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#77 造られた世界

「マンガは読むか?」


 え、ナイトさんのずっと聞きたかったことって……それ?

 真面目な顔して何かと思ったら。


「とりあえずベルセルクとハンターハンター、この二つだけは結末を知っているのなら教えてほしい」


 ベルセルク……丈侍(ジョウジ)のお父さんがオススメしてくれてたやつだな。読んでないけど。

 ハンターハンターはエピソード終わってから読む派だからアリの所から先は読んでない。


「えっと……ベルセルクは読んでません。ハンターハンターはキメラアントまでしか読んでませんけど、その次の話も休載ばっかりで進んでないはずです」


「そうかぁ……」


 見るからにがっくりと落ち込んでいる。

 でもまさか異世界に来てまでこんな話をするなんて……というか、このナイトさん、見た目に比べてかなり若い印象。

 元の世界で四十三歳プラス二歳って、うちの父親と同じくらいだけど……なんか全然違う。


「まあそれは仕方ないからいいや。この世界のこと、どう思う?」


「どうって……」


「思考を誘導したくないから、ノーヒントで聞くぜ。君が感じたことをそのまま言葉にしてほしい」


 どういうつもりだろうか。何を聞き出したいのだろうか。

 もう少し手がかりくれてもいいのに……と、向こうの世界に居た時の俺なら考えたかもしれない。

 でも今は、思考を止めない癖がついている。


「魔法があることに驚きました。あとはチュウセイヨーロッパに似ていると思いました。向こうの世界でいうファンタジー世界そのままというか」


「だよな」


 回答の方向性としては合っていたのかな?


「あからさまにそれっぽいんだよ、この世界(ホルトゥス)。君は普通にジャガイモ食べてるだろ? でもあれ、向こうでは原産はシンタイリクで、ヨーロッパに持ち込まれたのはダイコウカイ時代なんだ。向こうの歴史ではそれ以前にあったカッパンインサツも、同時期に持ち込まれたゴムもないのに、ジャガイモだけは普及している。フォークもそうだぜ。食器としてのフォークが普及したのも、ダイコウカイ時代と同じ頃なんだが、その頃のフォークは二股だ。でも君たちが食事で使っているフォークは四股が多いだろう?」


「詳しいんですね」


「チュウセイヨーロッパはね、ファンタジー世界を舞台にしたテーブルトークゲームのシナリオとか趣味で書いてたから調べてたんだ」


「テーブルトーク! ……って、もしかして、マスターがいて、サイコロ振って……ってやつですか?」


「知ってんのか! テーブルトーク知ってるのは向こうでもレアだってのに」


「いつもつるんでいた友達のお父さんが、教えてくれました。何度かやったことあります。確か、ディーアンドディーってやつ」


 ヒュー、と口笛を吹くナイトさん。


「トシテルくん! この街とアイシスとで困ったことがあったら、いつでもナイト商会に逃げ込んでおいで。従業員には通達を出しておくから」


 ナイトさんの何かにヒットしたらしい。

 俺としても、気さくに話ができる元の世界つながりの知り合いはありがたいし、何より良い人そうだし……ここは変に断ったりしないでおこうかな。


「ありがとうございます。あの……あと、俺は、こちらの世界ではリテルという名前です」


「そうかリテルくんか……そうだよな。こちらの家族もあるものな……わかった。通達はリテルくんの名前で出しておく。で、話を戻そう。こちらの世界には、俺たちの世界から持ち込まれたと思われる文化や生活スタイルが存在する。俺たちみたいに、ちょいちょい向こうから転生してくる連中が居るんだろうと思う。だけどさ」


 いよいよ本題か。


「宗教だけはないに等しい」


 ナイトさんは細い目をさらに細くする。


「ああ、それ思いました。神様はいるけど、宗教みたいなのはないですよね」


「チュウセイヨーロッパではキョウカイが担っていた役割に相当するものがないんだよね。まあ魔法という誰でも使える奇跡が身近にあるせいで、救済を得意とする宗教の価値が上がらないってのはあるかもね」


 なるほど。救いを求める先としての宗教ならば成立しにくいかも。


「それと獣種の名前。エジプト神話のが多いけど、他の地域のもデタラメに混ざってる。本来ならば神の名前であるはずが種族の名前に用いられていることと、宗教が向こうの世界のようには勢力を持っていないことは、つながっていると俺は思うんだよね」


「つながって……ですか?」


「一種のバーチャル空間的な、造られた世界とかね。種族を表す言葉をはじめ元の世界に通じる言葉があるってこと、俺達が転生したこと、似たような文化の存在。つながりがあるのは間違いないはずなんだ」


