#75 単身巨人戦
なんかムズムズする。
うん、しっくり来ない。
テニール兄貴の真似してかっこよくキメて見たけどさ、やっぱガラじゃない。
ただ、試してみたいってのは本当。
自分の魔法がどこまでやれるか確かめたいというよりは、自分にルブルムやレムを守れる力があることを確かめたい、という気持ちの方が強いけど。
魔法代償を二つ同時に集中する……片方は『魔法罠』。
『魔法罠』は、寿命の渦を持つ者が触れたら封じてた魔法を発動する魔法。
トリエグルさんに見せてもらった魔術『スノドロッフの怒り』からヒントをもらった。
『スノドロッフの怒り』は、スノドロッフ村の人々に危害を加えようとする敵に対して血を花のように弾けさせる『スノドロッフの赤い花』と、何かに触れたら発動する『接触発動』とを複合させた魔術。
ダイク隊長との戦いのとき、名無し砦の警備兵たちに赤い花が咲いたように見えたのは、トリエグルさんがこれを鏃に使い、射ったから。
魔法代償を二つ同時に集中しなきゃいけないから、接敵されているような相手から注意を逸らせない状況では使いにくいが、こうして距離というゆとりがあれば、今の俺にでも十分に実用可能だ。
魔法は一番のネックは発動地点と相手との距離だから、飛び道具に魔法を乗せることができるというのはかなりのアドバンテージとなる。
その『接触発動』をもとに作った『魔法罠』は「寿命の渦を持った者が触れたら」という条件で対象を選別することができる。
魔法を使用する際、寿命の渦のサイズ下限を指定することで、発動条件を変えられる。
今回はもちろん、獣種より大きく、ルージャグよりわずかに小さいサイズの寿命の渦を下限に指定する。
鏃に触れ『魔法罠』の魔法代償を用意しつつ、もう一つの魔法のために魔法代償を別に集中する。
もう一つは『超ぶっ飛ばす』といきたいとこだけど、今の俺の集中力ではこれだけ魔法代償の消費が激しい魔法を別の魔法と同時に扱うことは困難なので、『ぶっ飛ばす』を。
ヘイヤを過剰防衛で殺してしまった魔法を、今度は明確な意思と覚悟で使う。
魔法をセットした矢をつがえて、引き絞る。
幸いルージャグは立ち止まっていて、あの下半身丸出しの奴を頭から貪り喰っている……ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』まんまだな。
相当なスプラッタだけど、俺は動揺を、手の震えを抑える……クラーリンさんに聞いたやり方で。
ルブルムを守ると心に誓ったときの、冷静な決意……あのときの寿命の渦を自分の中に再現すると……恐怖や不安、臆病さなどを押しのけて、自分の芯がしっかりと通る。
ルージャグは下半身野郎の残りを呑み込み、次はメドを抱えて走っていたやつへと近づいてゆく。
俺は静かな気持ちのまま、矢を放った。
ルージャグの喉元付近へと。
ルージャグの巨体が大きくのけぞった。
俺はすかさず次の矢を取り出し、鏃へ『魔法罠』と……また『ぶっ飛ばす』でいけるか?
ルージャグが、姿勢を戻す。
胸元を押さえている……効いているのか?
突然、ルージャグが吠えた。顔の半分以上を覆っていた髪を振り乱しながら。
距離はまだ十アブス……元の世界でいう三十メートルはあるだろう。
よし、もう一回『ぶっ飛ばす』だ……魔法代償を集中し、矢をつがえる。
ルージャグが俺に向かって走り出す。
集中しろ、俺っ!
ポー頼む!
ポーが大きく俺の頭上へと伸びてくれる……そこへ『発火』を二ディエス分、発動させる。
ルージャグが一瞬たじろいで速度を落としたそこへ、第二射を撃つ……ルージャグは避けようと咄嗟に頭を振ったが、その左頬になんとか当たる。
まるで巨大な拳で殴られたかのようにルージャグの頭が激しく右へ揺らぎ、遅れてその体も大きく傾いた。
すぐに第三射を用意する……『ぶっ飛ばす』で、いま重心にしている右足へ……よし、命中!
