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第113話 解決

8-113-131


「やったよ! 私達の勝ちだ!」

「疲れたにゃあ……」


ちびっ娘二人がはしゃいでいる。

初めての強敵相手でここまで戦えるのはたいしたもんだ。


「良くやったな。お陰でアタシの手の毒も軽くなった。ゆっくり休んでな」

「ヘヘっ、エリー姉が守護の魔法をこっそりかけてくれたお陰じゃん?」

「エリーの魔法に気がついてたのか。やるな」

「筋力強化以外にも覚えておくと便利ですよ。次に教えますね」


ワイワイ騒ぐ獣っ娘達。

元気なようでなによりだ。


「さて、疲れただろうしお前たちは少し休みな」

「そうですね。私達は後片付けをしますので」

「後片付け? 手伝うじゃんよ」

「そうですよ。私達だって片付けくらいはできます」


あー、まだ気がついてないか。


「違う違う。……来たぞ」


森の奥から、数体の魔族達が現れる。

おそらくだが、さっきの奴は先遣隊でこっちが本命なんだろう。


「あの野郎。ガキ一匹も捕まえられねえのか」

「どうしようもねえ奴だな」

「俺ら一応魔王軍なんだからよ。ちったあ気張らねえとな」


格好つけているが今までアタシが戦ってきた奴に比べたら雑魚だ。

さっき腕をやられた痛みをコイツラに返そう。


「さあ、お前らの仲間がやってくれた分はお前らに返すぜ。お仕置きの――」

「私達の里でやんちゃしてる悪い魔族はあなた達ですか?」


魔族の背後から声が聞こえる。

母リラの声だ。いつの間に回り込んだんだ?

声が低い。

滅茶苦茶怒ってるな。


「なんだ貴様……ぐぁっ!」


おお……。

一撃で魔族の体がくの字に折れ曲がったぞ。

負けちゃいられないな。


「まず一匹。さあ残りの皆さんもお仕置きですね」

「おいおい楽しそうだな。アタシも混ぜてくれよ。手に臭いのぶっかけられてんだ」

「あらあらしょうがないですね。それでは一緒に楽しみましょう!」


アタシと母リラ、二人で笑う。


「ひ、ひいぃ!」


魔族たちはその異様な光景に恐れをなしたようだ。


「ま、待て。逃げるな! 数ではこっちが勝って……ぐばぁっ!」

「駄目よアナタ。他の子に目移りばかりしてないでちゃんと私を見てくださいな」

「た、助け……。いぎぃっ!」

「イきたいんだろ? たっぷり体に刻み付けてやるからよ。体液吐き出しな?」

「た、助けてくれぇ!」


さあ、パーティーの時間だ。

よくも好き放題やってくれたな。


おいおい魔族共。

逃げようとしてるとこ悪いが……逃さねえよ?



「いやあ、スッキリしたぜ」

「やっぱり気兼ねなく力を振るうのは大事ですね」


さっきまで調子に乗っていた魔族達はアタシと母リラでボコボコにした。

何人かの体に優しく聞いたところ、一部は魔王のスキルが発動して死んでしまった。


だが下っ端の奴らは魔王もスキルを使用していないのか、尋問しても平気だった。


その結果わかったことがある。


まず第一に、ここで人質を取って暴れまわる予定だったので、戦力の大半がアタシ達のいた場所に割かれていたという事。


次にどうやってここまで来たのか問い詰めてみた。

さっき蜂を入れていたように、瓶の中に小さくして詰め込むスキルを使って隠密系のスキル持ちが輸送したとか。


最終目的は上の人間しか知らないらしい。


……クソ厄介なスキルだな。

これは王都に一報を流しとくか。


コイツらは魔族としては質が高くない。

戦力的に見ても辺境伯地域でやりあった奴らより一段も二段も質が低い。

メインの戦力じゃないんだろう。

これで強い魔族が不意打ちして来たらと思うとヤバイな。


さて、そろそろ最後の質問だ。


「お前ら、どうしてこの里の事を知ってたんだ? 分かるか?」

「知らない……。ただ噂だが魔王様に顔を覚えられる奴はすべての情報を洗いざらい吐かされるという話だ。獣人のトップが辺境にいるという噂もきいている。ソイツじゃないのか?」


へえ。誰かスキル持ちがいるのか。

て事は獣人の奴が魔王軍に……。

いやいたな。ルルリラの兄貴が。


「……そいつは生きてるのか?」

「魔王様のスキルが発動したらしいからな。もう死んでいるだろう。なんでも強くは無いが食料を一人で数千人分は賄えるスキルを持った狼の獣人だったらしい」


下っ端魔族の回答に母リラがひどく動揺する。

どうやら思い当たったようだな。


「そんな……。ルガル……」


そういえばルルリラ兄の事話してなかったな。

アタシのスキルは説明したくないがどうやって話をしたもんか。


体臭が変わったらしいから出会っても気が付かれない可能性高いし……。

眠ってた幼女願望を引き出して別人として生きてます……。

だめだな、いやワンチャン行けるか?


