#73 襲撃者
アラームの音で目が覚める。
飛び起きて周囲を確認……しようとして、腕を押さえつけられていることに気付く。
まさか……最悪の想定をしながら周囲を確認する。
右手はルブルムに、左手はレムに、抱きかかえられている。
二人の体温を、じんわりと滲んだ汗の湿度を、柔らかさを、そして何より平穏な朝を感じながら、溜息をつく。
魔法を使われたからではなく、設定時間が経過したほうか、という安堵と、もう一つ。
こんなハーレム状態で許されるのだろうか、という意味でも。
だいたい周囲は、こんな俺のことをどう思っているんだろう。
ハーレムなんて、もっと力がある人の特権というイメージがある。
例えば勇者とか英雄とか。
俺はそんな良いものではないし、そもそもこの世界に来てから「勇者」という単語も聞いたことがない。
今はまだ、ただの魔術師見習いで、師匠や仲間に恵まれただけの……ちょっとだけ秘密はあるが、紳士にはほど遠い田舎の若者。
人に好意を向けてもらえることに、まだ納得感がない。
だって、元の世界では……俺の弟目当ての女に騙されて近寄られた以外に、女子との交流なんてまるでなかったし。
姉さんだって俺のこと、愚か者を見るような冷たい目で見ていたもんな。
自分に男としての価値が見いだせないのに、偶然だけでこんなにモテているような気がしてならない。
自分に自信が持てないからこそ、現状には不安しかない。
近い将来に失ってしまうんじゃないかと……それなら今、こんな温もりに包まれていたら、その時に余計しんどいんじゃないかと。
この温もりと……距離を取ったほうがいいんじゃないか、とまで。
ああ、こういう所なんだろうな。
紳士への遠さって……自分の現状に対してちゃんと向き合えていない部分。
マクミラ師匠にも、カエルレウム師匠にも、申し訳ない気持ちでいっぱい。
うわ。
急にディナ先輩の顔を思い出してしまった。
……そうだよな。
今できることを考えないと。
現状の評価に足りていない部分は、一生懸命頑張って埋めるしかない。
俺を評価してくれている人たちの言葉を、本物にするために。
「ルブルム、レム、起きるよ」
二人に声をかけて起こし、朝食の準備をしながら、思考を巡らせる。
昨日よりは頭が回る。
ドマースは夜討ちしてこなかった……が、まだシロと決まったわけじゃない。
俺が昨晩、『ゴーレム警報』から『ゴーレム警報バージョン十七』までけっこうな数の魔法を試していたから、夜襲対策をしていると警戒された可能性もある。
油断はせずに……って、おい、マドハト、なんで俺の腰にしがみつく?
「リテルさま! 僕もくっつきたいです!」
ずるいよな……そんな目で見るなよ。
首から上はまんまコーギーでさ、ハッタそっくりなんだ。
俺はマドハトの頭をわしゃわしゃと撫でて、少し待ってから、朝食の準備を再開した。
朝食は干し魚とジャガイモのスープ。
あとはリンゴが一人一つ。
このリンゴは昨日の昼にも食べたな。
皮を剥かずにそのまま食べる。
元の世界でよく食べてたのより小ぶりで酸味も強いけど、その分目が冴える。
ところが、各自に渡された木皿にスープをよそい始めた時……近づいて来る集団を見つけた。
マドハトとロッキンさん以外は気付いたみたい。
昨晩からこの共同夜営地には、俺たち以外は居なかった。
獣種だけで九人……騎乗動物はいないが……この寿命の渦の感じ……嫌な感じだ。
集団は、風下である森の方から九人ともバラけずにジワジワ近づいてくる。
「ドマース。あれ、あんたの仲間か?」
メリアンが直球を投げると、ドマースは首を縦に振る……否定だ。
さすがにロッキンさんも気付いたのか、食器を地面に置き、傍らの円盾を手に取った。
ロッキンさんは朝食準備前からもう鎧を着込んでいる。
「見てきましょうか」
「いや……向かってきたら、でいい。あんまり相手をしたくない相手だしな」
メリアンも傍らに置いてある円盾を心持ち近づけ、二つあるうちの片方はルブルムへと渡す。
レムとエクシもそれぞれ自分の円盾へ手を伸ばした。
「さあ、さっさと食っちまおう」
半ばかきこみ気味にスープを押し込んでいると……来た!
