたか。

迷子はちゃんと指定の場所に連れて行かねえとな。


「分かったぜ。ちょっと行ってくる」


さて、一気に攻め立てても良いがまずは空から……おっ、いたな。勇者ちゃんが奮闘している。

一緒に戦っているのは……『パンナコッタ』のメンバーじゃないか。


この位置だと……ちょっと遠いな。


「ここからだと距離があるな……。アタシだけで助けに行くぜ。リッちゃんは魔法で援護してくれ」

「それでは支援をしますね。〈守護〉」

「じゃあ僕は攻撃魔法を準備するよ!」


それぞれが準備するのを見て、戦場へと向かう。


前に奇襲を仕掛けた時と同じように少し上空を滑走して敵を叩き潰しながら、勇者ちゃんのそばに降りた。


「よう。珍しい組み合わせだが……元気でやってるか?」

「マリーなのです!」

「マリーじゃないかい。……こっちの嬢ちゃんも知り合いかい?」

「一緒に魔族と戦った仲なのです!」


勇者ちゃんが元気よく返事をしてくれる。

どうやら無事なようだな。


「しかし、フーディはまた囲まれてるんだな」

「私達は中距離での戦いが得意だから距離を取ってたんだけどね。一気に突撃されてこのザマさ」

「とりあえず向こうの方だ。一気にぬけるぜ。勇者ちゃんはスキルを使ったか?」

「まだなのです! 使うと他の人たちが戦えなくなりそうだったのですよ」

「勇者……?」


勇者という単語に『パンナコッタ』のコナツが反応したが、説明は後だ。


今はこの囲みを抜けねえとな。


「今回はアタシが道を拓く。勇者ちゃんはしばらく力を取っておいてくれ。後で役に立つからな」


数と勢いだけは立派だが、前にフーディを助けた時と同じ戦法で良さそうだ。


アタシは地面を蹴って緩くすると、後退を始める。

今回は勇者ちゃんもいるし、リッちゃん達の支援攻撃もあるからな。

だいぶ楽ができる。



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