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第122話 二日目 朝

前話に別の話が混ざっていたため差し替えました。

9-122-140


日が開ける少し前に武器同士がぶつかり合う音で目が覚める。

敵が攻めて来ているのか。

……昨日より音が近いな。


「マリーさん大変です! 敵が……ってなんですかこれは!?」

「ポン子か? なんで居るんだ? 館へ行ったんじゃなかったのか?」

「それが逃げようとしたら数日分の雑務を押し付けられて徹夜で働き詰めなんですよー。……ですが仕事はすべて片付けました! 今日の夜には逃げますのでご安心を!」


逃げるとか言うな。

逃げたところでこの町がなくなってちゃ失業じゃないか。

……数日分の雑務を一日でこなすとか、有能なのかそうじゃないのか分からん奴だな。


「私の事より敵の対処をお願いします!」

「ああ、音が聞こえてたからな。ちゃんと準備を進めてるよ」


朝方に攻めてくるとは敵もいやらしい奴らだ。

まったく乙女の朝は準備で忙しいってのによ。


「しかし……話を戻しますが、これは何ですか?」

「ん? どれの事だ? 下着はちゃんと片付けたぞ? ベッドのシミも……」

「違います! このベッドですよ! 戦場でどこからこんな物を持ってきたんですか

!?」

「そりゃ館からだろ」


前にリッちゃん倉庫に入れて放置してた物だ。

流石に他の味方に見つかると士気に関わるから、天幕から出さずに隠すつもりだ。


ちなみに今は小さい天幕を二つ用意して貰い、リッちゃん達とアタシ達で部屋を用意してもらっている。


他にも勇者ちゃんや『ラストダンサー』など個の戦闘能力が高い奴らはより前線に近い所に天幕があてがわれているな。


アタシ達は奇襲がメインだからかほんの少しだけ後方だ。


そんなトコでキャンプさせる辺り、敵が攻めてきたらすぐに起きて戦って欲しいという意思を感じる。

お陰で食料の配給所から遠いのが厄介だ。


「ズルいですよ! 私もふかふかのベッドで眠りたいです!」

「ならポン子も一緒に最前線で闘うか? 無理して館へ行かなくても――」

「館にあるベッドのほうが健康にいいですからね! 私はそれで満足します!」


なんだよせっかく囮として使ってやろうと思ったのに。


ポン子が出ていってしばらくしてからエリーも身支度を終えたようだ。

外に出てリッちゃん達と合流する。


「まずは状況の把握だ。状況をみて魔法が撃てそうならリッちゃんとエリーで魔法をぶっ放してくれ」

「分かったよー。……さすがに味方がいる所に撃つとまずいよね?」

「ああ、ぶっ放していいのは『オーガキラー』がいる時だけにしておけ」

「そ、それはどうなのかな……」


イイんだよ。

アイツ等はフレンドリーだけどフレンドじゃないからな。

ちょっとファイアしたって耐えられるだろ。

そんな事より作戦会議だ。


「アタシは撹乱も兼ねて敵を攻撃。リッちゃんが後方から魔法で援護。メイはリッちゃんの防御だな。エリーは……」

「私はマリーの支援と幻覚魔法で撹乱します」


ああ、それで頼む。

基本はいつもどおりで後は状況を見て判断だな。

今回は冒険者全員をまんべんなくみて対応する必要があるが、それくらいだ。



戦場にたどり着くと、それぞれのチームがまとまって戦いを繰り広げていた。

『ラストダンサー』に……『パンナコッタ』のメンバーもいるな。

もう戦場に出てるのか。


その少し後方で兵士たちが陣を敷いて漏れ出てくる敵を迎え撃ち、こちらに敵が来ないように封じ込めている。


攻めの冒険者と守りの兵士ってトコか。


冒険者達もいくつか見なれないチームがいる。

多分他所から来た上級冒険者なんだろう。


こりゃアタシ達もうかうかしてられねーな。


「リッちゃん。どうだ?」

「……うん、大丈夫。これなら打ち込めそうだよ〈炎蛇陣〉」


炎の蛇が囲いを抜けようとする魔族を焼き払い、敵陣へと突っ込んでいく。

やっぱりこういう場だと魔法は強いな。


「うおおっ!? なんだ!?」


……味方も驚かせてしまったみたいだ。

動きが固まってしまっている。すまん。


「おう! 『エリーマリー』のメンバーじゃないか!」

「防御は俺たちに任せて気にせず魔法を打ち込みな!」

「はぁはぁ……。熱痛気持ちよさそう……」


謝罪のポーズをとると、兵士たちが気にすんな、と挨拶をしてくれた。

一部気になるやつもいるが関わったら負けな気がするのでほっとこう。