皆が食器を円盾に持ち替える中、俺は弓を構えて矢をつがえる……けど……俺に撃てるのか?
わらわらと走って来る九人のうち、一人、二人がみっともなく転ぶ。
あれは演技ではなく本気で転んでいるのだろう。
転んだ二人は年齢的にドッヂと同じくらい……集団で一番年長の子でも半成人になるかならないか。
元の世界の表現を用いるならば「小中学生の集団」だろうか。
「わーっ!」
勇ましい声を上げて突進してくる子達。
馬種が五人、猫種が三人と、河馬種と爬虫種が一人ずつ。
鎧はなく、村の中に居るような防御力皆無の恰好。
何人かは木の枝を削り出したような棒を持っていて、年齢が高めの女子二人は短剣を持ち、あとは少し大きめの石。
『魔力感知』の感度を変え、方向を絞って距離を長めに取って調べるが、付近にはこの子たち以外に獣種らしき寿命の渦は見当たらない。
ここはアイシスから馬車で三日、ニュナムからも二日かかる。
そんな場所で、こんな子たちだけで生きていけるのだろうか。
それとも近くに村が?
「向かってくんなら手加減しないよっ!」
メリアンが盾を構えたまま子ども集団へと突っ込んでいき、先頭の二人の足を引っ掛けて転ばすと、全員が立ち止まる。
ある者はしゃがみ込み、ある者は泣き出した。
「覚悟がないなら襲ってくるんじゃないよ」
ウォルラース達と戦ったとき、メリアンがトームの命を切り捨てようとしたのを思い出す。
メリアンは脅しじゃなく返り討ちにするだろう。
止める理由を探している自分と、ヘイヤを殺した自分を正当化しようとする自分とが、俺の中でドロドロに混ざって泥沼のように俺の足を呑み込み、まるで接着剤のように俺の足を固まらせる。
「昨日の夕方、交渉した四人組は……姉ちゃんたちに酷いことしようとしたから……」
転ばされた馬種が、武器を手放し無抵抗のバンザイをしながら答える。
短剣を持っている女子二人を見ると、どちらも半成人くらい……こちらの十二歳は、元の世界なら十四歳。
昨日の夕方……俺たちが夜に到着する前にラビツ達が居たのか?
いや、ラビツはケティの唇を奪ったけど……巨乳好きだから、このくらいの子には手を出さないよな?
「そいつらの獣種は?」
俺が聞くよりも前にメリアンが尋ねる。
「全員、山羊種。姉ちゃんたちはなんとか助けて皆で逃げたけど、一人殺された。その後居なくなってたから、多分、逃げたんだと思う」
クスフォード領では殺人も強姦も立派な犯罪だ。
ここいらはボートー紅爵領とライストチャーチ白爵領の境あたりだが、同じ王国内だし、同様に犯罪扱いだろう。
ただ、塀の外……都市や村の外での犯罪は、現行犯を捕縛でもしない限り証明は難しい。
「だいたい何で子どもだけなんだ。親はどうしたんだ?」
ソワソワしていたロッキンさんが会話に横槍。
さっき抜いた剣はもう鞘へ収めている。
もしかしたらロッキンさんも、メリアンが彼らを返り討ちにするんじゃないかとやきもきしていたのかも。
「瘴気の酷い魔獣が現れて村を襲ったんだ。何人も殺されて……監理官も殺された」
瘴気の酷いということは、異世界からこの世界へ迷い出てきたばかりか。
通常は、瘴気の濃い魔獣や魔人が出現した場合、「居付き」の魔術師が捕捉するか、目撃した人から魔術師もしくは監理官を通して、領都へ連絡が行く。
魔術師が師匠や地元の魔術師組合と連絡を取れるように、監理官にも領都と『遠話』できる魔法品が支給されているらしいが、その魔法品は、監理官でないと使えないようになっているとも聞く。
「居付き魔術師はどうした?」
ロッキンさんが尋ねると、子供たちは互いに顔を見合わせている。
「僕らは、会ったことない」
そういやストウ村でも、カエルレウム師匠が村まで来たのなんて、俺らを送り届けてカリカンジャロスの死体を確認したあのときが初めてだったかも。
「居付きが領都の魔術師組合へ連絡するのは、自分だけで対処できない場合。村が襲われるのに間に合わなかったのなら、領都へ連絡はしている可能性は高い」
ルブルムが魔術師として代わりに回答する。
