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第123話 空中戦

9-123-141


「どおおおりゃあああ!」


何かよくわからない掛け声とともに、魔族が飛び上がって……

いや、飛ばされて来ている。


「むむっ! 外したか! だがまだまだ弾はあるぞ!」

「姉ちゃん! それ魔族なんよ! 弾じゃないんよ!」


下の方を見ると『オーガキラー』のルビーが騒いでいる。

……アイツ何やってんだ?


「おおっ! マリーよ、ここにいる魔族を放り投げて支援してやるから安心するのだ!」

「いや不安しかないが」

「なんと当たれば一気に二人まとめて倒せるぞ!」


それ万が一アタシに当たったらアタシも落ちる奴だろ。

勘弁してくれ。今は真面目な場なんだ。

そもそも素早く動いてんだから当たらねえよ。


つか魔族を放り投げるとかどんな怪力だ。

魔族達も引いてるじゃねえか。


あ、でも飛ばされた魔族を救うために数人がかりで受け止めに入ってる。

滅茶苦茶すぎて相手も混乱してるし、結果的に手数が減るな。


「よーし、どんどん放り投げてくれ!」

「ハッハッハ! 任せろ!」


さて残りの奴らだが……。


「これはこれはお困りの様子。ひとつ助太刀いたそう」


背後から声が聞こえた。

こいつは……細目のおっさんじゃねーか。

〈空間交代〉で転移してきたのか。


「助かるぜ。『ラストダンサー』の方は良いのか?」

「なんのなんの。彼らに街へ来られてはこちらも困るというもの。それに拙者はこちらのほうがお似合いである。〈空間交代〉」


細目がスキルを使うと魔族の一人が別の魔族の進路上に転移し、衝突する。

動きが止まった相手を細目が転移してナイフで切り刻んでいく。


「マズいぞ! 前に見た奴だ!」

「距離を取れ! ナイフで刺されるぞ!」

「遅し遅し。拙者の領域から逃げようなど片腹痛い」


魔族が逃げようとするがそれを逃がしはしないようだ。

細目のスキルで一人ずつ転移させられ、切られていく。

あるいは転移によってルビーの投げた魔族と衝突させていった。


そうか。

前に追い払ったのは細目の力だったか。

こりゃアタシも頑張らないとな。


「マリー殿。彼らは生まれ持った性能というより、スキルにより風を発生させて空を飛んでいるものが大半のようである」

「そうか……。良いことを聞いたぜ」


風を操るのが主流なら一つ方法がある。


「せめて、あの女だけでも!」


数人、高速でアタシに近づいてくる奴がいるな。

実験にはちょうどいいか。


「死ね!」

「甘えよ」

「なっ!? 壁!?」


アタシは空気の塊を作り、敵を受け止めてやる。

攻撃が止まった事に驚いているようだが、これは序の口だ。

どんどん塊を作るぜ。


「なんだ……? 動きが……?」

「飛び辛いか? ついでだ、アイビーフリーズ」


魔族の体を氷でコーティングしていく。


どうだ?周りの空気を圧縮して一時的に気圧を変えてやった結果は?


空気が薄くなったりして操作が難しいだろ?

更に氷魔法で重さも増加してやれば……。

中々に飛び辛い環境なんじゃないか?