 つながりは、俺自身も感じていた。

 でも造られ世界って可能性は、考えていなかった。


「そうだ。君は魔法を使ってみたか?」


 答えるのを一瞬、ためらう。

 その隙にナイトさんは話を進めてしまう。


「魔法を使うには、寿命の渦という魂と肉体とをつなぐものを消費する。元の世界のゲームにおけるようなエムピーとか、一日あたりの使用回数とか、そんなものなくとも誰でも使うことができる。ただ、命をすり減らしさえすればいい。この、誰でも魔法が使える、ということが、この世界(ホルトゥス)の文化や価値観に大きく影響していると俺は思うんだ。魔法がなく筋肉のみの世界ならば、筋肉量の差はそのまま優位性につながるが、魔法があることでそうはならない。具体的にはダンソンジョヒがない。職業だってほぼ男女平等だ。男女間において区別はあるが差別は……ないとは言わないが、向こうとは段違いだ。それだけじゃない。奴隷が珍しいのも、王や領主による政治が理不尽にならないのも、この魔法というシステムがあるせいだと俺は感じているんだ」


「魔法というシステム、ですか」


「ああ。誰もが嫌なものには嫌だと声をあげる力、つまり権利を与えられている。ただ殺されるくらいなら命をかけて一矢報える。また、魔法が得意な者が力で周囲をねじ伏せようとしても、魔法を使い過ぎれば死ぬことになる。いい感じにバランスを考えて造られた世界、俺にはそう思えて仕方がない」


 人工的に造られた世界、という発想がやけにリアリティを帯びてくる。


「エデン、トウゲンキョウ、ニライカナイ、ティル・ナ・ノーグ、ここがそういった楽園だったら、面白いなってね」


「もしも造られたのであれば、誰が造ったんでしょうね」


「そうなんだよ。どこかに管理センターみたいなのがあるかもしれないし、そこを経由すれば元の世界に戻ることだってできるんじゃないかともね。もっとも俺たちが元いたあの世界だって、そうやって実験的に造られた世界の一つかもしれないけどね。アカシックレコードって聞いたことあるかい。それがあの世界の管理システムだとすれば……」


 アカシックレコード……耳にしたことはある……けど、じゃあ何って聞かれると答えられないのは毎度のごとく。

 困ったら検索できる環境があったせいで、情報は概要を把握して後はナナメ読みしてたからなぁ。


「ナイトさんは、それを調べているんですか……帰るために」


「あー……いや、帰りたいかと言われるとそうでもないかな。事業に成功したし、美人の嫁ももらったし、子供だってもうすぐ生まれる。向こうでは独り者だったからな……今している話は純粋に興味だよ。つながりがあるのなら、理論的には帰れてもいいよな。別に全部じゃなくたっていい。向こうでダチが一人も居なかったわけじゃないし、伝えられるんなら伝えてみたいじゃねぇか。こっちはいいぞって」


 ナイトさんは笑う。

 そうか……メッセージを送るだけでも、か。そういう考え方もあるのか。

 それなら俺も丈侍に送りたい。

 心配かけたかもしれないけれど、こっちで楽しくやっている、って。


「あの、ナイトさんの……キタヤマさんが気付くまでのナイトさんの人生って、どうでしたか?」


「あー、それね。思い出そうとすると思い出せるよ。そうじゃなきゃ言葉なんてわからなかったし。俺が気づいた時、ナイトはこの街の領兵をやってたんだ。それも隊長クラス。騎士様ってやつよ。でも堅物過ぎて恋人の一人も居なくてさ……俺のおかげで脱ドウテイしたんだから感謝してほしいぐらいだぜ」


 上機嫌のナイトさんに、いや、キヤタマさんに対しては、俺がリテルの体を奪ってしまったと悩んでいるなんて話はできないなと感じた。

 情報の共有はするし、異世界転生組としての仲間意識はあるけれど、個人の問題はどこまでいっても個人の問題なんだな。

 俺は俺で、リテルに人生を返す方法を模索し続けよう。


「ポテチ、できたよー」


 工房の、メリアンが外に控えているのとは違う扉から、一人の猫種(バステトッ)の女性が入ってくる。

 メイド服っぽいのを着ていて……お腹がちょっと大きい。


「ああ、紹介するよ。俺の奥さんのリリさん。元はニュナムの魔術師組合で働いていた魔術師でね、俺の発明や実験の魔法的側面を支えてくれている。公私共にかけがえのない相方だよ」


「自己紹介は後でいいから、温かいうちに食べなよ。すぐにお代わりも持ってくるから」


 何かの植物で編んだ籠には、大きめの葉っぱが敷き詰められ、その上には見るからにポテトチップのようなものがてんこ盛り。


「リテルくんは懐かしいんじゃないかな」


 一枚つまんで食べてみる。

 ポテトチップだ……しかもちゃんと塩がきっちりきいていて美味い!