「村の状況はわかった。で、大人はどうした? どうしてそんなに腹を減らしている?」
「村長の息子のペックさんが、家が壊れたり親が殺された子たちは村に居ても危ないからって、集めて馬車でここまで送ってくれた。それからペックさんは馬車から馬を外して一人で領都まで連絡に行った。監理官の代わりに。僕らはここなら定期便も通るし、今の村よりは安全だろうって……大人はもう一人、馬車の中に居るけど、怪我が酷くて動けないのと……食料は、ほとんど積んで来れなかったんだ。できるだけ多くの人をって、慌てて乗せてきたから」
なるほど。
共同夜営地を訪れる人に期待して……そして運悪く襲われた、と。
スレイ・ベガに襲われたときに共同夜営地で一緒になった人たちを思い返すと、確かにいい人達だったし、食料も気軽に分けてくれた。
ああいう人たちに出会えていたらこの子たちも……。
それにしても、そんな四人組の山羊種みたいな凶悪な輩も普通に街道を通っているのか。
相手が子供だけだからと豹変して牙を向いた可能性はあるが、今後の旅路でもより一層気をつけないとだな。
「ルブルム、あたしの雇い主はあんただ。リテルが不穏な表情してるけど、判断するのはルブルムだよ」
ルブルムが俺の顔を見る。
「リテルは、どうしてそんな表情をしている?」
俺の? 表情?
「お兄ちゃん、今にもこの子達と一緒に行きそうな顔している」
レムまで。
「……そんな、顔をしている?」
「している、ように見える」
ルブルムが俺の右手を手に取り、ぎゅっと握った。
そんな……俺が。
危険であること以外どんな魔獣かも分からないものに立ち向かいに?
この見知らぬ子供達の村を救いに?
……確かにストウ村のことを思い出していた。
自分の親や友達が殺されて逃げ出さなきゃいけなかったとしたら、なんて考えていた。
そしてこの子達と同じ様に街道で出会う人達に助けを求めようとしたとき、例えばケティが襲われたとしたら。
それを守って、一人死んだって……それは俺だったかもしれないし、ビンスン兄ちゃんとか身近な誰かだったかもしれない。
俺は、ストウ村は、今まで運が良かっただけで……彼らと俺の運命が逆だったかもしれないって、考えていた。
ふいにしょっぱさを感じる。
ああ、そうか。
俺……涙が溢れていたのか。
「まあ、ここで人助けに協力すれば、実績紋に記されるとは思うよ。ただ、昨晩の四人組ってのがラビツじゃないのなら、あたしらは最低でもまだ一日は遅れを取っていることになる。ひょっとしたら徒歩じゃなく、馬なり馬車なりで移動している可能性もある」
そうだ。
ただでさえ遅れているのに。
魔獣に勝てるかどうかもわからないのに。
それに、ニュナムへは……ペックさんだっけ……が、連絡に早馬を飛ばしている。
わかっている……けど。
目の前にある幾つもの期待に満ちた瞳を絶望の色で塗り潰したくないのは本心だ。
「優先順位はわかっている。自分のできることがそんなに多くないってことも。ただ、俺の故郷の村と重なっちゃって……せめて食料をちょっと分けるのと、馬車の怪我人の治療くらいには行ってきたいんだ」
「馬車は遠くないのか?」
メリアンが尋ねると、子供達は街道のちょっと先を指差した。
「もう少し行った所だと、森の中まで入れる場所があって、そこに隠してある」
さっきから説明してくれている少年へ、メリアンがリンゴを放った。
「案内は一人で十分だろ。このガキどもがスープを飲み終えるまでに急いで行ってきな」
「お兄ちゃん、私もついて行く」
「私も」
気持ちは嬉しいけど、ルブルムまで来させるわけにはいかない。
「メリアン、ルブルムをお願いします」
背負い袋の中へ手を突っ込み、卵石ゴーレムに触れる。
念のため『ゴーレム警報バージョン十七』を効果時間は一ホーラを指定して発動する。
もちろん『魔法偽装』と一緒にだ。
「ルブルム、俺の荷物を預かっていて欲しい。すぐ戻るから」
背負い袋をルブルムへと手渡しているとき、けっこうな音の……指笛?