ルージャグは地面に両手と膝をついた……うわっ。
慌てて大樹の陰へと逃げ込んだ。
間を置かずに近くに大きな振動。
ルージャグのやつ、さっき倒れた拍子にへし折った樹をそのまま投げてきやがった。
ちらりと覗くと、もう起き上がって脚を引きずりながらこちらへ向かってくる。
第四射を撃ちたいとこだが、ルージャグの投げた樹のせいでここでは射線が通らない。
とにかく距離を保たないと。
森の中を走って移動するが、なんとか追いつかれない速度を出せている。
脚をやれたのはラッキーだったな。
だけどどうする?
『ぶっ飛ばす』ではかなりダメージを与えられはするものの、決定打には欠けているっぽい。
相手の残りHPとか分かると便利なのに……こちらの矢はあと八本。
矢が尽きる前に倒せるか?
それとも違う魔法に切り替えてみるか?
あの巨体とリーチ、周囲の樹々の状況を考えるとマドハトのぬかるみは簡単に突破されそうだし。
直接なら『超ぶっ飛ばす』を放てるけどさ……ねぇ、ポーってどのくらいの伸びられる?
(オオキサニヨル)
なるほど。魔法代償量次第か。
試しに『超ぶっ飛ばす』の魔法代償を集中してみる……うわ、しんどいな、これ。
集中した魔法代償をポーに渡すと、伸びてくれるけど……先端まで二アブスもない……元の世界の五メートルくらいか。
ルージャグの腕の長さといい勝負ってことは、現段階では没案だな。
ポー、ありがとうね。
魔法代償を一ディエスだけ残して残りは寿命の渦の中へ戻す。
ポーは嬉しそうに一ディエスを消化した。
ああくそ。俺も喉乾いたな。
ずっと走り続けるのもしんどいし……よし。
立ち止まり、魔法代償を集中する。
ルージャグはいつの間にか太い樹を両手に抱え、振り回しながらこちらへ向かってきている。
火力を上げるしかない。
魔法代償を多めに集中する。
『ぶっ飛ばす』は『ぶん殴る』五発分。『超ぶっ飛ばす』は『ぶっ飛ばす』三発分。俺が今、『魔法罠』にセットするのは……『ぶっ飛ばす』二発分の『倍ぶっ飛ばす』!
新規魔法とはいえ、イメージはほとんど変わらず、なんとか魔法を鏃にこめることに成功する。
ルージャグがまた樹を投げてきやがった。
決定打の矢をつがえながら、大きめの樹の陰へ。
もっとも、俺の隠れている場所どころか、もっと手前の樹にひっかかって全然届いてないんだけどな。
ルージャグは投げた樹をまた拾って投げてくる…… 投げるようになってから俺が射掛けていないから有効な攻撃だと考えているのか?
それとも向こうもしんどくなってきていると見るのは早計か?
俺は回り込むように移動を始めた。
ルージャグが今まで通ってきた道へ出るために。
そう、あいつの通った跡はまさしく森の中の道のように拓けているから。
なかなか俺に近づけないのに苛立ってきたのか、ルージャグは樹を投げずに振り回し、周囲の樹を叩き始めた。
行動パターンが変わると不安になる。
しかもこの辺は、小石がゴロゴロ転がっていて走りにくいし。
いや、俺は、ルブルム達を守るんだ。
誇るべき俺に、変わるんだ。
想いを力に変えて。
樹々の密集度と距離とを意識しながらルージャグの通ってきた「道」へと、なんとか回り込むことができた。
引き返してきたルージャグの投げた樹が、俺の横を唸るように通過した。
俺は例の矢をつがえた弓を構え、タイミングを計ってからルージャグの前へと出る。
さあ、来いよ……って、今度はお前が隠れるのかよ。
ルージャグは警戒しているのか、大樹の陰に隠れようとして、動きを止める。
その顔は、俺ではない方向を向いている。
移動中に仕掛けておいた『魔法遅延』で『発火』を付与した小石が、一秒刻みで三連続発動したのに気を取られたのだろう。
その隙を見逃すはずもなく、俺の『倍ぶっ飛ばす』付きの矢は、ルージャグの頭にヒットした。
射撃の成功イメージ追体験を地味に何度も繰り返していたおかげで、矢の命中率はこの旅に出る前とは段違いだ。
『ぶっ飛ばす』の倍だとは思えないほどの勢いで、ルージャグの上体が地面になぎ倒される。
ルージャグの寿命の渦が小さくなってゆく。
止めを刺すにはもう一発いるか……と、呼吸を整えた俺の手足から緩やかに力が抜けていく。
ふわふわとした、なんだか体と心とが微妙にズレているような……あと、吐き気まで。
なんだ?