「これ! クリスプス! ママが一度だけ作ってくれたことある!」


 レムが喜びの声をあげる。


「でも、油が貴重だったから、本当にその一回だけ……」


「へー。イギリスではそんな呼び方なんだな」


 ナイトさんも自らパリパリ。

 ルブルムも目を輝かせながら食べているし、メリアンも今まで見たことないくらい緩んだ顔をしながら食べている。


「そういえば、リテルくん。ジャガイモは普及しているかい?」


「してますね。今朝のスープにも入ってましたし、俺の故郷の村でも栽培してます」


「不思議だよね」


「不思議……なんですか?」


 会話しつつも、ポテトチップを取る手が止まらない。


「ジャガイモは、元の世界ではシンタイリクが原産でって話はさっきしたよね。そこ原産の食べ物ってのが他にもあって、トマテやピミエント、マイスとかね」


「え……トマテは……もしかしてトマトですか。でも後のはわかりません」


「トマテはトマト、ピミエントはトウガラシ、マイスはトウモロコシだ。なのにジャガイモは、ジャガイモで通じる。この世界(ホルトゥス)に流通しているからだ。俺の記憶では、ナイトが成人した時にはもう、食べていた。もっともスープに入れたり、ふかして食べたり、茹でて潰して料理に使ったりとかで、ポテチみたいな料理はなかったけどね」


「その……トマテとかは、どこで入手できるんですか」


「このラトウィヂ王国の西側にあるリチ紅爵ポイニクス・クラティア領で、品種改良されているって情報をおさえている。どこか別の国から持ちこんで実験的に育てているらしい」


「ジャガイモはたまたまこのあたりに自生していたのでしょうか」


「その可能性は大いにありえる。なんせ異世界だし獣種の名前だって地域が混ざってるし。ただ、よりによってその組合せ……シンタイリクの植物ってのが、気になっただけ。君は旅しているんだろ? 興味があったら立ち寄ってみるといい」


「素敵な情報、ありがとうございます」


「お代わりできたよー」


 リリさんが、追加のポテチと指洗い鉢とを運んできてくれる。


「あ、そうだ。うちの奥さんの服、どうだ?」


「メイド服ですか……可愛いです」


「なんかさ、記憶を頼りに作ってもらったんだけど、なんかコレジャナイ感があって……この世界(ホルトゥス)にも、チュウセイヨーロッパにもメイド服はないんだよ。こっちでは貴族のとこで働いている人らは、動きやすさ重視で男女問わずズボン履いてるし。そもそもスカートが一般的じゃないんだよな。もともとは家の外へでなくていい人たち……貴族の皆さんが履いていたようなんだけど、娼婦が便利だからって着るようになったら、そのイメージが定着しちゃって皆着なくなっちゃって。たださ、純粋にスカートは可愛いだろ。うまくデザインできたなら貴族に向けて売り出そうかなって考えてるんだがな」


 メイド服のデザインなんて、読めるけど書けない漢字と一緒で、いざ細かいこと聞かれると表現できないな。


「うちの人、面白いでしょ。はじめのうちは年齢差もあるし、口説かれたときも断ってたんだけどね……一緒に居ると飽きないから今は幸せだよ」


 そう言って笑うリリさんとナイトさんは本当に幸せそうで。

 一瞬、そこにルブルムと自分とを重ねて……すぐにリテルとケティのことを思い出して。


 初心忘るべからず、だよね。紳士としては。


 ラビツを追いかけるこの旅が終わった後のこと、全くのノープランだったけれど、ナイトさんと話していて改めて感じたのは、元の世界から来た人と会うことは、元の世界とのつながりを取り戻すのに役に立つ気がする、ということ。

 リチ紅爵領でトマト(トマテ)トウガラシ(ピミエント)トウモロコシ(マイス)なんかを育てている人、ツテな気配がする……って、ル、ルブルム。


「ちょ、ちょっと待った!」


 俺は慌ててルブルムに駆け寄った。

 ルブルム、なんでここでズボン脱ごうとしているのさ。

 この世界(ホルトゥス)ではズボンが下着代わりなんだから、脱いだら丸出しでしょうに……ん?