ロッキンさんだった。
ああ、でも、ロッキンさんが普段乗っている馬が、こっちまで近づいて来てる。
「リテル! 私の馬を使うといい。山羊種が全員ならず者じゃないということも伝えてほしい」
「ありがとうございます」
ロッキンさんが貸してくれた馬にまたがる。
名無し森砦の鞍は、二人乗れるようになっているので、説明少年の手を引き上げ、俺の前に座らせる。
と、レムが器用に登ってきて、そのまま俺の背後に立った。
「座らなければ三人乗れるよ」
う、うん。
レムの胸が後頭部に当たって気が散りはするけれど、紳士になるための試練だと思えば……うん。
ウォッタと名乗った少年が指差す方向へ俺は馬を走らせて……皆と少し離れた頃だった。
「ねぇ、ウォッタ。隠していることあるでしょ?」
俺よりも先にレムが尋ねた。
そう。気になっていた。
ウォッタ達が、全員で……六、七歳くらいの子まで一緒になって向かってきたこと。
● 主な登場者
・有主 利照/リテル
利照として日本で生き、十五歳の誕生日に熱が出て意識を失うまでの記憶を、同様に十五歳の誕生日に熱を出して寝込んでいたリテルとして取り戻す。ただ、この世界は十二進数なのでリテルの年齢は十七歳ということになる。
リテルの記憶は意識を集中させれば思い出すことができる。利照はこれを「記憶の端末」と呼んでいる。
ケティとの初体験チャンスに戸惑っているときに、頭痛と共に不能となった。不能は魔女の呪詛による。
その呪詛を作ったカエルレウムに弟子入りした。魔術特異症。猿種。
レムールの「ポー」と契約。伸ばしたポーの中においても、自分の体の一部のように魔法代償を集中したり魔法を使えることがわかった。
現在は、呪詛持ちのラビツ一行を追跡している。
アイシスでチェッシャーに告白されたり、死刑を宣告されたり、フラマからラビツ情報を聞いたり。
その後、エクシに殺されかけたり、初めての殺人を経験したり、ゴーレムを起動したり。
・ハッタ
元の世界で、弟の英志が拾ってきた仔犬。
拾ってきたので血統書はないが、純血っぽいと判断されている。
利照が高校へ入学する前に、天へと召された。
・カエルレウム師匠
寄らずの森に二百年ほど住んでいる、青い長髪の魔女。猿種。
肉体の成長を止めているため、見た目は若い美人。家では無防備な格好をしている。
寄らずの森のゴブリンが増えすぎないよう、繁殖を制限する呪詛をかけた張本人。
ディナ先輩、ルブルム、リテルの魔法の師匠。ストウ村の住人からは単に「魔女様」と呼ばれることも。
自分の興味のないことに対しては、例え国王の誘いであっても断る。
・ルブルム
寄らずの森の魔女カエルレウムの弟子。赤髪の美少女。リテルと同い年くらい。猿種のホムンクルス。
かつて好奇心がゆえにアルブムを泣かせてしまったことを、気にしている。
カエルレウムの弟子を、リテルのことも含め「家族」だと考えている。
質問好きで、知的好奇心旺盛。驚くほど無防備。
ケティがリテルとキスしたり痴話喧嘩したりするのを見て涙を流した理由に気付き、それでまた自分を責めていた。
いつの間にかレムと仲良くなっている様子。
・マドハト
赤ん坊のときに取り換え子の被害に遭い、ゴブリン魔術師として育った。犬種の先祖返り。コーギー顔。
今は本来の体を取り戻しているが、その体はあんまり丈夫ではない。
ゴブリンの時に瀕死状態だった自分を助けてくれたリテルに懐き、やたら顔を舐めたがる。
リテルにくっついてきたおかげでちゃっかりカエルレウムの魔法講義を一緒に受けている。
フォーリーの街中で魔法を使ってしまい、三年分の魔法代償徴収刑を受けた。
勇敢なのか無謀なのかわからないときがある。いつも明るい。
クッサンドラを救うためにエクシとクッサンドラの中身を『取り替え子』で入れ替えた。