ルージャグって毒でも……ああ、そうか、忘れていた。瘴気か……どんどん具合が悪くなってゆく。
まずい。動けるうちに少しでも遠くへ。
俺は、よろける脚に気合を入れ、街道に向かって移動する。
うっ。
まずい。
服や装備を少しでも汚さないよう前のめりに樹にもたれかかり、こみあげてきた吐き気をぶちまける。
カエルレウム師匠は瘴気にやられると酩酊状態になるだけとか言っていたけれど、酔っ払うとこんな気持ち悪くて、運動能力が低下するものなのか……大人はよくこんなになってまで酒をやめられないもんだな。
再び吐き、胃の中が軽くなったのを感じる。
まだ、かかとが浮いているような浮遊感があるが、少しでも、少しでも遠くへ。
「リテルっ!」
ルブルムの声が聞こえた気がして……目を開き、目を閉じていたことに気付く。
ルブルムとレム、メリアンまで、俺の顔を覗き込んでいる。
ああまたやっちまったのか。
皆に、心配かけてしまったのか。
「だい……じょうぶ。瘴気に、やられ、た、だけ」
答えて、口の中の酸っぱさが急に恥ずかしくなる……俺の口、いまゲロ臭いから。
そんな俺にルブルムもレムもしがみついてくる。
いや、大丈夫。大丈夫だって……と言いたいが、口臭が気になり固く結んだ口を開けない。
ルブルムが俺の手を取り、魔法を使用する……触れているから伝わってくる……『瘴気散らし』って、ああ、これ、いいな。
胃のむかつきが消え、手足の感覚が戻ってくる。
すごい。
ルブルムが俺の背負い袋を持ってきてくれていたから、中から水袋を出して口を濯ぐ。
服やブーツにちょっと飛び散った分の吐瀉物も贅沢に洗い流しながら、レムと別れた後のことを大雑把に、三人に話した。
「ルージャグを一人で?」
メリアンが口笛を吹く。
「リテルはやっぱりすごい!」
「お兄ちゃん、すごいすごい!」
危険な戦いをくぐり抜けられた安心感か、それとも今までの人生にないくらい褒められているせいか、今度は涙が自然とこぼれだす。
俺、恥かしいな。
自分の内側のもの、どんだけ外へたれ流してんだよ。
その後、まだ死んでいなかったルージャグに、メリアンが止めを差した。
ルージャグの皮は加工すれば丈夫な革としての用途もあるらしいけど、さすがにこの巨体は運べないし、そもそも瘴気まみれだからその瘴気が抜けるまでは解体すら難しいとのこと。
カーンさん達が乗っていた馬車は、今まで見たどの馬車よりも激しく壊されていて、例の山羊種四人組も、カウダの毒にやられたままの一人を除いて全員ルージャグの腹の中のようだった。
その生き残りを回収して街道まで戻った頃、マドハトが御した馬車が森への入口まで到着した。
子供達含めて全員が、馬車と馬とに分乗して。
カーンさん達に状況を軽く説明する。
ルブルム達と打ち合わせておいた通り、ルージャグは四人で協力して倒したと告げた。
少し話し合ったあと、カーンさんと子供達は徒歩で村に戻るという。
彼らの乗ってきた馬車の破壊状況では雨が降ったときにしのげないし、と。
「それに、ブール……このボーアの兄の亡骸も村まで運んであげたいし」
一人、殺されたというのは本当だったんだな。