 ルブルムが手に持っているそれ……。


● 主な登場者


有主(アリス) 利照(トシテル)/リテル

 利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。

 リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。

 ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。

 その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種(マンッ)

 レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。

 現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。

 アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。

 その後、エクシに殺されかけたり、初めての殺人を経験したり、ゴーレムを起動したり。

 とうとう日本人らしき人物に遭遇。


・カエルレウム師匠

 寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種(マンッ)

 肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。

 寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。

 ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。

 自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。


・ルブルム

 寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種(マンッ)のホムンクルス。

 かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。

 カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。

 質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。

 ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。

 いつの間にかレムと仲良くなっている様子。


・マドハト

 赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種(コボルトッ)の先祖返り。コーギー顔。

 今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。

 ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。

 リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。

 フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。

 勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。

 クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。


・ディナ先輩

 フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。

 男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。

 アールヴと猿種(マンッ)のハーフ。壮絶な過去を持つ。

 フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。


・メリアン

 ディナ先輩が手配した護衛。

 リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。

 ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種(モレクッ)の半返りの頼もしい傭兵。

 円盾と小剣(ごつい)を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。

 謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。

 騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いより近い仲である様子。


・ラビツ

 ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。

 兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。

 ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。

 北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。

 リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。


エクシ(クッサンドラ)

 クッサンドラは、病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種(アヌビスッ)の先祖返り。ポメラニアン顔。

 フォーリーで領兵をしていたが、マドハトの『取り替え子』により、瀕死の状態からエクシを体を交換された。

 クッサンドラの肉体を傷つけ、その中に入ったエクシは死亡。

 エクシはリテルと同郷で幼馴染の一人。ビンスン兄ちゃんと同い年。フォーリーで領兵をやっていた。

 父ハグリーズからのエクシへの虐待を防いでくれていた姉が、クッサンドラの兄のもとへ嫁いだせいで、守ってくれる者が居なくなり、エクシは歪んだ。

 クッサンドラは、エクシから姉を奪ったことに責任を感じており、エクシが犯した罪を償うべく、エクシが殺しかけたドマースへ、その代償としてエクシ(クッサンドラ)が寿命の渦を売った。


・レム

 バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。

 魔法に長けた爬虫種(セベクッ)の少女。

 リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。

 その母親は利照同様に異世界イギリスから来た。

 現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。

 ルブルム一行の護衛として同行。最近、ルブルムと仲が良さげ。

 お兄ちゃんとは結婚できるとか言い出した。最近はトシテルの方からも大事に想っている。


・ロッキン・フライ

 名無し森砦の兵士。

 フライ濁爵(メイグマ・クラティア)の三男。山羊種(パーンッ)

 ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っているが影が薄い。

 ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。


・ケティ

 リテルの幼馴染。一歳年上の女子。猿種(マンッ)

 旅の傭兵ラビツに唇を奪われ呪詛に伝染し、それを更にリテルへと伝染させた。

 カエルレウムが呪詛解除のために村人へ協力要請した際、志願し、リテル達がフォーリーを発つ時、メリアンと共に合流した。

 盗賊団に襲われた際は死にかけたり、毒で意識不明になったり。

 足手まといを自覚し、ストウ村へ先に戻った。


・ナイトさん

 元の世界では喜多山(キタヤマ)馬吉(ウマキチ)。元の世界では親の工場で働いていた日本人。

 四十五歳の誕生日にこちらへ転生してきた。馬種(エポナッ)。元はニュナム領兵の隊長をしていた。

 今は発明家兼ナイト商会のトップ。宿難民と化したリテル達に宿の提供を申し出てくれた。


・リリさん

 ナイトさんの奥さん。猫種(バステトッ)

 元はニュナムの魔術師組合で働いていた魔術師。もうすぐ子供が生まれる。


・レムルース

 地界(クリープタ)に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。

 『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。

 レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。

 ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。



この世界(ホルトゥス)の単位


・ディエス

 魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。

 魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。


・ホーラ

 一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ一時間に相当する。


・ディヴ

 一時間(ホーラ)の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。

 元の世界のほぼ五分に相当する。


・クビトゥム

 長さの単位。

 本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。

 トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。


・アブス

 長さの単位。

 元の世界における三メートルくらいに相当する。


・プロクル

 長さの単位

 一プロクル=百アブス。

 この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。


・通貨

 銅貨(エクス)銀貨(スアー)金貨(ミールム)大金貨(プリームム)

 十銅貨(エクス)(十二進数なので十二枚)=一銀貨(スアー)

 十銀貨(スアー)(十二進数なので十二枚)=一金貨(ミールム)

 十金貨(ミールム)(十二進数なので十二枚)=一大金貨(プリームム)


・暦

 一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。

 それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。

 各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。

 毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。

 第七十七話終了時点では星の月夜週の八日の昼過ぎ。


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