・ディナ先輩
フォーリーに住むカエルレウムの弟子にしてルブルムの先輩。
男全般に対する嫌悪が凄まじいが、リテルのことは弟弟子と認めてくれた。
アールヴと猿種のハーフ。壮絶な過去を持つ。
フォーリー以北への旅について、大量の忠告をしてくれた。
・メリアン
ディナ先輩が手配した護衛。
リテルたちを鍛える依頼も同時に受けている。
ものすごい筋肉と、角と副乳を持つ牛種の半返りの頼もしい傭兵。
円盾と小剣を二つずつ持ち、手にはスパイク付きのプレートナックルを装備。
謎の襲撃犯を撃退し、リテル達と合流。
騎馬戦も上手く、『戦技』や『気配感知』を使う。どうやらラビツの知り合いより近い仲である様子。
・ラビツ
ゴブリン魔術師によって変異してしまったカエルレウムの呪詛をストウ村の人々に伝染させた。
兎種ハクトッのラビツをリーダーに、猿種マンッが二人と先祖返りの猫種バステトッが一人の四人組。傭兵集団。
ラビツは、ケティの唇をリテルのファーストキスよりも前に奪った。おっぱい大好き。
北の国境付近を目指している。本人たちは呪詛にかかっていることに気付いていない。
リテルたちより二日早くアイシスを出発した。ギルフォドに向かっているらしい。
・ウォルラース
かつてディナ先輩とその母を絶望のどん底へ叩き落とした張本人。
名無し森砦を守る兵士たちと手を組み、スノドロッフの子どもたちを狙っていたが、ダイク達を見捨てて独り逃げた。
クスフォード虹爵と国王との間で、カウダ盗賊団の首領とされ逆賊認定された。
本来は身を守るための魔法品を、相手の無力化に用いたりなど、魔法品を使いこなす。
・エクシ
ビンスン兄ちゃんと同い年で、リテルが小さな頃は、ビンスンやケティと一緒に遊んでくれた。
村一番の絶倫ハグリーズの次男で、今はフォーリーで領兵をやっている筋肉自慢。
ちょいちょい差別発言や嫌味を吐き、マウントを取ってくる面倒な人だったが、それは父ハグリーズからの虐待に端を発していた。
彼を唯一守ってくれていた姉キッチが隣村へと嫁いだせいで、闇を深くした。
ルブルム一行の護衛として同行していたが、ドマースから交渉を持ちかけられたとき、自分が認められるチャンスと喜んだあとで、交渉希望相手がリテルだったと知り、希望を打ち砕かれる。
そしてドマースが用意した交渉の場を利用して、リテルを脅すつもりだったが、何の因果か殺し合いへと発展してしまう。
マドハトの『取り替え子』により、自ら殺しかけたクッサンドラと体を交換された直後、その傷がもとで死亡した。
・クッサンドラ
病弱だったマドハト(中身はゴブリン)の世話を焼いていたゴド村出身の犬種の先祖返り。ポメラニアン顔。
フォーリーで領兵、それも偵察兵をやっている。
ルブルム一行の護衛として同行。
ドマースがリテルと交渉しようとした用意した場で、壊れたエクシからマドハトをかばって殺されかけるが、マドハトの『取り替え子』により今は、エクシの肉体の中に居る。
エクシの闇の理由を知り、エクシとして罪を償うことを決意した。
・ビンスン兄ちゃん
リテルの兄で、部屋も一緒。猿種。
結婚したい相手がいる様子。
・ドッヂ
リテルの弟。猿種の先祖返り。
・マクミラ師匠
リテルに紳士たれと教える狩人の師匠。猿種。
狩りができない日は門番をしていたりも。
・レム
バータフラ・レムペー。クラースト村のバータフラ世代の五番目の子。
魔法に長けた爬虫種の少女。
リテルより若いが胸はかなり育っている様子。髪型はツインテール。
その母親は利照同様に異世界から来た。
現在は、リテルのことをお兄ちゃんと呼び、魔法の使い方を習ったりもしている。
ルブルム一行の護衛として同行。最近、ルブルムと仲が良さげ。
お兄ちゃんとは結婚できるとか言い出した。
・ロッキン・フライ
名無し森砦の兵士。