「この生き残った山羊種については、責任持ってニュナムで引き渡してきますから」
こんな森の入口に置き去りにするのは気が引けたが、小さい子連れの徒歩でも日が暮れるまでには村まで戻れるという言葉を聞き、彼らと罪悪感とを置いて出発した。
走り出した馬車の中で、まだ麻痺している山羊種を縄で縛り上げておく。
その様を、ウォッタがじっと見つめている。
山羊種の殺人と非道な行い、ルージャグ討伐等々の目撃証言者としてウォッタも同行することになったのだ。
メリアンいわく、実績紋更新時の審査において、第三者証言を伴うというのはけっこうよくあることなのだとか。
それにしても、万が一……例えばウォッタがこの山羊種に私刑を行うとか……を警戒しないわけにはいかないだろうな。
ただでさえ、ドマースに注意を払っているというのに、ため息が出る。
その日は途中でニュナムへ向かう定期便を追い越した以外、特に事件もなく、夕方にはニュナム手前の共同夜営地へ到着。
そこでは食事を取るだけですぐに出発、二つの月はほぼ新月なので、松明を灯して夜通し走り続け、空が白み始めた頃、夜営している集団と遭遇した。
ウォッタやカーンさん達の村、クーラ村へと向かうライストチャーチ領兵の一団だった。
村長の息子ペックさんと、クーラ村で死亡した監理官の後継の方とに、状況をかいつまんで説明する。
ペックさんと遭遇したことでウォッタとはここで別れることになり、ウォッタの証言は先んじて監理官が聞き、ニュナムへと連絡してくれた。
念のため、ライストチャーチ領兵が二人、証言代行として同行することになった。
そこからさらに半日が経過し、昼飯も抜いて馬車を飛ばした昼過ぎ、早くラビツ達に追いつきたい……その逸る思いのまま、俺たちはライストチャーチ白爵領都ニュナムへと到着した。
「開門!」
ライストチャーチ領兵のお二方が馬車から降りて叫ぶと、陽の光を浴びて白く輝く城壁上方の小窓が開き、中からお二方と同じ兜を被った人が顔を出す。
「監理官殿より連絡があったのはお前たちか!」
「そうだ!」
領兵同士のやりとりを横目にドマースが壁の白さについて解説してくれる。
普通は石やレンガを建材として使うときの接着剤として使われるカエメンを、都市壁の表面に塗装として用いることで、あのような美しく白い壁になるのだと。
その説明を聞きながら、ドマースが特に報復めいたことをしてこなかったことに胸をなでおろす。
油断をしない、というのは想像していた以上にしんどい。
頑張り続ければ、注意力も集中力も落ちてゆく。
信頼できる仲間がいてくれることは本当にありがたい……そんな感謝の気持ちを胸に、ようやく重たく開かれた門の向こう、ニュナムの街へと馬車を乗り入れた。
俺たちが入ってすぐ門が閉じられる。
「随分、警備が厳重なんですね」
「祭だからね」
ライストチャーチ領兵のお二方が馬車に乗り込みながら笑顔で答える。
「祭?」
マドハト以外の全員で聞き返す。
「ええ、祭です。今日の前夜祭と、明日の本祭終了までのまる二日間、ニュナムの全ての門が閉ざされるのです。魔物が出て領兵を派遣しなければならない非常事態でもない限り」
ひょっとしてまた足止めかっ!