気を取り直してアタシは敵に向き直る。


「じゃあちょっくら遊んでくるぜ」

「マリー、ご武運を。〈守護〉、〈幻覚〉、〈身体強化〉、あとは……」


エリーにかけられるだけの魔法かけてもらって突撃だ。

さあ、戦いだ。


「待ってたぜ! 防御は任せな!」

「同じ顔が複数……。魔法で増えたのか? 一人くらい貰っても……」


兵士達がうるさい。

とにかく魔族から守ってやるよ。


リッちゃんの炎で空いた部隊の隙間に差し込むように、アタシは突っ込む。


数体の魔族を切りつけ、空中に舞い上がるとそのまま雷を落とした。

どうだ? エリーの幻覚で隠れてるが、雷を落とした本体がどれか分かるか?


「アイツ、例の……」

「ええい。部隊を展開しろ! 早く」


おや? 瓶を取り出して来た奴がいるな?

……あれが魔族入りの瓶か。


「それ、壊すぜ。ファイアローズ!」

「な!? くそっ、狙われてるぞ。味方がやられる前に瓶持ちを下げろ!」


よし、数体の魔族も含めてまとめて瓶を破壊できた。

敵も結構痛手だろ。


「〈変身〉の許可を!」

「許可する! 以降は任意の判断で使用すること!」

「はっ! 〈変し……〉 うわっ!?」


火球が数十発連続でとんでくる。

これはリッちゃんだな。

支援砲撃があるのはありがたい。


「アタシの友達はデキる奴だろ?」

「な、なめるなあ! 〈変身〉」


おっと、敵が姿を変えてきやがった。

ゴツい六足の……虎なのか狼かよく分からない姿をしやがって。


……物凄いパワーで敵も味方も吹き飛ばしながらコッチに来やがる。


「悪いが正面からまともに戦う気はないんでな、じゃあな」

「ニゲ、ルナァ!」


アタシは地面を柔らかくして、サッサと後退する。

ゆるくなった地面に足を取られたところで、リッちゃんから魔法の砲撃だ。


怯んだな。

アタシは逃げから一気に攻めに転じて、動けなくなった敵を刻んでやった。

そしてすぐに空中へ離脱する。


「ちょっと深く入ったからって止まっちゃ駄目だろ。ちゃんと相手が満足するまで動かねえとな」

「グガッ……タタカ、エ!」

「悪いがアタシは人気者なんだ。一人に集中させようなんて甘いぜ?」


なーに、アンタの相手はたくさんの魔法使い達がやってくれるさ。

しかし刻んだのにまだまだ元気だな。


タフな奴とやりあうのは面倒くさい。

他遠くからの攻撃手段もないみたいだし、足元の地面を固めて放置してやるか。


そうこうしてるうちに、放置した魔族は後方からの魔術砲撃の餌食になった。

後ろにいる兵士達も意外と仕事してんな。


「空中に浮かんだぞ!」

「やはりあいつが昨日、奇襲を仕掛けてきたやつか……」

「だがどうやって場所を移動して……?」

「気にするな! 飛行隊を!」


お偉いさんが声をかけると、百を超える敵が空へ飛び立った。

……これが昨日コッチを苦しめた飛行部隊ってやつか。


「上空と地上から共同で攻め立てよ!」


同時進行か。

今まで攻めなかったのは昨日の意外な反撃があったから様子を見たってトコか?

クソうぜえから勘弁してくれ。


「ゲヒャヒャ! 舐めたマネしてくれたなあ!」

「空は俺たちのフィールドだ。潰す」


敵が攻めてくる。

……確かに空中専門の奴らはアタシより滑らかに空中を飛べるな。


アタシは空気の壁を作って蹴っているだけだからな。

さてどうしたもんか。


……ん? 奥にいる奴、空中で停止してるな。

何を……まさか詠唱か!?


「ゲヒャヒャヒャ!〈ファイアランス〉」

「そう言えば空でも魔法が使えたな!」


魔法を躱しても他の奴らが勢いに任せて強襲してくる。

敵は早くて直撃しないようにするのが精一杯だ。


あ、テメエ。こっそりアタシの横を抜けて後ろの奴らに攻撃しようとしてるな。


「こんな美人を放ってどこにイこうってんだ? ファイアローズ!」

「クキャキャッ!?」

「くっ、無視して攻めるには少しばかり手強いようだな……」


昨日はしてやられたみたいだがそう何度も……同じ事はさせねえよ。


しかし地上とはまるで立場が逆だ。

ちょっとマズい。


かと言ってアタシが地面に逃げたらこいつらの攻撃が下の奴らや本陣のヤツに向かう。

そうなったら総崩れもあり得るから厄介だ。


なんとかしのいでリッちゃんの攻撃で牽制してもらうしか――。

ん? なんか下が騒がしいな。


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