フライ濁爵の三男。山羊種。
ウォルラースとダイクの計画を知らされていなかった。正義の心を持っている。
ルブルム一行の護衛として同行。指笛で相棒の馬を呼べる。
・ドマース
森の中に小さなテーブルと椅子を置き、テーブルに突っ伏して寝ていた鼠種の先祖返り。
睡眠することが効果に関係するオリジナル魔法を使う。テーブルも魔法の一部だった。
王都キャンロルのさる偉いお方から「スノドロッフの一件に絡んだ者たちの一人に声をかけたい」との密命を受け、リテルと交渉しようとエクシへ接触した。
結果的にリテルにはフラれたが、交渉自体は秘密にしてほしいと口止め料までくれた。
・ヘイヤ
ドマースと共に、リテルとの交渉の場に居た兎種の先祖返り。
攻撃してきたエクシを警戒していたと思われるが、その行動を襲撃と勘違いしたリテルの反撃により死亡……した可能性があるが、真実はもう確かめようがない。
・ペック
魔獣に襲われた村の村長の息子。
生き残った子供達を馬車に乗せ、街道まで避難させた後、単身、ニュナムへ助けを呼びに。
・ウォッタ
馬種の少年。年齢は半成人くらい(中学生くらい)。
ペックに救われた子供達のリーダー的存在っぽい。
何かを隠しているっぽい。
・魔獣
ペックやウォッタ達の村を襲った魔獣。
瘴気が濃いとのことなので、この世界に迷い出て間もないっぽい。
・レムルース
地界に存在する種族。肉体を持たず、こちらの世界では『契約』されていないと長くは留まれない。
『虫の牙』の呪詛のベースにされていた他、スノドロッフ村の人達が赤目を隠すために『契約』している。
レムルースは複数形で、単体はレムールと呼ぶ。
ディナ先輩の体からリテルの腕へと移ったレムールは、リテルと契約し「ポー」という名を与えられた。
● この世界の単位
・ディエス
魔法を使うために消費する魔法代償(寿命)の最小単位。
魔術師が集中する一ディエスは一日分の寿命に相当するが、魔法代償を集中する訓練を積まない素人は一ディエス分を集中するのに何年分もの寿命を費やしてしまう恐れがある。
・ホーラ
一日を二十四に区切った時間の単位(十二進数的には「二十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ一時間に相当する。
・ディヴ
一時間の十二分の一となる時間の単位(十二進数的には「十に区切って」いる)。
元の世界のほぼ五分に相当する。
・クビトゥム
長さの単位。
本文中に説明はなかったが、元の世界における五十センチくらいに相当する。
トシテルが元の世界の長さに脳内変換しないでもいいくらい、リテルが日常的に使っていた単位。
・アブス
長さの単位。
元の世界における三メートルくらいに相当する。
・プロクル
長さの単位
一プロクル=百アブス。
この世界は十二進数のため、実際は(3m×12×12=)432mほど。
・通貨
銅貨、銀貨、金貨、大金貨。
十銅貨(十二進数なので十二枚)=一銀貨
十銀貨(十二進数なので十二枚)=一金貨
十金貨(十二進数なので十二枚)=一大金貨
・暦
一年は、十ヶ月(十二進数なので十二ヶ月)+「神の日々」という五~六日間。
それぞれの月は、母の月、子の月、大地の月、風の月、水の月、海の月、光の月、空の月、星の月、火の月、父の月、闇の月と呼ばれる。
各月は、月の始めの十日(十二進数なので十二日)間は「月昼」週。次の六日間は「月黄昏」週、最後の十日(十二進数なので十二日)間が「月夜」週。トータルは十二進数で三十日間。
毎月の、月黄昏週の一日が満月で、月夜週の九日が新月。月は二つあるが、大きい月の周期が基本で、小さい月の周期は二日ほど遅れている。夜が明けるまでは日付は変わらない。
第七十三話終了時点では星の月夜週の七日の早朝。