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。
その後、エクシに殺されかけたり、初めての殺人を経験したり、ゴーレムを起動したり。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
いつの間にかレムと仲良くなっている様子。
・マドハト
赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種の先祖返り。コーギー顔。
今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いより近い仲である様子。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。
・エクシ
ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人だったが、それは父ハグリーズからの虐待に端を発していた。
彼を唯一守ってくれていた姉キッチが隣村へと嫁いだせいで、闇を深くした。
ルブルム一行の護衛として同行していたが、ドマースから交渉を持ちかけられたとき、自分が認められるチャンスと喜んだあとで、交渉希望相手がリテルだったと知り、希望を打ち砕かれる。
そしてドマースが用意した交渉の場を利用して、リテルを脅すつもりだったが、何の因果か殺し合いへと発展してしまう。
マドハトの『取り替え子』により、自ら殺しかけたクッサンドラと体を交換された直後、その傷がもとで死亡した。
・クッサンドラ
病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。
ルブルム一行の護衛として同行。
ドマースがリテルと交渉しようとした用意した場で、壊れたエクシからマドハトをかばって殺されかけるが、マドハトの『取り替え子』により今は、エクシの肉体の中に居る。
エクシの闇の理由を知り、エクシとして罪を償うことを決意した。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。最近、ルブルムと仲が良さげ。
お兄ちゃんとは結婚できるとか言い出した。最近はトシテルの方からも大事に想っている。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。山羊種。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っているが影が薄い。
ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。
・トリエグル
猫種の先祖返り。アルバスだが、レムールで赤目を隠している。
弓を持つスノドロッフ村の住人。リテルの左腕のレムールに気付いていた。
『スノドロッフの怒り』という魔術と弓とを組み合わせて使う。
・ドマース
森の中に小さなテーブルと椅子を置き、テーブルに突っ伏して寝ていた鼠種の先祖返り。
睡眠することが効果に関係するオリジナル魔法を使う。テーブルも魔法の一部だった。
王都キャンロルのさる偉いお方から「スノドロッフの一件に絡んだ者たちの一人に声をかけたい」との密命を受け、リテルと交渉しようとエクシへ接触した。
結果的にリテルにはフラれたが、交渉自体は秘密にしてほしいと口止め料までくれた。
ニュナムの都市壁の白さの秘密を知っていた。
・ヘイヤ
ドマースと共に、リテルとの交渉の場に居た兎種の先祖返り。
攻撃してきたエクシを警戒していたと思われるが、その行動を襲撃と勘違いしたリテルの反撃により死亡……した可能性があるが、真実はもう確かめようがない。
・ペック
魔獣に襲われたクーラ村の村長の息子。
生き残った子供達を馬車に乗せ、街道まで避難させた後、単身、ニュナムへ助けを呼びに。
ライストチャーチ白爵領兵を連れて戻ってくる途中、遭遇できた。
・ウォッタ
馬種の少年。年齢は半成人くらい(中学生くらい)。
ペックに救われた子供達のリーダー的存在っぽい。
山羊種の殺人やルージャグ討伐等々の目撃証言者として短い間だがルブルム一行に加わった。
・四人組
山羊種の男四人組。
ウォッタ達に助けを求められたが、非人道的なことをした。
カウダの麻痺毒にやられている一人を残して全員ルージャグに喰われた。
・カーン
馬種。タベリーのお姉さん。年下の子供達をかばって、四人組に酷いことされるのを我慢していた。
・メド
猫種の五歳の女の子。
四人組に人質にされている。
・ブール
猫種の少年。ボーアという少女の兄。
山羊種四人組に逆らって殺され、壊れた馬車の近くに簡易的に埋葬された。
・ルージャグ
ペックやウォッタ達の村を襲った魔獣。
瘴気が濃いとのことなので、この世界に迷い出て間もないっぽい。
元々は地界の種族。こちらの世界に稀に出現するが、その危険性ゆえ、すぐに討伐される。
ぼろきれをまとったむさ苦しい女の姿だが、獣種の三倍ほどの体長を持ち、村の防壁を壊すこともある。
湖をねぐらにし、手当たり次第に人を捕らえて殺す。
リテルにより退治された。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第七十五話終了時点では星の月夜週の八日の昼過ぎ。