「く……そっ!」


思ったとおり、一部の魔族は失速して地面に落下していく。

落ちた奴は氷魔法の影響で刃みたいな氷が生えているからな。

ちょっとした重量武器と同等だ。

さあ、ドンドン魔族側に落っことしてやるよ。


「思ったとおり、近接ならなんとかなりそうだな。……しかしこう距離を取られちゃアタシ達じゃあ戦いにならないな」


魔族達は近接戦の分が悪いと見るや距離を置いて魔法を打ち込んで来る方針に切り替えたようだ。

細目のスキルもルビーの魔族投げもギリギリ届かないぐらいか。


ヘタに突っ込むと逆に手痛いカウンターを食らいそうだから無視して下の援護をしたいが……逆に攻めてこられても厄介だ。


このまま膠着状態が続いてもな……。


「心配は無用の無用。もうじき王都から秘密兵器が到着する」


細目が話しかけてくる。

どうやらこの状況はそこまで長く続かないみたいだな。


「秘密兵器? 空中を飛んでいる相手を撃ち落とせる武器かなんかか?」

「左様の左様。王都が持つ秘密であるという。外に漏れれば王都に取っても驚異ゆえ、秘された武器とも呼ばれている。従って今を耐え切れば良し」


そんな物があるのか。

分かったよ。

ここは信じて待ってやる。


「で、それはいつ届くんだ?」

「……早ければ明日であろうか?」


なんで自信なさげなんだ。

駄目じゃねーか、今すぐ持って来い。

雑魚相手とはいえこっちの百倍近く空飛べる奴がいるんだぞ。

今は相手がビビってるからいいが、犠牲を無視して突っ込んで来たらどうするんだ。



結局、空中での戦いはしばらく睨み合いと牽制をして終わった。

どうやら敵も無限に飛べるわけじゃ無さそうだ。

定期的にほかの魔族と交代をしていたからな。


……交代要員も含めて……空の敵は全部で二、三百ってトコか。


それに予想外の打撃を受けるとすぐに引くって事は向こうもアタシ達同様、空を飛べる奴らは限られてるらしいな。


とはいえ、アタシ達も無限に戦えるわけじゃないからな。


「さてのさて。向こうも引いたようであるし拙者は陸の補佐に戻るとしよう」


陸……か。

空を飛んでいるからこそ遠くまでよく見渡せる。

確かに地面を埋め尽くす敵の数は尋常じゃない。


敵の数は未だに万を超えるだろう。


それに対してアタシ達は寄せ集め……か。

個々の能力なら勝ってそうだが、敵も数とスキルで強化されてるからな。

ジワジワと押されてるんだよな。


幸か不幸か、あるいは敵の目的地が王都だから様子見なのか、まだ敵が本気を出してる様子はない。

まあ〈変身〉されたところで勇者ちゃんが潰しにかかるんだけど。


だからこそ勇者ちゃんの負担もかなり大きい。

正直キツイな。

フーディ達の話だと他の領地からも兵を出して奇襲と撹乱を仕掛けているらしいが……。


とりあえず今日を生き抜くことを考えるか。


「おう、お疲れさん」

「おやっさんも疲れた顔をしてるぜ」

「ふん、久々の戦いが馴染んでねえだけよ」


アタシ達は今おやっさんに呼ばれて司令部みたいなトコにいる。

朝から戦っていた他の冒険者も別の奴らと交代して休憩だ。


アタシ達が倒れたら総崩れとはいえ、おやっさん達が色々と手配してくれてるのは助かるぜ。


だけど日が傾いてからは敵の攻撃が一層厳しくなってきた。

このままじゃすぐに出ないとマズいだろうな。


「とにかく夜になったら近くの敵を襲うぜ。……どうしたんだリッちゃん? 悩んでるようだが」

「うーん、今の魔王とファーちゃんがどこにもいないからどうしたのかなって」


確かにそれは気になっていた。

前に奇襲を仕掛けた時もどこにも姿が見えなかった。


「……まだ来てないのでしょうか?」


エリーの発言に皆が困った顔をした。

肝心のトップがいない。

遠くから指示を出すだけならタダの戦争だ。


不意をつかれたとは言え、この程度なら王国をかき回すだけで終わりだ。

実は先遣隊で後から本丸が来るとか嫌だぞ。


「それは俺達ギルドも王国も調べている。分かれば伝えよう。それより今は目の前の敵だ」


おやっさんが横から口を挟んでくる。

敵か……。確かに目の前の敵をなんとかしなくちゃ行けねえが……。


「初日の攻勢は穏やかだった。だが相手も様子見が終わったのか段々と攻撃を強めてきているのは確かだ」


このまま味方の兵力だけで戦うとジワジワ潰されるのは目に見えている、とおやっさんはいう。

王国側が秘密兵器とやらを持ってくるのに賭けているらしいが、どこまで期待できるんだかな……。


「不満そうな顔だな? 一応、各地から順次兵力は集まっているから安心しろ」

「とはいえ数が数だぜ? ひっくり返す方法はあるのか?」

「明日、王都の部隊が来れば分かるらしいな。だがそれまでにココが落ちちまったらマズい。そこで夜、もう一暴れしてくれ。好きに戦って構わねえからよ」


細目の奴が言っていた秘密兵器とやらか……。

一応、おやっさんには昨日の奇襲の事や回復して戦えることは伝えてある。


「元々奇襲する予定だったから構わないけどよ、好き勝手に動いたところでそこまで大きな影響はないんじゃないか?」

「かも知れねえな。だけど少しでも戦力を分散させられるならやっておきたい。特に昨日は向こうの戦略の要を潰されたと騒いでいたぞ」


へえ。どっからか魔族達の情報を得てるのか。


「しゃあねえな。一つ貸しにしてやるよ」

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