「えーと、あのな……」

「あの子は不器用でしたが良い子でした。私はあの子の思いを胸に、魔族と戦います」


ヤバい。

覚悟決めた母親の目だ。

魔族と戦うにはアリだけど絶対に無茶して死ぬタイプだこれ。


「おい、ルルリラ。後で説明をしておいてくれ。あ、アタシのスキルのことは内緒でな」

「えぇっ!? そもそもあの人が兄かどうか今でも疑ってるんですけど……」


ちょっと匂いが変わっただけだろ。

信じろよ。一応お前の兄なんだから。

うだうだ言ってると兄貴を年上の妹にしてしまうぞ。


「ん? どうしたじゃんよ。ルルリラの兄貴なら前にマリー姉が助けてただろ? 匂いはともかく顔は本人に近かったじゃん?」


おい、どうやって話を持って行こうか考えている時に直球ストレートを投げ込むんじゃない。

母リラが暗闇の中で一筋の希望を見つけたような目になっただろうが。

さて、どう説明しようか……。


「それは……本当ですか?」

「あ、ああ……。嘘じゃないぜ。方法は教えられないが……命だけは助かった。ただ、副作用で酷いことになってな……」


すまん。

幼女になってから元に戻したつもりだったが肉体を再構築する過程で別人に変わってるようだ。


見た目上はイケメンになったぞ。多分。


「ありがとうございます……。母親としてはどんな形であれ、生きていればそれで十分ですよ」

「そ、そうか。それならいいんだ。そう言ってくれてアタシも救われるよ。詳細は王都に行ったときにでも会って確かめてくれよな」


ふぅ。危なかったがこの場はやり過ごした。

エリーが汗を拭ってくれる。


「ところでこの魔族はどうするんだ?」

「そうですね……。もう聞きたいことは一通り聞きましたし……、残っているのは皆さん男の人のようですから、里の女性達で可愛がりましょう!」

「可愛がる?」

「ええ! 久しぶりに余所から来た血ですし、せっかくですから干からびるまでたっぷり搾り取って新たな里の礎にします」


そうか……。

王都に連れて行くと拷問やらにかけられるだろうし……ある意味幸福なのかもな。



しばらくすると隠れていた他の住人たちも顔を出す。

姿をくらますスキルを解除したようだな。


「これでとりあえず終わりだな。アタシ達は風呂に入ってくるぜ」

「ええ、助けていただいてありがとうございました。事後処理はこちらでやっておきますのでご安心を」


言うほど何もやってないけどな。

今回一番頑張ったのは獣っ娘二人だ。



現場はまだ色々と騒がしかったが、アタシ達は客人と言うことで休むよう手配してくれた。

まあ手伝えと言われても里の勝手なんざ分からないから助かる。


今は再び風呂場に来ている。

さて、エリーを構ってやれなかった分、たっぷりと構ってやらないとな。

アタシ達は服を脱ぎ、タオルを巻いて風呂場に入――。


「む? 人間ではないか。加勢に来てくれたのか? もう終わったぞ? ……なんだその格好は!? ま、まさか俺と」


……中にはウルルの父親がいた。


「略式・鳳仙花」

「うごおおぉっっ!? いきなり何を……」

「女の風呂場にいるゴミは駆除しないとな。アイビーフリーズ」

「やめろ! 俺は逃げていた魔族を追って……死ぬ……」


あー。そこになんか転がってるな。

その魔族と戦ってたのか。

だけどまあそれはそれだ。


タオルで隠してたから大丈夫だが、危うくエリーの大切なところが見えていたかもしれないからな。


「これはあんまり使わないが……。飛びな、マッシュルームカタパルト!」

「ちょっと話をおおぉぉっ!」


アタシは地面を急激に盛り上げて、その反動で魔族とウルルの親父を外にふっ飛ばす。


よし、悪は滅びたな。


「まったく、男なんかに見られたらエリーの体が汚れるだろうが」

「私は構いませんけど……。でもマリーの体が汚れたかもしれませんからね。一緒に洗いましょう?」

「ん……」


そうだな。

一緒にキレイにしないとな。


アタシ達は風呂をのぼせるまで十分に堪能したあと、寝床に案内されてそのまま眠りについた。



翌日。


朝になるとどうやら色々と落ち着いてきたようだ。

朝食に鮎の塩焼きと山菜を食べながら母リラと話をする。


「結局、大半が次の戦いに加わることに決まりました。最初は乗り気でないものも結構居たんですけど、さすがに里を襲われてしまってはしょうがないですね」

「おう、乗り気になってくれて助かる」


獣人達もやる気を出してくれたか。

だが、準備やらなんやらで最低数週間はかかるらしい。

まあ当然か。


アタシ達は王都の場所と、決戦予定の辺境伯領について説明する。


「なかなかに……距離があって厄介ですね」

「それなら俺達が残ったほうがいいじゃん?」

「そうですね! 皆の道案内は一度行ったことのある私達が良さそうです。ドゥーケット子爵領まで行って合流するのはどうでしょうか!」


確かに獣人達の身体能力ならそのままウチまで来れそうだ。

その辺りはおやっさん経由で話しておくか。


よし、これからの方針は決まったな。


「一応リッちゃんに連絡をしとくか。そっちは、どうだ、と……。お、返信早いな」

「全部、大丈夫……。別れた、場所で、落ち合おう……ですか。向こうも大丈夫そうですね」


ああ、そうだな。

……いや待てよ? リッちゃんの大丈夫はだいじょばないからな。

まあいいや。会って詳しく話を聞こう。

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